東京2歳優駿牝馬 全頭診断&予想
前回の振り返り
東京大賞典はまさに世代交代を突き付けるような新興勢力の活躍が目立つレースでした。
勝ち馬~3着馬はスローで流れたことも味方をしてラスト3ハロンで36秒台の末脚を発揮したことで後方、外を回す、地方勢にとっては出番を与える隙も与える余地もなしといった印象。
4着のウシュバテソーロは年齢面から来る衰え、スピード力の欠落がモロに出た結果から今後は前がバテバテになって止まるような超消耗戦でないと好走は厳しく、6着のデルマソトガケはレースに向けて馬の気持ちが追い付いて来ない限りはズルズルと落ちていく一方でしょう。
第6回検討会 東京2歳優駿牝馬
今回取り上げるのは12月31(火)に大井競馬場で開催される東京2歳優駿牝馬です。
位置づけとしては中央競馬の阪神JFのような2歳牝馬限定戦。南関東生え抜き馬、門別所属馬、そして門別から移籍をしてきた南関東馬のが激突をします。
例年よりは走りやすそうな路盤状況の今年の大井競馬場ですが、それでも実力が拮抗した馬同士がぶつかるゆえ体力、根性も要求され好走馬は後に浦和桜花賞、東京プリンセス賞、関東オークス、ロジータ記念といったマイル~中・長距離の世代重賞で好走をすることからも「見え見えのスプリンターはお呼びではないレース」であることが読み取れます。
また門別からの長距離輸送となる馬はテンションが上がってしまってレース前に消耗をしたり、体重を大きく減らすリスクもあることから当日のパドック、直前情報は特に注意が必要となります。
では今回もまずは全馬を見ていきましょう。
1 ゼロアワー(矢野)
日本ダートの大種牡馬であるサウスヴィグラスの後継種牡馬ながら2024年12月31日段階で唯一のステッペンウルフ産駒として登録されている競走馬。
2019年、当時まだ地方限定戦だった羽田盃トライアルの京浜盃の勝ち馬で羽田盃では3着と好走。しかし、その後は怪我もありレースに出走することなく引退、種牡馬入りとなりました。
新馬戦を勝利後はデビュー3戦目のフルールカップで重賞初制覇を飾りその後は距離を段階的に伸ばしながら3連勝を飾ると中央交流重賞のJpn3 エーデルワイス賞、Jpn3 JBC北海道2歳優駿など眼中にも置かず南関東競馬へ移籍し能力試験合格後はここ1本に合わせて調整を重ねてきました。
見慣れない血統の組み合わせ故に「亜種・特別変異?」と感じるかもしれませんが母のステップフォードの3つ上の兄が2018年G3京成杯、G2セントライト記念の勝ち馬であるジェネラーレウーノがいたりと実は良血。
来年の3歳クラシック戦線へ向けまずはこの2歳戦で実力試しとなります。
2 バイアホーン (安藤)
400kg前後の小型馬ですが社台生産のブランド馬。
デビュー戦こそすんなり勝ち上がりますが、その後は馬体が増えるどころか使い減りを起こしてしまい1か月の休養を挟んで10kg近く体重を戻した前走も見せ場はなく惨敗。
そこから1か月半を置いて厩舎での調教は重ねてきましたがただでさえ内枠が苦手な馬が多いキンシャサノキセキ産駒にも関わらず揉まれたり砂を被る場所に入ってしまったことは大きな割引材料。
昨年同レースで穴を開けた鞍上ですが今年は・・・。
3 ウィルシャイン(本田)
3戦3勝。前走はハイペースの流れを後方から差し切り重賞初制覇を達成した南関4場で最もレベルの高い馬が集まるとされる船橋所属馬です。
父は鈍足スタミナタイプのジャスタウェイ、母父はスピード全振りで本来だと地方競馬の砂が割引材料になるスパイツタウンですがお互いのダメなところを良いところで現状は上手く相殺。
東京2歳優駿牝馬はスプリント気質の馬が前々で競馬をして体力勝負になることが多いので1600mへの距離経験があること、重賞レースでハイペースを差し切った経験があることは大きなアドバンテージとなりそうで今回も好走出来る可能性は高いと見ています。
ただし初の右回りへの対応力、大井競馬場屈指の変態条件である内回り1600mは最後の直線が短くコーナーで加速をしながらレースをしないと前を捕えるのは難しいこと、今節の前受け内有利のトラックバイアスに準じた乗り方が出来ず仕掛けが遅れた場合は凡走します。
