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看護師国家試験 運動器疾患

骨・関節の解剖と生理
〇骨


・骨について説明してください
骨組織は骨細胞成分と骨基質からなる
骨細胞成分:骨を保持する骨細胞、骨を形成する骨芽細胞、骨を吸収する破骨細胞があり、力学的因子と生物学的因子によって一生を通じて常にリモデリング(再造形)されている
骨基質:コラーゲンを含む有機質と、リン酸カルシウムなどの無機塩(骨塩)からなり、カルシウム(Ca)、リン(P)の貯蔵場所としての役割を持つ
骨からのCa遊離は破骨細胞の働きを促進する副甲状腺ホルモンと抑制するカルシトニンとのバランスにより調節されている
Caの骨への沈着は、腸管からのCa吸収を促進する活性化ビタミンDによって調節されている

・脊椎の個数について説明してください
頸椎:7個、胸椎:12個、腰椎:5個、仙椎:5個、尾椎:3~5個
仙椎と尾椎は癒合して仙骨、尾骨となっている

〇関節


・球関節の代表的な関節について説明してください
肩甲上腕関節、股関節

・車軸関節の代表的な関節について説明してください
橈尺関節、正中環軸関節

・蝶番関節の代表的な関節について説明してください
腕尺関節、指節間関節

・不動関節の代表例について説明してください
線維軟骨結合:椎間板、恥骨結合
軟骨結合:成長軟骨板
骨結合:骨化した成長軟骨板
靭帯結合:頭蓋骨の縫合

筋の解剖と生理
〇骨格筋の収縮


・骨格筋収縮の仕組みについて説明してください
神経筋接合部に刺激が伝わり、運動神経終末からアセチルコリンが放出されると、筋細胞内のカルシウムイオン濃度が上昇する。それによりアクチンとミオシンの滑り込みが起こり、筋肉が収縮する。筋肉の収縮はアデノシン三リン酸(ATP)がアデノシン二リン酸に加水分解されるときに生じるエネルギーによって起こる。

・等張性収縮と等尺性収縮について説明してください
等張性収縮
一定の荷重や抵抗をかけながら(筋の張力は変えずに)筋を収縮させること
例)おもりをつけてゆっくり挙上
等尺性収縮
関節の運動を伴わず(筋の長さを変えずに)筋を収縮させること
例)進展位で関節を動かすことなく筋にギューッと力を入れて収縮させる

運動器の主要症候
〇フォルクマン拘縮


・フォルクマン拘縮について説明してください
上肢の骨折部腫脹などによる血行障害(阻血)が主な原因
前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺(正中・尺骨神経麻痺)によって生じる阻血性拘縮のひとつ
小児の上腕骨顆上骨折などで生じる
初期症状として5P(疼痛(Pain)、脈拍消失(pulselessness)、運動麻痺(paralysis)、蒼白(pallor)、異常知覚(paresthesia)、腫脹(puffiness))がある

運動器のフィジカルアセスメント
〇関節運動と可動域


・関節の運動の種類を挙げてください
屈曲・伸展、外転・内転、外旋・内旋、回外・回内

・関節可動域(ROM(range of motion))測定の目的について説明してください
障害の有無や程度の把握、関節運動の障害因子の把握、治療やリハビリテーションの効果判定など

・関節可動域(ROM)の0度について説明してください
基本肢位(手掌を前方に向けて静止直立した時の肢位(解剖学的肢位))における基本軸を0度として測定される

〇徒手筋力テスト


・徒手筋力テストについて説明してください
各関節を動かす筋または筋群の筋力を道具を使わずに徒手(素手)によって調べる検査
ひとつの関節運動に要する筋力を「5」から「0」までの6段階で評価する
5(normal) 強い抵抗を加えても運動可能
4(good)  重力及び中等度の抵抗を加えても関節運動が可能
3(fair)  重力に逆らった関節運動が可能であるが、それ以上の抵抗を加えればその運動は不能
2(poor)  重力の影響を除去すれば、その筋の収縮によって関節運動が可能
1(trace)  筋収縮は見られるが、それによる関節運動は見られない
0(zero)  筋収縮はまったくみられない

検査
〇ミエログラフィー(脊髄造影)


・ミエログラフィーについて説明してください
腰椎穿刺にて造影剤をくも膜下腔に注入してエックス線撮影を行う
脊椎・脊髄疾患において、病巣の診断などに用いられる
重篤な副作用として、ショック症状、けいれんなどに注意する必要がある

保存療法
〇固定法


・四肢の骨折の救急処置の要点について説明してください
RICE:Rest(固定と安静)、Icing(局所の冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)

