菊池寛『俊寛』

菊池寛の『俊寛』に興味を持ったところ、青空文庫にあったので読んだ。

流された地でたった3人、どうしてもいがみ合う。俊寛から見ると自分が除け者にされていると感じるという。仕送りは成経コネクションに依っているし、成経や康頼が衣類を残してくれたことを思うに温情をなくしてはいないのだろうけれど。

帰京を許されず荒れ狂い、憎しみから逃れるように自給自足のための作業に没頭し、女との出会いを経て家族をなし、価値観が一変する。
しかし、訪ねてきた人にとっては、都人を捨てた姿はあさましい(が、家族との姿に涙する)という。

どこに重きを置くかによって見方は変わるだろう。

いつ俊寛が変質したか。
新しい家族を得たのが切欠と読むと、それは都に戻れぬ身にとってはせめてもの幸いではあろうが、なんとも哀しい。やはり「あさましい」のだろうね。

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