4 アメストリス(野畑)
こちらも船橋生え抜きでこれまでに新馬戦、条件戦を3勝しています。
ただし3戦目に川崎競馬場で行われたオープンレースにて南関4場で最もレベルが低いとされる川崎、浦和所属馬に惨敗。
その際の勝ち馬であるピンクタオルチャンは次走のS3 ローレル賞で10着と惨敗、2着のシェナノパリオもオープンレースで勝ち切れない馬ということでこの辺りにマウントを取れない船橋馬はここでは現状重賞では力が及ばずという評価に落ち着きます。
中間は意図的に出していくような調教を続けておりスタート難と向き合う姿は見られますが、もう少しメンバー関係が下がったところで狙いたいです。
5 エスカティア(落合)
①ゼロアワーと道営時代には同じ重賞を走って2着、3着と好走も明確な力差を示されています。
サンダースノー×エンパイアメーカーとスタミナ面の問題は全く無いため1600mという距離やペースが乱れるであろうこのレースへの耐久力という面では推したい一頭。
既に浦和の小久保厩舎へ移籍をしているので当日の輸送は最小限の負担に抑えていますが、この中間で目立った時計は1本のみ、①ゼロアワーと対照的に能力試験を受けないままこのレースに挑んだりと意欲を感じない点は気になります。
6 ヴィルミーキスミー (金山)
門別所属ながら園田、盛岡、笠松などの2歳重賞へ遠征。
しかし格下相手と睨んでわざわざ遠征をしながら馬券内にも入れない惨敗を繰り返しておりこれまで遠征してきた3場と比較するとレベルが上がる南関東S1格付けの重賞では力は不足していると見て良さそうです。
7 カリフォルニアクローム (阿部)
デビュー2戦目のサッポロクラシックCで重賞初制覇も3戦目のフローラルカップでは内枠で砂を被る展開がアダとなり大敗。その後はJpn3 エーデルワイス賞へ向け調整も感昌で出走を取り消してそれ以来の実戦となります。
カルフォルニアクローム産駒の典型例である「内枠×、外枠◎」の馬でエーデルワイス賞では12頭立ての7枠11番で激走を狙っていた人も多いのではないでしょうか?
この枠だと行きたくても外から来られてしまって怯む姿は浮かんできます。無理やり出して行けば激流展開を生み出してしまったり、それに飛び込むことになりますが外々追走なら対応できそうな血統構成。
8 ドナギニー(鷹見)
今年のヤングジョッキーシリーズを制した鞍上を背に人馬共に初の重賞制覇を狙う一頭。
デビュー2戦目のつばめ特別では今回と同条件の牡馬混合戦で勝利をしており輸送や初コースとなった前走のS3 ローレル賞ではハイペースのゴチャゴチャした流れの中で先行気味に運んだ上での5着と良い経験となりました。
白砂、砂厚10㎝時代の良馬場の大井1600mを1分43秒2の時計で勝利していますが、これは現在の白砂、砂厚9cmの大井良馬場で行われた前日の古馬C1クラス8Rの勝ち馬であるルーラーオブダートの1分43秒5と比較しても0.3秒速く大箱の大井コースに戻る今回見直したい一頭です。
※ルーラーオブダートはC1馬ですが重賞実績のあります。
9 ヨルノチョウ(福原)
12月25日に浦和馬同士のオープンレースを惨敗。
浦和の中でもあれだとここでは語ることが無い。
10 エイシンナデシコ(御神本)
地元戦で勝ち切れないレースが続きましたが11月に盛岡競馬場で行われたプリンセスカップへ遠征し重賞初制覇。先に抜け出したスティールブライトを最後に何とか差し切った苦しいレース内容はここに何か繋がる感じはしません。
今年2月のG1フェブラリーSにて3冠を成し遂げたミックファイアではなく前日の東京プリンセス賞でラストランを迎えたスピーディーキックに騎乗した御神本。これについて「チーム益田を押し付けている」という風潮が広まったことから調教師は「馬を選ぶ決定権は本人にある」と強制的な騎乗をXで否定はしていましたが、御神本側が「チーム益田」への思いから「実力よりも人の縁を優先」しているのは誰の目から見ても明らか。
今回に関しても他に可能性がありそうな馬の騎乗も出来た中でわざわざ選ぶほどの馬かと言えば・・・?
