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看護師国家試験 母性看護学

母性看護の主な概念

〇母性看護学総論

・女性を中心としたケアについて説明してください
women-centered care (WCC)
女性の身体的・精神的・社会的な健康状態を高めることを目的とする概念で、女性の全人的な健康を達成するという視点を重視し、個別性の高いケアが提供されることが望ましい

〇家族計画


・避妊法の選択に当たって考慮するべき項目について説明してください
使用者にとって①確実で、②簡便で、③副作用がなく、④女性の意思だけで実施可能であるか

・避妊法を列挙し、それぞれの特徴について説明してください
コンドーム法
性感染症の予防ができるが、男性側の協力に依存した方法
適切に使用した際の避妊成功率は98%
子宮内避妊器具(IUD)
一度挿入すれば長期間有効であり、除去すれば再び妊孕性を回復することができるが、不正性器出血、疼痛を起こすことがある
経口避妊薬(ピル)
女性主体で避妊ができ、正確に服用できれば避妊効果は確実である
短所として、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある
また、血栓症などのリスクを伴う場合がある
月経前症候群(PMS)の軽減、月経周期の調節や、月経随伴症状の改善といった副効用もある
性感染症の予防効果はない
※月経前症候群:月経がはじまる3~10日前の黄体期に、精神症状(いらいら、抑うつ)、身体症状(下腹部膨満感、のぼせ、下腹部痛、頭痛、腰痛、乳房痛など)が繰り返し現れるが、月経の始まりと共に症状は減弱あるいは消失する。
基礎体温法
薬剤を使わないことが長所であるが、月経周期が一定であることを前提としているほか、排卵日の正確な予測は不可能なので、避妊効果は劣る

〇セクシュアリティー/ジェンダー


・セクシュアリティーについて説明してください
生物学的な性(セックス)と社会・文化的な性(ジェンダー)を含む概念

・セクシュアリティの意義について説明してください
性別としての性:生物学的に男性・女性を区別する性(セックス)
生殖性としての性:種の保存と繁栄のための性
性衝動・快楽性としての性:生殖と無関係に快楽のために行われる性
親密性・連帯性としての性:愛を得てそれを維持するための性
性役割としての性:社会的な役割規定を示す性(ジェンダー)

・性同一性障害について説明してください
生物学的な性(セックス)と性の自己認識とが一致せず、自己の生物学的な性に対して、不快感や違和感を持つこと
出現時期には個人差がある
身体的治療として、ホルモン療法、性別適合手術、乳房切除術が挙げられている
性的嗜好(恋愛対象が異性か同性か)は関係ない

妊娠/母体・胎児


〇生殖細胞

・配偶子の形成と受精について説明してください
配偶子(男性は精子、女性は卵子)が形成される過程で、染色体数の半減(減数分裂)が起こるため、精子と卵子はそれぞれ半数ずつの染色体(22本の常染色体と1本の性染色体(精子はXかY、卵子はX))をもつ
精子と卵子の受精により、染色体は46本になる。性染色体は対をつくり、XYとなると男性に、XXとなると女性になる

〇妊娠の成立


・妊娠の成立の機序について説明してください
一次卵母細胞を含む原始卵胞は卵胞刺激ホルモンの作用で発育卵胞を経て成熟したグラーフ卵胞となり、グラーフ卵胞から卵子が排出される
卵巣から腹腔に排出された卵子は卵管采に捕らえられ卵管膨大部に進む
卵管膨大部で精子と卵子が受精し、受精卵となり、分裂を繰り返しながら卵管内を通過する
胚盤胞の状態で子宮体部内の子宮内膜に接着し埋没する(着床する)ことで、妊娠が成立する
着床は受精後6~7日ごろから始まり、受精後12日ごろに完了する

〇妊娠期間


・正期産の定義について説明してください
37週0日から41週6日
分娩予定日は40週0日(280日)