・固定の基本について説明してください
骨折部を中心に、近位、遠位の2関節を越えるように固定すること

・固定後の看護について説明してください
腫脹による筋の阻血性拘縮予防のため、循環障害(皮膚の色調、冷感の有無など)、知覚麻痺や疼痛、しびれ感、運動障害の有無、筋緊張状態や腫脹の有無を観察する。
四肢の浮腫の予防として、固定肢位を保持したうえで患肢を挙上する。
固定後は廃用症候群や深部静脈血栓症(DVT)を予防するため、早期に等尺性運動などの機能回復訓練を開始することが重要。

〇牽引法


・牽引法について種類と注意すべきことについて説明してください
介達牽引:絆創膏やスポンジ、ゴム、弾性包帯などを用いて皮膚を介して行う
     1日1回弾性包帯を巻きなおし、コンパートメント症候群、褥瘡や皮膚損傷に注意する
直達牽引:骨に直接的に鋼線を通して牽引を行う
     鋼線刺入部周囲の皮下や骨髄の感染を合併することがあり、患部の熱感を確認する
※コンパートメント症候群:筋肉内の出血、浮腫、うっ血などで高度な腫脹が生じ、その部位より末梢の四肢の血流が阻害される状態

侵襲的治療
〇四肢切断術


・四肢切断術術後の看護ついて説明してください
術後は断面部の状態(浮腫など)を観察し、弾性包帯を巻いて形を整えるなどの適切な断端管理を行い、早期に義肢を装着できるよう援助する
下腿切断では屈曲拘縮を予防するために膝関節を伸展位に固定し、方向転換時にふらつくことがあるため体のバランスのとり方に対するリハビリテーションが重要
幻肢痛は時間経過や抗うつ薬などの投与、義肢の装着用などで改善していくことが多い
入院中から退院に向けて、実際の生活を考慮した機能訓練(義肢を装着した動作訓練など
の方法について指導する
切断指接着術の術後1日では、遠位部の血液循環の状態の観察が重要

リハビリテーション
〇関節可動域訓練


・関節可動域訓練について説明してください
第三者または機械などの外力で受動的に動かす:他動訓練
自分の意思と力で能動的に動かす:自動運動
関節拘縮や運動機能低下を予防し、廃用症候群の予防につながる
動かす関節の近位と遠位をしっかり支える

骨折
〇骨折総論


・骨折の種類について説明してください
完全骨折と不全骨折がある
不全骨折には亀裂骨折、若木骨折、竹節骨折などがある
外界に交通しているか否かで開放骨折と閉鎖骨折に分類される

・小児の骨折について説明してください
小児では不全骨折、特に若木骨折となることが多い
小児は骨膜が厚く、血管が豊富なため、骨折後の修復機転が早い

・骨折の症状について説明してください
骨折部位において受傷直後から現れる局所症状としては、疼痛と圧痛、腫脹、変形、異常可動性、轢音、近接関節の機能障害などがある
骨盤骨折や大腿骨骨折などの場合、循環血液量減少性ショック(出血性ショック)や脂肪塞栓症候群に注意する

・骨折のリハビリテーションについて説明してください
廃用性筋萎縮やDVTを予防するため、ギプス固定直後からギプス内で筋の等尺性運動や固定部以外の関節の自動運動を行わせる
疼痛が強い場合は、鎮痛薬で疼痛コントロールを行いながら、リハビリテーションを行う
歩行機能が回復した患者の退院直後の生活指導では、患者のペースに合った散歩などの運動を勧め、筋力の回復を目指す

〇上腕骨顆上骨折


・上腕骨顆上骨折について説明してください
転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じやすく、小児の骨折で最多
早期から起こる可能性がある合併症として、神経損傷、神経麻痺、フォルクマン拘縮がある

・上腕骨顆上骨折の看護で注意することについて説明してください
神経損傷や神経麻痺を早期に発見するため、患肢に知覚鈍麻、知覚過敏がないかをよく観察する
患部の腫脹を助長しないよう安静を保ち、健側を使って食事するように指導する
患部に疼痛がある場合、骨折部の再転位や阻血性拘縮、および感染などが疑われる。そのため退院時に、疼痛が見られたら受診するよう指導する

〇大腿骨頸部骨折


・大腿骨頸部骨折について説明してください
高齢者の転倒で生じることが多く、青・壮年期では、事故などの強力な外力が加わった場合に起こる
骨粗鬆症の高齢者に多い

・大腿骨頸部骨折の治療と看護について説明してください
受傷前に歩行可能だった高齢者では、一般に手術療法により骨頭を摘出して人工骨頭に置換し、早期離床できるように努める。
看護
特に高齢者ではベッド上での安静中に患肢の尖足・深部静脈血栓症(DVT)を予防するため、下腿にクッションを挿入して良肢位を保持したり、受傷当日より足関節の自動的・他動的底屈・背屈運動をしたりする。
人工骨頭置換術後のリハビリテーション期には、股関節脱臼が生じやすい。予防のため、臥床時および車椅子移乗時には患肢を外転中間位に保持する
人工骨置換術後に腓骨神経麻痺を予防するため、患肢の腓骨頭部圧迫を招く外旋位を避けたうえで第1趾と第2趾間背側の知覚異常や第1趾伸展・足関節背屈障害の有無を観察する

