街角の声の何か
「旅人よ、此処で何をして居るのですか?」
「旅人よ、此処で何をして居るのですか?」
「此処の雨は止みません。何時も同じ湿気を保ち続けて居るのです。」
「雨は土に浸み込み、土から川に注がれ、川から海に流れ、海が雲に成るのです。」
「その雨傘が破れても、雨は降り注ぐのです。」
「止まぬ雨は、雨ではない、ですか?」
「興味深いですね。」
「雨があるのは、晴れがあるからで、
晴れがなければ、雨もない。
晴れがあるのは雨のおかげです。
晴れ渡る青空は、濡れた地面を乾かします。
雨の灰空は、乾いた地面を濡らします。
此の場所に晴れがないのであれば、雨でもない。」
「何時のまにか、此の場所も、晴れとなりました。」
「新しい太陽の顔は、雨をさらに魅せます。」
「旅人よ、此処から何をするのですか?」
𠄔の花
𠄔の花の噂は忽ち広がり、今日に届きました。
「その花は世界一明るく、世界一美しい。
山頂にその花は咲いている。」
沢山の旅人という旅人が、𠄔の花を追い求めた話ですが、
その花を見たという旅人はいません。
花は華ではないのです。
𠄔の花も、最初からなかったのです。
ただ、誰かの噓だったのです。
廃れたメトロポリタン
ある日から、話の全てがメトロポリタンの話題になりました。
「メトロポリタンの」
「メトロポリタンで」
「メトロポリタンに行く」
メトロポリタンを求めて、メトロポリタンについて話す。
しかし、メトロポリタンに行った人は、メトロポリタンについて何も言わなくなったのです。
メトロポリタンについて聞いても、「何もなかった」とだけ言います。メトロポリタンとは何なのでしょうか?
明かりは今
明日は今日になるのだから。
今日は何時かの明日だったのだから。
明日は来ないから。
明日は、ないのだから。
明日は、
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