〇妊娠に伴う母体の変化


・妊娠に伴う母体の変化について説明してください
血漿量の増加(妊娠32週ごろ最大)が血球数の増加を上回るため、循環血流量が増加するが、ヘマトクリット(Ht)やヘモグロビン(Hb)は見かけ上減少する
循環血液量は増加するが、プロゲステロンの影響で血管平滑筋が弛緩し、血管が拡張する(末梢血管抵抗が減少し、血液が流れやすくなる)ため、拡張期血圧は軽度低下する
胎児へブドウ糖を供給するため、胎盤からインスリンの働きを抑制するホルモンの分泌が増加することによりインスリン抵抗性を引き起こし、血糖値が上昇しやすく、妊娠性糖尿病となりやすい
妊娠中期~末期における推奨体重増加量は、0.3~0.5kg/週である
子宮の増大による膀胱圧迫や循環血漿量増加に伴う尿量増加により、妊娠初期と妊娠後期に頻尿が起こりやすくなるが、分娩後には軽減する場合が多い
妊娠初期からプロゲステロンによって腸管の運動が抑制されることや、妊娠末期に子宮増大によって消化管が圧迫されることで便秘になりやすい
妊娠に伴う便秘、増大した子宮による静脈の圧迫と骨盤内のうっ血、出産時の努責などにより、妊娠末期や産褥期に痔を生じやすい
エストロゲンなどのホルモンの影響で、妊娠初期から帯下(おりもの)が増加する
妊娠に伴い、ホルモンの変化や皮膚の乾燥により、腹部や腰部周囲、全身に掻痒感が生じる(妊娠中期~末期に生じやすい)

〇妊娠に関するホルモン

・妊娠経過に伴うホルモンの分泌量の変化について説明してください
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は受精痰の着床と同時に分泌が開始され、妊娠10週で最高となり、以後は減少していく
hCGの作用により黄体は妊娠黄体となり、エストロゲンとプロゲステロンを分泌する。妊娠10週ごろからはエストロゲンとプロゲステロンは胎盤で産生されるようになり、妊娠末期に最も多く分泌される

・プロラクチンとオキシトシンについて説明してください
プロラクチンは下垂体前葉から分泌され、乳腺の発育、乳汁の産生・分泌の作用を持つ
オキシトシンは下垂体後葉から分泌され、授乳による吸啜刺激により分泌が亢進し、子宮筋に対して強い収縮作用、射乳を起こす作用を持つ

〇胎児とその付属物


・胎芽、胎児について説明してください
妊娠8週未満の胎児を胎芽
妊娠8週以降を胎児という

・胎盤の形成と発育、完成の時期について説明してください
胎盤の形成は妊娠7週ごろから始まり、妊娠14~16週ごろまでに原型が完成する

・胎児付属物について説明してください
卵膜、胎盤、羊水、臍帯

・胎児の呼吸について説明してください
妊娠10~12週から胎児の呼吸様運動が出現する
妊娠34週には肺胞内に十分な肺表面活性物質(肺サーファクタント)が分泌され、肺の機能が完成する
※肺は胎児の臓器のうち、最後に成熟する

〇胎位・胎向・胎勢


・頭位、骨盤位、横位、第1胎向、第2胎向、屈位、反屈位について説明してください
頭位:子宮の下方に児の頭がある場合(正常)
骨盤位:児の骨盤が下方にある場合(胎位異常)
横位:胎児の縦軸と母体(子宮)の縦軸が交差する(胎位異常)
第1胎向:縦位では児背、横位では児頭が母体左側に向かうもの
第2胎向:縦位では児背、横位では児頭が母体右側に向かうもの
屈位:後頭位 下顎が胸壁に接し、脊柱が軽く前彎している
反屈位:下顎が上がっている

妊娠中の検査


〇超音波検査

・超音波ドプラ法について説明してください
妊娠9~12週頃には、ドプラ法を用いて腹壁から胎児心音を聴取できる
胎児心拍数の基準値は110~160回/分
※超音波断層法によって妊娠5週には胎嚢(GS)が確認でき、妊娠6週には胎児(胎芽)心拍が確認できる

