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看護師国家試験 腎・泌尿器疾患

腎臓の解剖と生理
〇腎臓

・腎臓について説明してください
腎臓はソラマメ状で後腹腔内に左右1対ある
肝臓が右側に位置するため、右腎は左腎より2~3cm程度低い位置にある
腎動脈は腹部大動脈から分岐する
腎静脈は下大静脈に直接流入する
解剖学的位置関係から右腎静脈は短く、左腎静脈は長くなる

〇腎臓の生理


・腎臓の働きについて説明してください
体内の老廃物の排泄
水・電解質の調節
 尿細管と尿細管周囲の毛細血管との間で行われる
 近位尿細管は水、Na+、K+、Cl−、HCO3−などの主要再吸収部位であり、濾過されたもののうち約65~80%を再吸収する
 水が再吸収されることで尿が濃縮され、尿量が減少し、体液量が維持される
  →視床下部で合成され、下垂体後葉から分泌されるバソプレシン(AVP)によって促進される
  →バソプレシンは集合管に作用し、分泌量は血漿浸透圧で調整される
酸塩基平衡の調節
ホルモン産生(エリスロポエチン(EPO)産生、レニン産生、ビタミンD3活性化等)
 エリスロポエチン:赤血球精製促進因子
 レニン:血管収縮、血圧上昇
 ビタミンD3:カルシウム・リン代謝調整

・レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系(RAA系)について説明してください
①血流量減少による血圧の低下、Cl−濃度の低下(尿流量減少)、交感神経刺激を腎臓の傍糸球体細胞が感知し、レニンを分泌
②レニンは肝臓で分泌されたアンジオテンシノーゲンを活性化させ、アンジオテンシンⅠに変化させ、さらにアンジオテンシン変換酵素によりアンジオテンシンⅡとなる
③アンジオテンシンⅡは血管を収縮させる。また、副腎皮質のアルドステロン分泌を促進し、血圧を上昇させる。
④高血圧、心肥大、動脈硬化など広範囲にわたる心血管疾患に関与する

・糸球体でろ過されない物質について説明してください
赤血球、白血球、血小板、アルブミンや免疫グロブリンなどの中分子以上のタンパク質

〇尿の成分

・成人が排出する尿の量とpHについて説明してください
 約1~1.5L/日 pH:4.5~8.0

・ケトン体について説明してください
 脂肪が代謝された際に生成される酸性物質
 糖尿病ではインスリン作用不足によりグルコースが利用できなくなるので、エネルギーを産生するために脂肪の代謝が亢進する。これにより尿ケトン体が陽性となることがある

〇尿路

・尿路の粘膜組織について説明してください
 腎盂、尿管、膀胱、後部尿道の粘膜は移行上皮である

・膀胱容量について説明してください
 平均300~500mL

〇排尿


・畜尿時と排尿時の筋肉の働きについて説明してください
畜尿時
排尿筋が弛緩、内外尿道括約筋が収縮することで膀胱に尿を蓄える
排尿時
排尿筋が収縮、内外尿道括約筋が弛緩することで尿を排出する

〇男性生殖器

・前立腺の位置について説明してください
 膀胱の下、直腸の前面に位置し、尿道を取り囲むように存在している

排尿の異常
〇下部尿路症状

・畜尿症状について説明してください
尿を膀胱にためる機能が障害されること
頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、夜尿症 など

〇乏尿/無尿

・乏尿と無尿について説明してください
乏尿:1日尿量が400mL以下の場合
無尿:1日尿量が100mL以下の場合

・乏尿時、無尿時の輸液について説明してください
乏尿時:開始液(ナトリウム含量が少なく、カリウムを含まない輸液製剤)から開始する
無尿時:カリウムの投与は禁忌
尿中にカリウムを排出できなくなるためカリウムの血中濃度が上昇し、心停止のリスクが高まる

〇尿閉

・尿閉について説明してください
尿が膀胱内に存在するにも関わらず排出不能な状態
緊急の処置(導尿)を必要とする

〇頻尿

・頻尿について説明してください
1日の排尿の回数が通常よりも多い場合(一般的に日中8回以上)

〇尿失禁


・失禁の分類と原因、有効な対策について説明してください
機能性尿失禁
認知症、日常生活活動(ADL)障害などによりトイレへの移動や排尿動作の遅れで起こる
排尿自立への援助として、排尿時間や量の把握、トイレへの誘導、骨盤底筋群などの筋力増強訓練を行う
排尿を減らすために水分摂取を控えてしまうと、特に高齢者は体内の水分保有率が低く、脱水に陥りやすいため注意が必要

