ボクたちは、少し不慣れな夢を見る。

じけんのはじまり


『ツイッターのあんたがたに挑戦します2021Lite』開催まであと一週間となったある日、大事件が発生しました。
みんながデバッグや作問が佳境の中、謎解きを一切知らないひとりの女の子がLiteGMがいるサーバーに入ってきました。
話に聞くところLiteGMのある人が寝ぼけて、Liteのサーバーに招待を送ってしまったようです。
GMの人は朝、DMを見て大慌て。急いで謝りに行こうとしたら、その女の子は既にGMの皆さんに馴染んでいました。
そして、その子はGMの皆さんにこう言われたのです。「GMになりませんか?問題を作ってみませんか?」と。
女の子は悩みました。
あんたがただけでなく、謎解きのことすら知らない自分が、本当に謎解きなんか作っていいのかと。
ずっとずっと悩み続けました。

そんな悩んでいる女の子を見たお兄ちゃんがどうしたの?と声を掛けました。
女の子は事の顛末をお兄ちゃんに話しました。
そして、「自分なんかがあんたがたの作問をしてしまったら、この歴史を壊してしまうんじゃないか。私はあんたがたに楽しんでもらえるようなものが作れるか分からないからサーバーを抜けたい。」と伝えました。
お兄ちゃんは女の子が話すのを真剣に聞いていました。
そして女の子の話が終わるとお兄ちゃんはこう言いました。
「GMに迷惑をかけたくない、歴史を崩したくないっていうお前の言い分も分かる。でも、GMの人たちはせっかくお前にチャンスをくれたんだ。やってみたらいいんじゃないか?俺も手伝うから。」
女の子はびっくりました。まさか兄が自分のために何かをしてくれるなんて思っていなかったからです。
そして女の子は決心しました。
「頑張ってあんたがたの問題を作ってみよう」と。

こうして、ボク、田潟杏がこの世に生まれたんだ。
今日、『Twitterのあんたがたに Advent Calendar 2021』で話すのはそんな話だよ。
ひょんなことからLiteGMになった女の子―水浜千晶が田潟杏を生み出すまでの物語、読んでくれると嬉しいな。

かそうのはじまり

お兄ちゃんから助言をもらって数日が経ちました。
千晶はLiteで出される問題がまとまっているスプレッドシートを見て、ふとあることを思いました。
「……あれ?日本海側が答えになる問題が少ない」
実際、GMの人に聞いてみると、日本海側が答え(現地)になる問題が少なくて困っていたようです。そこで千晶は、自分が生まれた地である水晶浜を使って作問をすることに決めました。
身近な地を使った方が問題を作りやすいと思ったようです。

現地が決まった千晶はどんな問題を作ろうか悩んでいました。
千晶はもともとバーチャルユーチューバー、つまりはVtuberが好きだったので、それを使って問題を作ろうとしていました。

・事前に何個か動画を撮り、切り抜きを使って何かをする
・リアルタイムで配信する
・Vtuberの名前とかを使う……?(実際にTwitterを開設する)
・切り抜き動画を作る
・Vtuberと何かコンテンツ(TRPGetc…)を交える
・今回のVtuberに関するサイト(ニコニコ百科事典的な?)を作る
    Vtuberについて調べろ→既にそのVは引退していた

等いろんな案が出ていたようですが、うまく彼女の中でまとまっていませんでした。
ぐるぐると悩んだ彼女は、ある禁忌に手を出してしまいました。

『Vtuberの中の人を特定させる問題を作ろう』

「中の人」という考え方は人によって不快感を得る可能性があります。
正常な思考ができなかった千晶はその発想に至ることなく、そのまま作問を進めていってしまいました。

大体その時くらいかな?ボクが生まれたのは。
ボクの名前はすぐに決まったね。あんたがたをチマタグラムした「田潟杏」って名前。安直だけど、ボクはすごく気に入ってるんだ!
あと、最初はこんな感じの外見だったんだよ~!

