見出し画像

文學少女に出てくる文学作品一覧その➁

文學少女はインディーズ時代の2枚目のアルバムに収録されています。

熊谷と石川が文学作品や台詞を交互に言い合うアップテンポな曲調になっています。
”青春文学ロック”を掲げる彼らの代名詞的な曲といえるでしょう。

今回は文学作品第2弾です。
それでは1つずつ見ていきましょう。

ダンス・ダンス・ダンス

村上 春樹の作品です。
この本はまだ読んだことがないので機会があれば読んでみようと思います。

朝 食堂で吸う一さじのスウプと

太宰治の『斜陽』(1947年)の冒頭の文章からの引用です。小説の文章は以下になります。
”朝、食堂でスウプを一さじ、すっと吸ってお母さまが、
「あ」
と幽かすかな叫び声をお挙げになった。”

インディーズ時代の1st best album『i am Beethoven』(2012年12月22日 )に「斜陽」が収録されています。
6年後、メジャー2ndアルバム『孔雀』(2018年2月21日)にリメイクされています。

戦後、没落貴族として苦しい生活を強いられるかず子とその母と弟の直治の様子が描かれています。今までの生活とは違い自分の人生を自ら切り開いていくかず子の『革命』の物語です。

私も読んだことがあるのですが、熊谷さんが書く詩と高い親和性を感じました。

鳴り響くさびしさと

綿矢りさの『蹴りたい背中』(2003年)の冒頭の引用です。
小説の文章は以下になります。
”さびしさは鳴る。
耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、
胸を締めつけるから、
せめて周りには聞こえないように、
私はプリントを指で千切る。”

登場する作品の中で2番目に新しいです。綿矢さんは19歳でこの作品で芥川賞を受賞しています。
私は読んだことはないですが、いつか読みたいと思っています。

”好き”という絶望の中では

桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は打ちぬけない』(2004年)の文章からの引用です。登場作品の中で最も最近の作品です。他の登場作品は作品名か冒頭の文章からの引用でしたが、この文章は作品の序盤に出てきます。

この作品は私が一番好きのなので台詞の経緯について解説します笑

主人公は山田なぎさという中学生の少女。彼女はリアリストで、お金という”実弾”にしか興味がなく、引きこもっている兄を養う為、高校へは行かず、卒業後は自衛隊に入隊するつもりでいた。

 ある日、海野藻屑という女の子が転校生としてなぎさのクラスにやってきた。藻屑は変わり者で、自分のことを人魚と言っており、次第にクラスの子達からは敬遠されるようになる。なぎさも”実弾”以外には興味がないので、なぎさの兄がいう”砂糖菓子の弾丸”を撃つ藻屑とは距離を置いていたが、じょじょに接していく回数が増え、心を開いていくようになる。
 なぎさが買い物をしにスーパーマーケットに向かうと藻屑と藻屑の父親を見つけた。父親は従業員にどなりちらし藻屑を置いてきぼりにして車で帰ってしまう。藻屑は日頃から父から虐待を受けており、体に大きな痣があることをなぎさだけは知っていた。
 泣きじゃくる藻屑に向かってなぎさは水を差し出す。藻屑はそれを飲み干し、なぎさに向かって、

「ぼく、おとうさんのこと、すごくすきなんだ」

「好きって絶望だよね」

これ以上はネタバレになるのでやめておきます。本の分類としてはライトノベルですが、かなり衝撃的な展開になります。藻屑の痣という点に関しても『文學少女』の手首のと関連していることもあり、世界観が似ている風に個人的には感じました。

父から虐待を受け続けてもそれを愛だと捉えてしまうし、そんな父を好きだと思ってしまう藻屑だからこそ好きというのは絶望でしかないのだと思います。
その後物語は大きく動いていきます。興味のある方は是非読んでみて下さい!!

檸檬も

梶井基次郎の『檸檬』(1925年)の作品名です。
一番の歌詞「桜の樹の下に埋まる死体と」で引用した『櫻の樹の下には』を書いた方でもあります。

とても短いお話です。しかしかなり難解で、解説をみないと正直わかりません笑

要約すると、「私」が果実屋で檸檬を購入してそれを気に入りました。その後書店屋の丸善というお店に入りました。中に入ると檸檬を持っていた時の幸せな感情がなくなり、次第に暗い気持ちになっていきます。そこで「私」は本を積み重ねて城をつくりました。そして檸檬を爆弾に例えたらおもしろいというアイデアを思いつき、本の城の上に檸檬を置いて丸善を後にします。帰り道にあの爆弾が大爆発して丸善が木端微塵になったらおもしろいと妄想しながら帰ります。

これだけ読んだら意味不明だと思うので、まず檸檬を読んでそれから解説を読むのをおすすめします。

蜜柑も

芥川龍之介の『蜜柑』(1915年)の作品名です。
知名度は『羅生門』や『蜘蛛の糸』と比べると劣っていますがとても読みやすく、素敵なお話です。
この話は芥川が実際に体験した出来事を元に書かれています。

