「尿素水不足」 韓国に続き日本も深刻化? 経産省「増産」要請へ 価格高騰で「冷静な判断」を

くるまのニュースより
経済産業省は「尿素水、増産」要請へ
2021年10月頃から韓国では深刻な尿素水(アドブルー)不足が発生しています。

一方で、韓国での不足理由とは異なる要因で同年11月頃より日本でも尿素水(アドブルー)の品薄状態が発生し、実店舗やインタネット上では価格高騰が問題視されていました。
 
そうしたなかで、2021年12月21日に経済産業省はTwitterにて「尿素の生産事業者に対し、最大限の増産を要請」をおこなったことを明らかにしています。


アドブルーは、純度の高い工業用尿素を純水で溶解した尿素水で、国際規格に適合した自動車用尿素水の製品名です。おもにディーゼルエンジンを搭載したクルマの排ガス浄化に利用されます。

走行距離にもよりますが、乗用車の場合、一般的に1年に1回程度の補充が必要となります。

補充費用は2000円から3000円程度とそれほど大きな負担ではないため、アドブルーの価格が問題となることはほとんどありません。

しかし、2021年12月に入り、日本でもカー用品店でアドブルー不足が生じるようになり、インターネットでは通常の10倍ほどとなる1リッターあたり1500円という価格で販売されている様子が見られるようになりました。

ディーゼル車用のアドブルーが不足すると、基本的にエンジンの再始動ができなくなり、走行することができません。

日本の場合、ディーゼル車はトラックなどの商用車に用いられることも多く、また農業機械や建設機械などにもディーゼルエンジンが使用されていることから、産業全体への影響が懸念されていました。

ただ、日本で起こっているアドブルー不足は、韓国の例とは事情が異なるという指摘もあります。

後述するように、韓国の尿素水不足は、元をたどれば緊迫した米中関係という根深い問題が背景にあります。

一方、日本の場合は、尿素水を生産する大手企業のプラントが11月末に定期点検のために操業停止したことの影響が大きいといいます。

中国は、自国で使用する在庫を確保するために10月中旬から尿素の海外輸出を原則停止しており、その影響もないとはいえません。

ただ、尿素のほとんどを中国からの輸入に頼っていた韓国とは異なり、日本では一定量の尿素を自国で生産できているため、韓国ほどの深刻な事態にはならないと見られています。

実際に、都内のカー用品店では12月21日時点で、「お一人様一つ」の条件が付きますが通常価格でアドブルーを購入することが可能です。

また、別のカー用品では「現在は1リッター880円となります。以前よりは在庫に余裕があるようですが、今後どうなるかは不明です」と説明。

また、国産新車ディーラーは「当社では十分に在庫があるため既存車の追加補充であれば5リッター1500円となっています」と話しています。


そうしたなかで、2021年12月21日に経済産業省は公式Twitterに次のような投稿をしています。

「現在、ディーゼル車用の脱硝材として用いる『AdBlue』の不足を懸念する声があがっています。

経済産業省では『AdBlue』の原料となる尿素の生産事業者に対し、最大限の増産を要請しています。

これを受け、生産事業者は最大限の増産を実施中です。需給ひっ迫の緩和に向け、引き続き取り組んでまいります」

また、フリマアプリ「メルカリ」でもアドブルーに関して、相場以上の価格での取引には冷静な対応を求めるように呼びかけています



日本と韓国で異なる尿素水不足事情
前述の通り、韓国の尿素水不足は、元をたどれば米中関係に起因しています。

アメリカが中国企業に対して輸出規制などの措置を取り、オーストラリアもそれに追随しました。

中国も貿易規制でそれに対抗しますが、オーストラリアに対しては、石炭の買付を停止するなどの措置を取りました。

中国にとっては、オーストラリアからの石炭輸入がストップしても、中国国内の採掘分で石炭の需要はまかなえる見込みでした。

しかし、中国内陸部で発生した豪雨の影響などで、石炭の供給が大きく減少するという事態となります。

そのため、火力発電の発電量も減少し、中国国内では電力不足が大きな問題となりました。

一方、尿素水の元となるアンモニアの精製にも石炭が使用されることから、石炭不足がアンモニア不足を引き起こすことを予測した中国政府は、アンモニアの輸出制限を実施。

韓国はアンモニア(尿素)のほとんどを中国からの輸入に頼っていたため、深刻な尿素水不足が起きてしまったのです。

日本もアンモニアの一部を中国から輸入していますが、自国で生産している量も多く、また、東南アジア各国から安定して輸入することもできているため、基本的な調達構造が韓国とは大きく異なります。

現実問題として、日本国内でもアドブルー不足が起きていることは事実ですが、その原因は構造的な問題というよりは、さまざまな不運が重なり、一時的に需要に対して供給が追いつかなくなったと見るのが妥当と考えられます。


多くのディーゼル車のユーザーにとって、アドブルーは必需品であることは間違いありませんが、大量に買い占めなければならないほど必要となることはまずありません。

しかし一方で運輸・運送、農業、建築の事業者などは、アドブルーを大量に必要とする可能性があります。

そうした事業者たちにアドブルーが適切に供給されるよう、一般ユーザーはアドブルー不足の背景を理解し、冷静な対応を取ることが求められます。

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