スーパーショート文学賞 No.23 虹が出るほどでもない 赤い靴

頭を焦がす日差しだけでも鬱陶しくて避けるのに必死なのに、雨まで降ってきた。元々日傘をさしていた私の視線の端には、周りが慌ててカバンをごそごそと漁っているのが映る。
「おまえなんで傘さしてたの!?すごくね!?超能力者!?」
後ろから聞き慣れた声が屈んでくる。入れてくれ、ということだろう。自分の肩に水滴が落ちたことに気がつき、一瞬不満が顔に出そうになった。
「元々日傘としてさしてたから」
「なるほどね、いや〜助かったわ」
私の親切を、通りがかりのラッキーのように扱われてイライラする。
「空めっちゃ綺麗じゃね?キラッキラ」
そう見上げて無邪気に笑う。
「そうだね」
正反対の感想を抱く彼に、心の中でため息をつく。
雨の中の日差しのようで大好きだったあなたは、いつのまにか日差しの中の雨のように鬱陶しい存在になっていた。
もう私の傘には入れてあげない。この雨が、あがったら。


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