見出し画像

Anti-Clog Traction:ソールに泥をつきにくくする加工方法

おはようございます。

いきなりですが、雨の中土グラウンドでプレーするとスパイクのアッパーもソールも泥だらけになりますよね。しかも、この泥をそのまま放置しておくとなかなか取れなくなりますよね。私も高校生の時に雨に濡れたスパイクをそのまま放置してお手入れで苦労した経験が何度もあります。

そこで、今日はアウトソールに泥がつきにくくなるようにするにはどういう仕様にしたらいいのかNIKEの例を参考に簡単に書いてみたいと思います。

Nike Anti-Clog Traction

ご存知の方もいるかもしれませんが、Anti-Clog Tractionはスパイクの泥を落としやすくするナイキのテクノロジーです。リンクを貼っておきますので英語読める方は一度読んでみてください。

NIKEの場合、アウトソール表面に親水性の樹脂フィルムをコーティングすることによって泥を落ちやすくしています。フィルムは、厚み0.1mm-5mm程度で、アミド基をもつ共重合体でできているみたいですね。

素材表面を親水性にすることによって、水滴の端点の接触角が小さくなり、アウトソールと泥の間にその水滴が入り込みやすくなります。イラストを書いたので下図を見てみてください。多分、ビジュアルで見たほうが分かりやすいかもしれません。

こういう内容を理解する上で界面化学の知識があると理解が早いかもしれないです。私もこういうことがあるたびにネットで確認しています。とはいえ、馴染みのない分野は理解しても忘れてしまうので事あるごとに見る感じです。暗記する必要はないと思いますが、抵抗なくこういう内容を読めるといいですね。

話は戻りますが、この逆の例は防水生地です。GORE-TEXのジャケットを想像してもらうとわかりやすいですが、雨の日にジャケット表面を観察すると。雨粒の水滴が広がらず球状にまとまろうとしますよね。

というわけで、、ソールについた泥を落とそうと思ったら、疎水性にするのではなく、親水性にしてあげることが大切です。土グランドの泥水の水滴が泥とアウトソールの間に入り込むことで泥が落ちやすくなります。

因みに、このNIKEの仕組みは特許になっています。興味ある方は是非読んでみてください。

余談ですが、Google Patentでスポーツメーカーの取得している特許を調べると面白い特許が沢山あるのでおすすめです。特にNIKEの特許は知っておくと参考になることも多いです。

例えば、第一中足骨(親指側の中足骨)の怪我を防ぐためのスタッドの配置に関する特許もすごく面白かったです(2002年の特許なのでだいぶ古い情報ですが)。英語を読むのもめんどくさいと思うので、Fig.7だけ見てなんとなくイメージしてもいいかもしれません。

第一中足骨の位置に対してその両サイドからブレード上のスタッドをある角度で配置するといいみたいですね。

なんで第五中足骨じゃなくて第一中足骨なんだって思う方もいるかも知れませんが、特許の説明を読んだ感じだと、ナイキは縦の動きを想定している気がします。縦の動きだと、確かに蹴り出しの際は小指側ではなく親指側に荷重がかかるので、そういったシーンを想定しての第一中足骨なのではないでしょうか。

NIKEはよく選手のケガのことなんて考えていないという声も聞きますが、研究ベースではそういう部分も考えている気がします。勿論、それをスパイクの設計思想として取り入れているかどうかは別問題なので、アシックスのようなメーカーよりは怪我防止に対する優先順位は低いかもしれません。

というわけで今回はソールに泥をつきにくくする加工方法についてでした。

それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?