File2 焙煎アーティスト



焙煎アーティスト  
島規之さん


「たかつき仕事人ファイル」2人目は

島珈琲の焙煎アーティスト島規之さん

からお話をお聞きしました。


JR高槻駅の北口から天神さん(上宮天満宮)に向かって歩いていると、大鳥居をくぐる手前の左手に、城下町の通りにあるような和風の趣のお店があります。年季の入った一枚板の看板。
そこにはライオンの顔と「島珈琲」の文字が。ここが自家焙煎コーヒー豆のお店、島珈琲・高槻店さんです。

島珈琲 高槻店


そもそも焙煎って何でしょうか。
この答えは、島さんが2016年に出版された本。
『ドリップコーヒーの健康と秘密を明かす焙煎アーティスト』(ギャラクシーブックス)からお借りします。

>「焙煎」とは、一言で言い表せばコーヒー生豆を炎で炙り、コーヒー豆の繊維を広げて化学変化を起こし、香りやうまみ成分を引き出す作業のことです。

>コーヒー豆の繊維を上手く伸ばしてあげるのが焙煎技術、テクニックになります。炎の熱の力を使い、排煙をコントロールし、時間を計算しながら繊維を上手に優しく伸ばす。


>普通のコーヒーと自家焙煎のコーヒーが違うのは、オートメーションの作業としての焙煎ではなく、焙煎技術を持つ職人が目・鼻・耳の五感をフルに使い、コーヒー豆の焙煎の進行を感じ取り、丹精込めて焙煎されているもの。つまりそのコーヒーには愛が詰まっているのです。

『ドリップコーヒーの健康と秘密を明かす焙煎アーティスト』30,31ページ


コーヒーや焙煎について、もっと詳しいことが知りたい!という方は、島さんの本や、毎日更新されているブログをお読みください。芸術のように繊細で深いコーヒーの世界を、わかりやすい文章で伝えてくれています。


「自分は何がやりたいのだろう?」

吹田市出身の島さんが、初めて夢見たのはプロボクサー。高校に上がる前にジムに入り、その厳しさを知ります。

その後、高校生になって喫茶店でアルバイトをしたときに、バイトの大学生の真似をして、初めて飲んだブラックコーヒー。喫茶店でのアルバイトは、接客の楽しさと、コーヒーの味を知った貴重な体験となりました。


高校卒業後、さまざまな職業を体験するうちに「お店を持ちたい」
という気持ちが強くなります。
そして、「何の仕事をするか」を
「独立してできるかできないか」を基準に考えるようになります。

好きだったコーヒーを「仕事」として考えるようになってからは、専門書での勉強を始めます。
今のようにYouTubeもない当時、本から知識を得るしかなかった。最初は、専門用語もたくさん出てきて大変だったと思います。


コーヒーについて独学で学んだり調べていたある日、運命的な出会いが。

それは、ネットで見つけたハワイのコーヒー農園ボランティアの募集。日本人オーナーの農園のホームページを見ていた時に、偶然見つけました。

これだ!とはやる気持ちを抑えて、冷静に何度も考え直す。それでも、やっぱり行きたい。
こんなチャンスはないと、自分にGOサインを出してからは一直線。メールを出して返事が来なくても、あきらめないで手紙を出す。

勇気を出して行ったハワイでの経験は、その後の仕事の原点になりました。
大規模農園ではなかったことが幸いして、コーヒーの栽培ー収穫ー精製ー袋詰めー出荷。
という全体の流れを実際に見て、体験します。


都会育ちなのに、トラクターに乗ったりチェーンソーを使ったり。初めての労働に戸惑うことも多かったそうですが、ハワイでの体験は、島さんのコーヒー人生の基礎になりました。


それにしても、好きになったものというのは、どれだけ強い引力を持つのでしょうか。
普通は、なかなか、そうしたものに出会えない。出会えた人は幸運な人。
でもそこからの道のりは、まだまだ茨の道でし
た。


2002年3月29日。
26歳の時に、豊中市岡町で、自家焙煎コーヒー豆のお店を開店。念願の「自分のお店」がスタート。
両親には、「3年やってダメだったら諦める」といって始めたそうです。

日曜日のみ営業の岡町本店



経営のことや商売のことを何も知らずにはじめて、最初の1.2年目は苦戦。3年目に、あるお店からの注文が入ったことで続けようと思った。
日曜日だけお店を開けて、平日は他の仕事をし、休みなしで働きました。


お金が貯まった頃に、お店に来ていた社会福祉法人『北摂杉の子会』の職員の方から、高槻市で新たに事業所を立ち上げ、そこでカフェをしたいので手伝ってほしい、というお話をいただきます。
2009年4月。『Cafe Be』(高槻市郡家本町)が
オープン。


高槻の人たちとのつながりができて、結婚して高槻に住むようにもなり、2012年の島珈琲・高槻店のオープンへとつながります。


ちなみに、紹介した高槻店の和の店構えですが、古民家再生を手がける西宮市の明木様によるものです。
店内の内装も、和のテイストで素敵です。

またお店のロゴになっているライオンの顔。
これは、お姉様がデザインしたものだそうです。


お姉様デザインのロゴ


島さんの文章は読みやすくて、スーっとこちらの気持ちに入ってきます。

👵昔から文章を書くの好きだったんですか?
作文が得意だったとか。

👨「全然そんなことはなかったです。でも、
最初のお店を出した頃、朝刊配達をしていて、マンションのエレベーターに乗っているときに、ちょうど新聞のエッセイの部分が読めるんです。毎日それを読んでいたから、それがよかったのかもしれません」


👵とても人との関係を大切にされていると思うのですが、それは昔から?

👨「いや〜何も考えていないというか、ちゃんとできていませんでしたよ、昔は。どれもみんな、仕事で失敗して覚えたことです」

お店を続けていくためには、焙煎技術はもちろんのこと、経営の勉強も欠かせません。

どの産地の豆をどれぐらい商社に注文するか。
という神経を使う仕事や

毎週の積荷の積み下ろし。
機械のメンテナンス。
といった夏場なら、とても体力を消耗する仕事もあります。


仕事のなかで見つけた発見をブログに残しておられます。
そうだな〜と納得できる言葉にたくさん出会えると思います。たとえば…

>島珈琲を作ってからの失敗は、すぐに頭を下げる。失敗したら早くあやまって被害を最小にする。
つまらないところでプライドを持つと、真のプライドが歪んでしまうから、邪魔なプライドは捨てる。


👵最後に、好きな言葉は何ですか

👨「商い(あきない)は笑なり」
「商いは、飽きない味つくり」

「商いは笑なり」は、横山やすし・西川きよしの名マネージャーから芸能プロデューサーになった元吉本興業の木村政雄氏の言葉。

コーヒーを飲んで、おいしいと思う。
その「おいしい」の先に何かある。
島さんは、そう思っているそうです。

☕️島珈琲 高槻店
定休日 日曜日・月曜日
営業時間 10時〜19時
※コーヒー豆の販売、コーヒーギフト販売、
業務用コーヒー豆卸し
高槻市天神町1-5-21
TEL 072-669-8284

☕️島珈琲 岡町本店
営業日 日曜日のみ
営業時間 10時〜19時
※コーヒーの販売のみ
豊中市岡町南1-5-47
TEL 06-6840-5307

※営業日はホームページでご確認ください。
☕️島珈琲ホームページ

☕️島規之さんインスタグラム

いいなと思ったら応援しよう!