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ねがえる

犬派か猫派か?
よくある問いだ。

小さい頃の私は、完全に犬派だった。
猫というのは得体の知れない生き物で、
懐きもせず、かわいいとは思えなかった。
それに比較して犬はわかりやすい。
尻尾を振って笑顔でこちらに甘えてくる。
ご主人に付き従い、同志になれる。
どう考えたって犬だ、そう思っていた。

夫と、夫の猫と、一緒に生活するようになって、
その考えは完全に覆った。

遊べ、餌をくれ、トイレを掃除しろ、おやつをくれ、撫でろ、一緒に寝ろ。

様々な要求を携え、夫や私のもとにやってくる。
時々構いすぎてやり返されるが、ずいぶんと甘えてきてかまってちゃんなのだ。

これは、かわいい。
猫は冷たくて人間など意に介さない距離のある生き物だと思っていたが、
全く違う。
そばにいたがるし、留守番してもらって帰宅すると抗議の声を挙げてその後しばらくはべたべたと甘えてくる寂しがりやだ。

我が家の猫は先月17歳と11ヶ月で亡くなった。

一緒に生活していく中で猫は人間より早い時間経過で生きていく。
若かった猫は気づけばシニア期に入り、
毛の艶や活発さは徐々になくなっていったが、
老いれば老いるほどに愛しさは増すばかりだった。

こどもが生まれてからというもの、
そちらに手がかかるためどうしても構う時間が減ったが、
ときどきこどもが落ち着いているときなどはすっとそばにやってきて、甘えてきた。
愛と平和に満ちた世界がそこにあった。

猫は介護をさせてくれることもなく、肺癌の手術をしたあと
あっという間に亡くなってしまった。
それはまるで、自分に手をかける必要はない、とでも言っているかのように。
動物の強さと潔さを見せつけられた気がした。
術後のケアのために買ったものは、ほとんど未使用だ。
束の間の退院では、いつも使っていたものを使おうとする姿があった。
今思えばあれはエンゼルタイムだったのかもしれない。

私は、介護してでもあなたともっと一緒にいたかったんだ。
さみしくて仕方ないよ。

こうして、今やすっかり犬派からは寝返っている。
犬も好きだが。

ふとした時にそばにいた猫。
私が猫に言いなりであることをわかっているのかいないのか、
あなたがそばに来てくれることが私にとっては喜びであり、癒やしであり、支えだった。

寝返るといえば、こどもは日々成長しており
寝返りをしそうだ。
笑顔とともに笑い声も出すようになった。
人間っぽくなってきた。
お盆の頃には腰が据わって座れるようになるだろうか。

我が家の猫にとっての新盆だ。
こどもとともに迎えるから、少し姿を見せてくれないかな。

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