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no.1

いつも通りがかるだけで入ったことのなかった喫茶店に入った

そーっとドアを押すと、常連らしい元気なおばさま方と店主が楽しそうに話している
私みたいな客は珍しいのか、一瞬その場が静かになる
いつも少し申し訳ない気持ちになりながら、そのお店の空気を壊さないように、そっと席を探して端に座る

地域の人たちがいつも新聞を読んで、煙草を吸って、テレビを見ている、そんな喫茶店を尊敬しているし、そこに少しだけお邪魔させてもらう時間は本当に楽しい


店内には白い螺旋階段があって吹き抜けになっていてすぐに好きになる
その空間に細いけれど大きな南国風の木が立っているのを見上げる
階段の入り口には"close"の文字があるけれど、柵の隙間から2階部分が少しだけ見えて、お店全体が賑わっている光景に思いを馳せた

座っている席はライトで煌々と照らされていて、舞台の上にいるような気持ちになる
振り向くとそこは出窓になっており、棚部分にはりんごの置き物が赤と緑ひとつずつ



エプロンがよく似合う感じの良い奥さんがお会計してくれる
お店を出る時、美味しかったですとか、また来ますとか、伝えたい気持ちはあるのにいつも言えない私
また来ればいっかと帰路につく

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