短いお話なので、10分くらいで読めてしまうと思います。

斜陽も

太宰治の『斜陽』(1919年)の作品名です。先ほど紹介したので、説明は省きます。熊谷さんが書いた「斜陽」には直治の遺書を引用していたり、世界観が似ているところ多いので、「斜陽」についての考察もこのブログで書いていく予定です。

河童も

芥川龍之介の『河童』(1927年)の作品名です。このお話は一言で表すと”価値観の喪失”だと思いました。

物語は精神疾患を患っている「僕」の回想から始まります。登山中に河童をみつけた「僕」は河童を追いかけているうちに河童の国に迷い込んでしまいます。「特別保護住民」として生活することになるが、河童の国は人間社会の当たり前が通じない世界でした。僕はしばらくそこで生活していたが、仲良くしていた河童の死をきっかえに人間世界に変帰ることを決意する。人間世界には帰ることができたが、河童の国の価値観が染みついており、「僕」は精神障碍者と診断されてしまう。時々河童達がお見舞いにくるが、河童の医者からは、「僕」が正常であり、ほかの人間が精神障害者であると判断している。

この作品を最後に芥川は自殺している。

こゝろも

夏目漱石の『こゝろ』(1914年)の作品名です。この作品も非常に有名で日本の小説で最も売れていると言われています。上、中、下の三部構成になっており、最も有名な話は下であり、私の友人であり、恋敵になるKが登場します。
オリエンタルラジオの中田敦彦さんが詳しく解説しています。

Kが言った「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」は名言ですね。

2ndアルバム『孔雀』(2018年2月21日)には夏目漱石が書いた作品をモチーフとした「吾輩は猫である」が収録されています。

破戒も

島崎藤村の『破戒』(1905年)の作品名です。

この作品のテーマは身分差別です。

主人公は被差別部落出身です。父の言いつけを守り、自分が穢多であることを隠しながら教師として生活をしていました。一方で自分を穢多であると公表し、解放運動家として活動する猪子という男を尊敬していました。次第に学校で自分が穢多であることがばれ始め、身分を偽ってこのまま生きるか、猪子の意思を継いで運動家になるか葛藤します。猪子の死をきっかけに運動家になることを決意しテキサスへ旅立ちます。

身分差別は現在も残っており日本の社会問題の一つです。

身分差別に限らず、いつの時代も人は生まれやカースト、社会的ステータス、思想等をカテゴライズして、自分より劣るものを生み出して安心する生き物だと思います。

とても難しい問題ですが、私達一人一人が真剣に向き合わなければいけないと思います。

夜間飛行も

アントワーヌサンテグジュペリの『夜間飛行』(1931年)の作品名です。
3rdアルバム『明星』(2019年2月20日)に収録されている「星の王子さま-Ouverture-」「星の王子さま-Fin-」のモチーフとなった『星の王子さま』を書いた方と同じ人物です。

この作品はまだ読んでいないので本の紹介はまだできません。いつか読んでみたいです。

銀河鉄道も

宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』(1934年)の作品名です。

1st Miniアルバム『プリズム』(2009年)に「銀河鉄道の夜」が収録されています。『銀河鉄道の夜』を読んだ曲中の主人公の心情が描かれています。

テーマは”本当のさいわい”とは何か

田舎に住む少年ジョバンニが外で寝ていたら、いつのまにか銀河ステーションという駅のアナウンスが聞こえ、気がつくと列車の中に乗っていました。列車の中には友人のカムパネルラもいました。途中で列車に乗ってくる人もいましたが、皆、途中で降りてしまいます。車窓に現れた石炭袋を2人で見ていると、カムパネルラも「あすこにいるのぼくのお母さんだよ」と言い残し消えてしまう。ジョバンニが目が覚めるとカムパネルラは川に溺れた少年を救助して行方不明になっていた。

カムパネルラは自分の命をなげうってでも他者を救うことが”ほんとうのさいわい”であると考えたから行動できたのだと思います。

砂糖菓子も

先ほど紹介した「”好き”という絶望の中では」の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と同じなので説明を省きます。

限りなく透明に近いブルーだ

村上龍の『限りなく透明なブルー』(1976年)の作品名です。

タワーレコード限定ワーレコード限定100円シングル『LOSTTIME』(2014年6月4日)、インディーズ1st Album『世界一美しい世界一美しい世界』(2014年7月2日)収録の「LOSTTIME」の歌詞に「限りなく透明なブルー纏う私の虹」があり、同じ作品がモチーフになっていると思います。

村上龍さんは現在、冠番組としてカンブリア宮殿に出演しています。また、熊谷は作詞するに当たって影響を受けた本の一つとして村上さんの『半島を出よ』を挙げています。

熊谷はこの本について”「神様視点」で詩を書く際の「いろは」が詰まっています。”と語っています。

『文學少女』を考察する上で、君の手首の痣に並ぶ重要なキーワードだと思います。しかし、私が途中で読むことに挫折してしまったのでそのうち読みます。

「限りなく透明なブルー」という文字の並びはとても綺麗ですよね。(内容はけっこうドロドロしてます。)

以上で『文學少女』に出てくる文学作品は以上です。
計14名21作品が登場していました。

過去に以下のツイートをしたことがありますが村上春樹が抜けているので
14名の間違いです。

今後は歌詞の考察についての記事を投稿する予定です。