仙人チーズの怖い話

嘘話でもガチ話でもいいとの事だったので、”ガチ”の話を持ってきました。

リアルに体験した話なので正直なところオチも盛り上がりにもかけるかもしれませんが、霊感がまったく無い自分が唯一「あれはガチだったかもなぁ」と思える話だったのでどうかお聞きください。


これは今より10年以上前、夏まっただ中の7月ごろの話です。当時高校生だった私は、オカルト系動画や心霊スポット動画にハマっていて、ちょくちょく時間を見て県内や隣県の心霊スポットをめぐっていました。高校の友人達にも心霊スポットめぐりの趣味について話していたので、自然と今度一緒に行かないか?ということになりました。候補として上がったのは、おそらく関東圏でも”最凶”と名高い「旧旧Fトンネル」。心霊スポット好きなら一度は耳にしたことがあるレベルのガチスポットです。

その時の探索メンバーは自分を含め5人、一人は自称霊感が強いと言っている「友人A」、もう一人は時々そういうモノを”見る”言っている「友人B」と”精鋭揃い”です。残り二人はおもしろがってついてきた感じです。


私はというと、どうやら霊感がほとんど無いようで、そこに行くまで5箇所ほど有名なトンネルやダムなどに行っていましたが、一度もそういったモノには出会ったことも感じたこともありませんでした。


当日、高校生だった私達は当然車など持っていないので、電車で地元の駅まで行き、山の中腹にある例のトンネルまで路線バスで向かいました。ぼーっと乗っていたら目的地のバス停を気が付かず過ぎてしまったので、次の停留所で降りてから山の上の方まで歩くハメになりましたが、夏の炎天下も、知らない土地を歩いているというワクワク感で苦にはなりませんでした。


例のトンネルのあるバス停に到着すると、県道が通った巨大な「新Fトンネル」がありました。非常にややこしいのですが、一番新しい「新Fトンネル」が一番下にあり、その上の斜面に「旧Fトンネル」、さらに山の上の方に「旧旧Fトンネル」という形で3段式に掘られていて、トンネルの”かがみ餅”のように積み重なっているのですが、目的地の「旧旧Fトンネル」は100年以上前に掘られた歴史あるトンネルだそうです。心霊情報としては「女の霊が出る」とか「過去に大きな事故があった」とかのありきたりな情報ですが、とにかく関東でも最凶とされているトンネルだそうです。


私達はそのわかりずらいトンネル目指して、山の上に続く古い道を登り始めました。登り始めるとすぐ「旧Fトンネル」がありましたが、こちらも心霊スポットになってるものの、比較的明るく、最凶の旧旧の方には及ばないとのことでさっと一回通るだけで特に何も感じませんでした。霊感のある友人Aは「嫌な感じがするから行きたくない」と行っていましたが、他の4人に取り残されたくないとむりやり付いてくる形に。


そしてトンネルを抜けた真横にある脇道から旧旧Fトンネルを目指して登り始めました。すると登り始めてすぐ、道の真ん中に巨大なフェンスがあり、「この先崩落の危険あり。立ち入り禁止」の文字が。事前に動画を見ていた私はこのフェンスの存在は知っていて、トンネルの反対側からなら安全に登れると知っていました。フェンスからはわずかに旧旧Fトンネルかな?と思われる黒い穴が見えていましたが、安全のために一度そちら側から入るのをあきらめ、旧Fトンネルまで降りると、反対側の入口に向かいました。


反対側の道はとても道とは言えるようなシロモノではなく、途中まではまるで獣道で、しばらく荒れたヤブの中を進むと古いアスファルトに苔が生えた道を見つけました。


そこで突然、自称霊感があるという友人Aが「これ以上進めない」と言い出したのです。もう一人の時々霊を見るという友人Bは「そんなヤバいとこじゃないよ〜」みたいな有識者ぶってましたが、友人Aは本当に足がガクガク震えていたので無理に連れて行けず、「下のバス停で待ってるよ」といい、急ぎ足で山を降りて行ってしまいました。残された4人は「あれは過敏すぎるよねw」とか「まだ道の途中なのにw」と散々煽り散らかしましたが、実のところ”ガチなのか?”という不安で4人の会話は少なくなっていきました。道中古いカーブミラーの残骸を見つけたり、道の真ん中にいたアオダイショウ(ヘビ)を掴んで、手が死ぬほど臭くなったりしながら登り続けると例のトンネルが見えてきました。


