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エルデンリング 感想

基本データ

  • プレイ環境
    PC (RTX2070S, Ryzen9 3900X, 64GBRAM)

  • プレイ時間
    73h

  • プレイ日程
    2022/2/25-2022/3/10

  • クリア状態
    実績コンプ済み(バックアップ利用)・基本脳筋

感想

オープンワールドの意味と報酬

前回のHorizonのレビューで書いた通りではあるが、オープンワールド(OW)がUBI的な明確なストーリーラインが存在しサブミッションを沢山こなすだけというゲーム性でしかないものが大半である中、本作は各所のレビューで触れられている通りゼルダの伝説BotW以来の冒険感を重視したOWであることの必然性をもったOWとして生み出されている。

本作がいわゆるソウルライクシリーズの系譜であることは誰も疑いようもなく、デモンズソウルから続く難しめに設定されている戦闘+細かく色々なルートが用意され探索し甲斐のあるMAPという構成で受けていたシリーズの魅力に関して、評価の高かった入り組んだMAPはレガシーダンジョンと呼ばれる作中にいくつか存在する巨大な構造をもつMAPとして魅力は損なわれない形で提供され、もう一つの肝である戦闘のサポートとしてOWが活用されている。

今作は世界全体に大小様々なミニダンジョンと呼ぶべきものが満ち溢れており、そのすべての報酬は肝である戦闘に関連するものとして用意されている。
MAPにおける要素を切り出すと

  • 廃墟 地下への隠し入り口があり、軽いボス戦または直接宝箱がある 

  • 洞窟 小ダンジョン、アイテムに特に傾向はない

  • 封牢 ボス戦

  • 地下墓 小ダンジョン、主に遺灰関連アイテムが手に入る

  • 魔術塔 謎解き 魔術が手に入る

  • 黄金樹 ボス戦 回復アイテムが手に入る

  • 坑道 小ダンジョン 主に武器強化素材が手に入る

などとどれもこれもボスか小ダンジョンでしかないのではあるが、それぞれの報酬として戦闘にかかわる報酬を用意することで
メインのシナリオボスを倒しに行く(セーブポイントによる誘導がある)→ 強敵なので苦戦する → 強くなるためにボスを放置して世界をめぐり強化する
というゲームのサイクルが回るようになっている。

これはUBI的OWの特徴である、メインの寄り道でサブクエするかであったりとか収集物集めるかなどという本筋とサブミッションを独立して実行し、その置き場としてシームレスフィールドが用意されているものと違い
探索とメインが地続きになっているOWでなければならないコンセプトとして十分に成立しているように思う。

またこの方式はゼルダBotWでよく見られた言説の「報酬が結局コログしかないことに気が付いて飽きた」というものに対する回答になっていると思われる。最終的に行うことが戦闘一択であるのでダンジョンそのものはマンネリでも報酬が戦闘に関する多様であるため満足感で飽きにくいというのが目指した先なのではないかと思っている。

研ぎ澄まされたレガシーダンジョン

今回の肝であるOW性の評価に移る前に、以前から変わりない部分ではあるレガシーダンジョンに関しての評価を述べたい。
本作には全6個のレガシーダンジョンが存在する。6個と聞くと以前のシリーズと比較し少ないようにも感じるが、6個の中でも3つほどは以前のシリーズにおけるMAP2~3個分の巨大さを持ち今までと比にならないレベルの入り組みと攻略の幅が用意されている。(ダクソ3でいうと、アノロン+イルシール+地下牢くらいの大きさのMAPが存在する)

本作屈指の王都。見える範囲は全ていけるどころか地下も存在する。

正直なところこの部分だけをみても驚異的であり、かなり念入りに探索したつもりでもまだ知らないルートが見つかるなど尋常じゃなくやりがいのあるダンジョンが提供されいる。この部分に関しては旧作の期待をはるかに超えた作りこみが提供されている。
実際のところはわからないがダクソ2で批判された毒沼を抜けたら溶岩でした、のようなMAPの繋がりをダンジョン間で考慮する必要がなくなったためこれだけの広大で入りくんだものが提供できたのかもしれない。
そうであればそれだけでもOW性を取り入れた意味があったと思うほど、広大で緻密なダンジョンは素晴らしく、シリーズ経験者であれば必見である。

探索順が自由になった弊害であるNPCイベントの困難さ

ここまで絶賛してきたわけであるが、ここから本作が持つ欠陥をしてきしなければいけない。
まず前提として本作の旅路はユーザー毎にかなり異なるものになるはずであるため、自分がたどったクリアの軌跡を記載することにする。(ネタバレは序盤のボスを除き配慮する)

