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ソーシャルバリューとは

イギリスのシンクタンクのDemosの定義では、「ソーシャルバリューとは、経済的な指標では測れない価値で、企業などが生み出すものを呼ぶ。社会的資本や、その作る環境を含む。」としています。企業は、自分の会社の商品などが持つ社会的価値について、しっかりと伝えることが重要です。しかし、その形は、多くは価格という形態で伝わります。私たちは価格を見て、「これってこれくらいの値段の価値なんだ」とその商品の価値を決めることになります。しかし、商品というものは、果たしてその金銭的値段だけで、価値が決まるものでしょうか。

ソーシャルバリューの仕組み

ソーシャルバリューは少し複雑で、その商品ができるまでのプロセスにも焦点を当てます。その製造や広告の過程の中で、様々な人々が関わっていることが多いです。そして場合によっては、消費者がその利益の還元先でない場合もあります。例えば、以下のWarm Hearts Coffee Clubは、生豆の提供は通商会社からとなりますが、提供先はNPOでアフリカのマラウイという国の給食支援をしています。NPOは、収益事業を実施しないため、売り上げの100%はマラウイの給食支援となっています。


従って、ソーシャルバリューの提供者は、しっかりと自分のサービス、商品の目指す価値が何か、どんな効果を生むのか、どのような課題の解決を考えているのかといったことを、消費者、関係者に説明をする必要があります。これを透明性と言うことが多いです。

以上のWarm Hearts Coffee Clubを例にしたソーシャルバリューを生み出す団体、もしくは企業のような形を、ソーシャルエコノミーということがあります。これは、一般的な企業が目指す経済の形(エコノミー)は、利益の生産であるのに対して、NPO、一般社団方法人、財団、ボランティア団体などは、社会課題の解決などのためのエコノミーを優先して考えています。

マーケティングとソーシャルエコノミー

ソーシャルバリューを考える上で大事なのは、マーケティングの基本的な活動の意図を見直すことにも繋がると思います。井上大輔さんの著書である『マーケターのように生きろ』では、マーケティングは企業、団体の行う特別なものではなく、個人の探求のプロセスに近いものであると述べています。それは、「価値をつくって、伝えて、届けて、交換する」ということであるとおっしゃっています。例えば、上記のWarm Hearts Coffee Clubは、NPO法人せいぼのブランドとして運営することで、売り上げの100%をマラウイの給食支援に充て、世界の飢餓を撲滅することに貢献するという価値を作ります。それを伝えるためには、コーヒーのおいしさ自体もアピールし、それを都内の焙煎店と協働させて頂き、全国の皆さんに届けています。それを受け取る人は、そのコーヒーに対してお金を払っていますが、おいしいコーヒーが、マラウイの子供たちの食事、教育に繋がるという価値と、金銭を交換していることになります。

価値の交換と贈与

商品を受け取った後、その価値にとても共感した場合、きっと皆さんはそれを他の人に伝えたくなると思います。それを情報としてSNSなどで拡散することも、その商品を扱っている会社、個人にメリットになりますが、一番いいのは、その商品自体を、その価値を説明しながらプレゼントすることだと思います。例えば、上記のWarm Hearts Coffee Clubの価値観に感動をしてくれた場合、きっとアフリカ好きな人、社会貢献ができるコーヒーを飲みたいと思っている人に対して、飲んだ人が紹介するかもしれません。もしくは、今まで普通にコーヒーを飲んでいた人に対して、「こんなコーヒーもあるよ!」と言って紹介をしてくれることで、「じゃあ私も試しに買ってみようかな」と思ってくれるかもしれません。こうした人々は、潜在的に社会貢献、ソーシャルバリューに関わりたいと思っていたことになります。こんな人は、きっと世の中にたくさんいると思います。

誰かに伝えたくなることが贈与に繋がる

例えば、「この本いいな、ためになった!」と思って、友達に勧めたいと思ったことはありませんか。私は大学生のころ、自分のしていたレポートのための読書で、「これは面白い事実だな」とか「この分野とこの分野を繋げれば、創造的な意見が作れそう」とか思った場合に、バイトでしていた塾講師の仕事に繋げていました。塾のバイトの中で一番時間を使ったのは、そうした給料の出ていない探求の時間で、その時に思いついたことが、生徒に対して一番良い指導をするための材料になっていました。こうしたことを続けるうちに、それを見て自分も講師をやってもみたいと思い、生徒から同じ塾の教室の講師になってくれた方もたくさんいます。

こうした贈与をする人のことを、近内悠太さんは『世界は贈与でできている』の中で、「アンサングヒーロー」とおっしゃっています。本当の意味で贈与をする人は、それを実施した瞬間には褒められたり、何かの形で報われたりはしません。なぜなら贈与の目的は、その贈与による体験が受けた人に引き継がれ、またその人も贈与をしたいという気持ちになってもらうことだからです。もし、最初に贈与をした人が、感謝を受けてしまったら、それで贈与の流れは止まってしまいます。そのため、近内さんは著書の中で、贈与をした人がすべきことは、唯一「祈り」だと述べていらっしゃいます。自分のしたことが適切に世の中で作用しますようにという祈りが、私たちがマーケターのように生きるためにも、贈与をして日々の生活を豊かにする上でも、大事なことなのです。


ソーシャルバリューと私たち

ソーシャルバリューについて、様々な考え方で見てきたのですが、まとめると私たちが届けたい価値を、社会が良くなるようにという祈りを持って広めていくことであることが分かります。私たちの生活の中で、こうしたソーシャルバリューに繋がる価値観の共有のチャンスは、きっと思ったよりも多くあると思います。

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