〇胎児心拍数モニタリング


・NSTについて概要、胎児が正常であることの判定条件、検査中の看護について説明してください
NST(Non Stress Test)
陣痛(子宮収縮)などのストレスがない状態で分娩監視装置を用いて妊婦に行う検査
胎児の状態が正常であると判定するには、①胎児心拍数基線が110~160bpmの正常範囲内、②基線細変動が正常、③一過性頻脈がある、④一過性徐脈がないの4条件が挙げられる
検査中、仰臥位低血圧症候群を予防するため、妊婦はセミファウラー位にしておく
妊婦は頻尿になりやすいため、実施前に排尿を済ませるよう勧める

〇出生前診断


・出生前診断での診断、検査法、注意事項について説明してください
診断:胎児の遺伝疾患、染色体異常、奇形などの有無
検査法:絨毛検査、羊水検査、母体血胎児染色体検査(NIPT)、母体血清マーカー検査、胎児臍帯血検査、超音波検査
注意事項:検査前および検査後の十分な説明やカウンセリング、本人や家族の意思確認

・羊水検査の概要とリスクについて説明してください
概要:羊水穿刺により揚水中に浮遊する胎児細胞を分析し、染色体の数や構造の異常などを診断する検査 妊娠15週以降に行う
リスク:破水、胎児感染、流産・早産

妊婦の看護と保健指導

〇妊娠に伴う母親と家族の心理的変化

・ルービン.Rによる母親役割獲得過程の各段階と特徴について説明してください
①模倣
  先輩母親や専門家を手本とする
②予行練習(ロールプレイ)
  ほかの人の赤ちゃんを抱っこしてみるなどして、母親役割を演じる
③空想(ファンタジー)
  出産を飛び越えて、大きくなった子供の姿を夢見る
④役割検討
  自分自身のよい母親役割への期待を確立し、それをどのくらい自分の考えに合うかで取捨選択する
⑤悲嘆
  今までの人生を見直し、過去の自己概念を喪失したものとして悲しみ諦める

〇妊婦の保健指導


・妊婦健康診査の受診の目安について説明してください
妊娠初期~妊娠23週:4週間に1回
妊娠24~35週:2週間に1回
妊娠36週以降:1週間に1回

・妊娠期のマイナートラブルを列挙し、それらの対処法について説明してください
便秘:適度な運動、食物繊維の摂取、水分摂取
つわり:少量づつ頻回の食事(補食)・水分摂取、輸液療法(ビタミンB1)、不安・ストレスの除去
下肢けいれん:カルシウムおよびビタミンB群の摂取、適度な下肢の運動、マッサージ
腰背部痛:正しい姿勢を保つ、腰背部のマッサージ・温罨法、腹帯の着用
下肢静脈瘤・浮腫:マッサージ、入浴、体操、弾性ストッキングの着用、睡眠・休憩時の下肢挙上

〇妊婦の栄養指導


・妊婦に対する栄養指導について推定エネルギー必要量、蛋白質、葉酸、食塩について説明してください
推定エネルギー必要量
妊娠初期:非妊娠時+50kcal、妊娠中期:非妊娠時+250kcal、
妊娠後期:非妊娠時+450kcal、授乳期:非妊娠時+350kcal
蛋白質
妊娠中期:非妊娠時+5g、妊娠後期:非妊娠時+25g、授乳期:非妊娠時20g
葉酸
妊娠計画時、妊娠後期は保健機能食品やサプリメントなどで付加的に0.4mg/日の葉酸を摂取する(1.0mg/日以上摂取しないよう指導する)
葉酸が不足すると二分脊椎などの神経管閉鎖障害のリスクがあるため
食塩
非妊娠時と変わらず6.5g/日未満にするよう指導する

〇妊娠と薬剤


・妊婦に対して投与が禁忌である薬剤を説明してください
生ワクチン(麻疹、風疹、流行性耳下腺炎)
経口血糖降下薬、テトラサイクリン系抗菌薬

〇妊娠と感染


・母乳が主な感染経路となる病原体はなにか説明してください
成人T細胞白血病ウイルスⅠ型(HTLV-1)

