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ここから未来へ



 

それはあまりにも眩しい光だった




プロデューサーとなって一年数ヶ月、初めてライブビューイングに参加した4thSSA公演、その2日目の出来事だった。

前日のライブで輿水幸子役竹達彩奈と市原仁奈役久野美咲がシークレットゲスト出演。必然的に、2日目のシークレットゲスト予想には彼女の名前が上がった。

しかし彼女のファンである私はもちろん知っていた。彼女がこの前々日(金曜日)に大阪でアーティストとしての1stライブツアーの記念すべき初回公演を行っていたことを。




「まさか、いやさすがにな……?」
期待半分、否定半分と言ったところだろうか。


いざ2日目を迎え、ライブは中盤戦に。
シンデレラガールズのライブでは初のオリメン3人が揃ったTrancing Pulseに会場のボルテージは最高潮に達していた。




その瞬間だった。





一度耳にしたことのあるものならば誰もがそれだと確信する、あの壮大なイントロ。

歓喜、困惑、動揺、興奮、あらゆる感情から溢れたどよめきが波となり、会場を走る。



ただ待つには長い30秒という時を経て、ようやく彼女がステージに姿を現す。


「渇いた風が」


彼女の歌をかき消すほどの歓声と、間奏や歌唱後の鳴り止まない拍手を聞けばあの日彼女の歌がどれほどの待ち望まれていたものか分かるだろう。

ただ、当時まだプロデューサーとしてひよっこの私には彼女が出演したという事実の重さがよく理解できていなかったと思う。
それでも、あの光に、あの歌に、あの姿に焦がれるにはあまりにも十分すぎる出来事だった。

いつか彼女の歌を現地で聴く。それが私の願いになった。





冬が開け、春が訪れた。
4月。第6回シンデレラガール総選挙。
無冠とも揶揄された彼女は6年目にして悲願の戴冠を果たした。
さらに同時開催された楽曲総選挙ではこいかぜがソロ部門で1位を獲得。これによりこいかぜは新録音源が制作されることが発表された。


そして始まる5thライブツアー。
宮城から福岡まで全国各地を回り、SSAにてファイナルを迎える。全国7都市14公演から成るこのツアーは5thの節目に相応しい、まさに奇跡の大パレードだ。




しかしそこに彼女の名前はなかった。

 


5thライブ以降台湾、SS3A、6th、、、とシンデレラガールズのライブには可能な限り全て現地参加した。
もちろんシンデレラガールズが好きだからだ。その気持ちに嘘はない。しかし同時に怖かったのだ。彼女がいつかまたシークレットゲストで出てくるのではないかと。現地にいないと、その時を逃すのではないかと。





それはあまりにも大きな呪いだった。



 


この頃から現地には必ず彼女のペンライトを持っていくようになった。
御守りであり、いつ彼女が出てきても良いようにと。


さらに時は流れ、シンデレラガールズは記念すべき10周年を迎える。
秋からはそれを記念したツアーが開幕した。


鷺沢文香役のM・A・O及び新ボイス組が初出演を果たした幕張こそ現地を逃したが、コロナによるキャパ制限や会場規模縮小によってチケ倍率が上がった中でも福岡、愛知、沖縄は現地チケを握ることができた。

そして発表されたツアーファイナル。
10周年を締めくくるライブの発表に誰もが期待に胸をふくらませた。





しかして運命の歯車はついに動き始める。
それは愛知公演後にゆくM@SくるM@Sでライブの総合演出を担当する某氏から告げられた一言だった。




「ツアーファイナルの出演者は、オールシークレットとさせてください。」





チャンスだと思った。オールシクレならおねシン以外に1曲しか歌わなくても不思議ではない。
こんなビッグチャンスを逃すと次が一体いつになるのか分からない。

彼女は土曜日に既に別のイベントに出演することが決まっていたため、ライブに出演する可能性があるのは2日目のみに絞られた。
4thにシークレットゲスト出演した時と状況が似ているのは偶然か、はたまた運命なのだろうか。私はこの日に全ての望みを託すことに決めた。

腕がちぎれても、足が折れても、這ってでも行く。そう強く決意した。







こいかぜでもBlessingでもいいからソロとココカラミライヘだけ歌いに来てくれればそれ以上は望まないので頼む。俺を4thから解放してくれ




 




ついに迎えた運命の日、4月3日。
10thファイナル2日目。

A14ブロック11列目、モニター横に吊るされている2枚の旗のような幕のうち、ステージに近い方と一塁側大型モニターのちょうど間くらい。思っていたより端でもなくまあまあ良い席。持ってる。


緊張か、寒さか、その両方か。体の震えが収まらないまま運命の10thライブ2日目が始まる。

シンデレラガールズ全ての始まり、原点のNever say neverで幕を開けたライブは最新曲のΝew bright starsに続く。

以降デレステ、モバマス、コミックス、アニメとシンデレラガールズがこれまでの10年間で歩んできた様々なメディアミックスをテーマにライブが展開される。

武内PのMCとシンデレラプロジェクトの楽曲披露後、MCに美城常務(専務)が登場。自身が指揮を執るプロジェクトクローネのメンバーによるAbsolute NIneとNocturneに会場は大いに沸いた。


そして次の曲が発表される。






My Best 
Cinderella Songs






第21位






かつてのあの日と同じくイントロが流れ始めた瞬間、どよめき揺れる会場。
ペンライトを片手に立ちつくす私。
私の両肩を掴んで自分の事のように喜んでくれている連番。


信じられなかった。夢を見ているのではないかと、怖くて仕方がなかった。



MVを再現するかのようにステージを割って登場する彼女。


「渇いた風が」


その瞬間、全てが涙となり溢れ出した。



涙で途中ステージが見えなくなっても、足に力が入らなくなっても、立ってペンライトを彼女に向かって振り続けた。この光が彼女の心を照らすように。この時間を噛み締めるように。




「君を探している ただ君に会いたい only you」
「会いたい今 会える日まで 君を想い続けるの」



あの日の光は願いとなり、5年半という長い時間の中でやがて呪いへと変わった。
長く苦しい5年半だった。


彼女の歌が、光が、風が、私の心をそっと包み込む。
苦しみが、喜びが、感謝が、5年半の全てが涙となりとめどなく零れ落ちる。それはまるで私の心の氷を解かすように。


彼女が歌い終わると、私は自然と彼女に向かってお辞儀をしていた。





かくして、こいかぜを追いかけ続けた5年半は幕を閉じた。これで長きに渡る4thの呪縛から解放され、ようやく未来を向いて歩いていけるだろう。


Blessing、Pretty Liar、恋が咲く季節、次の舞台では彼女はどのようなステージを見せてくれるだろうか。








アニバーサリーLIVE…この大舞台に立てて、とても光栄です。
ゆっくりと歩みを進める私に、みなさんが声援を送り続けてくれたおかげですね。その声に、応えるため…羽ばたきます。未来へ!







Fin.

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