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看護師国家試験 精神看護学

社会における精神保健
〇精神の健康

・精神保健活動における予防の概念について説明してください
一次予防:精神保健に関する環境の整備
     ストレスとその対処方法に関する知識の提供
     メンタルサポートボランティアの育成
二次予防:早期発見、早期介入
     健康診断でうつ傾向があると判定された人との面接
     相談会の実施
三次予防:リハビリテーション
     退院支援
     再発の防止

〇精神の健康に関する普及・啓発

・「こころのバリアフリー宣言」の目的について説明してください
全国民に対して精神疾患・精神疾患患者への正しい理解を促し、スティグマを解消すること
※スティグマ:偏見や差別、否定的な周囲の反応などのように、ネガティブなレッテルを貼ること

・精神保健医療福祉の改革ビジョンについて説明してください
「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本的な方策のもと、精神入院患者の地域での受け入れ態勢整備、国民各層の意識の変革などを進められている

精神の健康とその仕組み
〇ストレス・コーピング


・以下の理論を提唱した提唱者について説明してください
 危機モデル、ケアリング、セルフケア、ストレス反応
危機モデル:フィンク,S.L.、アギュララ,D.C.
ケアリング:メイヤロフ,M.、ワトソン,J.
セルフケア:オレム,D.E.
ストレス反応モデル:セリエ,H.

・コーピングについて説明してください
情動焦点型コーピング:回避、静観、気晴らしなどによってネガティブな情動そのものを軽減しようとすること
問題焦点(解決)型コーピング:問題の所在の明確化、情報収集、解決策の考案と実行など環境や自分自身を変化させることで問題そのものの解決を目指すこと

・危機モデル(問題解決危機モデル)について説明してください
アギュララ,D.Cが提唱した
ストレスの多い問題に遭遇した際、その危機を回避するには
①出来事の現実的な認知
②適切なソーシャルサポート
③適切な対処機制
の3つの要素が必要だという考え方

〇防衛機制

・防衛機制とはなにか説明してください
ストレスにさらされた際、精神的な安定を保つための無意識的な自我の働き

・フロイト,S.の提唱したこころの3つの装置について説明してください
こころには、
①本能的な快楽を求めるイド
②イドの対極にあって、命令、禁止、良心と関係する超自我
③両社の調整役として現実適応を図っていく自我(エゴ)
の3つの装置があると提唱している

〇危機介入

・フィンク,S.L.の危機モデルについて説明してください
危機に陥った人がたどる過程に焦点を当てたモデルで、その進展を衝撃→防衛的退行→承認→適応の4段階で説明しているもの
衝撃:ショックを受け、強い不安を感じ、混乱した行動をとる
防衛的退行→現実逃避、怒りや非難、権威の誇示等で自己を守る時期
      不安は減少し、急性身体症状も回復する
承認→逃避しきれず現実に直面する時期、不安や焦燥感が現れる
適応→残存機能の発揮により、自己のアイデンティティを再認識し、価値観を構築する時期

・以下の防衛機制について説明してください
昇華、合理化、反動形成、置き換え、知性化、逃避、分離(乖離)、投影(投射)
昇華:そのままの形では満たされない衝動や欲求を、社会的価値をもつもので充足させる
合理化:満たされない欲求に都合のいい言い訳をして、自分の行為を正当化する
反動形成:抑圧された感情と正反対の行動に出る
置き換え:欲求や不安の対象をほかの対象に置き換える
知性化:受け入れがたい感情や欲動の意識・表現を避け、知的に考え説明することでコントロールしようとする
逃避:傷つくことを避けるため、困難から逃げる
分離(解離):自分の生死にかかわることや深い悲しみを経験したとき、一時的だが徹底的に自分の人格や独自性を変化させる
投影(投射):自分の中の受け入れられない感情を他者のものとみなす
※転換:不安や葛藤などが身体症状として現れることをいう

