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シンデレラファイト シーズン2 SemiFinal #2・#3感想文

「天鳳観戦してますよ!」

2020年12月4日
某女流プロのゲスト先にはじめてお邪魔したとき、お見送りの際にプロがこう話してくれた。

それまで常勤のお店に何度か行ったり、Twitter(X)では軽くやりとりをしていたが、そこまで深い話はしていない状態でのことである。

自分は少し驚き、とっさに「みないでよー!」とつぶやいた。
するとすぐさまプロから「なんでよー!」という言葉が笑顔とともに返ってきた。

本音は観てくれている(たまたま観戦欄にあって覗いただけっぽいが)ことがうれしかったのだが、自分の拙い麻雀が観られていると思うと急に恥ずかしくなった。

それと同時に彼女は本当に天鳳が好きなんだなと思った。
自分も天鳳が好きだし、天鳳民が好きだ。彼女を応援するようになるまでそれほど時間はかからなかった。

それから1年半ほど経過した2022年5月。
第1回のシンデレラファイトがはじまる直前のことである。
「シンデレラファイト優勝したらnote書いてね!」と言われた。

自分は彼女が書く文章が好きだった。そして彼女も自分のnoteを読んでくれて度々褒めてくれた。それがうれしかった。

シンデレラファイトで唯一2年連続SemiFinal進出を果たした梶田琴理(愛称:ぴっぴ)選手である。

昨年の第1回大会では敗者復活で多くのTwitter投票を集め敗者復活戦に進出。そこで勝ち上がりSemiFinal進出を決めるも、敗退となった。
今年にかける想いは人一倍強いだろう。

ちなみに12月4日は梶田の誕生日である。
毎年12月4日が近づくたびに思い出すエピソードである。

シンデレラファイトシーズン2 SemiFinalがはじまった。

※公式の観戦記っぽい感じで感想文を書きたいので、選手のみなさんのお名前を敬称略で書かせていただきます。すみません。

#1では木下がFinal進出し、成海と長谷川が#3へ。
彩世は昨年の初日敗退からベスト16進出と躍進を遂げたが、ここで無念の敗退となった。

彩世ともこれまで幾度となく麻雀を打ったり話したりしていて思い入れがあるのだが、紙面?の都合上掲載しきれなかった。ごめんこなたそ。

#2 梶田・廣岡・新榮・松田

東家:梶田琴理(最高位戦日本プロ麻雀協会)
南家:廣岡璃奈(日本プロ麻雀連盟)
西家:新榮有理(最高位戦日本プロ麻雀協会)
北家:松田彩花(日本プロ麻雀連盟)

1着 Final進出
2着・3着 #3へ
4着 敗退

東1局

起家の梶田は前巡カン4mのテンパイとらず、ドラ引きor好形変化をみたところにリーチがかかる。

1枚切れの發を持ってきて、そのまま切るかと思いきや…

現物の2sを抜いた。

赤なしドラなし手役なしの3なし手牌ではいくら親とはいえ、1枚切れの發を打つリスクすら負えないということである。ドラがあったり、手役がみえるイーシャンテンであれば發を打ったかもしれない。

ふわっと1枚切れの字牌を切る人も多いのではないだろうか。

アガリに向かっても見返りの少ない手で僅かなリスクすら負うのはバカらしい。それが梶田琴理のスタイルである。

親番では我慢をした梶田だが、東2局でタンヤオチートイツ赤ドラドラの12000を廣岡からアガり、東4局でもリーチピンフ三色の8000を松田からアガって、梶田は41,000点持ちのトップ目で南場を迎えた。

梶田 41000
廣岡 9000
新榮 26000
松田 24000

梶田の独走に待ったをかけたのが、東場でおとなしかった新榮である。

南1局

1人点数状況が厳しくなった廣岡が1s5s待ちで決死のリーチを敢行する。

ラス目だけが即敗退のこのルールでは、周りもラス目のリーチに簡単には向かえない。

しかし新榮は違った。
リーチの一発目に無筋の1mを勝負。

安全牌が1枚もない。ふわっと9pのトイツに手をかける人も多そうだが、安全牌ではないので、形を壊さないようにまっすぐ手を進める。
自身が第2打で8pを切っており、9p待ちが将来的によくなる可能性もふまえての一打だろうか。