11 ランベリー (和田)
近親に門別の快速馬として名をはせたアザワクがいるスピードタイプの馬。
デビュー戦では能力試験時から見せていたゲート難による大出遅れ惨敗で始まった競走馬生活でしたがデビュー5戦目のS3 ゴールドジュニアにて低評価を覆す重賞初制覇を達成。
本来は短距離のスピードタイプながらこの馬に合った条件が少ないこと、牝馬というアドバンテージを生かすべく1600mの条件戦を繰り返し使う中で折り合い面の課題と向き合う方にシフトチェンジ。前走のS3 ローレル賞では後方から追い込んでの4着と実力を示しました。
相変わらずのゲート難に加えてどうしても距離を逆算しながら慎重に運ぶ必要があるスタミナ面の課題があり、内ラチを頼って距離を誤魔化してジリジリ伸びるのが現状は精一杯。
砂を被りにくい外枠になったことはプラスですが、15頭立てで実力に差が無いメンバー同士となればよほどの前崩れになった際に浮上があるかどうかの評価に留まります。
12 クレイジーフルーツ (篠谷)
初の1600mだったレベルが低かった前走の条件戦で惨敗。この厩舎は短距離系の馬を極端に下げて追い込み一辺倒で競馬をするのを好む傾向があることからも今回もその競馬でハマるのを待つと思います。
しかし内回りでこの馬自体にも距離不安があるとなれば印を回す必要性は感じず・・・。
13 エイシンマジョリカ (岩橋)
中央交流重賞Jpn3 エーデルワイス賞の2着馬で牡馬混合の地元重賞ネクストスター門別でも3着と奮闘。
後方から鋭く迫るタイプの馬で1200m戦では常に速い上りを使えていますが初のマイル戦への対応力は未知の領域。今回も後ろからの競馬にはなるので前が苦しくなったところで体力を残して直線を迎えることが出来れば上位進出は可能も適性が無ければ手応え詐欺で後退していきます。
門別の坂路の時計は良いですが、時計の出し方がスプリンターっぽい感じがしており南関へ移籍をしていないのも来シーズン序盤から続く短距離重賞を優先したということであれば推しにくいです。
※元々南関東は3歳短距離重賞、オープンレースが少ないためこのタイプの馬は移籍のメリットが少ない。
14 プラウドフレール(張田)
ギャルダル、ミスカッレーラと大井のマイル戦で好走実績のある兄と姉がいるスリーメロディーの3番仔。姉のミスカッレーラは昨年のこのレースで2着と好走をしています。
デビュー3戦目に川崎馬中心のレースでまさかの惨敗こそありましたが、前走のS3 ローレル賞は内々を立ち回りながら徐々に位置を上げて行き3着と好走。最終追い切りでは右回りで抜群の時計と動きを見せており陣営のコメントから自信が見えます。
矢野がゼロアワー、御神本がエイシンナデシコを優先したことで3番手候補として張田に馬が流れてくる形となりました(森の引退、吉原の同日の高知騎乗の影響も大きい乗り替わり)
脚質は問いませんがスタートしてすぐにコーナーの1600m戦ということで外々を回されるレースだけは避けたいところで好発からのポジション取りは好走に必須条件。
15 オリコウエレガンス(今野)
前走のローレル賞で後方追い込みを決め2着と好走。南関4場の中でも特にレベルの低い川崎所属馬で実績も乏しいのに人気となっていたことから罠だろうなぁ・・・と思っていました。
決め手はありますがその一方でレースが後ろからになってしまう問題点があり、大外枠になったことで内の位置を取れない場合はひたすら外々を回される苦しい競馬となることが想定されます。
⑭プラウドフレールに騎乗する張田と違いその辺に積極性がない鞍上ということで決まった位置で決まった競馬をした場合、内、前有利な今節のトラックバイアスと内回りで直線部分が短い大井コースは割引材料。
輸送もあってか前走より最終追い切りもセーブ気味であり状態は現状維持か出来落ちと見ています。
結論
印
①ゼロアワーの移籍初戦を楽しみにしていた私ですが今回は1つ印を下げてローレル賞での良い経験を経て地元戦に挑む⑧ドナギニーの評価を上に取ります。
型や適性が定まっていない同士のレースのため道中はなかなか落ち着く場面が無いまま中盤までレースが展開されます。
実力最上位の①ゼロアワーは外をスムーズに運べばぐんぐんと伸びる馬ですが砂を被ったりスムーズな競馬が難しい最内枠は鬼門。気性面の難しさもあることからこれが原因で折り合いを欠く様なことになれば危険信号となります。
買い目
今からちょうど2年前の12月30日、当時19歳だった鷹見は所定の場所以外での喫煙が火災予防に触れるとして騎乗停止処分が下りました(何かおかしいことに触れたら負けです)
そこから1年2か月間に渡り自主的な騎乗停止(父親兼所属の鷹見浩調教師の意向)を経て復帰後は腐ることなく勝ち星を積み重ねて来年以降も更なる活躍が期待されるまでに成長。
ヤングジョッキーシリーズ優勝に続くビックタイトルをここで成し遂げることを期待したいです。
雑談
年末っぽい雑談でも書こうと思いましたが、「皆さんの声やいいねが励みになります!!!」とかいう浅いお気持ち表明が嫌いで「いい歳して何言ってるの?」と冷めた目で見るタイプゆえ違った話をしようと思います。
競馬界隈は最近荒れていることが多いなと感じます。いわゆる新しい価値観と呼ばれる人たちについては自分は「好きにしたら・・・」と感じるタイプであり「そういう人(新しい価値観)たちは全部間違ってる。俺たちが正解だ!」と主張の激しいポストが流れてくるとやってることは角度が違うだけで同じだろそれ・・・と呆れることも。
皆さんがよく言う「新しい価値観」側からすればそのような発言の1つ1つは「古い固定概念」、「老害」と思われるのが関の山でしょう。
新規の人が増えれば増えるほどこのような論争が増える気がしますが、いつまでも新鮮な気持ちで色々な人と接するそんな1年を来年は過ごしていきたいですね。