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才能なのか継続なのか

『私よりもっと才能のある人がいた』という理由で、大好きな事を諦めたことがあります。ちょうど妊娠したタイミングと重なったこともあり、趣味ならいいけど第一線は退かないといけないな、って。

私が諦めたのはエレクトーン奏者になる夢でした。

長年、あの時諦めたことがまっとうな判断だったと思ってきました。そして他の食べて行ける職業を、自分の天職だと思うように努めてきたのです。

でも今から4年前、そのことの是非を改めて考えさせられた出来事がありました。

いつものように自転車で大好きな房総をツーリングしていた時のこと。

通りがかりにたまたまイベントをやっていて、面白そうなので寄ってみました。千葉県市原市で春と秋に開催されている「いちはらART×MIX」というイベントで、廃校になった小学校の校舎を利用してアートの展示や体験イベントを行っています。

その中に、トーンチャイムという楽器の体験コーナーがありました。元ミュージシャン志望としてはつい冷やかしてみたくなり、サイクルジャージにゴーグル姿で楽器を奏でます。ちょっとしたイベントジャック感覚ですね(笑)

驚いたブースの女性に「なにか音楽やってらっしゃるんですか?」と尋ねられ、かつてエレクトーンを弾いていた事を伝えると、いつ頃?どこの教室で?と思いがけず話が弾みます。

その人はエレクトーン奏者だといいます。そして話が進むうちに、なんとおなじ時期に同じ先生に就いていたことが判明。そればかりか同じコンテストに出場していたことまで判りました。

お互いに名前を名乗って、びっくり…それは、実に20数年ぶりの再会だったのです。

私が他者の天才ぶりに打ちのめされた、おなじコンテストに彼女も一緒に出場していました。

それでも彼女は音楽を諦めることはなく、その後も自分の道を信じて歩み続けていたのでした。


そうして再び繋がったご縁で、私は彼女のコンサートに度々足を運ぶようになります。演奏もさることながら、会場選びやビジュアルの演出にも工夫が施され、いつも惹き込まれてしまいます。

彼女の活動は演奏ひとすじではありません。コンサートプロデュースにアーティストの発掘、演劇など他ジャンルアートとのコラボなど精力的に活動し、独自の世界観を創り上げています。

私が目指していたエレクトーン奏者とは、ひとりで演奏しひとりで完結するものだと思ってきました。ところが彼女はこの独りオーケストラ楽器で他楽器奏者とコラボもしちゃいます。その発想はなかった!

たしかにひとりで演奏するだけだったら、技術と感性の卓越した一握りの「天才」と、同じ土俵で戦っても勝ち目がありませんよね。

でも大好きな音楽を、自分だけの伝え方で届けることを知った彼女は、 No.1ではないかもしれないけど特別な Only 1 。ここまでの道のりは決して順風満帆とはいえなかったでしょうが、私の知らない20数年でかけがえのない経験を積んできたことが、演奏からも演出からも溢れ伝わってきます。


彼女との再会が私に教えてくれたものは、そんな素敵で尊い生き方でした。









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