看護師国家試験 在宅看護論
在宅看護の主な概念
〇在宅看護総論
・在宅看護の原則について説明してください
療養者の自己決定を尊重すること
疾病の治療や予防、健康の保持や増進だけでなく、療養者とその家族の価値観や生活歴を重視し、個別的なケアを提供する
〇地域包括ケアシステム
・地域包括ケアシステム実現のための前提について説明してください
本人の選択を最も重視すること、またそのために在宅介護を選択することの意味を本人や家族が理解し、心構えを持つこと
・地域包括ケアシステム実現のために必要なことについて説明してください
自助:自分自身で自分を助けること
互助:インフォーマルな相互扶助のこと。ボランティアなどが該当する
共助:制度化された相互扶助のこと。年金、医療保険、介護保険、雇用保険などの社会保障制度が該当する
公助:自助、互助、共助で対応できない「困窮」などの問題に対応するための生活保障制度や社会保障制度による支援
・フォーマルサポートとインフォーマルサポートについて説明してください
フォーマルサポート:公的な法制度に基づくサポート
インフォーマルサポート:家族、友人、知人、近隣住民などから提供されるサポート
〇在宅における多職種連携
・多職種連携で重要なことについて説明してください
療養者の意思を尊重し、よりよいケアが提供できるようケアの目的を共有し、互いにほかの職種を尊重し、それぞれの責務を果たすこと
・多職種連携における訪問看護師の役割について説明してください
療養者の症状の変化をモニタリングし、療養者・家族のニーズなどを把握して、療養者に最適なケアを提供できるよう、常にケアマネジャーと連携する
〇継続看護
・療養の場が変わるときに看護師が確認しておくべき項目について説明してください
緊急時の対応について、本人(患者)や家族の希望を確認しておく必要がある
・地域連携クリニカルパスについて説明してください
医療機関から在宅まで継続した医療を提供できるよう診療計画を作成し、関係する全医療機関で共有して用いるもの
この導入により、各病気の医療機関相互の連携が強化され、退院後のリハビリテーション継続が期待できる
〇家族看護
・令和元年(2019年)の国民生活基礎調査で、要介護者などとの続柄別にみた主な介護者の構成割合のうち、「同居の家族」が占める割合について説明してください
54.4%
※続柄は配偶者が最も多い
・令和元年(2019年)の国民生活基礎調査で、老々介護の割合について説明してください
男:59.1% 女:58.7%
・令和元年(2019年)の国民生活基礎調査で、同居している介護者のストレスや悩みの原因で最も高いものについて説明してください
家族の病気や介護
訪問看護
〇訪問看護の制度
・介護保険法の基づき訪問看護ができる職種について説明してください
保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
・訪問看護を開始するにあたり必要な手続きについて説明してください
訪問看護事業者は、療養者またはその家族との間で契約書を取り交わす必要がある
・訪問看護利用者の傷病で多い順に説明してください
循環器系(脳血管疾患が最も多い)
心疾患
高血圧系疾患
・医療保険による訪問看護について説明してください
医療保険では、原則として訪問を週3日まで
「厚生労働大臣が定める疾病等」などの療養者や指定された医療処置・管理が必要なもの、症状の急激な増悪などで主治医より特別訪問看護師辞書が交付された場合、週4日以上の訪問が可能となる
※「厚生労働大臣が定める疾病等」
末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病、人工呼吸器を使用している状態
※介護保険では訪問回数に制限はない
〇訪問看護ステーション
・訪問看護ステーションを利用できるもの、開設できるもの、指定をするもの、管理者となることができるものについて説明してください
利用できるもの:訪問看護を必要とするすべての在宅療養者
開設できるもの:医療法人、社会福祉法人、医師会、看護協会、NPO法人、地方公共団体、民間企業)
指定をするもの:医療保険…地方厚生(支)局長