精神看護
〇精神看護理論

・ペプロウ,H.E.の提唱した患者-看護師関係のプロセスについて説明してください
患者-看護師関係を治療的な人間関係ととらえ、看護を有意義な治療的・対人的なプロセスであると位置づけている
①方向づけ:患者は専門職の援助を求めている。初めて出会う患者と看護師が、抱えている問題を認識して共有し、解決に向かって歩き始める
②同一化:患者は、自分のニーズにこたえてくれそうな看護師を選び、同一化して関係をつくろうとする。患者は看護師に信頼をおく
③開拓利用:患者が看護師の援助等を十分に利用し、問題を解決し、目標を達成しようとする
④問題解決:患者は独り立ちする能力を身につけ、目標は新しいものへと変化する

・ペプロウ,H.E.の提唱したプロセスレコードについて説明してください
看護師の働きかけがどのように患者に影響しているかを客観視するため、看護の場面での言葉、しぐさなどを振り返り、記述するもの
看護師が自分自身の対人関係における傾向を知って技術向上に活用したり、患者理解を深めたりするための方法として用いられる

〇精神疾患患者とのかかわり方

・フロイト,S.が提唱した転移感情について説明してください
転移感情は、患者が医療従事者に対して無意識に抱く感情(転移)と医療従事者が患者に対して無意識に抱く感情(逆転移)を合わせたもの
転移には陽性転移(好意、信頼、尊敬、思いやりなどの肯定的な感情)と陰性転移(憎しみ、攻撃、非難、敵意等の否定的な感情)がある

・以下の言葉について説明してください
受容、ピアサポート、ストレングス、リカバリ、レジリエンス
受容:患者の気持ちをありのまま尊重し受け入れるという治療的接触の基本的な技術
ピアサポート:同じ問題や疾患・障害を持つ仲間(ピア)同士による相互支援活動のこと
       ピアサポート活動を通じて、ピアサポーター自身の回復も促進される
ストレングス:対象者自身や取り巻く環境が持つ強みのこと
※ストレングスモデル:精神疾患患者に対して問題点の解決を図るのではなく、患者が持つストレングスに着目し、支援を組み立て実践すること
リカバリ:症状や障害の有無にかかわらず、自分らしく主体的に生きていくことを追求すること、またはその過程
     症状の消失などを意味する医学的な回復とは異なる
レジリエンス:その人自身が持つ、逆境を経験しても精神的に回復できる力のこと
エンパワメント:援助者が対象者の潜在的な身体的・心理的・社会的能力を引き出したり、環境を整えたりすることによって、対象者の主体的な問題解決や生活を支援する過程

・精神保健医療福祉におけるチーム医療のメンバーについて説明してください
社会復帰に向けての生活援助が目的となるため、医療従事者以外のより幅広い専門職がチームを構成する必要がある
同じ疾患を持つピアサポーター、薬剤師、栄養士、心理専門職、作業療法士、精神保健福祉士、就労援助に関わるハローワークの担当者やボランティア、人権擁護のための弁護士

〇精神疾患患者の家族支援


・患者の家族の感情表出(EE)について説明してください
患者に対する家族の態度や言動のこと
高EEと低EEがあり、高EEは統合失調症の再発に関連が認められている

・家族心理教育について説明してください
家族のストレスや不安を軽減し、患者と家族が主体的に問題に立ち向かえるように支援することを目的に、心理面への十分な配慮をしつつ、精神疾患に対する正しい知識や治療法、再発予防の方法、社会資源の活用方法など幅広い情報を提供すること
これにより家族が正しい知識を持つことができるようになり、感情が安定したり、客観的に患者を捕らえられたりするようになり、家族の感情表出を変化させ、疾患の再発や再入院を減らすことができる

〇リエゾン精神看護


・リエゾン精神看護について説明してください
身体疾患と精神的問題を併せもつ患者を対象とする
患者や看護師を含むケア提供者に対する精神的なサポートなど、コンサルテーション機能を持つ
機能を大きく分類すると直接ケアと間接ケアがある
直接ケア:支持的面接、リラクセーション
間接ケア:コンサルテーション、コーディネーションなど

安全管理(セーフティマネジメント)
〇病棟環境の整備と行動制限

・施設症について説明してください
長期の精神病棟入院によって生活能力の低下や無関心・無気力などに陥り、社会復帰の意欲をなくした状態
インスティテュートナリズムとも呼ぶ
統合失調症の陰性症状様の症状も見られる
予防策として、地域住民との交流の機会を増やすことが有効