・先天性風疹症候群について説明してください
妊娠20週ごろまでに母体が風疹に感染し、風疹ウイルスが経胎盤感染することにより、白内障のほか、難聴、心奇形などを生じる先天性風疹症候群(CRS)となることがある
先天性風疹症候群予防のため、妊娠希望の女性と同居の家族は風疹ワクチンを接種することが望ましい

妊娠の異常


〇妊娠高血圧症候群(HDP)


・妊娠高血圧症候群の病態、定義、危険因子、胎児への影響について説明してください
病態:血管攣縮と臓器の血流不全による高血圧
定義:妊娠高血圧、妊娠高血圧腎症、加重型妊娠高血圧腎症、高血圧合併妊娠に分類される
危険因子:高年齢、肥満、多胎妊娠、初産婦、高齢妊婦、糖尿病
胎児への影響:胎盤形成不全から子宮胎盤循環障害、胎盤機能不全を起こし、胎児の低栄養、低酸素血症を招き、胎児発育不全(FGR)を引き起こしやすい

〇常位胎盤早期剝離


・常位胎盤早期剝離の病態、危険因子について説明してください
病態:妊娠末期や分娩経過中に正常位置にある胎盤が、胎児の娩出前に子宮壁から剝離してしまう状態
危険因子:妊娠高血圧症候群(HDP)、外傷、胎児奇形、上位胎盤早期剝離の既往、絨毛膜羊膜炎、前期破水、子宮筋腫

〇前置胎盤


・前置胎盤の病態について説明してください
病態:受精卵が正常の着床部位(子宮体部)よりも下部の子宮壁に着床し、胎盤が内子宮口の全部または一部を覆う状態

・前置胎盤と常位胎盤早期剝離の違いについて説明してください
出血
前置胎盤:外出血(警告出血)が主(鮮紅色で中等量~多量)
     陣痛発作時に増量
常位胎盤早期剝離:内出血が主(暗赤色で少量~中量)
         陣痛間欠時に増量
子宮
前置胎盤:著名な変化なし
     無痛性
常位胎盤早期剝離:子宮底上昇、過度に増大
         子宮の緊満・硬化、強直性陣痛、圧痛著明、腹痛(++)
胎児
前置胎盤:良好~胎児機能不全
常位胎盤早期剝離:胎児機能不全~胎児死亡

〇多胎妊娠


・多胎妊娠の合併症について説明してください
母体側
 妊娠高血圧症候群、母体貧血、羊水過多症、流産・早産、微弱神通、弛緩出血
胎児側
 双胎間輸血症候群、胎位異常、胎児発育不全(FGR)、双胎一児死亡、胎児奇形

〇早産


・早産の定義、病態、原因因子、検査、治療について説明してください
定義:妊娠22週以上37週未満の分娩
病態:子宮収縮、性器出血、子宮口開大、子宮頚管の展退などを伴い、早産に至る可能性が高い状態
原因因子:前期破水、子宮内感染(絨毛膜羊膜炎)、多胎妊娠、羊水過多、絨毛膜下血腫、経管無力症など
検査:NSTによって子宮収縮と胎児心拍数の観察
治療:安静療法、子宮収縮抑制薬(リトドリン塩酸塩、硫酸マグネシウム)、炎症を抑える抗菌薬の投与

〇前期破水(PROM)/早期破水


・前期破水の定義と看護について説明してください
定義
前期破水:分娩開始前の破水
(適時破水:子宮口全開大時の破水)
(早期破水:分娩開始以後子宮口全開大以前の破水)
看護
3~4時間ごとに外陰部のパッドを交換し、清潔を保つ
産婦の体温、脈拍数などによる子宮内感染の早期発見と、胎児の心拍数・胎動などの観察