1.開始早々導きの通りにマルギットに向かい思ったよりも強かったことに萎えて諦めレベル上げがてら世界を回ることにする
2.啜り泣きの半島で獅子の混種を倒しレベルと強化が整ったところでマルギットを倒す
3. 城の脇道を通り抜けリエーニエを探索、ある程度したところで城行かなきゃと思いなおしゴドリックを撃破
4. ひたすらMAP埋めるのが楽しいなーと思い、そのままマカールを倒すルートでアルター高原に到着
5. 探索済みだったリムグレイブがいつの間にか祭りになっていたりでぼこぼこにされて萎える
6. そういえば行っていなかったと学院に行ったら適正レベルはるかに超えていたらしく、ボスがすぐに溶けてがっかりする
7. 王都をうろうろして育てて祭りに戻ったらあっさり倒せてしまう
8. 隕石後を調べたら奥地で宝箱にその運命にないとかいわれて萎える
9. スリーシスターズに行き魔女に使える
10. あとは割と流れ通り

こうしてみるとわかるのだが、かなりNPCイベントが消えるような動きをしている。探索がたのしーたのしーと言っていたら、いつの間にか祭りが始まっていたし、倒したら魔女のイベントはそれに向かうもので大体終わっていたみたいな虚無感を得る羽目になってしまった。
探索順序があまり明確でない本作は分岐があるとはいえ順路が明確になっていた旧作と比べイベントを取り逃しやすく、せっかく作られている世界観を感じられるイベントが体験できないのは明確なマイナス要素。
解決方法としてはシナリオ進行度によるMAPロックなどが考えられ、OWの自由さとのトレードオフになるが実際に進行度ロックがある場面もあるのでそういった選択肢もあったのではないかと思う。

その他にもイベントでNPCが脈絡なく遠くに移動することがあり、イベントを取り逃さないことが困難である。多くは語らないという美徳が賞賛されているシリーズだけに塩梅は難しく、実際ほかのOWゲームのようにサブクエストが一覧化され、マーカーがあるみたいになると興ざめではあると思うがここは配慮できなかったものか。NPCと会ったヒストリーと会話の要約ログを見返す機能程度であれば世界観は維持しながら取り逃しも減ったのではないかと思う。

チュートリアルの不親切さ

以前から細かい語りをしないゲームではあったが、本作では戦闘に対して実施してほしいことへの誘導があまりにも杜撰に感じる。
本作で強いシステムは遺灰・戦技になるのはクリアしてある程度ネットも見た人間であれば否定しようもないことであるが、まず初期から使えるはずの戦技に関しては使い方こそチュートリアルダンジョンで出るものの、最初から盾を装備しているため武器による戦技ではなくパリィが出てしまうためその強さに気づきにくい事態になっている。
強さを示すためにもここは、R1では一撃で倒せない敵を戦技では一撃で倒せるといった流れにしておけば戦技を有効に使わなければという意識が生まれるはずであり配慮が行き届いていない。

また遺灰に関してはさらに酷く、イベントで遺灰を使うためのアイテムが得られるようだが個人的にそのイベントがスキップされてある程度進むまで(ゴドリック倒すまで)その存在に気が付かなかった。
この辺は明らかに救済要素として提供されているのにそれを見逃す作りにしているのは開発側のわかってくれるだろうという怠慢にすぎない

探索要素にしても武器強化の原料である鍛石が多く落ちているのは坑道であるという基本的な知識として必要なことすらゲーム内でアピールせず、ゲーム外部の公式で序盤のTipsとして提示することになるのは説明不足だろう

歪な育成と戦闘

最初に述べた通り全ての探索要素は戦闘につながる報酬が得られるようになっている。
これ自体は問題がないが、その弊害として以前のシリーズよりも武器強化による恩恵は大きくなり探索は必須ともいえるバランスになっている。そのことにより報酬が報酬でなくなってしまう問題が生じている。
どういうことかというと、せっかくダンジョンを制覇して新しい武器を手に入れてもその強化素材が足りないので新しい武器に変えても強みが出せないということが頻繁に発生する。
正直なところ自分のプレイではそういった理由で最後までロングソード一本の戦いになり、各地を探索するのは最初は楽しかったが途中からはどうせなんもないのにっていう虚無感の方が強くなってしまった。
そうでなくても武器には利用するためのステータス制限もかかっており、降り直しが途中からしかできずしかも有限である本作では気楽に試すことができないこともこの悪循環に拍車をかけている。

クリア後くらいのステータス。知力・信仰がないのでユニーク武器はほぼ試せなかった

戦闘に関しても同様で、本作を成り立たせるためには苦戦→強化の流れが必要であるため従来のR1+ローリング回避だけでは苦戦する難易度になっている。
またゲームスピードに関しても、回避ノーダメが普通になってしまうとこのサイクルが成り立たないため、ブラボ・ダクソ3・Sekiroとゲームスピードは速く・爽快になっていった近作と比較し、わざとプレイヤー側のスピードは落としダクソ2あたりの挙動に戻っているように感じる。
RPGとして成立させるために必要な措置だったことは否定しないが、近作特にsekiroにおける戦闘は研ぎ澄まされて新しいアクションの完成形といえる仕上がりになっていただけに単純に戦闘で比較すれば劣化したとみられても否定はできない。