変形性関節症
〇変形性膝関節症


・変形性膝関節症について説明してください
加齢による関節軟骨、軟骨下骨層の退行性変化である一次性と、骨折や靭帯・半月板の損傷といった外傷、化膿性関節炎のような感染などによる二次性に分類される
主症状は主に疼痛(主に内側)で、動作開始時の痛みや過重負荷による痛み(階段昇降時)が見られる
膝関節の負担(肥満、長距離の歩行、重い荷物を持つ、階段昇降、正座など)を減らす生活を心がけることや、大腿四頭筋強化訓練などの運動療法による筋力強化が予防策となる
人工膝関節全置換術では、手術翌日から持続的他動運動(CPM)装置による関節可動域訓練を行う。訓練は無理のない範囲から徐々に開始する。

〇変形性股関節症


・変形股関節症の看護について説明してください
人工股関節全置換術後は外旋・伸展運動により前方脱臼を、内旋・内転・屈曲運動により後方脱臼しやすい。
脚を組んだりしゃがみこんだりすると脱臼を起こしやすいため、股関節に負担がかかる姿勢に注意する(落ちたものを拾うときは患側の膝をついてしゃがみこむなど)
患部からの出血、深部静脈血栓症(DVT)(浮腫、不快感、鈍痛など)、腓骨神経麻痺の有無などの観察を行う

脊椎・脊髄疾患
〇脊髄損傷


・脊髄損傷について説明してください
脊椎骨折に合併することが多いが、脊椎の過屈曲、過伸展により損傷を受けることがある
損傷された部位や程度により様々な神経症状を呈し、急性期には脊髄ショックが見られる
脊髄ショックでは、損傷レベル以下の全知覚が脱失し、腱反射・表在反射の消失、弛緩性麻痺、完全尿閉、血圧低下が生じる

・脊髄損傷のレベルに対応する症状について説明してください
第3頸髄以上
腹式呼吸を担う横隔膜(支配神経C3、4)が麻痺し、自発呼吸が顕著に障害される
第4頸髄以下でも、胸郭運動を担う肋間筋(支配神経T1-11)が麻痺し、肺が膨らまない拘束性換気障害が生じる。また喀痰障害による無気肺や肺炎を引き起こす
第1胸髄~第2腰髄以上
消化管障害(麻痺性イレウスなど)
第2腰髄以下損傷
尿閉時の排尿障害

・脊髄損傷の看護について説明してください
四肢の麻痺に対しては、変形・拘縮や褥瘡の予防が重要。変形・拘縮予防には機能訓練や体位変換が、褥瘡予防には体圧分散マットの使用や体位変換が有効である

〇椎間板ヘルニア


・椎間板ヘルニアについて説明してください
後方への脱出により脊髄圧迫症状が、高側方への脱出により神経根症状が出現する
椎間板は軟部組織であるため診断にはMRIが用いられる
腰椎椎間板ヘルニアの場合、負担軽減のため前かがみ姿勢や減量、重労働の禁止、コルセットやベルトの装用、入浴保温といった温熱療法などについて生活指導を行う

〇腰部脊柱管狭窄症


・腰部脊柱管狭窄症の看護について説明してください
椎間板ヘルニアなどが原因で脊柱管が狭窄され、神経根や馬尾神経を圧迫し腰痛や下肢痛などを生じる
腰痛、間欠性跛行、下肢の疼痛しびれ、冷感、脊椎の運動制限などが認められ、神経圧迫の状況に応じて馬尾型、神経根型、混合型の3型に分類される
看護では、立位・座位・臥位など、姿勢を変える際には腰部に負担をかけないよう、腰部以外の関節を使った動作を心がけるよう指導する

その他の運動器疾患
〇骨粗鬆症


・骨粗鬆症について説明してください
骨強度が低下し、骨折の危険性が高まる骨格疾患
骨強度は骨密度と骨質により規定される
エストロゲンの産生減少が病態に大きく関わっているため、閉経後の女性や高齢者、両側の卵巣摘出術後の若年女性に好発する

・骨粗鬆症の危険因子について説明してください
閉経、痩せ、偏食、運動不足、アルコールの多飲、喫煙、副腎皮質ステロイド、日光照射不足、遺伝的素因

・骨粗鬆症の治療について説明してください
食事療法:カルシウム、ビタミンD、ビタミンK
運動療法:ウォーキング、水泳、腹筋・背筋の強化
薬物療法:骨吸収抑制剤(ビスホスホネート製剤など)、活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤

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