・行動制限をかける場合の注意点について説明してください
人権侵害につながるおそれがあるため、行動制限に関わる諸条件が改善した時点での速やかな解除を目指すための看護計画を立てる
身体拘束や隔離を行う際は、患者の状態に関わらず理由を説明するとともに、制限を行った理由や開始・解除した日を診療録に記載する
患者及び医療者の安全を確保するため、原則2名以上で対応する
身体拘束や12時間を超える隔離には、原則として精神保健指定医に診察に基づく指示が必要

〇自殺/自殺企図/自傷行為

・TALKの原則について説明してください
自殺念慮がある患者への接し方
誠実な態度で話しかける(Tell)
自殺についてはっきりと尋ねる(Ask)
相手の考えを傾聴する(Listen)
安全を確保する(Keep safe)
自殺について話しやすい態度で接し、力になりたいという気持ちを伝えることが重要

・自殺の危険因子について説明してください
男性、中高年、精神疾患、喪失体験、自殺企図歴

・自殺念慮がある患者への対処で気を付けることについて説明してください
患者の訴え、自殺計画の有無、計画の具体性の高さによって切迫度を確認する
安易に励ましたり、話題を変えたりするのではなく、患者に大いにしっかり耳を傾ける

〇攻撃/暴力

・暴力の予防について説明してください
対策マニュアルを作成するなど、組織として暴力発生の予防策の方針を明確にすることが重要

・興奮状態の患者への対応で注意することに説明してください
複数のスタッフで対応する
できるだけ静かな環境に案内する
興奮を助長する恐れのある行動(大きな声を出す、注意、説得など)や身体的接触は避ける
患者の思いを否定せずに聞き、患者が了解できる内容を伝えたり、患者の心情を理解していることを伝えたりすることで意思疎通を図る
暴力が引き起こされた場合は、まず患者と暴力の対象者、周囲の人の身の安全を確保する

自立を促す援助
〇症状マネジメント

・患者の服薬アドヒアランス向上のために注意することについて説明してください
怠薬や拒薬が精神病性症状の悪化の原因となることもあるため、服薬の自己管理を開始する際はアセスメントを行う
薬の副作用が理由で拒薬や怠薬をしている場合には、副作用の対処法についてともに考える
拒薬・怠薬の状態(生活への影響など)を確認し、医師に報告・相談する
症状の好転を理由に拒薬や、服薬の必要性を疑問に感じている場合は、継続的な服薬の必要性を話し合い、服薬心理教育を行う

・心理教育の目的について説明してください
病状の再燃防止に向けて、疾患を正しく理解し、治療に対するアドヒアランスを高めることを目的に行われる

〇社会復帰の支援

・精神科デイケアについて説明してください
障害者総合支援法の障害福祉サービスの1つ
自立支援医療費によって給付される
社会生活機能の回復を目的に、社会生活技能訓練(SST)、スポーツ、創作活動、レクリエーションなど、集団で行われるプログラムに参加することを通して、対人関係能力の向上や、生活リズムを整える
病状の再燃や再入院を防ぐためにも有効

・精神保健福祉士(PSW)について説明してください
psychiatric social workerの略 精神科ソーシャルワーカー
精神疾患患者とその家族を対象に、生活上の困難や社会的問題の解決のための援助を行う国家資格
患者・家族への助言や指導、日常生活適応のための訓練、その他の社会福祉業務などを行う

・退院後生活環境相談員について説明してください
医療保護入院者の退院支援において中心的役割を果たす
退院後の住居など様々な環境の調整についても、家族やその家族と相談して、地域生活へのスムーズな移行をサポートする

精神科の主要症状
〇せん妄

・せん妄について説明してください
さまざまなレベルの意識障害に加えて、幻覚や軽度の精神運動興奮などの精神症状がみられる状態

・せん妄の要因について説明してください
原因は多岐にわたるため、安易に原因を決めつけず、バイタルサインを図るなどして、背後にある身体的な変化や異常を見落とさないように注意する
①直接因子
薬剤の副作用や急性の脳疾患など、それ単体で意識障害を引き起こしうる身体的な要因
②準備因子
加齢や認知症など、もともと患者が持っている脳器質的な弱さ
③誘発因子
痛み、ドレーンなどの留置、入院による環境の変化、身体拘束、不安感、睡眠・覚醒リズムの乱れなどのせん妄を誘発する因子

