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ウッドショックを受けて思うこと

現在、木材の輸入が滞っており深刻な木材不足が起き始めています。主に構造用集成材と呼ばれる住宅における構造材の不足が深刻です。
巷ではオイルショックになぞらえてかウッドショックと言われています。

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なぜそんな状況になっているのか?
主には下記のことが要因となっています。

・アメリカ、中国での木材需要の増加
昨年からのコロナ禍でアメリカでは、リモートワーク等の普及もあり郊外の住宅や別荘需要が高まり、年間120万戸程度で推移していた着工戸数が昨年は約166万戸と4割弱の需要の伸びがありました。
また、いち早くコロナからの経済回復を果たしている中国での木材需要の増加も一因となっています。

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・世界的なコンテナ不足
コロナウィルスの拡大で巣ごもり需要が増え、世界的に運ぶものが増えたと同時に外出時自粛の影響もあり港湾労働者やトラックドライバーが足りず、港に到着したコンテナ船が貨物を下ろすために停滞しているようです。また中国が高値でコンテナを契約してしまうため、日本の海運会社がコンテナを確保できないということもあるようです。
そのためコンテナ運賃が高騰しており、今後商品の価格にも影響してくることが考えられます。
また、空輸の運航が減っているのも影響しているようです。

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・貨物入荷の遅れ
目先の木材不足の要因としては、港でコンテナ船が停滞していることにより日本に届くはずの貨物の遅れがあります。このことで本来第一四半期に入荷しているはずの貨物が届かず、このまま入荷が滞ると日本の木材の在庫が底を尽きるのは時間の問題となります。現在、5月に建てる予定の住宅の材料がないなど深刻な状況です。

このままいくと夏頃には木造建築の着工数は50%くらいまで制限されるとも言われています。木材不足の状況は少なくとも秋、人によっては年末までは続くという予想もあります。建築業界は業種の裾野が広いため経済に与える影響もかなりあると思われ、今後の景気悪化は避けられないでしょう。

国際的な日本の地位が低くなっている
根本的な原因は、日本が諸外国に対して「買い負け」ているということ。品質に対してもある程度寛容で、金余り状態のアメリカや中国。一方、品質にうるさくお金のない日本。
国としての力が弱まっているのだということはわかっていたつもりでも悲しくなります。国際的な日本の地位の低下ということですね。

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国産の木材で代替えできないのか?
輸入がダメなら国産の材料で代替えできないのか?という話になるのですがそう簡単にも行きません。効率化や安定供給、扱いやすさ、より安い材料を求めすぎた結果とも言えますが、現在木材自給率は37%程度です。(年々上がってきてはいますが)
ですので、単純に外材を置き換えるほどの生産量や環境も整っておらず、「今すぐに」自給率を上げるということは難しいのです。
今後SDGsなどの後押しもあり自給率が高まっていくことは考えられますので、持続可能な材料としての国産木材の需要が高まり、国内の林業が整備されていくことを願っています。

これからの住宅業界のあり方は?
皆さんご存知の通り、日本は急激な少子高齢化の局面であり、人口減少の一途を辿っています。その中で住宅産業はここ10年でも新設住宅着工戸数は90万戸前後を推移しています。(昨年は81万戸/年) 住宅購入世代の人口に対してこの数値は異常です。戦後、生活環境を整備するために行われてきた住宅の大量供給の名残でもあり、また前述したように建築業界は業種の裾野が広く、景気への影響も大きいため様々な刺激策が打たれてきたという経緯もあります。
一方、供給過多の新築がもたらす問題として空き家問題があり、そちらはそちらで税金を突っ込む。というような矛盾だらけの状態です。
そういう意味でも、新築住宅を建てるなら性能に優れた価値のある住宅を提供するのは大前提となります。
今住宅に求められているのは省エネ性能、耐震性能。
気候変動や大地震にも耐えられる性能の高い住宅。
無駄なエネルギーを消費しなくても暮らせる住宅。

質の高い住宅の供給と中古住宅流通を適正に行っていかなければ、街や住宅を取り巻く環境は悪化していくばかり。
自分たちの子供の世代に少しでも良い環境を残せるよう、仕事を通じて貢献できればと改めて思いました。


最後までご拝読いただきありがとうございました。

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