同巡、松田に47p待ちのテンパイが入り、打2s。
普段であれば追いかけリーチを打ちそうだが、ラス目のリーチに飛び込むのだけは避けたい。

2s自体も安全牌ではないがこの1牌は勝負をして、ゆくゆくはオリることも視野にいれた選択か。

同巡、新榮が2pを引き入れ、36p待ちで追いかけリーチ。
打ち出す6sは両無筋であり、かなり危険度も高い牌だが気合いでかちこんだ。

廣岡と新榮の2人テンパイで流局。

南2局1本場

さらに新榮の押しが光ったのがこの局である。

もうあとがない親番の廣岡がドラドラのカン2s待ちでリーチ。

上家に仕掛けが入っており、チンイツまで育てる時間はないという判断だろう。すでに打点があり、ツモれば4000オールで一気に並びになる状況。

ラス目かつ親のリーチに向かってこれる人はそうはいない。

しかし、新榮は違った。

リーチの一発目に中筋の6mを打った後、2巡後9pをツモって8mを勝負。
完全にやめるなら3m5sと2枚あるが、強気に攻めた。

通っている筋は7本。相手がリャンメン待ちなら当たる確率は1/11。さらに親番であれば愚形待ちの可能性も高い。

自身はピンフドラドラでリャンメンリャンメンのイーシャンテン。これならば勝負に値すると踏んだ。

が、しかしラス即敗退のルールでラス目の親リーチに対して、この選択をとれる選手は一体どれほどいるだろうか。
普段の新榮は攻撃型という印象はそれほどないため、自分も驚いた。

端の9pより先に8mを打ったのは、2打目に9mが切られており、7mや8mを持たれているケースが減るため、何の情報もない9pより8mのほうが瞬間の放銃率は低いと考えたのかもしれない。細かい打牌選択が光る。

筋とはいえドラの1sをプッシュ。
時々大惨事になることもあるが、現物以外では一番通りそうだ。
だが怖い。

7sを引き入れ打9pでリーチ。

つよすぎないか?

5mをツモりあげ、30006000+供託で16300点の収入となった。

対局終了後のインタビューで新榮は「あまり押すほうじゃないんですけど」と話していた。
もしかすると体調面による影響もわずかながらあったのかもしれない。

新榮はこの日より前に体調を壊し、シンデレラファイトは運営と相談のうえ出場をしたものの、翌日・翌々日のゲストは事前にキャンセルをしていた。
浜松から通っている選手であり、交通費の負担も小さくないがこの大会にかける想いが勝ったのだろう。
感染症ではなかったことが不幸中の幸いだ。

それでも対局中やインタビューでは体調不良を一切感じさせないように笑顔を振りまいていた。プロ意識を感じた。

南3局

南3局、新榮の親番で梶田が新榮のリーチに飛び込んでしまう。

梶田は自身がテンパイであること、完全安全牌がないこと、オリてノーテンで差が開くのもトップが遠のくこと、放銃してもラスの可能性は低いことなどをふまえて勝負にいった。

リーチ赤赤で7700点。

これが決定打となり、新榮がFinal進出。
梶田と松田が#3に回り、廣岡が敗退となった。

廣岡は東2局親番での確定イッツーのリャンメン待ちヤミテン12000点をアガれずに放銃に回ったのが痛かった。
特に悪いところはなく、いい内容だったように思えるが、結果は無情である。

自分が廣岡のことを知ったのは、女子高生による麻雀大会「高校女子オープン大会2017・夏」で優勝をしたときだ。
その後日本プロ麻雀連盟に加入し、第3期の桜蕾戦を制覇した。
今後期待の若手選手である。

#3 成海・松田・梶田・長谷川

東家:成海有紗(日本プロ麻雀協会)
南家:松田彩花(日本プロ麻雀連盟)
西家:梶田琴理(最高位戦日本プロ麻雀協会)
北家:長谷川栞(日本プロ麻雀協会)