・せん妄の患者に対する看護において注意することについて説明してください
自身の置かれている状況を伝えるなどして不安を除去できるよう援助する
日中は室内を明るくしたり、可能な限り離床を促し、夜間は静けさを保ち暗くするなど、昼夜の区別をつけ、生活リズムを整えられるよう援助する
カテーテルの自己抜去を防ぐため、しっかり固定し、病衣の袖に通すなどしてなるべく目に触れないよう工夫する

〇幻覚

・幻覚について説明してください
外的刺激が内にも関わらず近くする異常体験
幻聴、幻視、幻味、体感幻覚などがある

・幻覚の患者に対する看護において注意することについて説明してください
中立的な立場で患者に対応する
幻覚・妄想を強化させるようなかかわりは避けつつも、危機的な心理状態を受容し、共感するような態度で接することが重要

〇妄想


・妄想の分類について説明してください
一次妄想(真性妄想):生じ方が心理的に理解できないものであり、統合失調症の主症状の1つ
妄想気分:周りがいつもと違い、何かが不気味で大変なことが起こりそうだという不安に襲われる状態
     「この世の終わりが来る」と感じる
妄想知覚:実際に知覚されたものに対して、特別な意味づけをする状態
     犬が吠えたのを聞いて「自分の母親が死んだ」と確信する
妄想着想:突然頭に浮かんだことをそのまま確信する状態
     理由もなく突然「自分は王様だ」と確信する
二次妄想(妄想様観念):心理的な状況、環境、性格などから妄想の形成の機序がそれなりに了解できるもの
微小妄想:うつ病、双極性障害にみられる、自分のことを極端に過小評価する妄想
     自分が大きな罪を犯したと考える(罪業妄想)
自分が経済的に困窮していると考える(貧困妄想)
自分が重い疾患にかかっていると考える(心気妄想)
誇大妄想:双極性障害、統合失調症にみられる、自分のことを極端に過大評価する妄想
     自分が神や救世主であると考える(宗教妄想)
自分は大発見・大発明をしたと考える(発明妄想)
自分はある人から愛されていると考える(被愛妄想)
自分は高貴な血統であると考える(血統妄想)
被害妄想:統合失調症、アルコール精神病にみられる、他人や物事から危害を加えられている、悪意を向けられていると思い込む
     周囲の出来事を自分に関係のあることだと思い込む(関係妄想)
恋人や配偶者が浮気していると思い込む(嫉妬妄想)
誰かに追跡されていると思い込む(追跡妄想)
誰かにみられていると考える(注察妄想)

精神科の治療
〇集団精神療法


・集団精神療法について説明してください
複数の患者を対象に行う精神療法で、他者との交流を介して生み出されるグループダイナミクス(集団力動)を利用し、患者に治療的な変化をもたらすことを目的としている
例)アルコール依存症患者による断酒会やAA、薬物依存患者によるダルクなどのセルフヘルプグループ
※AA:Alcoholics Anonymousの略 匿名のアルコール依存症患者の会
※ダルク:Drug Addiction Rehabilitation Centerの略 薬物依存症の患者が集まって精神療法がおこなわれる場
沈黙にも意味があると受け止める
表情やしぐさなど非言語的サインに注意する
ロールプレイを用いるサイコドラマ(心理劇)がある

〇社会生活技能訓練(SST)

・社会生活技能訓練(SST)について説明してください
退院支援や社会復帰の推進を目的として、基本的マナーや問題解決能力、注意の向け方などの基本的生活技能を訓練する精神科リハビリテーション

〇リラクセーション法

・リラクセーション法について説明してください
自律訓練法:自己暗示によって心身の弛緩(リラクセーション)を経て、自律神経系・内分泌系や脳幹部の機能を調整する
全身的筋弛緩法:筋肉を弛緩させることで不安や緊張の緩和を促す

〇修正型電気けいれん療法

・修正型電気けいれん療法について説明してください
脳に通電することで精神症状を改善させる治療法
重症うつ病や統合失調症(緊張型)で、薬物療法の効果が得られない患者や昏迷、亜昏迷の患者などに行う
手術室において麻酔科医による全身管理のもと、全身麻酔と筋弛緩薬を用いて行う治療法で、全身けいれんによって骨折などが起こっていた従来法に比べて安全に行うことができる

