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チータースパイク: 初速を最大化させるスパイク

一昨日、お店でDS LIGHT X-FLY PROを試着してきましたので、その感想及び自分だったらこうしたであろうという点を書いてみたいと思います。

DS LIGHT X-FLY PROの良かった点

DS LIGHT X-FLY PROを履いてみて良かった点を3つ挙げたいと思います。

1つ目は、軽さです。DS LIGHT X-FLY 4も十分軽いと思いますが、今回は実際の軽量性に加えて”軽量感”も表現できていたことで心理的にもより軽さが伝わりました。具体的には、ソールのデジタル設計によりソールが部分的にくり抜かれていること、ヒールカップが無くなったこと、アッパーに余分なパーツが付いていないことで軽量感が実現できていたと思います。実際の機能性に加えてそれを消費者に分かりやすく伝えるという事を徹底している印象でした。

2つ目は、企画段階からスポーツ工学研究所の知見を積極的に取り入れた点です。ソールに関しては、軽量性と最適な剛性を担保するためにソールのどの箇所をくり抜いてどの箇所をくりぬかないかをデジタル設計に基づいて設計しています。こういう定量的なアプローチを製品に落とし込むアプローチはすごくアシックスらしいと感じましたし、今までのアシックスのスパイク以上に力を入れてやっていたのではないでしょうか。実際、着用してみて中足部の剛性が想像していたより担保されていい意味で驚きました。

3つ目は、すごく玄人目線にはなりますが、腰裏の落としミシンが入っていない事です。今までのアシックスのスパイクは、腰裏材が剥がれないように、スティッチを追加していました。

このスティッチが品質を高めていた側面もありますが、デザイン的には邪魔になることが多く、昔から取り除きたいよねっていう話はしていました。今回も、軽量性を訴求する上でできるだけアッパーに余分なパーツをつけたくなかったはずなので、いい改良だと感じました。きっと開発・生産の方々が頑張ってくれたんだと思います。

自分だったらこうしたであろう点

次に、私なら企画開発段階でこうしただろうなと思う点があります。

それは、コンセプトを深掘りすることです。今回のDS LIGHT X-FLY PROのコンセプトは“縦方向の加速を最大化する“ですが、もっと踏み込んで“初速を最大化させるスパイク“であったり、“最初の5mの加速を最大化させるスパイク“みたいなコンセプトでも良かったかなと思いました。サッカーに関していうと、初速が遅くて50mくらい走ってからスピードが最大化するより、初速を最大化して相手よりも先に体を入れたり置き去りにする頻度の方が圧倒的に多いので、コンセプトの部分はもっと踏み込んでも良かったのかもしれません。もちろん、開発内部ではそもそもそういう意識だったかもしれませんが。

そのうえで、走りに着目し且つ縦のスピードをコンセプトにする前提に立った時に、私だったら“チータースパイク”をコンセプトにしたかもしれません。文字通り、チーターのように走れるスパイクです。

チーターって5秒程度で最大速度120km/hに達すると言われていますし、(実際には狩りでそこまでスピードを出さない)、しかもチーターは秒速4 m/sで急ブレーキもかけることができ、優れた減速能力も持っています。これらのことから、チーターはスピードコンセプトのスパイクにもピッタリだと思います。

目指すは、“チータースパイク”。

ちなみに、2019年の記事ですが、ヴィッセル神戸神戸の古橋亨梧選手は同僚の酒井高徳選手から以下のように説明されています。


“20m、30m以降から速い選手はヨーロッパでも多いけど、初速というか、最初の20mであそこまで速いタイプはなかなかいない。また違った速さですよね。報道で海外移籍の話がいろいろと出ているのは、彼のよさもでもあるあの特徴が、海外でも魅力的に捉えられているからだと思う。“

https://real-sports.jp/page/articles/297472370086511773

今回のスパイクが古橋選手に着用してもらうことも想定できたはずなので、尚更チータースパイクっていいテーマだったんじゃないかなって感じました。

では、実際にチータースパイクをコンセプトにした場合、どんな機能や要素が必要か私の考えたものは以下の3つです。

・ストライド(歩幅)を最大化させる
・軽量性
・エネルギーロスの最小化

スピード=ストライド(歩幅)×歩数になるのですが、チーターの歩数は他の動物に比べてそこまで大差ないと言われており、ストライドが他の動物に比べて長いことがあのスピードの一つの要因だそうです。したがって、今回のスパイクもプレイヤーの加速中のストライドを最大化させることができれば結果的に最初の20mも速くなるのではないかと考えました。

軽量性は言うまでもありませんが、速く走るためにスパイクが軽いに越したことはありません。

エネルギーロスについては、踵が地面に接した時の垂直方向のエネルギーが100%蹴り出した時の縦の推進力に変わるのが理想です。実際そんなことはあり得ないので、着地した時の垂直方向のエネルギーが効率よく前足部に移るようにスタッドやソール構造を考えたり、横方向のブレを抑えることで縦方向のエネルギーを最大化させることが必要なのかなと思います。

そのように考えた時に、ストライドの最大化を実現するのであれば、今回の非常に屈曲性に優れたソール構造に加えて、ソールの反発性も備わるといいかなと思います。屈曲した後のソールの戻りで加速をさらに補うイメージです。それには、中底の材料は現行のものより少し硬い材料にして、反発性をベースに逆にソールの柔らかさをどこまで実現するかという思考で考えてもいいかもしれません。

軽量性に関しては今回非常に軽いのでチータースパイクでも継承していいのではないでしょうか。

エネルギーロスの最小化をするために具体的にできることは、アッパーの横振れを抑えることです。裏から補強してもいいかもしれませんし、アシックスの陸上スパイクで使用されているHL-0メッシュを使用しても良かったかもしれません。さらに軽いスパイクにもなるかもしれません。

最後に、これはチータースパイクとは関係ないのですが、今回のDS LIGHT X-FLY PROで個人的に直して欲しかったと感じたのはTongueです。試着した時にTongueのMeshが縦割れをしてしまってせっかくのフィット感が少し台無しになってしまいました。もしかしたら私が甲高なのでそのせいでなっているかもしれませんが、Tongue Meshの補強フィルムの配置や大きさについてはもう少し検討しても良かったのではないかなと感じました。

コンセプトについては、そもそもスピードモデルなのかという話から本来したいところですが、一旦そこはスピードモデル前提で考えてみました。

以上、DS LIGHT X-FLY PROを試着した感想と自分ならこうしたという点についてでした。

それでは。

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