正常分娩


〇分娩経過

・正常な分娩の経過について説明してください
分娩の前兆
 不規則な陣痛(前駆陣痛)、産徴(おしるし)などがみられるようになる
分娩第1期(開口期):分娩開始~子宮口全開大(10cm)
 1時間に6回以上あるいは陣痛周期が10分以内の規則的な陣痛
 第1回旋:胎児は顎を引いて胸につけた屈位をとる(胎勢回旋)
 第2回旋:左右どちらかを向いていた児背が母体の前方(腹部側)を向く(胎向回旋)
分娩第2期(娩出期):子宮口全開大~胎児娩出
 排臨:児の頭の先進部が陰裂間に見え隠れする
 発露:陣痛の間欠時にも先進部が中へ引っ込まず、常に見えている状態
 第3回旋:胎児は顔を母体の背側に向ける(胎勢回旋)
 第4回旋:肩甲の娩出のため、胎児の肩甲を径が長い骨盤の縦径に一致させるために左右どちらかを向く(胎向回旋)
分娩第3期(後産期):胎児娩出~胎盤娩出
分娩第4期:胎盤娩出後2時間まで
各期も、トータルの分娩も初産婦よりも経産婦のほうが所要時間が短い
所用時間が短い順に第3期、第2期、第1期

・分娩の三要素について説明してください
娩出物、産道、娩出力

〇分娩第1期


・分娩第1期の看護師の対応について説明してください
陣痛間欠時には睡眠をとるなど、リラックスして疲労を回復できるよう支援する
分娩中の低血糖や脱水は順調な分娩の進行を妨げる可能性があるため分娩中や陣痛が強くなる前にエネルギー源になりやすく、消化の良いものを少しずつ摂るのがよい
分娩第1期の努責は、経管裂傷、経管浮腫、早期破水、胎児へのストレスの原因となるため、勧めるべきではない
膀胱の充満は胎児の下降を妨げる原因となるため、2~3時間ごとの排尿誘導を行う
破水後は感染や臍帯脱出に留意し、胎児心拍数の変化や羊水の正常(混濁度)・流出量、褥婦のバイタルサインなどを経時的に観察する
感染防止のため入浴やシャワー浴を避ける

産科処置・手術


〇帝王切開

・帝王切開の定義、術前術後の看護について説明してください
定義
経腟での分娩が困難な場合に母体を開腹し、胎児娩出をするもの
看護
深部静脈血栓症のため、術前からの弾性ストッキング着用を推奨する
良好な母子関係の構築などの為に、手術室で出生時と対面させることが望ましい
術後は深部静脈血栓症の予防のためにベッド上での下肢の運動や早期からの飲水、早期離床、早期歩行が推奨される
深部静脈血栓症の早期発見のためには、下肢の疼痛、発赤、浮腫に注意する

産褥の生理


〇産褥の経過、乳汁分泌


・産褥の定義、所見、看護について説明してください
定義
分娩後、母体の状態が妊娠以前の状態に戻るまでの期間(産後6~8週)
所見
子宮底の高さは分娩直後:臍下2~3横指、分娩12時間後:臍高、産褥2~3日:臍下2~3指となる
子宮底長は排尿後、仰臥位で、膝を進展させて、恥骨結合上縁から子宮底の最も高い部分までをメジャーで測定する
産褥2~3日まで後陣痛(子宮復古を促すための不規則な子宮収縮)がみられる
痛みが強い場合は鎮痛薬の使用を医師に相談する
悪露(子宮腔内や参道から排出される産褥期の性器分泌物)がみられる
分娩直後~産褥3日:赤色(血性)悪露
産褥3日~1,2週間:褐色悪露
3~6週まで:黄色悪露から白色悪露に移行
初産婦では産褥2~3日頃、経産婦では産褥1~2日頃から乳汁分泌が促進され、乳房の緊満感が出現する
乳房の緊満感は、乳房への血流増加や乳腺内圧の上昇、リンパのうっ滞から浮腫が生じることによって起こる。両側性に起き、腫脹、熱感、痛みは乳房全体に生じる
直接授乳による乳頭への刺激は、オキシトシンの分泌を高め子宮収縮を促す
看護
分娩後数日間は疲労感と不安感が強いため、まずは身体の疲労回復を促して母親外耳くじに意欲を持てるよう支援する
産褥期に会陰切開部の疼痛がみられても、発熱や創部の感染などの異常がなければ正常な創傷治癒過程と判断する
残用による尿路感染予防と子宮収縮促進のため、3~4時間ごとの排尿を促す
自力で排尿が困難なら導尿を行う
バースレビュー(記憶が新しいうちに分娩体験の振り返る)を勧める

