千と千尋のおにぎり

久しぶりの食べたいもの日記
今回は食べてみたつもりに失敗した話です




白いごはんは涙の味がすると感じることがある
思春期の頃、どうしようもなく悔しいことがあって、それでも気持ちを表出できない時
言葉も涙も飲み込んで口に詰めたごはんの味を、強く記憶しているのだと思う


千と千尋の神隠しでハクがくれたおにぎりは、知らない世界で自分の存在が薄れかけていた千尋にとって、現実に引き戻してくれる味であり、緊張した心をほぐしてくれる味だったんだろうな

お米には、特におにぎりという存在には、お守りみたいなエネルギーを感じる


わたしの母は漬け物が苦手なので、うちのおにぎり担当は父だった
具は梅干しと昆布、梅干しときゅうりのキューちゃんみたいに、だいたい2種類ずつ入っている
中でも山ごぼうや菊芋の漬け物が好きだった
まんまるに握った大きなごはんの、全体を海苔で覆った爆弾おにぎり
塩もしっかり効いている、父ならではの味
大きい上に柔らかく握ってあるので、食べているうちに崩れてしまい最後にはお箸で食べた

小さい頃に作ってもらった、おばあちゃんの焼きおにぎりも懐かしい
醤油とお砂糖でしっかり表面が焦げた、ほかほかの茶色いおにぎり


おにぎりの味は、完全に再現できないものばかりだ
それは、味覚が思い出と強くひもづいているから

どんな気持ちで食べるか、誰が作ってくれたものかによって、その意味や味がまるで変わってしまうからだと思う

だからこそ、千尋が食べたあの真っ白なおにぎりへの憧れは、永遠なんだろうな


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