【TCG】デッキ構築は安定性か、最大値か【DCG】
大会直前に入れたピン投のカード、だいたい一回もゲームに絡まない。
困ったときはポケモンキャッチャー、chapuddingです。
デッキ選択やデッキ調整の際に、よく安定性や最大値について議論されることがあります。
デッキの出力を吟味するにあたりこれら二つの要素は重要な事項とされており、しばしばどちらを取る方がよいかについて対立が起きます。
今回はどちらのほうがより重要かについて、数学的なアプローチから考察してみます。
間違っている部分があれば、Twitterなりでご指摘いただけると非常に助かります。
また、数学的なアプローチは往々にして抽象的な議論になることが多いです。
本記事の内容は考え方の一つとして頭の片隅に置いておく程度にして、鵜呑みにしない方がカードゲームと楽しく付き合えるかと思います。
Twittter: @chapuddingEA
正規分布によるデッキ出力のモデル化
デッキの出力が数字で表すことができ、各対戦ごとのデッキの出力が正規分布に従うと仮定する。
それぞれの対戦において、デッキの出力が高い方が勝つことを想定する。
デッキA, Bの出力$${X_A,\ X_B}$$がそれぞれ独立な正規分布$${N(\mu_A,\ \sigma_A^2),\ N(\mu_B,\ \sigma_B^2)}$$に従うときにデッキAの勝率が何パーセントかを考える。
$${\mu_A,\ \mu_B}$$はデッキA, Bの出力の平均値であり、$${\sigma_A^2,\ \sigma_B^2}$$は出力の分散である。
出力の分散が小さいほどそのデッキは安定しており、出力の分散が大きいほど同じ平均のデッキと比較して最大出力が大きくなる。
デッキAが勝つのは$${X_A>X_B}$$のとき、すなわち$${X_A-X_B>0}$$のときである。
$${X_A-X_B}$$は正規分布$${N(\mu_A-\mu_B,\ \sigma_A^2+\sigma_B^2)}$$に従うため(注)、勝率の吟味はこの正規分布を元に考えればよい。
(注)
詳細な証明はここでは触れない(ぼくができないので)。
$${X_A,\ \ X_B}$$がそれぞれ独立な正規分布$${N(\mu_A,\ \sigma_A^2),\ N(\mu_B,\ \sigma_B^2)}$$に従うとき、$${aX_A+bX_B}$$は正規分布$${N(a\mu_A+b\mu_B,\ a^2\sigma_A^2+ b^2\sigma_B^2)}$$に従うことが知られている。
(一般に$${X_i}$$が正規分布$${N(\mu_i,\ \sigma_i)}$$に従うとき、$${\sum_{i=1}^na_iX_i}$$は正規分布$${N(\sum_{i=1}^na_i\mu_i,\ \sum_{i=1}^na_i^2\sigma_i^2)}$$に従う。)
きちんと導出を試みたい読者は正規分布の再生性について調べるとよい。
分散と勝率の関係性
デッキAの出力の振れ幅がデッキAの勝率、すなわち$${X_A-X_B>0}$$となる確率にどのように影響するかについて吟味する。
$${X_A-X_B}$$の分散は$${\sigma_A^2+\sigma_B^2}$$であるため、デッキAの出力の分散が大きいほど$${X_A-X_B}$$の分散も大きくなる。
まずデッキAの出力の平均がデッキBより大きい場合、すなわち$${\mu_A-\mu_B>0}$$を考える。
分散の大小が勝率にどのように影響するかについて、2つのグラフを見比べてみる。
それぞれグラフの青い部分の面積がデッキAの勝率に対応しており、面積が大きいほど勝率が高いことを表している。
このグラフから、分散が小さいほうが青い部分の面積が大きい、すなわち勝率が高いことがわかる。
すなわち、デッキAの出力が高い場合は出力を安定させるようなチューニングが適切であるということがわかる。
具体的で極端な例を示すのであれば、元の出力の高いロストギラティナの「ボスの指令」を振れ幅の大きい「ポケモンキャッチャー」に変更するチューニングや、出力の高い5Cザーディクリカに「ホーガン・ブラスター」などの振れ幅の大きいカードを採用することはあまり適切ではないということがわかる。
反対に、デッキAの出力の平均がデッキBより小さい場合、すなわち$${\mu_A-\mu_B<0}$$の場合は以下の図のようになる。
今度は逆に、分散が大きいほうが勝率が高くなることがわかる。
すなわち、デッキAの出力が低い場合は分散が大きくなるようなチューニング、最大出力が大きくなるようなチューニングをする方がよい。
極端な例で例えるなら、「ザシアンV(ふとうのつるぎ/ブレイブキャリバー)」1枚と「基本鋼エネルギー」59枚のデッキは確実に毎試合「ふとうのつるぎ」で同じ動きができるが非常に弱いデッキである。
弱い動きを確実に成功させるよりも、「ザシアンV」をもう3枚追加し「ボスの指令」や「ポケモンいれかえ」などを投入して、「ふとうのつるぎ」の成功率を落とす代わりに連続して攻撃できるようにしたり、裏のポケモンを攻撃できる可能性を増やしたほうが勝率は上がるだろう。
別の例では「堕魔ドゥザイコ」40枚のデッキは絶対に毎試合同じ動きができるが、当然毎ターン2000のクリーチャーを出すだけのデッキは弱い。
それならば、多少「堕魔ドゥザイコ」の枚数を削って「ガル・ラガンザーク」や「「無月」の頂 $スザーク$」を入れ、リソースが切れた後も戦える可能性があるほうが勝率は上がるだろう。
これら二つのチューニングはデッキの出力の分散を大きくするだけでなく平均値そのものを上げるチューニングでもあるため、分散の例としては微妙かもしれないが、元が弱いデッキをチューニングする際は出力の分散を大きくして安定を下げることは勝率をあげることに寄与すると考えられる。
まとめ
今回は、デッキの安定を上げるのか最大値を上げるのかについて数学的なアプローチで考察しました。
考察の結果、強いデッキは安定性を上げる調整の方が、弱いデッキはデッキの最大値を上げる調整の方が効果的であるということがわかりました。
デッキの出力は一つの数字で表せるものではないし、相性差によっても大きく出力は変化するのであくまでも参考程度にしてもらえると嬉しいです。
大会の直前でどのカードを入れようかと迷っている方は考え方の参考にもできるかもしれません。
おわり
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?