《詩》｢伊代先生が待機しました｣
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｢伊代先生が待機しました｣
夜9時4分
ヴェルニッシュからメールが届いた
伊代先生は霊視ができるという占い師で
ヴェルニッシュは電話占いの会社である
鑑定料は占い師によって違うが
伊代先生の場合1分230円
繁華街のビル内にある｢魔女の館｣で対面で占って貰えば
占い師によって若干違うが
30分3000円という鑑定料が相場だろう
電話占いだと30分6900円
ちなみに
弁護士さんに相談すると30分5400円
メンタルクリニック併設のカウンセリングルームで
カウンセリングを受けると40分5400円
もし電話占いを40分したら9200円である
弁護士の相談料もカウンセリング料も
随分お高いと思うのだが
電話占いの鑑定料は異常に高い価格設定になっている
はっきり言うが
電話占いは阿漕な商売である
その世界に行ってみると
それこそ吐きそうなくらいの数の占い師たちが
屋台の軒先を並べてお客を待っている
そして
私みたいな迷い人がそこそこのお金を持って
分からないままに選んだ一軒の屋台を訪ねるのである
1.遥音先生編(1分230円)
私は
十年ぶりに電話占いをやった
電話占いはやり尽くしたので
愚かな遊びである事は承知している
私は魔が差したのだ
心が荒んでいる時に
｢いちばん残酷なグリム童話｣を買ってしまう
あの時と同じように魔が差した
一回目に鑑定して頂いたのは
霊視ができるという遥音(はのん)先生
初回は五千円引きだった
二回目も遥音先生に鑑定して頂いた
弟の現状が心配で霊視をお願いした
遥音先生はこうおっしゃった
｢弟さんは大丈夫､全然心配ないですよ｣
この日は
弟の愛猫ブラックが亡くなる2日前だった
弟はブラックの様子が変なので
心が激しく乱れていたのだ
その事実を私は後で知った
遥音先生が視えてないと分かった
はっきり言うが
電話占いは阿漕な商売である
2.伊代先生編(1分230円)
三回目に鑑定して頂いたのが
霊視ができるという伊代先生である
2017年の初夏から年末まで
私は母を市立の介護老人保健施設へ預けた
そこで
母は医師から二つの虐待を受けた
医師の行った虐待は
地域包括支援センターが挙げている身体的虐待のうちの
①薬を過剰に投与する
②必要な医療を受けさせない
この二つの定義に当てはまった
①は33日間行われ
②は半年と8日間行われた
私が医師から聞いた言葉は
｢薬の量を減らそうと考えています｣
｢副作用が出ない人もいますから｣
この二つだけだ
医師は
猫背･歩行障害･筋肉のこわばりなどの副作用が出ている事を認識しながら
劇薬指定の薬を
無抵抗な母に飲ませ続けた
さらに
5年間母が飲み続けて来た認知症の薬を突然切って
認知症の治療を放棄した
何故医師が
こんな残酷な事を母にしたのか
私には分からなかった
当人には聞けないので
伊代先生に霊視して頂いた
伊代先生は
小声でゆっくりと喋る方だった
無気味だった
伊代先生はずばりと言っては下さらず
真相はこうなのだと
小出しにして私に教えて下さった
以下に
伊代先生がおっしゃった事を書く
この人はおかしい
考え方が普通ではない
他にも被害者がいる
この人はたくさんの人に恨まれている
あなたのお母さんの認知症の薬を止めたのは
自然に呆けさせる為
そうした方がいいとこの人は考えている
薬が無くなった事を家族に知らせたら
家族が病院へ行かせるから知らせなかった
精神病の薬で副作用が出ても止めなかったのは
早く楽にしてあげようと考えてそうした
この人は
あなたのお母さんを天国へ………
話はここで切れた
鑑定料が一万円に達したら
自動的に終了になるのだ
※この一万円には
遥音先生の二回目の鑑定料が含まれている
私は戦慄した
覗いてはいけないものを
覗いてしまった事に気づいた
精算しても
私は伊代先生に再鑑定をして頂かなかった
これ以上あの医師の闇を知りたくなかった
もしこれが真実なら
殺人未遂ではないか
でも
伊代先生が警察へ行って証言して下さる訳もなく
そもそも警察は伊代先生の霊視を証拠として扱ってはくれないだろう
私は怖い話を聞かされただけだった………
｢伊代先生が待機しました｣
深夜1時16分
ヴェルニッシュからメールが届いた
｢ご利用ありがとうございます
お気に入り登録いただきました伊代先生が
只今、ご待機されましたのでお知らせいたします｣
私は伊代先生を
お気に入り登録から削除した
これで連日届いていたメールは
もう来ないだろう
さっさと退会すればいいのだが
ヴェルニッシュのサイトへのログインの仕方が分からなくて
手続きができなかった
はっきり言うが
電話占いは阿漕な商売である
今後利用する気はさらさら無い
by Yumi Fuma
(18.03.20)
※決定稿作成/20.12.08