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楽曲解説:ヨロコビノウタ① 熊谷和海とベートーヴェンの邂逅

楽曲情報

作詞 熊谷和海
作曲(編曲)いしわたり順治 BURNOUT SYNDTROMES
レコーディング時期 2016年12月末
リリース 2018年2月21日『孔雀』M-01

ヨロコビノウタはBURNOUTSYNDTROMESのメジャー2ndアルバム『孔雀』に収録されています。
『孔雀』の中では比較的に早く作られた曲で、メンバーの話から推測するに「斜陽」、「ハイスコアガール」、「君をアンインストールできたなら」の後に作られたと思います。「檸檬」同様クラシックのメロディで曲が展開されていきます。この記事では楽曲の解説、紹介を行います。

檸檬に続くクラシック楽曲第2弾

ヨロコビノウタはベートーヴェンの「交響曲第9番(合唱付き)」の第4楽章である「歓喜の歌」のメロディを引用して作られた楽曲です。

ヨロコビノウタは「檸檬」製作直後の2016年の年末に収録したと思われます。

第9が年末によくかかるということもあり、スタッフからは年末っぽい曲になったと言われていました。

熊谷 
クラシックを使って1曲書くっていうのが大好きなので、今回もやりたいなと。

以下記事から引用

『孔雀』の次のアルバムの『明星』でも「星の王子さま-Ouverture-」、「星の王子さま-Fin-」をフランスの国家のメロディを引用しています。
今後のアルバムでもクラシックの要素がある楽曲が収録される可能性が高いです。

熊谷和海とベートーヴェンの共通点

ヨロコビノウタの解説の前に引用楽曲についてまず整理します。

ヨロコビノウタはベートーヴェンの交響曲第9番(合唱付き)」第4楽章「歓喜の歌」のメロディを参考にして作られています。
ベートーヴェンは生涯9つの交響曲を作成しました。つまり交響曲第9番作成後にベートーヴェンはこの世を去りました。
第9番は4つの楽章によって構成されており、4楽章目に合唱が加わります。歌詞はドイツの詩人シラーが書いた「歓喜に寄す」の詩の一部分を引用、冒頭部分にオリジナルの歌詞を追加しています。
つまり「ヨロコビノウタ」のメロディはベートーヴェン、詩はシラーからの引用と解釈するのが正しいと思われます。

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冒頭に追加したオリジナルの歌詞を日本語に訳すと「おお友よ、このような音ではない!」です。おそらく4楽章以前の音をすべて否定しています。その後に「もっと心地よいものを歌おうではないか」「もっと喜びに満ち溢れるものを」と続きます。その後はシラーの詩を引用しています。

この歌詞の内容を一言で表すことは大変難しいですが、個人的に訳の内容を解釈すると「人類はみな兄弟、友人であることを祝おう!」ということが言いたかったのだと思いました。

熊谷さんがヨロコビノウタを作るために、ベートーヴェンの曲を引用したように、ベートーヴェンもまた、シラーの詩を引用したことから、
熊谷さんとベートーヴェンの類似性が高いことが判明しましたね。

これらを踏まえてヨロコビノウタの解説に入ります。

生まれた瞬間の喜びを唄った曲

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ヨロコビノウタ0:18~
「こんな夢を見た 全ての人類が 産まれた日のことを 思い出す夢」

この歌詞は「君をアンインストールできたなら」から発想を得たと熊谷さんは語っています。このことからこの2つの曲はほぼ同時期に作られ、共通した世界観を内包しているのかもしれません。

熊谷 
生まれた瞬間の喜びを忘れていなければ、人間が荒んでいくことはなんじゃないかと思って。だから仮に人類全員がその記憶をハッキリ覚えていたとしたら、もっと優しい世界になるんじゃないかなっていう思いを「ヨロコビノウタ」ではつづりました。

引用

ヨロコビノウタ2:33~
「耳を澄まして胸に手を当てれば誕生の時めきが残っている心臓は憶えている”もう一度あの感動を”と」

この歌詞からも生まれた瞬間の喜びを誰もが忘れていない前提で歌詞が書かれています。実際、人間は一度見たことは脳は記憶しており、完全に忘れてしまうことはないそうです。
ある事象が整理されて情報化され、その上で生きていく中で必要とされるものが記憶に残りやすいそうです。

様々な楽器、コーラスを盛り込む

ヨロコビノウタに限らず『孔雀』は様々な楽器を使用しています。その中でもヨロコビノウタは群を抜いて使用した楽器が多いです。ストリングス、ティンパニー、サスペンドシンバル、トランペットが使用され、コーラス隊が参加しています。しかも、プロの方ばかりです。(コーラスにはベースの石川さんも参加しています)

ストリングスに関してはデモの時点ですでに存在しており、ドラムの廣瀬さんはそれに合わせて微調整を重ねたそうです。

廣瀬 
 僕としては歌詞にある「爆誕」を、ドラムのダイナミクスで作れればいいなと思ってこだわりました。

引用

2021年5月追記
 最近の楽曲ではBLIZZARDでは三味線、尺八、和太鼓の音が入った曲になっていますね。
こういう新しい試みに挑戦していく所がBURNOUTの魅力の1つだと思います。

まとめ

解説は以上になります。
この曲を調べることで熊谷さんとベートーヴェンとの共通点が明らかになりました。熊谷さんといえば太宰を多く引用するイメージがありますが、ベートーヴェンは「数學少女」、「i am Beethoven」に登場します。文学作品だけでなく、クラシックからも曲を作ってしまう熊谷さんの技量に脱帽です。
また、熊谷さんは詩を書く際に、物事をポジティブに捉えようと心がけようとしているのだとこの曲を聞いて思いました。
今後は熊谷さんの詩焦点を当てた記事、今回紹介できなかったコーラスの方々の紹介も記事に書いていこうと思います。