器質性尿失禁:排尿機構の障害 以下の4つの分類がある

腹圧性尿失禁
腹圧をかけると起こる尿失禁で女性に多い
出産や肥満による骨盤底筋群のゆるみなどが原因
咳嗽、くしゃみ、大笑い、重いものを持つなどして通常よりも腹圧がかかると失禁する
骨盤底筋群の訓練
尿意を感じたら早めにトイレに行くように指導する
切迫性尿失禁
 尿意が切迫してから起こる尿失禁
 尿道括約筋など排尿を抑制させる筋を動かす中枢神経が障害されたもの
 感覚神経は健在なので尿意は感じるが、運動神経が障害されていて骨盤底筋群を意図的に動かせないため尿失禁が起こる
  細菌性膀胱炎が原因の場合は抗菌薬の投与
  過活動膀胱が原因の場合は行動療法や薬物療法
溢流性尿失禁(奇異性尿失禁)
 前立腺肥大症や神経因性膀胱などによる慢性下部尿路閉塞に際してみられる失禁
 残尿量が大量となり、膀胱内圧が上昇することで尿がだらだらと溢れてくる状態
 慢性的に経過していることが多く、患者は失禁することを主訴に受診する場合が多い
反射性尿失禁
 上位感覚神経障害により尿意が大脳まで伝わらず、尿意を感じない一方で上位運動神経障害により排尿筋の不随意収縮が起こり尿失禁を生じる

〇過活動膀胱

・過活動膀胱について説明してください
尿意切迫感(急な強い尿意)を主症状とし、通常は頻尿、ときに切迫性尿失禁を伴う症候群

〇神経因性膀胱

・神経因性膀胱について説明してください
排尿に関する神経の障害によって膀胱の畜尿・排尿機能に異常が生じた状態のこと
過活動膀胱、尿意切迫感、反射性尿失禁、尿閉、溢流性尿失禁、低活動性膀胱、残尿

腎・泌尿器の検査
〇尿検査

・下記の尿検査の項目で陽性が疑われる病態について説明してください
尿蛋白、尿糖、尿潜血反応、尿ケトン体、尿ウロビリノーゲン、尿白血球
尿蛋白:急性・慢性糸球体腎炎、糖尿病腎症
尿糖:糖尿病
尿潜血反応:急性・慢性糸球体腎炎、腫瘍
尿ケトン体:糖尿病
尿ウロビリンノーゲン:肝硬変
尿白血球:尿路感染症
尿比重が高い:脱水(1.005~1.030)

・24時間尿について説明してください
尿蛋白や尿量、尿糖、クレアチニン、電解質などの正確な1日排泄量を測定するために行う。
ネフローゼ症候群、腎炎、糖尿病、腎機能の評価を行う
開始時刻前に排尿し、膀胱を空にしてから開始する。そして、終了時刻に採尿を終えるようにする。
総尿量の測定とよく攪拌した尿の一部を採取する。

・中間尿について説明してください
出始めの尿(初尿)を採らずに中間に排尿される尿のみを採尿する方法
常在菌の混入を少なくすることができる
一般的な採尿方法であり、原因菌の特定などに用いる

〇腎機能評価

・腎機能の指標について説明してください
血中尿素窒素(BUN(blood urea nitrogen))、血清クレアチニン(Cr)、クレアチニンクリアランス(Ccr)

・糸球体の機能の指標について説明してください
糸球体濾過量(値)(GFR)

〇腎・泌尿器のエックス線撮影

・IVU、DIUについて説明してください
IVU:静脈性尿路造影、DIU:点滴静注尿路造影

・IVU、DIU実施時の注意点について説明してください
腎機能低下時の造影剤使用はさらなる腎機能の低下を助長するため原則禁忌
ヨード過敏症の患者は禁忌、喘息などのアレルギーを持つ患者には原則禁忌
糞便塊やガスがあると良好な像が得られないため、検査前3~4時間は禁食(飲水は可)

〇膀胱鏡検査

・膀胱鏡検査の注意点について説明してください
無菌操作で行う
排尿後、砕石位をとらせ足を固定する
外尿道口消毒後、男性は局所麻酔を行う(女性は無麻酔)