そしていざトンネルの前につくと、ある状況に絶望することになります。そのカマボコ状のトンネルの入口を完全に塞ぐ形で「鉄の扉」が設置されていたのです。

「こんな情報は無かった!」と焦ってあたりを見ると、その鉄の扉にラミネート加工された一枚の張り紙が。


「崩落の危険あり、2009年3月閉鎖、東京都」


なんと4ヶ月前に閉鎖されたばかりだったのです。


なんてタイミングが悪いんだ〜っとそれぞれ文句を言っていると、友人Bがあることに気が付きます。「扉の下、なにかが掘ったあとが無い?」


確かに鉄の扉の下、固く踏み固められた土の部分を誰かが掘った跡が。まるで中から”何か”が出てきたような、もしくは中に入りたい誰かが掘ったのか。


ちょうど腕を伸ばせば携帯で中を撮影できそうな大きさの穴だったので、腕ごとつっこんで中を撮影してみます。撮影した写真を見ても反対側の入り口の白い光がうっすら見えるだけでほぼ真っ暗。その扉の前は不気味なほど寒く、穴を突っ込んだ手もひんやりと冷えていました。不気味な感じはしながらもこれ以上はなんも無いか〜と諦めかけた時、ある”違和感”に気が付きます。


その日は7月の真っ只中、山の中を通ってきた時も死ぬほどうるさかった「セミの鳴き声」がいつのまにか消えていたのです。

静かすぎて耳鳴りがするほど空気が張り詰めていて、トンネルの前の妙な冷気も相まって鳥肌が立ちます。


"静寂"....とはまさに今の状況の事を言うのでしょう。


すると突然、トンネルの前にいた友人Bが走り出しました。一言も発さずに登って来た道を全力で戻っていくので残された3人は顔を見合わせて、追うように3人とも走り出しました。その時はただ「今すぐここを離れたほうがいい」という本能で夢中になって走り続けました。おりている最中3人とも何も言葉も発せずただ走りました。


友人Bは危険な山道を恐ろしいほど早くかけていってしまい、少しも追いつけないまま気がつくとバス停まで戻っていました。バス停には早めに戻っていた友人Aと、走ったおかげで息切れしていた友人Bが待っていました。


友人Bはひたすら青ざめていて、目の焦点があっておらず、何があったか知らない友人Aも「だから行かないほうがいいって言ったのに!」とぐちぐち言っています。


いったいどうして走り出したのか?と聞くとしばらく沈黙したあと。


「何も覚えていない」


と言うのです。


友人Bはそれ以降ほとんど何も話さずにどこか空中を見つめていました。



その後そのままバスに乗り、駅まで行き電車でそれぞれの帰路に付きました。

帰りのバスの車内は重い空気で、友人Aはやめときゃよかった...とひたすら文句を言い。友人Bは心ここにあらずといった感じでした。


後日、休み開けクラスで集まると、そこに友人Bは来ていませんでした。なんでも発熱と吐き気で休みとのことで、友人Aもあれ以降頭痛が酷かったとの事。


その後、復帰した友人Bに再びあの時何があったのか聞いても「本当に何も覚えて無いんだよね、気がついたら家についてたし」と返されました。


そこで私はあることを思い出し、携帯の画面を友人Bに見せました。腕をつっこんで”トンネル内部を撮影したあの写真”です。


すると友人Bが突然、「やめて!今すぐ消して!」と声を荒げます。再び顔が青ざめ、様子がおかしくなった友人Bに携帯をひったくられる形で奪われるとトンネル関連の写真を全て消されてしまいました。

他の友人は「さすがに芝居がかかりすぎだろ〜」とバカにしてましたが、それ以降、トンネルの話をすると友人Bは落ち着かなくなるので、いつのまにかタブーになっていきました。


これが、今までたくさんの心霊スポットをめぐってきて唯一味わった心霊現象?です...

私は本当に霊感が無いようで、それ以降も最凶と呼ばれるスポットをいくつかめぐりましたが、せいぜい不気味だなぁ...と感じる程度で、あきらかに「空気が変わる」経験をしたのはあれが最初で最後でした。



あれから十年とちょっと....

最近、当時のiPhone3Gの中身を見ることができたのですが、実はあの消された写真はゴミ箱に移されただけで、完全には消えてなかったのです。

高校卒業後は友人Bとも話すことも少なくなり、連絡手段もなくなってしまったのですが、もし今になって例の写真を見せたら友人Bは何か語ってくれるのでしょうか。

それとも本当に何も覚えていないのか...

なぜあの扉は設置されたのか、あの掘り返された穴はなんだのか。

謎ばかり残る夏の思い出でした。

画像1

画像2

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本間ひまわりさんのYoutubeでの配信企画に投稿した話です。

#本間に怖い話

https://youtu.be/ykGV3NTgn6U

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