装備を強化したり、遺灰・戦技を使うことで過去作より簡単になるのは間違っていないが、前述のとおりそこまでの道筋がチュートリアルとして機能していないため特に序盤は理不尽に思う。

全て強化できたり何回も振り直しできることにゲームデザインとして否定をするという気持ち自体はよくわかるが、そのせいで用意した報酬が満足に試してもらえないのであれば本末転倒である。
例えば夢の世界といういわゆる訓練場的なマップを用意し、その中では自由に降り直しができて武器の強化も自由に行えDPSチェッカーとして案山子を立たせておき、違う武器だったらどういうモーションなのかDPSどの程度出るのかというのは気楽に試すことができ、それをもって自分のビルドを見据えてから実際の現実で降り直しができる。
こういう場所を用意すれば世界観も崩さずに、新しく報酬を得ることにたいしてわくわく感を持続させるのは可能だったのではないだろうか。
物量こそ増やしたものの適切に試す手段をプレイヤーに与えていないため、死に要素となっているものが多くもったいなく感じる。

視点に基づかない探索

これはデザインの方式であり欠点とは言い難いが、よく比較のやり玉に挙げられるゼルダBotWが徹底的に視点にこだわった探索を追求する一方で本作は視点をヒントにする行動は結びにくくなっている。
ゼルダが遠くからでも見える塔に上る、開けた視界でどこに行きたいか目で見てピンを指す、そこに移動する中で祠やコログなどがありそうな場所を視認し到達することで実際の成否としてコログによる追認が行われる。という自分の視界で見たことがスタートでありその移動そのものが遊びであることと比較し、エルデンリングで開けた場所における資格による情報量は決して多くない。

ゲーム側からの誘導ではなく、自発的な行動として隅々までの探索をしてほしいというデザインであると思うのでそれ自体を否定するものではないが、やはりそれでは探索の末の報酬が使えるものでないと不満を抱くのは当然であり、やはり丁寧な配慮が必要だったのだということにしかならない。

最初の大ボスを倒した後の視界。大きな城は確認できるが情報量は少ない
最初からいける荒野の視界。ほぼ何もなく当てもない探索を強いられる

論外なUI

探索要素を広げたことによるアイテム数の増加は同時に確認のしにくさにもつながっている。
旧来のシリーズと変わりないアイテム整理のUIは、馬鹿みたいに増えた本作のアイテムを管理するためには機能不足であり名前からどの種別のアイテムかを判断しにくいことと相まって、イベント中に手に入れたアイテムがどれだったのかを非常に探しにくくなっている。

それでなくても見失いやすいNPCサブイベントをさらに探求困難にしており、この点に関しては新規アイテムにNewとつけるなどダサいの覚悟でもどうにかする必要性があるように感じる。

タブもアイテムも多く、目的のものを探すのは非常に困難なUI

それだけではなく、ミニダンジョンに関してもどれがクリア済みか後から確認できずその辺りも明らかに不親切である。


PC版における最適化不足

ここに関しては点数の減点もするつもりはないが、明らかにとくにリリース直後はPC版の最適化不足が目立っていた。
ボス中に突如こちらの操作を受け付けなくなり嬲り殺されるのを見たことは5回程度あるし、いくつかの場面ではフレームレートの低下も確認される。
ある程度はしょうがないし正直なところ許容範囲ではあるのだが、メディアによる事前レビューで言及が少なかったことに関しては不信感しかない。

総評

ソウルライクシリーズの新しいチャレンジとしてOWシステムを採用し、その広大な世界と緻密な作りこみで方向性自体の正しさは十分に示すことに成功している。
その一方でゲーム全体のまとまりとしては用意されたコンテンツとそれを試すまでのハードルが釣り合っておらず結果後半になるにつれ探索意味がないなとなってしまったりと、遊び勝手=UXとしての練りこみは不足していると言わざるを得ない。

ダークソウルがその年のGotYとしてはそこまでふるわなかった一方で、近年のGoldenJoystickAwardでオールタイムベストを飾るなどシリーズの礎として高い評価を受けているように、本作も正しい方向性自体は示せているので各要素のまとまりを見直すだけで完璧なゲームになることを期待している。

今の時点で100点のレビューが目立つゲームではあるが、個人的には現段階に100点をあたえることはこのゲームフォーマットの持つポテンシャルの過小評価でしかなく、もっとUXに力を入れることでより素晴らしくなることを期待しているし確信している。


点数:88点

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