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「チェチェンへようこそ―ゲイの粛清―」 に見る排除の思想とは?
[Text: みーしか]
[写真:https://www.madegood.com/welcome-to-chechnya/ より]
二度にわたる紛争を経て、一応の復興を遂げたチェチェン共和国。宗教的に、またマッチョ信奉の伝統を持つこの国で、LGBTQは存在することさえ許されない。家族ぐるみで排除されるか、国家警察の“ゲイ狩り”により捕らえられ拷問を受け殺害される。それはチェチェン人だけではなく、たまたまチェチェン国内に滞在していたロシア人も対象である。
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本作はそのような過酷な状況の中、決死の国外逃亡を試みる者たちを救出しようとする活動家たちの姿に密着したドキュメンタリー。首長であるカディーロフの横暴と、その盟主プーチンの責任回避、支援者まで亡命しなければならなくなるほどの異常な弾圧には、戦慄という言葉しか思いつかない。
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さらに特異なのは、本作では「フェイスダブル」や「ヴォイスダブル」という特殊技術が用いられているということ。避難者の顔や声をボランティアのものに差し替え、報復を恐れず語ることを可能とした。その自然な映像には、特殊技術が施されたことなど微塵も感じられない。現在、ウクライナとロシアの戦闘に多くのフェイク動画が投稿されているというが、本作の特殊技術はまさに「フェイク」の有用な使い方といえよう。
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それにしてもここまでの浄化政策は、かつて日本でも行われていた優生保護法による「断種」を思い起こさせる。なんのためにここまで粛清に走るのか。チェチェンだけの特例としてではなく、こうした「排除の思想」を改めて問い直してみたい。
デヴィッド・フランス監督作品、2020年、イギリス=アメリカ
※神奈川・横浜シネマリンなどで公開中
https://www.madegood.com/welcome-to-chechnya/
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