画像1


今と比べるとちょっと違うよね。
ボクに関する情報は性別とか誕生日しか決まってなかったから、Vtuberの自己紹介シートを見ながらがんばって自己紹介を作っていったんだ。
肝心の問題の内容を決めるのは……結構時間がかかっちゃったみたい。
次はその話をしてこっか。

もんだいのはじまり

さて、肝心の問題について。
ぼんやりとVtuberの中の人を特定させる問題を作りたいな……と思っていた千晶はぽつりぽつりと作問を始めました。
中の人を特定をさせるためにどういう配信内容、そしてどういうツイート内容にするか……少しずつ少しずつ内容を詰めていきました。
そしてどうにか問題の手順ができました。

①あんたがたが田潟杏のアカウントを見つける
②杏の配信を見ると杏が行方不明になってしまったことがわかる
③Twitterを見るとファンの一人が「田潟杏の本名アカウントを見つけた」とつぶやいているのを見つける
④そして田潟杏の中の人、「水浜千晶」を見つけ、現地を特定する

大体この流れを決めて、Vtuberになるための道具や作問についてもGMの方からアドバイスをもらったり、GMの皆さんに協力を求めたり、兄にTwitterの開設をお願いしたのがあんたがた開催5日前。
ここからドタバタの日々が始まります。
youtubeのライブ配信用のアカウントが有効になるのに1日かかることを知らなかったせいで、ここからさらに1日待たされたり、それのせいで台本(Twitterで呟く内容)が変わって、部屋の中で千晶が叫んでいたりしていたのはここだけの秘密です。
ちなみに一応どの情報を配信で言って、どの情報を千晶のTwitterで呟くかは最初の段階で決まっていましたが、配信のリスナーさんの質問やコメントによって変わることもありました。
例えば、千晶の愛犬「カレン」について。
カレンの話はするつもりはなかったそうですが、リスナーさんから質問が出たこともあって千晶のツイート内容も変更したそうです。

はいしんのはじまり

さて、さっそくボク、田潟杏の配信が始まりました(千晶は開始数分前までアカウントが有効にならなくてずっと頭を抱えていました)。
……のはよかったんだけど、初配信が約1時間もかかるという大誤算が発生しました。
配信をしていて、楽しくなっちゃったみたい。
GMの人に「もう少し短くしようね」とアドバイスをもらったり、切り抜き動画をいただいたりしながら千晶とボクは二人三脚状態でいろいろな配信をしていきました。
途中でOBSが不調になっちゃったり、音声の調子が悪くなっちゃったりいろんなことがあったけど、ああやって配信ができた日々は本当に楽しかったなぁ……。
もうボクは配信はしないけど、あの日々は宝物のような日だったよ。
ボクは問題のために生まれ、そしてあんたがたが終わったら記憶から消えていくべき存在だと思っていたから。ああやってあんたがたのみんなに見てもらえたり、ドット絵を作ってもらえたり、楽しんでもらえたりしたのがとても嬉しかった。
改めてあんたがたのみんな、そして同級生のみんなに感謝させて。みんな、本当にありがとう。

であいのはじまり

さて、今までは問題の話。ここからはあんたがたに会った時の話です。
5月2日、9時。
この世界に「仮想の青春はおともだちの夢を見る?」があんたがたの手によって公開されました。

さすがあんたがた。
すいすい問題を解いていってたよね。
だからこそ、悔しかったんだ。
「これはいったいどこに使うんだろう?」
「この伏線まだ回収されてないよね」
そういった声がTwitterで出てくるたびに、千晶はすごく悔しかったんだ。
作問することは楽しかったけど、でも本当にそれでよかったのかなって。
ちゃんとあんたがたのみんなに届けるような作問ができてたのかなって。
自分よがりな作問になってしまっていたんじゃないかってとても悔しかった。

だから、いつかちゃんと作問しようって決めたんだ。
あんたがたのみんながモヤモヤを残すことのないような問題を作ろうって。

そんなことを千晶は誓いながらLiteは幕を閉じました。
「……そんな機会はいつ来るんだろう。」
そう思いながら。

すべてのおわり

さてさて。Liteのもろもろ(振り返り配信含め)が終わり、千晶はボクの存在を消しました。
……正しく言うと、けじめをつけるために田潟杏関係のデータを全部消しました。
楽しかったけど、それを楽しかったで終わらせちゃいけないと思ったから。

だから今もボクはごみ箱の中から千晶を見守っています。
あんたがた、そして謎解きにに対してどう向き合っていくのか、ボクは仮想の青春から見守っています。

これから千晶はどうなるんだろうね、楽しみだなぁ。

「……は?解神通ったんだけど?」

……ボクには想像できないことをしでかしてるかもね。

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