〇腎生検


・腎生検について説明してください
生検針で腎組織の一部を採取する検査で、腎疾患の確定診断、治療方針の決定や腎予後の推定に有用
主に原因不明のタンパク尿や血尿、ネフローゼ症候群、急性腎障害などの場合に行われる
生検後は状況に応じて6~24時間程度はベッド上安静とし、血尿・穿刺部出血・腰痛などの有無、バイタルサインの観察などを行う

侵襲的治療
〇尿路変向術


・尿路変向術後の注意点について説明してください
入浴は皮膚を清潔に保ち、血液循環や新陳代謝を促す効果があるため推奨される
ストーマの温度に対する安定性は高いため、装着したまま入浴することが可能だが、交換日ははずして入浴し、ストーマ周囲を清潔に保つ

〇透析療法


・透析療法の目的について説明してください
①除水 ②電解質バランスの是正 ③尿毒症物質の除去
これらにより過剰水分による高血圧や肺水腫の改善、高カリウム血症や代謝性アシドーシスの改善、尿毒症症状の改善が期待される

・透析療法の指標と新規に透析を始める原疾患について説明してください
指標:糸球体濾過量(GFR)
原疾患:糖尿病腎症(42.3%)慢性糸球体腎炎(15.6%)腎硬化症(15.6%)

・透析療法の導入にける注意点について説明してください
生活の変化や合併症に対する不安が非常に大きい
CKD(慢性腎臓病)ステージ4の時点で動画などによる説明や、他の患者との面接や見学などを通して、治療の実際をイメージしやすくなるような援助が必要

・血液透析の注意点について説明してください
血液透析による除水量が多い場合や、電解質濃度の急な変化が生じた場合に、筋肉のけいれんや不整脈、全身倦怠感、低血圧などの合併症が起きることがある
シャント肢では、採血や点滴、血圧の測定を行ってはならず、圧迫や感染に注意する
水分をできるだけ少なくして食事指導(低食塩、低K、低P)を徹底し、体重管理の必要性を説明する
生野菜や果物の摂取を制限する(K制限のため→K濃度が高くなると心室細動、心停止、突然死の原因になる)

・腹膜透析について説明してください
腹腔内に透析液を注入し、腹膜を透析膜として用いる方法

・持続携行式腹膜透析(CAPD)について説明してください
手術より設置した腹腔内カテーテルから透析液を注入し、それを5~6時間経過した後、排液して再び新しい透析液を注入する。これを1日3~5回繰り返す

・透析導入原因の第1位は何か説明してください
糖尿病腎症 42.3%

糸球体疾患
〇急性糸球体腎炎


・急性糸球体腎炎の症状と治療について説明してください
三大徴候:血尿、浮腫(眼瞼浮腫など)、高血圧
高血圧の悪化により高血圧性脳症を合併することがある
頭痛、嘔吐、けいれんが起こり、重度の場合は意識障害が出現する
基本治療は安静、保温、食事療法(食塩摂取制限、低蛋白食、高エネルギー食)、体液管理、血圧管理

〇ネフローゼ症候群


・ネフローゼ症候群について説明してください
糸球体係蹄壁の障害に伴うタンパク質漏出の亢進によって、高蛋白尿、低アルブミン血症、浮腫、脂質異常症を起こす症候群
症状悪化に伴い、全身倦怠感、食欲不振、下痢、乏尿なども見られる

・ネフローゼ症候群の治療と看護について説明してください
治療
保温、食事療法(食塩制限、低蛋白食)、感染症予防
看護
浮腫に対し、水分摂取量、尿量、体重の記録や食塩制限を行い、下肢の挙上を行う

〇糖尿病腎症


・糖尿腎症の治療の禁忌について説明してください
副腎皮質ステロイドは糖尿病をさらに悪化させるため禁忌

・糖尿病腎症の看護について説明してください
糖尿病の食事療法に加え、腎障害の進行抑制のため食塩摂取制限(3g/日以上、6g/日未満)や腎機能に応じた低蛋白食が必要となる

腎不全
〇慢性腎臓病(CKD)/慢性腎不全(CRF)


・慢性腎臓病について説明してください
腎臓の障害(蛋白尿など)や腎機能の悪化(GFRの低下)が3カ月以上持続する状態を慢性腎臓病(CKD)という
CKDは将来腎機能が低下する可能性がある状態と、すでに腎機能が低下した状態(慢性腎不全(CRF))を包括した概念
蛋白尿や腎機能が悪化するほど心血管疾患や末期腎不全のリスクが高くなる
高血圧はCKDの危険因子であり、腎機能を悪化させる。また腎機能の悪化はさらなる高血圧を招き、悪循環となる

