記録的大停電の中、キラキラした絵を描いた話。
ここ数ヶ月、
私は一つの大きな作品を作っておりました。
札幌市で一番大きなクリスマスの祭典
「札幌ホワイトイルミネーション」内で開催される
「ミュンヘンクリスマス市」のメインビジュアルです。
このお話をいただいたのは
まだまだ茹だるような暑さが続く夏の日でした。
でも数ヶ月後の寒い寒い日に
自分のイラストが街の彩りに加わることを想像するだけで
ちょっと泣けてきました。
札幌で絵を学び、描いてきた自分にとって
これほどに光栄なことはありません。
毎年、クリスマスが来ます。
毎年、北海道にはその時期雪が降ります。
毎年、街はイルミネーションでキラキラします。
毎年、年末はいつもよりちょっと笑顔です。
そんな毎年来る「当たり前」のクリスマスを
美しく丁寧に描いていければなぁ。と思いながら
毎日少しづつ色を重ねていきました。
ほぼ完成まで進めたある日。
本当にある日、としか言えないような日、
「当たり前」だった街の光は全て奪われました。
平成30年9月6日午前3時7分。
北海道胆振東部地震。
信号も、コンビニも、学校も、駅も
全部真っ暗になってしまいました。
街に流れていた音楽もパッタリと聴こえなくなり
人々は皆不安そうな表情を浮かべています。
比較的電気の復旧が早かった私の住む地域。
でもしばらく絵を描く気にはなれませんでした。
担当者さんとは連絡が取れない。
連日メディアで繰り返される節電要請。
まだ電気復旧していない地域。
この状況でのイルミネーションというイベント。
そもそも今年開催するの?
自分は今誰にも求められていない作品を
作ろうとしているんじゃないか?
この作品を世に出すことで苦しむ人が大勢いるのではないか?
もう長い間絵を描いてきましたが
こんな気持ちになったのは初めてでした。
ただただ暗い気持ちで、情報を集めるだけにTwitterを見る毎日。
悲しいこと、怖いことばかり流れてきていたタイムラインが変わってきたのは
停電からどれくらいの時間が経った頃だったでしょうか。
お店や学校が通常通り営業するとお知らせしていました。
コンビニもわずかな商品ですが営業しているようです。
街の吹奏楽団が勇気の出る曲を演奏してました。
かわいい猫の動画も見ました。
状況は「当たり前」の日常に向かって
少しずつ良い方向へと進んでいました。
そうなれば自分もくよくよしていられません。
私はイラストレーターです。
絵で人を楽しませること、絵で誰かの何かを伝えることが
私の役割です。
当初の予定から超大幅に変更して
眩しいくらいキラッキラのイラストに仕上げました。
誰もがあの日を忘れてしまうくらい
華やかで、鮮やかな作品にしました。
完成したと同時に、担当さんとも無事連絡が取れました。
「今年も、例年通り開催します!」
全国の皆様、今年のクリスマスシーズンは
ぜひ北海道に遊びにきてくださいね!
ミュンヘンクリスマス市でお待ちしております!
会場にもイラストたくさん使ってもらえるって!
イラストレーター
ちばしげ
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