アイドルマスターの"担当観" / なま

こんにちは。徳川まつり学会のなまです。

千葉マスでは夜な夜なdiscordで通話をしており、女性声優の造形の話や競馬の予想など、非本質な話題を夜更けまでダラダラと続けているのですが、ある日話題に上った「"担当"と"推し"の使い分け」について、自分の担当遍歴と照らし合わせて思うところがあり、今回この会報誌の場を借りて、「アイドルマスターにおける担当観」を整理したく思います。

というのも、見識を広げるため(これは嘘で、萌え成分の供給と延命のため)話題のIP、コンテンツをなるべく追うように心がけており、今年は「ウマ娘 プリティーダービー」と「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク」の2つに手を伸ばしたのですが、思いのほかすんなりと特定の"推し"が決まり、それもどうやら、かねてよりミリオンライブ!で担当をさせていただいている「徳川まつり」さんの思想の影響をどうやら受けている、という出来事があったためです。

なるべく俯瞰してコンテンツを楽しみたいという思いから、一般に特定のキャラクターに肩入れをすることに抵抗感があったと自己分析していたため、すんなり納得のいく"推し"を見つけられたことに不思議な感覚がありました。年を取って丸くなったからだと思いますが、、

というわけで本記事の目的は、アイドルマスターにおける"担当"と"推し"の区別、それから他コンテンツにおける"推し"との相違点を、自らの体験を踏まえて言語化しよう、ということになります。
勿論「担当を名乗るならこうあるべきだ!!」などと強い主張をするわけでもなく、こんな偏屈なオタクもいるんだなあ程度の感覚で流し読んでもらえれば。概ね自分のために書いていますが、このページを開いた物好きな方々にも何らかの気づきがあればいいなと思います。

アイドルマスターにおける「担当アイドル」

アイドルマスターは、「プロデューサー」という立場から「担当アイドル」を「プロデュース」する"育成シミュレーションゲーム"として、2005年にスタートしました。

ゲームの仕様上「担当アイドル」を1人は選ばなければならないことが、アイマスに触れるときに「担当」を選ぶモチベーションとなっていました。
それがいつしか「担当」がアイマスPを名乗るうえでのアイデンティティに変質し、ファンコミュニティが醸成されていくにつれ、一時期は"アイマスに触るなら担当を決めなければならない"という風潮が蔓延するようになりました。

そのため、ゲームシステムとしての「担当」と、キャラクターコンテンツにおける「推し」とが明確に区別されないまま、もとはプロデュースゲームの形態をとっていたアイマスは、ソーシャルゲームへとその基盤を移転していきます。

従来のプロデュースゲームを「体験型」と称すると、ソーシャルゲームでの展開は「共感型」といえます。
据え置き筐体用にパッケージされたゲームでは、プレイヤーは用意された選択肢の範囲内ではあるものの、アイドルとの出会いから、目標の達成ないしは引退という区切りまでを、プレイヤー自身のペースで能動的に体験することができます。
一方で、ソーシャルゲームとなると、シナリオの形態はプロデュースゲームを踏襲するものの、基本的に分岐はなく、供給のペースもベンダーに管理されるため、アイマスPたるユーザーは受動的な体験を余儀なくされます。特に作中のプロデューサーが自我を持っていたりすると、自分自身がプロデューサーになって担当アイドルを育成するというよりかは、アイドルにまつわる一篇の物語を俯瞰的に楽しむことになります。

そのほか、単純にアイドルの総数が増えたり、アイドルによって情報量がまちまちだったりと、アイマスの係る環境に様々な変化があり、「担当」という言葉の意味も「推し」を包括したものに変容していきました。

それでも"推し"と"担当"を区別する

ときに、ジャニーズでも"熱烈なファン"を自称する用語として「担当」が使われることがあります。そこから派生して生まれた「同担拒否」などのワードは広い支持を得ており、拡大解釈されてキャラクターコンテンツにおいて使用されるケースも散見します。

アイドルマスターにおいても例外ではなく、元々のプロデューサー目線での「担当アイドル」の意味合いに加えて、ファンないしプレイヤー目線での「"熱烈な"ファン」という意味も含まれている、むしろプロデューサー間の交流においてはそちらの意味にすり替わりつつあると感じます。

「"熱烈な"ファン」としての「担当」という言葉があるなら、「そこまで"熱烈"ではないけどファン」な人達を呼称するワードがあっても良いでしょう。
そうなったら「ファン」で良いのでは?とも思いますが、アイマスコミュニティでは「推し」という表現のほうが好んで使われます。それには、アイドルマスターが独自に持つ「担当アイドル」の概念が影響していると私は考えます。

それには"推し"と"ファン"を区別する必要がある!?

