東大生が東大を訴えてみた【第1回】
下駄です。
前回の記事で「柱書」の部分に誤解があったので、訂正しました。
ご指摘ありがとうございます。
引き続き、裁判の申し立てを進めていきます。
訴状を書く
裁判の申し立ては訴状の提出をもって行います。
訴状は、
原告および被告の名称、住所等
請求の趣旨
請求の原因
の3パートから成ります。
このうち、「請求の趣旨」と「請求の原因」については、行政訴訟では書式が自由とのことだったので、Microsoft OfficeのWordを用いて作成しました。
(裁判でもワープロ使っていいなら大学生が手書きでレポート書かされてるのはなんなんだ??? )
「請求の趣旨」の内容がこちら。
前回説明したとおり、法人文書不開示の取消を求めます。
訴訟費用についても請求の趣旨として記述しなければならないようです。書かなかったらどうなるんだろう。
続いて「請求の原因」がこちら。
前回の記述に多少の補強をしました。
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第3条と第4条については単に開示請求の権利について定められているだけで、特に問題ありません。
法第6条は、部分開示について定めています。
「不開示情報」とは、前回から度々問題になっている法第5条にひっかかる内容のことです。法第6条は「第5条にひっかかっていない部分については開示してくださいね」ということを言っています。
具体的には不開示情報が黒塗りされた状態で文書が開示されます。
皆さんも「海苔弁」という言葉を聞いたり、もしかするとニュースなどでそのものを見たことがあるんじゃないでしょうか。
筆者の立場としては基本的に「法第5条にあたらないでしょ」というものですが、「仮に法第5条にあたるとしても、それ以外の部分も不開示なのは(のり弁すら出てこないのは)法第6条違反でしょ」という主張を付け加えました。
ちなみに「懈怠」は「サボり」を難しく言ったことばです。元は仏教用語です。厨二心に刺さりますね。
いったい何ライフ愛好会なんだ……。
なお法律用語としての用法が合っているかどうかは保証しません!
また、「知る権利」についても言及してみました。知る権利は、人民が政治に関する情報を、権力に妨げられることなく知る権利のことです。
法は知る権利を制度的に保障するための法律と言えますね。
ではその権利の法的な源泉はどこかというと、日本国憲法第21条です。
鋭い方は「あれっ」と思ったかもしれません。なぜなら憲法21条は「表現の自由」を記述したものだからです。
憲法21条の条文を見てみると、知る権利については直接書かれていません。
憲法解釈は全く素人ですが、じつは表現の自由にはその前提として真実を知る権利も当然含まれていると考えられているそうです。
とはいえ、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が成立したのが筆者の生まれた1999年、法が成立したのが2001年なので、わりと最近まで知る権利は満足に保障されていなかったようですね。
ちなみに、法こと独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の制定が2年遅れたのってなんでだろ、と思ったのですが、独立行政法人って橋本行革の産物なので、2001年までは存在しなかったんですね。
名前が耳に馴染みすぎて気づきませんでした。
このあたりは暇なときに憲法の教科書を参照して加筆しようと思っています。
さて、今回問題になっているメールは、「国立大学法人東京大学が市民団体からの申し入れに対してどのような対応をしているか」という内容です。これは知る権利の対象である「政治に関する情報」のど真ん中と言えますね。(音ゲーだったら「良」とか「Perfect」ってやつです。)
しかもリークによれば、申し入れの中身を見ることもなく、最初から門前払いが予定されていたわけですから、重大です。
ならば知る権利や法の趣旨に基づいて文書を開示すべきである、ということをここでは主張したつもりです。
それに加えて、法的に意味があるかは不明ですが、「原告(筆者)は東大生であり、東大の研究倫理がガバガバだったら自分に降り掛かってくる可能性あるんですよね」ということも書いておきました。これは説明するまでもないですね。
文字ばっかりのパートおわり。お疲れ様でした。
訴状を提出する
さて、出来上がった訴状を提出しに行きます。
訴状、切手、裁判手数料の3点が必要です。
切手は事前に用意していなかったので、地下の郵便局(東京高等裁判所内郵便局)で買います。
6000円分、指定された組み合わせで買う必要がありますが、この郵便局ではデッキが組まれた状態で在庫されていました。
再び地裁14階の民事訟廷事務室事件係に来ました。
事務官「訴状は自分用、被告用、裁判所用で3部用意してください。」
もっと早く言ってよぉ~
自分用、保存用、布教用でしたっけ?
地下にファミマがあり、コピーができました。
14階(3回目)。(撮影禁止のせいで結局文字ばっかりになってない? )
今度こそ必要なものは揃っています。
事務官「訴額がいくらになるか諸説あるので、手数料は後日納付してもらいます(意訳)」
そういうパターンもあるんですね。
おさらいですが、財産権上ではない争いについては、訴額(争っている金額)が一律で160万円の扱いになります。
今回は不開示決定2件の取消を求めていますが、これが一体のものなのか(160万円)、それとも別々のものなのか(320万円)によって、手数料が変わってくるとのことです。
320万円想定で手数料2万1000円を準備してきましたが、今回は必要なかったようです。
事務官「では訴状を受理します。」
受付票を渡されました。
地裁民事第51部というところが担当のようです。
事件番号は「令和6年(行ウ)第129号」とあります。何やら意味ありげな記号ですね。
調べてみると、この記号は「行政事件記録符号規程」という規程によって定められており、「行ウ」は地裁の普通の行政事件に割り当てられるらしいです。
つまり、「令和6年(行ウ)第129号」は「東京地裁で2024年に提起された訴訟のうち、普通のもので129番目の事件」という意味らしいです。
何はともあれ、これにて正式に裁判が始まりました。
事務官「ところで、いま証拠を提出することもできますが、どうしますか? 」
「ついでにオイル交換いかがですか? 」的なノリで言われましても……。
と思いきや、証拠持ってました。
前回出てきた「法人文書不開示決定通知書」です。
証拠も例によって3部用意する必要があるのでファミマに行きました。
3点提出し、「甲第1号証」から「甲第3号証」までハンコを押されました。それっぽくなってきたー!
ここまで30分くらいでした。
くぅ~疲れましたw これにて訴状提出完了です!
お手紙
2週間ほどして、裁判所から郵便が届きました。
おっ、日程調整来たか?!
「事務連絡」。
1C係に係属した。
2万1000円払え。
……はい。
結局、訴額は320万円になったようです。
ここに収入印紙を貼り付けて持っていけばいいようです。
どちらかというと、同封されていた別紙の方が重要そうです。
「お前の訴状読みにくいねん」と言われているようです。
「行政事件訴訟法」という法律が出てきました。
ここではあまり特別なことは書かれていないようです。重要なのは、「取消し」、「確認」、「義務付け」、「差止め」の区別を理解し、何を求める訴訟なのかわかりやすく書くことにありそうです。
元の「請求の趣旨」では、
と「取消し」と「義務付け」を一緒に書いていました。
それを、
と書き直してね、と言われています。
ちなみに受付の事務官氏は、「『第2023ー69号』みたいな処分の番号は、学外では通用しないから、どういう処分なのか特定できるように書いてください」と言っていた気がするのですが、書記官氏の意見は違ったようです。
特に異存はないので、「はい、請求の趣旨の記載を上記のとおり訂正します。」の方にチェックをつけました。
というわけで、収入印紙と回答書を提出してきました。とくに面白いこともなく、30分くらいで終わりました。
次回予告
次回から実際に裁判っぽいことが始まりそうです。お楽しみに。
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