精神作用物質使用による精神・行動の障害
〇アルコール依存症

・アルコール依存症における耐性について説明してください
飲酒が続くにつれて同じ量のアルコールで満足できなくなり、より多くのアルコールが必要になる

・アルコール依存症における離脱症状について説明してください
飲酒の中止もしくは減量によって生じる
禁酒後2~3日目に最も強く現れ、4~5日目には改善する傾向がある
症状は精神運動興奮、不安、不眠、悪心・嘔吐、自律神経過活動、けいれん、振戦せん妄などが出現する
※振戦せん妄:意識障害、幻覚、手指の振戦を伴う離脱症状
       幻覚の内容は小動物幻視(カーテンや布団などに虫がたくさんいるなど)が多い

・ウェルニッケ脳症について説明してください
ビタミンB1がアルコールの分解に使われることで欠乏して生じる
アルコール離脱症状である振戦せん妄にしばしば続発する
症状は意識障害、眼球運動障害、運動失調など
ウェルニッケ脳症の後にコルサコフ症候群が生じることが多い
※コルサコフ症候群:記銘力障害、見当識障害、作話、健忘を主症状とする神経障害

・アルコール依存症患者に対する看護において注意することについて説明してください
飲酒問題について患者自身が自己洞察できるよう支援・指導する
家族にもアルコール依存症への十分な知識を持ってもらうように促す
患者や家族にセルフヘルプグループへの参加を働きかける

〇薬物依存

・フラッシュバックについて説明してください
覚せい剤の使用を中止しても、飲酒や不眠をきっかけに、覚せい剤使用時と同じような精神病症状が生じること

統合失調症
〇統合失調症

・統合失調症について説明してください
思考や感情、行動などを統合する能力が長期間にわたって低下することで、特徴的な思考障害や行動障害を生じる疾患
症状としては、幻覚、妄想といった陽性症状と、感情鈍麻や社会的引きこもりといった陰性症状がある
幻覚では、幻聴が最もよくみられる
思春期・青年期に好発する
病因は不明だが、ドパミンの分泌異常が関与していると考えられている

・以下の言葉について説明してください
連合弛緩、アンビバレンス
連合弛緩:思考障害の1つで、ある考えと他の考えとの関連がつかなくなり、筋道を立てて考えることができなくなる状態
アンビバレンス:感情障害の1つで、同一の対象に対して相反する感情を同時に持ったり、相反する意思が同時に生じたりすること

・統合失調症の患者に対する看護で注意することについて説明してください
急性期
服薬が確実にできるように援助し、拒薬があった場合には患者の薬に対する思いを聞く
多飲による水中毒を発症しやすいため、日常な飲水行動の観察や、定期的な体重測定などによって早期発見に努める
興奮状態にある場合は刺激から遠ざけ、複数のスタッフで対応し、自傷・他害に注意する
慢性期
作業療法、レクリエーション療法への参加を促し、現実的な時間にふれ、活動性や生活技術を維持・習得できるよう援助する
退院に向けて
退院後の生活について本人、家族、医師、看護師、精神保健福祉士などと話し合いながら進めていく
必要に応じて相談支援や精神科デイケアなど活用できる社会資源の情報も提供していく
服薬を自己管理できるよう服薬アドヒアランスを高める支援を行う
精神訪問看護を導入することもある

気分(感情)障害
〇うつ病

・うつ病について説明してください
ほとんど毎日の抑うつ気分、興味・喜びの著しい減退などにより生活に何らかの支障を生じている状態が2週間以上続く場合にうつ病を疑う
病因としては遺伝、性格、ストレスなどが挙げられ、これらによってセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の脳内代謝異常が生じることが関連すると考えられている

・うつ病の症状について説明してください
抑うつ気分、興味・喜びの著しい減退、易疲労感または気力の減退、無価値観、過剰あるいは不適切な罪悪感
思考制止(思考の流れが遅くなったように感じられ、思うように考えが進まない状態)
日内変動がある(朝は症状が重く夕方に軽快する)
決断力の低下
病識の障害