産褥の看護


〇母乳栄養/授乳


・母乳栄養の利点と決定について説明してください
利点
免疫が児に移行する、適温で消化・吸収しやすい、母子相互作用が働く、アレルギーを起こしにくい、経済的である
欠点
ビタミンKが不足しやすい、生理的黄疸の期間が延長する傾向がある、垂直感染・薬物移行の危険性がある

・初乳と成乳の定義と特徴について説明してください
定義
初乳:産後3~5日の母乳
   免疫物質(IgA、リゾチーム、ラクトフェリン等)が多い
   ミネラル(カルシウムやリン)が多い
   タンパク質が多い
   黄色~淡黄色、半透明、粘稠性
成乳:産褥10日以降の母乳
   エネルギー量が多い
   脂肪が多い
   乳頭が多い
   白色、不透明、水様性

・母乳栄養の看護/指導について説明してください
児がうまく据えていない場合はポジショニング(授乳姿勢)やラッチオン(児が乳首をとらえて吸い付くこと)の指導によって改善することがある
乳頭部の進展が不十分な場合、乳頭や乳輪のマッサージを行うことで乳頭が軟らかくなり、児が吸啜しやすくなる
児が欲しがるときは、いつでも授乳してよい

産褥の異常


〇マタニティブルース/産後うつ病


産後の精神障害について、それぞれの発症時期と症状・対応について説明してください
マタニティブルース
発症時期:産後3~10日
症状・対応:涙もろさ、不安感、疲労感、易怒性、不眠など
      精神安定にはパートナーや家族の協力が不可欠
      退院後の育児に不安を訴える場合、早めに新生児訪問を受けられるよう調整をしたり、市町村保健師などに情報提供を行ったりする
産後うつ病
発症時期:産後2~3週間以降
症状・対応:抑うつ気分、気力の減退、不眠、無価値観、罪悪感など
      抑うつ薬服用などの治療が必要

新生児の観察・検査・看護


〇新生児の観察

・新生児の観察について説明してください
出生後、1分と5分でアプガースコアにより観察し、評価する
アプガースコア
皮膚色
0点:チアノーゼ、蒼白 1点:体幹ピンク、手掌・足底はチアノーゼ 2点:全身ピンク
心拍数
0点:なし 1点:<100回/分 2点:≧100回/分
刺激に対する反応
0点:なし 1点:顔をしかめる 2点:咳・くしゃみ
筋緊張
0点:四肢弛緩 1点:やや屈曲 2点:活発に動かす
呼吸
0点:なし 1点:緩徐(不規則) 2点:強く泣く

〇新生児の検査


・新生児マススクリーニングについて説明してください
生後早期に診断・治療を行うことにより重大な障害を防ぐことができる先天性疾患について、すべての新生児を対象にスクリーニングする公的事業
タンデムマス法は、生後4~6日頃に、踵を穿刺して少量の血液を濾紙にしみこませ、先天性代謝異常症をスクリーニングする

・新生児聴覚スクリーニングについて説明してください
聴覚障害の早期発見、早期援助を目的として、精密検査の必要性を判定する検査
検査は自然睡眠下あるいは安静時に実施する恐れがあるため、児が泣いていないときに行う
空腹時に行うと泣き出してしまう恐れがあるため、授乳後などの熟睡した状態で実施することが望ましい

〇新生児の看護


・新生児室の適切な環境について説明してください
室温:24~26度
湿度:50~60%
転落防止のため、移動時はコットを利用し、コット同士の間隔は60cmよりも広くとる

・新生児の看護で気を付けることについて説明してください
蒸散による体温低下防止のため、出生直後は直ちに温かく乾いたタオルで全身を拭き、保湿する
新生児の呼吸は腹式呼吸であるため、腹部を締め付けないようにおむつを当てる
産道感染による新生児結膜炎予防のため、正常新生児の出生直後(1時間前後)に抗菌薬の点眼を行う
胎脂には皮膚保護作用、体温低下防止作用があるため、無理に除去する必要はない
体位は側臥位または仰臥位とする。授乳後は吐乳、溢乳による誤嚥を防ぐため、顔を横に向けると良い。
児の取り違え防止のため、児にも母親にも標識(名札など)をつけ、母親に児を引き渡すときは必ず防止の標識を確認する