・慢性腎臓病の定義について説明してください
①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在を示す所見(特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿))
②GFR<60mL/分/1.73m2
①②のいずれか、または両方が3カ月以上持続

・慢性腎不全における腎機能の低下に伴う症状について説明してください
GFR低下
蛋白質(アルブミン)が尿中に漏出してしまい血漿膠質浸透圧が低下
→浮腫
リン酸、硫酸などの酸やアンモニウムイオンの排泄障害およびHCO3−の再吸収障害
→代謝性アシドーシスとなる
エリスロポエチン産生低下
腎性貧血
止血・凝固異常
出血傾向

・慢性腎不全の食事療法について説明してください
基本は食塩摂取制限
描記の進行に合わせタンパク質やカリウム、リンの制限を行う
水分の極端な制限は行わず適切な体内水分量を維持できるようにする

尿路の疾患
〇水腎症/水尿管症


・水腎症/水尿管症について説明してください
何らかの原因胃より尿路が閉塞して尿流出が妨げられた結果、尿路が拡張した病態
腎盂、腎杯が拡張した場合を水腎症、尿管が拡張した場合を水尿管症という
尿路閉塞は前立腺癌などの腫瘍や尿路結石、神経因性膀胱(尿閉)などで生じる

〇尿路感染症総論


・尿路感染症について説明してください
腎臓、尿管、膀胱、尿道に生じた感染症
自己導尿や膀胱留置カテーテルなどは尿路感染症の原因となることがある

〇腎盂腎炎


・腎盂腎炎について説明してください
細菌感染(最多は大腸菌(グラム陰性桿菌))による腎実質、腎盂、腎杯の炎症
感染経路は尿道からの上行性(尿路逆行性)が主

・急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎の症状について説明してください
急性腎盂腎炎
悪寒戦慄を伴う高熱、腰背部痛、膀胱刺激症状、腎部の自発痛およびCVA叩打痛
慢性腎盂腎炎
自覚症状はほとんどない
微熱や軽度の腰背部痛、特に増悪を伴う

・腎盂腎炎の検査について説明してください
上部尿路の閉塞を見るには超音波検査、静脈性尿路造影(IVU、DIU)、CT、MRIが有用
IVU、DIUでは腸内ガス排除や造影剤の副作用も考慮し、検査前は禁食とする。また、終了後は水分を十分に摂るよう指導する。

〇前立腺癌


・前立腺癌について説明してください
転移には骨転移が多い。骨転移の多くは造骨性。次いでリンパ節転移が多い。
腫瘍マーカーであるPSAの上昇がみられる
前立腺は男性ホルモン(アンドロゲン)依存性の臓器であり、前立腺癌の多くもその発育にアンドロゲンを必要とする。アンドロゲンを遮断し、癌細胞を縮小させるのがホルモン療法
ホルモン療法(LH-RHアナログ製剤、抗アンドロゲン薬など)では、更年期障害様症状や女性化乳房などの副作用が出現する可能性がある。

〇前立腺肥大症


・前立腺肥大症の症状について説明してください
第1期(膀胱刺激期)
頻尿(夜間頻尿)、苒延性排尿(排尿時間の延長)
第2期(残量発生期)
排尿困難、残尿の発生
さらに放置すると
溢流性(奇異性)尿失禁、急性尿閉
慢性尿閉により水腎症・水尿管症を合併すると腎不全(第3期膀胱拡張を伴う慢性尿閉期)などの腎機能障害に至る

・前立腺肥大症の治療について説明してください
まず、薬物療法
改善がない場合は、手術療法(経尿道的前立腺切除術(TURP)、ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)など

・経尿道的前立腺切除術(TURP)の術後の注意点について説明してください
尿路感染症予防のため、水分摂取に努め尿量を増やす
術後出血を防ぐため、排便時の強いいきみや重い物の挙上など腹圧上昇をきたす動作を避ける
尿失禁がある場合、尿取りパッドを使用し、必要に応じて改善のために骨盤底筋の体操(肛門・尿道括約筋の強化運動)を行う
血尿がみられたり、残尿感、排尿痛などが強くなったり、尿が出にくくなったりした場合は、受診する


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