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記憶の糸
化粧をしたまま寝てしまい、夜中の3時半ごろ目が覚めた。
ぼんやりする頭で、お腹がすいたと鳴く愛猫に夜食のドライフードをあげていた。ぽりぽりとおいしそうに食べる。
そのとき、フッと曖昧だが馴染みのある感情がわいてきた。
(あれ、この感じなんだろう)
つるつるつるつると、糸を手繰り寄せるように源をたどっていくと幼い頃の記憶にたどり着いた。
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父は、機嫌が悪いと家族に手をあげる人だった。
興奮して瞳孔がひらいた真っ黒な目、野獣のようなどなり声、父の部屋で家族が暴力を振るわれる音。
身をこわばらせて布団にもぐり、じっと聞き耳を立てる。
父は子どもにも手をあげた。何をされるかわからない。強い恐怖感が身体の芯にしみ込んだ。
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当時の記憶をこんなに鮮明にたどれたのは初めてだった。
夜中に目が覚めて、まだ夢うつつだったからかもしれない。
心の奥底にオリのように溜まっていた記憶がふわりと上がってきた。
それに呼応して、涙がぽろぽろぽろぽろと、零れ落ちた。
あの頃、泣けなかった私が今やっと泣けた。涙があふれるのにしたがって、身体の中がゆるんでいった。
最近、自分の行動の背景に恐怖感が潜んでいることに気がついていた。
「怒られるから、こうしておこう」「怖いから、言わないでおこう」。
染みついた恐怖感が、日々の行動の後ろで糸を引いていたんだな。
獣のような父はもういない。私はもう大人になった。
トラウマのような感情は、気がつくことで手放せると聞いたことがある。
そういう時期がきたのかもしれない。
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まずこれを書かないと、これからnoteを始められない気がして書きました。
読んでくださってありがとうございます!
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