・うつ病の治療について説明してください
薬物療法:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)、三環系抗うつ薬
精神療法:回復期・維持期の認知行動療法

・うつ病患者に対する看護で注意することについて説明してください
入院時にはアセスメントを行う(特に食事や水分摂取などの生命に関わる観察項目)
急性期のうつ病患者に対し、励ましは禁忌
患者がすでに長い間つらい気持ちに立ち向かってきたことに対して共感・受容し、自殺念慮が強化されないように注意する
回復期には自殺念慮の確認と自殺企図の予防を併せて行う

〇双極性障害(躁うつ病)

・躁状態で見られる症状について説明してください
観念奔逸:次々と考えが浮かんできて思考がまとまらない状態
誇大妄想:自分が万能であり、世界を動かしているかのように考える妄想
過活動

・双極性障害の治療について説明してください
気分安定剤(炭酸リチウム、バルプロ酸ナトリウム、カルバマゼピン、ラモトリギンなど)を投与する
※炭酸リチウムは血中リチウム濃度の治療域と中毒域が近いため、リチウム中毒に注意し、定期的な血中濃度のモニタリングが必要

神経症性障害・ストレス関連障害・身体表現性障害
〇強迫性障害

・強迫性障害の患者に対する看護で注意することについて説明してください
背景にある患者の抱える不安や葛藤をケアすることが強迫症状の軽減につながる

〇心的外傷後ストレス症候群(PTSD)

・心的外傷後ストレス症候群について説明してください
生死にかかわるような強い恐怖(心的外傷)を体験したあと、直後ではなく、通常3か月以内に発症することが多く、外傷の原因となった体験が何度でもよみがえる再体験(フラッシュバック)や過覚醒症状(不眠、いらいら、集中困難)がみられる

生理的障害・身体的要因に関連した行動症候群
〇神経性無食欲症(神経性やせ症)

・神経性無食欲症について説明してください
著しい低体重(BMIが17.0未満)、食行動の異常(不食、大食、隠れ食い)が見られ、肥満恐怖、やせ願望、ボディイメージの歪み(太っていると思い込む)を特徴とする
症状として無月経、うぶ毛増加、安静時徐脈、低血圧、低体温、低血糖、便秘、低血糖による浮腫、嘔吐や下痢、極端な食事の偏りによって低カリウム血症を起こすことがある

・神経性無食欲症の患者に対する看護で注意することについて説明してください
患者が自分の感情を表現できるように関わる
患者が表現した時には肯定的な評価を伝える

〇睡眠障害

・睡眠障害について説明してください
入眠困難:布団に入ってもなかなか寝付けない症状
中途覚醒:途夜中に何度も目が覚めてしまい、再び寝付くのが難しい症状
早朝覚醒:朝早く目覚めてしまい、そのあとも眠れない症状
熟眠困難:眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡感が得られない症状

・ナルコレプシーについて説明してください
睡眠発作(突然眠ってしまう)、情動脱力発作(びっくりしたり笑ったりしたときに力が抜ける)、入眠時幻覚、睡眠麻痺(金縛り)を四徴とする睡眠障害

成人の人格・行動の障害
〇境界性パーソナリティ障害

・境界性パーソナリティ障害について説明してください
人間関係や自己の感情が不安定で、リストカットや過量服薬などの衝動的な自傷行為や自殺企図を繰り返すのが特徴
患者のほとんどが10~20歳代の女性
自傷行為や自殺企図の背景には見捨てられ不安があり、救いを求めて行動を起こす
実際に自殺につながることもある

・境界性パーソナリティ障害に対する対応について説明してください
境界性パーソナリティ障害の患者は操作的であることが多く、看護者や他の患者を巻き込んで混乱させることも少なくないため、医療従事者が統一した対応をとることが重要
自傷行為などの感情の行動化(アクティングアウト)が見られた際には、看護者はその行動を責めずに、背景にある悩みや苦しみを聞く姿勢を持つことが大切だが、医療の枠組みでは許容できないような過度な要求に対しては「できない」としっかり伝えることも重要
患者の攻撃的な発現に対しては、患者の言い分を認めたうえで、現実的に対処する
患者の家族などにも疾患の特性を理解してもらい、患者に振り回されることなく長期的に対応していけるよう援助する

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