介護保険…都道府県知事、指定都市・中核市の市長
管理者となることができるもの:常勤の看護師または保健師
・訪問看護ステーションに必要なものについて説明してください
常勤換算で2.5名以上の看護職員
事業の運営を行うための事務室
・訪問看護ステーションの業務について説明してください
訪問看護指示書などで主治医の指示をうけ、訪問看護を提供する
個人情報は利用者本人からの請求があれば本人に対して開示される
在宅における医療管理
〇療養者の自立支援
・両立支援について説明してください
療養者が治療と仕事を両立するための支援
まずは療養者本人が職場の健康管理部門の窓口や関係者などに相談することを勧め、看護師はそれをもとに必要に応じて連携しながら協力する。
〇食事
・療養者やその家族が買い物に行くことができない場合、利用できるものについて説明してください
配食サービス、ホームヘルパー
〇排泄
・頻尿や尿失禁が見られる療養者に注意するべきことはなにか説明してください
尿意切迫感などから急いでトイレに行くため転倒のリスクが高いこと
〇療養環境
・車いすの療養者にとって適切な住宅環境について説明してください
畳よりも床
開き戸よりも引き戸
和式便器よりも洋式便器
段差は少ない方が良い
廊下を広くする
・自宅療養での安全管理について説明してください
療養者やその家族に対して緊急時の連絡方法を確認しておく
独居高齢者などでは、たばこの吸い殻やガスの消し忘れ等の火災の原因となるものを除去し、火災報知器などの火災予防対策をとる
・自宅療養での転倒防止のための適切な住宅環境について説明してください
段差のない敷居
左右開閉ドア
移乗用の手すり(握りしめると指先が届く程度の太さ)
浴室に滑り止めマット
廊下に物を置かない
全体照明に加えて足元照明(フットライト)などの部分証明でも調節を図る
(高齢者は暗順応が低下するため)
在宅での医療管理
〇在宅での薬物療法
・在宅での薬物療法について注意することについて説明してください
服薬忘れ防止:カレンダー型の薬ケース、家族による服薬の促し、空の薬袋確認
モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬は取り扱いに十分注意し、残ったものは医療機関に返却する
在宅医療処置で使用した穿刺針は専用容器または蓋つきびんに入れて医療機関や薬局などで医療廃棄物として処分する
〇在宅酸素療法(HOT)
・在宅酸素療法において、日常生活での移動、外出時に使用する機器について説明してください
日常生活での移動:延長チューブ、携帯用酸素ボンベ、携帯用液体酸素容器
外出時:呼吸同調器(デマンドバルブ)、携帯用酸素ボンベ
※携帯用酸素ボンベは停電時や災害時にも使用できる
・在宅酸素療法における注意点について説明してください
定期的に経皮的酸素飽和度(SpO2)を測定し、慢性呼吸不全の急性増悪の有無を判断する
酸素ボンベや液体酸素容器の残量は日々確認する
2m以内は火気厳禁であり、たばこ吸わないよう指導し、火を用いない電化製品の使用を検討してもらい、冬は静電気も起こらないようにする
入浴中や排泄中も酸素吸入を継続する
入浴時は体に負担がかからないよう、ややぬるめのお湯で、シャワーチェアを使用するなどの工夫が必要
〇在宅人工呼吸療法(HMV)
・「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正によって痰の吸引を実施することに関してどんなことが認められるようになったか説明してください
平成24年(2012年)4月から、登録事業者に登録している介護福祉士(平成27年度(2015年度)以降資格取得者)または研修を受けた介護スタッフなどが、医師の指示のもとで痰の吸引を実施することが認められるようになった
・在宅人工呼吸療法において、緊急時の備えについて説明してください
①緊急連絡先リストの作成
②外部バッテリー、非常用電源、予備の呼吸器回路の準備
③家族へのアンビューバッグを用いた呼吸補助方法の指導
④災害時個別支援計画の策定
・抜去した気管カニューレを再挿入してもよいか説明してください
再肺炎などの感染予防のため、挿入は行わない
〇在宅経腸栄養法(経鼻経管/胃瘻・腸瘻)
