14-2 わたくし、いじくり回されてしまうの?【小説:女主人と下僕】
「え。ぇ。わっ、わたくし…いじくり回されてしまう…の…?」
困惑顔でディミトリのまさにいちばん破廉恥な台詞を堂々と復唱するマーヤを見て、脅していたはずのディミトリの方が、カッと顔を赤くした。
ディミトリは、マーヤに回していた腕をはんば離すようにして、自分のやりすぎた台詞に自分で完全にうろたえたようになってしまって、後ずさった。
しばらくの沈黙があった。
ところが。後ずさるように一歩引いたディミトリに、マーヤの方はほとんど身体がふれ合わんばかりに、一歩迫るように近寄って、そして言ったのだ。
「あ、あのっ、わたくし、あのっ、本音ではっ。もっと言うとっ、あの、その、昔から。売り場でお会いした時いつもっ」
ディミトリはマーヤが何を言い出すのかさっぱりわからず、ポカンとマーヤを眺めていた。
「ディミトリ様の手を見て、骨張ったちょっと灼けた大きいディミトリ様の手を見るとわたくしどきどきして」
「へぁ?」
マーヤは、目の前にだらんと下がったディミトリの血管の浮いた灼けた手を、自分のふっくらした真っ白な指で、つつ、と触れた。
「う!」
「このディミトリ様の手で、わたくしの身体中を撫で回して貰いたいなぁ、そしたらどんなにか心地よいかしら、と、そんな風に思っていたんです…そ、その、ザレン茶舗の売り場で…ディミトリ様を見ながらこっそりと想像してました…そんなの、その…とても破廉恥な、はずかしい想像ですよね。…ごめんなさい」
「はぅ?!」
「あと。売り場でわたくしがディミトリ様に声を掛けた時、ディミトリ様は、毎回、毎回、照れたようなお顔で思いっきり目を逸らしながら、ご自分の胸の辺りのシャツを、ぐしゃぐしゃっ、となさるでしょう。いつも。あ、あのしぐさが、わたくし、大好きで…」
「ッえ?」
マーヤは一瞬ディミトリに目を合わせたあと、ちょっと頬を赤らめつつはずかしそうな表情で俯きながらも、薄紫のシルクガウンの胸の、鎖骨のすこし下辺りの絹を、売り場のディミトリの仕草をまねて、自分の真っ白なちいさな手でシルク生地をくしゃりとつかんで見せた。
そしてマーヤは、自分の服の胸あたりを掴んだまま、マーヤを目の前で見下ろすディミトリの方に上目遣いでちらと恥ずかしそうに視線をやった。
「わたくし、何年も、毎回、あの時の、シャツをくしゃっとやる、あのしぐさを、骨張ったお手を、どきどきしながら、じっと見てたんです。…もし、あの手がディミトリ様のご自分のシャツじゃなくて…あの手が…わたくしの髪とか、わたくしのブラウスを、くしゃっと、掴んで、わたくしを、さ、触ってくださったら、ど、どんなにうれしいかしらって…何年も前から…」
マーヤは真っ赤になりながら、ガウンの絹を自分で一度くしゃっとつかんだその手を開いて絹から手を放し、真っ白でふっくらした小さな指で、自分のシルクガウンの合間からのぞく自分の鎖骨をつつ、つつ、となぞった。
「ここを…こう…こんなふうに、触ってほしかったの…昔から…」
そしてディミトリの顔を潤んだ目で上目遣いに再び見上げて、
「だっ。だから、ねっ?何も心配なさらないでいいの、思う存分わたくしをいじくり回して下さって大丈夫ですわ。むしろ、わたくしの方こそ、大歓迎です…というか、わたくしこそディミトリ様に、おおいに、いじくり回されたいと願ってる…ので…」
ディミトリは目を見開いて、荒い息を吐きながら固まってマーヤを見つめた。
うつむいていたマーヤがおそるおそるディミトリに目をやるとディミトリが完全に固まっているのを見て慌てた。