アイマスで「ファン」は、「シャニマスファン」や「声優ファン」などコンテンツに対して使われることが多く、特定のアイドルのファンを指して用いられる場合は(体感)あまりないです。
これはアイドルマスターの「プロデューサーvsファン」の構造的特性によるものが大きく、作中でプロデュースしているアイドルについている架空のファンを指すことが多いためです。ゲーム内で「ファン数を稼ぐ」という表現も同様で、「ファン」という言葉に自分を重ね合わせるというよりかは、目標達成のための数字という意味で、記号的に見なしているため、アイマスでファンという言葉は使われづらいです。それこそ「プロデューサーさん」を自称することのほうが多いでしょう。

作中で「プロデューサー」を使うのなら「担当」と表現していいのでは?となりますが、するとアイドルマスターに登場するアイドル全員が「担当アイドル」と「それ以外」の二元論で分類されてしまい、人によっては不都合が生じます。ゲーム上ではそれでまま良いのですが、ファンコミュニティでの交流を念頭に置くと(大抵の場合)そうはいきません。

「推し」という言葉は最近一般層にも広く知られるようになりましたが、ものの本によると元々は「推しメン」の略で、アイドル等のグループ内において、最も応援しているメンバーのことを指す、とのことでした。

語源まで遡ると、「押し上げる」、「下から上へ薦める」という意味合いがあり、要するに「他者に薦めたいほど好き(なアイドル)」という理解で差し支えないでしょう。

ここの「他者に薦めたい」という部分がアイドルマスターにおいては重要で、というのもアイドルマスターは2次創作を契機に飛躍したコンテンツであり、「総選挙」や「キャスティングイベント」等ファン同士のレコメンドを通じたコミュニティの盛り上げを、展開の軸に置いています。(コロナ禍以降、この傾向が顕著になっている気がします。)

そういった界隈の空気感や、「ファン」が半ば予約語になっていることから、「推し」という言葉が「ファン」を通り越して自然に用いられるようになった、という気がしています。

(結局) "担当"と"推し"を区別しなければならない?

※※もう1度断っておきますが、この記事は個人の担当アイドルへの価値観を強制するものではありません※※

前項の内容から、一般的なアイドルファンの中での「ファン」と「推し」の関係が、アイドルマスターのコミュニティではそのまま「推し」と「担当」の関係にスライドしているとも捉えられます。

では、どうして「推し」という言葉が使われるに至ったか。これは「担当」という文字面の与えるジャニーズ的な解釈の影響が大きいでしょう。
人によって解釈の分かれるところで、語弊のある表現になるかもしれませんが、心に決めた「担当」が既にいて、興味はあるけど同列に扱うのが困難~という場合に、「担当」と「非担当」の間を意図する呼称として「推し」が用いられるようになったのだと考えられます。ないしは、「担当」を名乗るには(自分の中で)理解が足りていないために、心理的な抵抗から「推し」という表現に留めたという人もいるかもしれません。(当然、担当を名乗るのであれば理解度は高くなくてはならないという主張をするつもりはありません。)
経緯がどうであれ、「推し」という表現が居心地がいいために、アイマスコミュニティでも浸透したのだと考えることができます。

「推し」のほかに「副担当」といった表現もしばしば用いられており、これは明確にキャラクターをランク付けした結果出てきた表現ですが、こうした公式を拡張した表現が、コミュニティから自然に生じる現象は面白いです。

まとめ

ここまで、アイドルマスターにおける"担当"と"推し"、それから"ファン"の成り立ちと、意識的な使い分けについて、自分なりに言語化をしてきました。
そこそこ自明な内容でしたが、自分も混同したままになっていたので、整理できてよかったです。あらましを箇条書きにまとめてみます。

・アイドルマスターにおける「担当」は、プロデュースゲームとしての「担当アイドル」の意味に加えて、「同担拒否」などのワードに由来する「"熱烈な"ファン」としての意味合いが付加されている
・アイドルに対して「ファン」の形容が使われないのは、プロデュースゲーム中の架空のファンを想起させるため
・「推し」が使われるようになった背景には、ファン同士のレコメンドを推進する公式の影響が大きい
・「担当」と「非担当」の中間を形容する言葉として、「推し」が用いられるようになった

続いて、担当との「出会い」の話に移りたかったのですが、コミケが始まるまであと8時間!という時間的制約から、心残りもありますがここで一旦締めさせていただきます。

というのも、ここからが本文で書きたかった内容で、担当アイドルである「徳川まつり」と、他コンテンツですんなり推しに内定した方々―――「プロセカ」の「鳳えむ」、「ウマ娘」の「カレンチャン」、「電音部」の「桜乃美々兎」―――との共通項を深掘りすることを通して、担当はそのオタクの鏡である!みたいなまとめをしたかったのですが、とても収拾がつかなくなりそうというのがあり…。

いつか存分に会報誌で自分語りができればと思っています。
それでは、良いお年を!

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