新生児の生理・反射


〇新生児の生理

・小泉門、大泉門の閉鎖時期について説明してください
小泉門:2~3か月で閉鎖
大泉門:約1年半で閉鎖
大泉門の閉鎖遅延がみられる場合は水頭症、くる病、ダウン症候群などを疑う
早期閉鎖がみられる場合は小頭症などを疑う

・新生児の排尿、排便について説明してください
排尿
初回排尿は生後24時間以内に認められ、生後7日ごろには10回前後/日となる
排便
生後1~2日頃に胎便の排泄がみられる。胎便は羊水、腸管分泌物、胆汁色素などを吹くmい、暗緑色、無臭である
生後3~4日頃より胎便と乳汁摂取後の便が混在した移行便となり、生後1カ月では淡黄色~卵黄色となる
※母体のホルモンの影響により、正常でも乳房腫脹や乳汁分泌、女児においては性器出血(新生児月経)がみられることがある

・新生児の姿勢について説明してください
両手をWの形に曲げ、両足をMの形に曲げた姿勢をとる

〇新生児・乳児の反射


・新生児・乳児の反射の種類、出現・消失時期について説明してください
原始反射
手掌把握反射
出現:出生時 消失:3~4カ月 掌を指で押すと指を握りしめようとする反射
モロー反射
出現:出生時 消失:3~4カ月 仰臥位で頭部を持ち上げ、急に支えを取ったときに抱き着くような運動をする反射
探索(ルーティング)反射
出現:出生時 消失:4~6カ月 口唇や頬に指で軽く触れると口でとらえようとする反射
吸啜反射
出現:出生時 消失:4~6カ月 口の中に指を入れると口でとらえようとする反射
非対称性緊張性頸反射
出現:出生時 消失:4~6カ月 仰臥位のこの頭を側方に向かせると、顔の向いているほうの上下肢を進展し、反対側の上下肢を屈曲する反射
足底把握反射
出現:出生時 消失:9~10カ月 足底を指で押すと全趾を底屈する反射
バビンスキー反射
出現:出生時 消失:1~2歳 足底部を先端がとがったものでかかとからつま先方向にこする、母趾の背屈、趾の開扇をする反射
姿勢反射
ランド―反射
出現:3~6か月 消失:2歳 腹臥位で水平に抱いた児の頭を挙上させると、体幹と下肢を伸展する姿勢反射
パラシュート反射
出現:7~9カ月 消失:生涯続く 腹臥位で赤ちゃんの両脇を支えて抱き上げ、頭から落下させるようにすると、両腕を前方へ伸ばして身体を支えようとする動作

新生児の主要徴候・疾患


〇低出生体重児

・低出生体重児の基準と症状について説明してください
基準
出生体重が2500g未満の児
症状
体温が変動しやすいため、環境温度に左右されやすく、低体温に陥りやすい

〇新生児黄疸


・新生児黄疸の機序について説明してください
肝臓でのビリルビン排泄に必要なグルクロン酸抱合能が未熟であること、ビリルビン産生の亢進、腸肝循環の亢進などによって起こり、出生後3~5日に強くなり、2週間以内に消失する。ピーク時の血清ビリルビン値は12~14mg/dlである

〇新生児ビタミンK欠乏性出血症


・新生児ビタミンK欠乏性出血症について定義と予防法について説明してください
定義
ビタミンKの欠乏により、消化管出血(メレナ)や頭蓋内出血をきたす出血性疾患
予防法
生後早期(哺乳確立後)、生後1周または産科退院時、1か月健康診査時の3回に渡って
ビタミンK2シロップを内服させる

〇新生児にみられる皮疹・母斑


・蒙古斑について説明してください
日本人の90%以上でみられる青色の真皮メラノサイト系母斑、腰殿部や仙骨部に好発する


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