「!呆れなさったの?そ、そうですよね、さすがにこんな話、いくらなんでも、はしたないですね…ご、ごめんなさい!…え?どうしたの?ディミトリ様?ディミトリ、様?」
その瞬間、ディミトリは無言でマーヤに襲いかかった。マーヤを掻っ攫うようにがばと抱きあげ、マーヤを抱いて部屋の置くの天蓋のベッドに駆け込んだ。
そして、ディミトリは、マーヤがウッカリ怪我をしないよう、マーヤの後頭部を自分の手のひらで守りながら、だが即座にマーヤをベッドに押し倒し、自分はそのマーヤの前にややかがむように覆いかぶさって息を荒くして叫ぶように言った。
「なんですと?!なんですと?!もう一度言って!言ってくれッ!」
「え?あの?どうした、の?」
「いいから言って!さっきの言葉を!早く!言って!ねぇ!お願いだ!言って!」
ディミトリの狂ったようなぎらぎらした勢いを見てもマーヤはちっとも怖がらず落ち着いて答えた。
「?もう一度言えばよいのですか?…?…はい。ディミトリ様がご自分のシャツをくしゃってやるあの仕草を見ては…わたくし、いつもどきどきして、わたくしの身体にもあの指で触れられたいな、って、ディミトリ様の指に撫で回してもらいたいな、って、こっそり思っておりましたの…何年も前からいつもずーっとそんな恥ずかしいことを妄想しておりました…ごめんなさい…本当に、いけない、恥ずかしい人ですわね、わたし…」
と繰り返した。
「何年も、前から、だと?」
「はい、何年も前から、触られたかったのです…いけない事ですわよね…本当にごめんなさい…どうぞ、お叱りになって下さい…」
「…な!な!貴女は!まったく…!」
ディミトリは、一度深呼吸してから、マーヤの目を思いっきり食らいつくように見つめたまま、マーヤのガウンの双丘の合間の合わせ目の布をゆっくりと手でくしゃりと掴んだ。
「あ!」
ディミトリは、いきなりマーヤの胸のふくらみを掴むのは怖くて、双丘の合間に手を置いたが、マーヤの双丘の盛り上がりは途方もないために結局真ん中に手を置いていると言いながら両側の水袋のようにぷるんぷるんに柔らかい盛り上がりを、むぅにむに、むにむにと撫で回すような格好になった。
「ほうら、お望み通り、触って差し上げましたよ…?これでも、俺に、こ、こんな風に触られたかったと、まだ仰るんですかぃ?」
ぎらぎらと獣めいた瞳で片頬歪めるように歯を見せてマーヤを撫で回すディミトリは、傍目から見れば少女を襲う狂犬のようなおそろしげな様子であったが、マーヤはそんなディミトリにすこしも臆せず、ただただ愛しげに優しくディミトリに返答した。
「あ!はい…はい…!そうなんです…どきどきします、触られてとってもうれしいです…ぇ?!…ぁっ!ぇ?…ん!ぁ!そ、それは!それは!ちょっと!…ァッ!!!」
マーヤは快感に眉をしかめて口を半開きにしてそこから舌までやや覗かせるくらいに弛緩させてしまいながら、鳴いた。
「ぁ、ぁ、あっ!そ、それは!待って!変な声が出ちゃいますから!ァッ!おかしくなっちゃう!」
というのはディミトリが双丘の合間だけを撫でくりまわすのに見せかけながら、実際は、小指をすこし伸ばして、胸の1番敏感な頂点を小指の指先でとことん繰り返し弾き、捏ねくりまわしはじめたからだ。
マーヤは身をくねくねよじらせて、自分のふくらみの一番敏感な頂点をいじくる指を逃れようとしたが、ディミトリは、飢えた野犬のような眼を光らせながら、くねくねするマーヤをガッチリ捕まえたのでマーヤはちっとも逃れられずただただくねくねのたうちながらもっと頂点を固くして声をあげるばかりだった。
