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7-8 お願い…こっちに来て 小説■女主人と下僕

前話




天蓋のベッドの中。ランス国では珍しい、少々東洋の血の入った黒髪白肌の子供じみた童顔のマーヤと、顔立ちは西洋だがジプシー系かそれともほんの少し南方の血が混ざった筋骨たくましいディミトリが相対している。

(さぁて。爺いの講義の内容はひととおりやって差し上げた。我ながらよく正気が保てたよ、途中でマジで気が狂うかと思ったぜ…。よし、そろそろこの下着を)

その時、マーヤがディミトリを中断させておねだりしてきた。

「ね、ディミトリ様!お願い…こっちに来て、口づけして…!」

ディミトリはまずは一度マーヤの顔に登っていって、久々に例の、噛み付くような口づけをした。厚ぼったい舌を時に柔らかく、時に硬くして、マーヤの口内を、歯列の裏までくまなく犯〇尽くした。

「ディミトリ…様」


「ん?」


「あのわたくし前回から思うんですけど…ディミトリ様のこの口づけ…」

ディミトリは顔色を変えて焦った調子で謝った。

「ぅ、あ、す、すいません。だよな。ごめん、いくらなんでもやりすぎだった。だよな、気持ち悪かったよな」


「まさか!違うわ、嫌だったら口づけしてって申すわけがないでしょう?そうではなく…」


「ではなく?」


「わたくし思うのです。こんな、こんなもの凄い口づけ、もう口づけだけで処○を散らされたも同然です。ですから、今のような床入りが全くなかったとしても、先日ディミトリ様がわたくしのお家にいらっしゃったあの日、ディミトリ様がなさった最後の口づけ、あれだけで、わたくしはもう身体の芯までディミトリ様のものになってしまったと思いましたの。だからあの日を境に、わたくし、もう、誰にも二度と、私は純潔の乙女です、処○ですなんて、言えないわ。だって、わたくしが男だったら、他の男と喜んでこんな口づけをしていた女なんかと付き合うのは絶対にいやですもの!」

ディミトリは興奮しながらも思わず小さく吹き出した。

ホッとしたディミトリは筋肉質な浅黒い肩を下げ下すようにして深く息をついて、そして、滑らかな白いシーツの上に両肘をついてマーヤに覆いかぶさり、マーヤの両頬を自分の大きな掌で両側から包み込みながら撫ぜつつ返事した。

「おいおい...そんなこと仰るが、それでいて、なにかと俺に口づけをねだりなさる気がしますねぇ?」

そしてディミトリはマーヤを恥ずかしがらせようとしていやらしく囁くようにたたみかけた。そのディミトリのたった一言の囁きだけでマーヤは肩と喉のあたりをビクッと震わせて困り顔で視線をさまよわせた。だがディミトリは逸らすマーヤの視線を追い詰めるようにねちっこく自分の視線を絡ませながら畳みかけた。

「どっからどう見てもお上品な、しかもこどもみたいな可愛らしい顔しておめえさん、その言い草じゃあまるで、俺のこのえげつねえ、舌を突っ込まれてゆっくり口ん中をかき回されるような口づけをされんのが、そ、その、まるで、うっかり、す、好きみたいっ、つうか、その、き、気に入っちまったように…その、聞こえちまいますよ?」

こんな事を言って揶揄えば、きっとまたマーヤは顔を思いっきり後ろに背けて恥ずかしがるに違いない。マーヤのあの恥ずかしがる表情がどうしてもまた見たい。ディミトリはそう思って、自分も舌がもつれそうなほど恥ずかしい気持ちを必死で押し隠しながら、目を泳がせつつも、こんな柄にもない台詞を、手慣れた男ぶって繰り出したのだ。

ところがマーヤは顔をほんのり赤らめたまま黒目がちな目を潤ませて、ディミトリの瞳を自分から真正面にじっと見つめ、喘ぐような掠れた声で

「はい…!大好きです…!」

と言い切った。

ディミトリはマーヤの大胆に一瞬、虚を突かれて目を見開いたが、自分の背骨に沿って下半身の一番奥にまで目に見えないかっと熱いようななにかが貫いてしまいうめくように官能のため息を吐いて、次の瞬間、狂ったようにマーヤの口内を責め立てた。


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