・胃瘻・腸瘻の場合、入浴してもよいか説明してください
入浴は可能
瘻孔部周囲の皮膚の状態を観察し、チューブの位置や固定されている状態を確認し、清潔保持に努める
・胃瘻・腸瘻のチューブを再挿入してもよいか説明してください
チューブが抜けたら主治医や訪問看護師に直ちに連絡するよう指導する
〇在宅中心静脈栄養法(HPN)
・在宅中心静脈栄養法での注意点について説明してください
穿刺針は適切な位置で固定する
抜去針は医療廃棄物として回収し、医療機関や訪問看護ステーションで廃棄する
患者や家族の生活状況に合わせて注入時刻を調整する
刺入部周囲に発赤や腫脹が認められる場合には感染の可能性があるため訪問看護師や医師に連絡するよう、療養者や家族に指導する
皮下埋め込み式ポートは穿刺針を外して入浴することが可能で、入浴時のドレッシング材の貼付や入浴後の消毒は不要
外出は可能だが、バッテリーを確認する
輸液の調剤は薬局の薬剤師に依頼できる
状態別看護
〇寝たきりの在宅療養者
・誤嚥性肺炎予防のために重要なことについて説明してください
口腔ケアや排痰ケアを家族に指導する
特に夜間にリスクが高まるため、就寝前のケアを欠かさないようにする
〇認知症の在宅療養者
・認知症高齢者の日常生活自立度判定基準について説明してください
Ⅰ:何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にはほぼ自立している
Ⅱ:日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少みられても、誰かが注意していれば自立できる
Ⅱa:家庭外で上記の状態が見られる
(たびたび道に迷う、買い物・事務・金銭管理などにミスが目立つ)
Ⅱb:家庭内でも上記の状態が見られる
(服薬管理ができない、電話や訪問者の応対など一人で留守番ができない)
Ⅲ:日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする(食事や排せつが上手にできない、徘徊、失禁)
Ⅲa:日中を中心として上記の状態が見られる
Ⅲb:夜間を中心として上記の状態が見られる
Ⅳ:日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁にみられ、常に介護を必要とする(食事や排せつが上手にできない、徘徊、失禁)
M:著しい精神症状や周辺症状あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする(せん妄、妄想、興奮、自傷・他害などの精神症状やそれに起因する問題行動が継続する)
・独居の場合に注意することについて説明してください
安全面から戸締り、たばこの吸い殻処理などを訪問時に確認することが必要な事もある
・家族への指導について説明してください
つじつまが合わない会話であっても無理に訂正しないよう指導する
安易に全面介助するのではなく、促し方を工夫し、できるところは療養者自身にしてもらうよう指導する
〇終末期の在宅療養者
・在宅における終末期ケアの条件について説明してください
①本人、家族が在宅での終末を臨んでいる
②家族の介護力があり、かかりつけ医の訪問診療や往診が可能
③地域の在宅支援の体勢が整備され、緊急時に適切な対応(24時間対応など)ができる
・在宅における終末期ケアで注意することについて説明してください
病名および予後の告知の有無とその内容、これからどのように療養したいかという意向を本人・家族に確認する
ケアマネジャーに今後予想される疾病の経過やADL低下などの情報を提供し、療養途中でサービスが必要になった際、円滑に導入することができる
本人が欲する場合は経口摂取を行うなど、患者の希望やQOLを尊重したケアを行えるようにする
長期間にわたり患者の症状の悪化や苦痛に直面し、死への悲嘆を感じている家族への支援も重要
動揺を最小限にするために、死に至るまでに療養者に起こりうる変化をあらかじめ家族に伝えておく
家族がケアに参加できるように、声掛けをしたり、環境を整えたりする
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