「待って、と仰るが…それ…別におイヤ、ってわけじゃないんだよな…?」
「は、はい…でも!ぁ、はぁん!…よ、よすぎて…声が!…ぁん!出ちゃう!か、ら!」
「…出せよ…声…!我慢しないで…もっと、全部!出しちゃえよ!」
「え、でもぉっ…あ!ぁん!」
「お、俺にこんな風に撫で回されるのが、おぞましいどころか、昔っからそうされたかった、待ち望んでいた、と、貴女は!そう仰るのかい…!おやおや、おかしいなぁ…弄った先が急にかちかちに固く立ち上がって来てますよ…?…んん?まさかこのお嬢さんは、俺にこんなところをいじくりまわされて感じちゃってる訳じゃないでしょうねぇ…?変だなぁ…随分と大きな声であんあん喘いでおられるねぇ…?う、嬉しそうに見えるぜ?このお嬢さんは!こんな男に!こんな事されて!」
マーヤは喘ぎながらも同意した。
「は、はい。その通りです。…されるがままに、感じちゃってます…ぁん!だがら!じゃべれなくなっちゃうからぁ!アッ!…そうです…勿論ですわ?勿論ですわ?仰る通り嬉しく堪らないです!は、はしたなくてごめんなさい…あ、ぁん!」
「こんな風に?!これでも?!これでもか!?こんな所までこんなふうに撫で回されて、まさか喜んじゃってるのかい!おい!本気かよ!おやおや、ほっぺたやら、首筋まで赤くなってるねぇ、くねくね身をよじっちゃって、はぁはぁ仰ってるねぇ…まさか、俺に触られて、気持ちよくなっちゃってるのかい!貴女は!全く!これで嬉しいのかよ…ッ!?」
ディミトリは震える手でシルクの薄いガウンの合わせ目から手を侵入させて、マーヤの太ももを付け根あたりまでねっちりといやらしくわざと小さな下着に包まれたふくらみにまで時折下着越しにそっとコリコリひっかくようにして撫で回し始めた。
「あ、あっ!でもっ、そこは!その!あっ!だめぇっ!そこは駄目ですぅっ!ど、ど、どうしましょう、」
「え」
ディミトリは、再び怯えて、不安な表情でパッと手を離した。
「だって…触られると…どうしよう…なにこれ…ああっ…想像してたより…ずっとずっと痺れるようにぞくぞく感じて…気持ちよくて気持ちよくて…頭が変になっちゃいます…ぅ…こんなの、うれしすぎて、困るの…はぁ…ん!…どっ、どうしましょう…」
「ば、馬鹿!なんて事を!なんて事を言ってるんだ!この人は!」
安堵と興奮で、吐く息と吸う息を間違えたように息を荒くするディミトリの狂犬のような瞳にも、マーヤはちっともたじろがず、ただただ気持ち良さげに身体中の力を脱力させて身体をくねらせながら続けた。
「あぁ…本当に大きな手…びっくりするほど、熱いくらいに温かいくてさらさらに乾いた手…想像よりずっときもちいいです…骨張った長い指…わたくしと全然ちがう手…お日様のにおいがする…わたくしいま、すごく、すごく、しあわせです…」
ところが。
なのに、そういいながら、なぜかマーヤは、シルクのガウン越しにマーヤの乳房を撫で回していたディミトリの手をそっと掴み取り、そっと自分の身体から引き離した。
悪ぶって責め立てていたディミトリは、またまた完全にうろたえて、焦りきった早口で、ささやき返した。
「え?…えっ?…どうしたの?え?い、痛かったの?だめなの?やっぱり嫌だったのかい?」
ディミトリは、マーヤにあんなあからさまに『触ってほしい』と要求されてその通りに触ったのに、しかもマーヤはさっきから素直過ぎる程に喜んでいるように見えるのに、触ったその手を突然マーヤに掴まれて胸から引き離されてしまい、すっかり混乱したのだ。
