仕事とプライベートの境界を無くす。


僕が「音楽で食っている」状況を作る為にはちょっとした秘策があった。
それはお金に関して「仕事とプライベートの境界を無くす」ことだ。
正確には仕事とプライベートの境界が無くなった「からこそ」食えるようになった。

元々赤瓦レーベルは2003年に北京留学から帰国した後、自分の作品を自主リリースする為に立ち上げた看板だった。とはいえ正式な会社ではない。あくまで発売元が「個人」である訳にいかないので便宜上の名義だ。始めはボランティアで手伝ってくれるスタッフもいたが今は完全に俺一人だ。

バンド時代にはCDの売り上げやライブの上がりを貯めたバンド貯金があった。それは個人のお金とは別で管理していた。バンドが無くなった後はそれがそのまま赤瓦レーベルの活動資金になった。レーベルの名刺も作った。

給料こそ払っていないがレーベルのアーティストもいた。布施カズヒコ、なっちゅん、Alala Ufufuとともに「餅合わせ」という看板イベントを立ち上げ、CD-Rで自分を含め4アーティストのアルバムとコンピ1枚を作った。

一年くらいでそれが継続出来ない状況になった後、DUTY FREE SHOPP.×カクマクシャカでレコード会社と契約という状況が来た。音楽に専念することになったが、レコード会社からのお金だけでは食えないので外仕事を請けはじめた。

その頃に結婚もした。子どもも生まれ、支払いもどんどん増える。自分の貯金の残高が足りないので、レーベル貯金の口座から一旦お金を借りて支払う。でもそうすると音楽活動の資金が無くなって、生活費から補充するという変なサイクル。そうこうしてるうちにはたと気づいた。自分が一人で稼いでいるお金を一人で使っているだけの状況なんだからもうこれ口座ひとつで良いあんに?

なし崩し的に「仕事とプライベートのお金が統合された」。2年ぐらいでレコード会社の契約も打ち切りになり、事実上の完全フリーになった。赤瓦レーベルの名刺をやめ、フリーのミュージシャンの名刺を作った。

アーティスト活動、アレンジ業、BGMの下請け制作、営業ライブ、バイト代、それら全ての収入をこの口座に入れて、なんとか回せるようになった。自分の口座から家賃も保険代も光熱費も払うし、CDも作る。ミュージシャンのギャラやスタジオ代も払う。

まぁそうすると貯金が貯まらない自転車操業状態に陥るのだが、貯まらないまでも食えてはいるし、音楽も辞めずに済んでいる。

良くも悪くも、それはソロ、つまりひとりぼっちになったからこそなのだ。

次回に続く。

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