1着・2着 Final進出
3着・4着 敗退

#3はこれまでのラスのみ敗退と違い、3着でも敗退となる。
過酷な戦いがはじまる。

東1局

長谷川がカン2p待ちでリーチ。

ドラなし役なしの状態からドラそばの孤立1pを残し、ペン3sを払っている最中にドラの3pを引き入れてのテンパイ。細かいが打ちなれているのが伝わってくる。

これに待ったをかけたのが梶田。
いくら守備型といえどこれは反撃の一手である。

リーチピンフ赤赤ドラドラで12000以上確定の大物手だ。

しかし梶田は長谷川の当たり牌の2pをつかみ、リーチドラ裏3で7700の放銃となってしまった。

長谷川は梶田と同じく天鳳プレイヤーで最高九段という実績を残している。自分が知る限り女流プロで九段に到達したのは、U-NEXT Piratesで活躍する瑞原明奈(最高位戦日本プロ麻雀協会)と長谷川の2人しかいない実力者だ。

長谷川は「ライバルは梶田琴理」とシンデレラファイトのアンケートで答えており、梶田もまた「ライバルは長谷川栞」と答えている。
長谷川と梶田は、長谷川の協会の後輩である石田綾音(日本プロ麻雀協会)とともに度々天鳳合宿をするほど仲がよい。

しかし仲がよくても勝負の場では敵である。

東4局0本場

長谷川の細かい打牌選択。打2p。

シャンポン候補の2pと北が1枚ずつ切られ弱くなったため、二度受けの147pと4mへのくっつきでの横伸びをみた。

マンズが序盤にバラバラ切られており、よくわからないピンズを厚く持つよりも、マンズの横伸びが期待できると踏んだのでだろう。

これが功を奏し、マンズを伸ばすことに成功。

25m待ちでリーチ。お見事。

東4局1本場

成海がイーペーコドラ4というド級の手でリーチ!

すでにテンパイをしていた松田、安全牌ゼロの状況から少し悩んで無筋7mをプッシュ。

しかし3pを持ってきてノータイムで5s切り。3pは成海の当たり牌だ。

4sと7sのワンチャンスとはいえ安全牌ではない5sを切って回っていった。
この巡目ならほとんどの人が3pを切って放銃をしているのではないだろうか。すごい。

フリテンのカン4pで再テンパイを果たしていたが、6pをツモってきて丁寧に当たらない9pを選択。

9pもまったく通っていない牌ではあるが、36pだけは死守した。

南1局2本場

ここまで苦しい展開となっていた梶田にチャンスが訪れる。

高めツモで供託もあわせて12600の収入。
これで一気に2着目が近づき、Final進出に望みをつないだ。

しかし反撃もここまで。

南3局の梶田の親番では再び場況をうまくとらえた長谷川に2000点の放銃。
オーラスではリーチさえできればチャンスある局面だったが、一向にテンパイが入らず流局。
長谷川と松田がFinal進出を決めた。

梶田琴理のシンデレラへの挑戦が終わった。


Final進出はこの4選手。本当に楽しみなメンバーである。

「あなたの推しは?私の推しは〇〇選手です!」

おわりに

梶田は昨年と同じくSemiFinal敗退となってしまったが、
インタビューの様子を見る限り、昨年と比べてだいぶ表情が晴れやかだったように思える。
悔しい気持ちは当然あるだろうが、やれることはやったという気持ちがあるのかもしれない。

自分はこのSemiFinalの3日前に梶田(愛称:ぴっぴ)に直接取材(ゲスト先のBarに追っかけに行っただけ)をした。
直接確かめたいことがあったのだ。

昨年のシンデレラファイトで敗退したあと、少し燃え尽きてしまったのではないかと心配に思うことがあった。
天鳳もほとんど打たなくなり、彼女の麻雀活動が見えにくくなっていた。

ぴっぴの存在がなければ知り合えていない人がたくさんいる。
その中には大切な友達も複数いる。すべてはぴっぴが天鳳に熱中していたことが発端だ。

自分は天鳳が大好きだったあの頃のぴっぴに戻ってきてほしいと、モチベーションを上げるための方法がないか考えた。
しかしそれを押し付けるのはファンのエゴだ。なかなかうまくいかなかった。

そんなに心配をよそにぴっぴは天鳳のモチベーションを復活させ、今年7月東南用のpipppiアカウントで念願の七段に昇段した。
自分のことのようにうれしかった。

取材中いろいろな話をしたのだが、終わり際にぴっぴに質問をした。
最近どう?と。

「天鳳観戦してる!」

表情はとても晴れやかだった。うん、もう大丈夫。

おしまい

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