ディミトリは混乱のまま、そのまま呆然とマーヤに手を掴まれて、されるがまま、そっとマーヤの胸や太ももから手を離した。
マーヤはその、掴んだディミトリの手をゆっくり自分の顔の方に導いていった。
マーヤの瞳はうるんで頬は上気している。
「あ、あのね、わたくし、ディミトリさまのこの手に、撫でられるだけじゃなく、て、」
「うッ!」
マーヤは、掴んたディミトリの手の、その小指や手の平や手首を、じょじょに繰り返し、はむはむと、齧り出したのだ。
マーヤは小さな白い歯で、ディミトリの手首や指を繰り返しやさしく噛んだ。
ディミトリの手にくすぐったい齧られる感覚が何度も走った。
「ぐぁ!」
ディミトリは熱く痺れる感覚に訳がわからなくなって、くぐもった低い唸り声をあげた。
そしてマーヤはそのままディミトリの灼けた長い小指の先をぷちゅりと唇の間に挟み込んだと思ったら、そのままぷりぷりした唇の中にゆっくりディミトリの指をずぶずぶ吸い込ませていった。自分の口内へと。
「!!!」
そしてマーヤはディミトリの陽に灼けた小指を根本まで口内に全部収めたと思ったら、そこにしっかりと自分のピンクな舌を絡ませて、ぬるぬると、ゆっくり、だが案外力を込めて、ぐりん、ぐりん、舐め回しはじめたのだ。
「ぐッ…ぁ!」
口内のマーヤの舌がディミトリの小指の股を舌でぐりっと舐った瞬間、小指から手首を伝わってディミトリの背骨の1番下の骨のあたりにまで熱いようなしびれがビリビリ伝わった。
マーヤはディミトリの指を口内にゆっくりと入れたり、ときに出したり、しながら、途切れ途切れに、舌ったらずに囁いた。
「…ん…やっぱり、わたくし、この指が…好き……ぁん…ご、ごめんなさい…こんな…はしたないことして…でも…齧りたくて齧りたくて…我慢できないのです…こんな事したら…怒りますか?お叱りになりますか…?ごめんなさい…もしもだめだったなら、どうか、ちゃんと、きびしく、マーヤを、お叱りになって、ね…?」
グラマーな童顔美人ではあるが、あの、ずっと売り場では極めて上品な態度を見せていた、服装も真面目すぎるほどの、いつも第一ボタンまできっちり閉じた修道女みたいな白か灰色のつまらない真面目なブラウスを着た、難解な本まで小脇に抱えて居たりする、
あの、どこから見てもどんな女よりもお堅そうに見えた、あの、クソ真面目で有名な、あの令嬢が!
目の前で、すっかりトロントロンに酔ったように頬を上気させて、ベッドに横たわり、うるうるに潤んだ瞳でしどけなく唇をひらいて、平気で快感の声を上げ、『ずっと前からあなたに身体をいじくり回してほしいと願っていました』などと言い放ったあげく、俺の。俺の指を進んで口内に咥え込んで繰り返しぬるぬると、女の方からうれしげに舌で舐っている!
ディミトリの腕全体、手首にまでぶわっと鳥肌が立った。
あまりのことにディミトリはくぐもった声の唸り声を漏らした。
ディミトリは、はんば、泣き顔じみた表情に顔を歪ませながら、
「ぁあもう!こ!こいつめッ!!なんという!どこまで!煽る、ッ!!この、人は!」
ディミトリはマーヤの口から自分の指を抜くと、マーヤに覆いかぶさり、気が狂ったようにマーヤの唇に深く深く舌を突っ込んで掻き回すような口づけを始めた。
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マヨコンヌの官能小説『女主人と下僕』
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