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『教養としての地理』

私たちが学校の社会の授業で勉強することは、どこか私たちの外側で起こっていることのように思えることが多かった気がします。それは、自分事にできておらず、世界の遠くで起こっている他人事な気がするからかもしれません。しかし、東進ハイスクールの地理講師の山岡さんが書かれているこの本(『教養としての地理』)は、少し今まで他人事のようにしていた課題を、少なくとも「日本事」にしてくれるものでした。

例えば、日本が先進国の中で特に、高度経済成長期以降は、国内での木材の生産が減り、輸入に頼っていることが触れられています。フィリピンやマレーシアなどのアジアの国から輸入しています。さらに、日本でよく消費されるえびの養殖場所を広げるために、東南アジアのマングローブ林を伐採していることも、触れられています。私たちは、割と教育支援や給食支援など、東南アジアの国で光が当たりやすい支援に注目して、国際貢献ができているように見えましたが、その一方で、こうした私たちの日々の生活を支えるインフラのために、多くの犠牲を同じ国に強いていることが分かりました。

さらに、アフリカなどでよく消費される「コーン」(メイズ)についてです。こちらは、先進国でもニーズが増えています。それはバイオエタノール、燃料の生産のためです。植物由来で環境に良いとされていますが、国際社会全体を考えると、先進国が発展途上国からより多くのメイズを得るために、プランテーションを増やしていることも事実です。発展途上国の苦しみの結果で手に入れたエコな暮らしであれば、あまり意味がないようにも思います。

こうした問題定義が、高校で習う地理にはたくさんあることが、この本で分かりました。ここから「自分事」に落とし込むには、じっくりとこれらのテーマについて考える必要があるでしょうし、自分だけでは解決できないテーマがたくさんあるはずです。そんなときに、自分ができる部分はどこかを設定して取り組むことで、現実的で具体的な解決策を提示することができるかもしれません。

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