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クラブワールドカップ2021

クラブワールドカップ面白かった。

南米王者「パルメイラス」対欧州王者「チェルシー」による決勝戦。

両チーム共に100年以上の歴史を持つが、これまで共に優勝経験はなし。どちらも絶対に勝ちたいというガチンコの一戦である。

開催地はUAEのアブダビ。どんな雰囲気なのか気になっていたが、客席は超満員だ。

それぞれの母国から駆け付けたサポーターたちで埋め尽くされている。ノーマスクでチャントを歌い、選手たちを後押しする姿がとても良い。

ほんの数年前まで当たり前だった光景。

なんだか随分久しぶりに見た気がする。以前はサポーターうるさいと思ってたけど、やっぱりスタジアムは活気ある方が見ている方も熱が入る。

解説は岡田さん、都並さんのコンビ。スタジオにはお馴染みの明石家さんま。トヨタカップの頃からずーっと出演している。今更だけど、この人ほんとにサッカー好きなんだなあ。

大方の勝敗予想は、大金で有力選手をこぞって囲うチェルシー優位という見立て。

しかし、いざ試合が始まってみるとパルメイラスペースとなる。

パルメイラスは徹底したマンツーマンディフェンスで対応しつつ、なぜかチェルシーのセンターバックで配給役チアゴ・シウバだけはフリーにする。

パルメイラスのこの作戦は意外であった。守る側は、パスセンスのある選手にはボールを持たれたくないものだ。なのにチアゴ・シウバには自由にボールを持たせている。

解説の岡田さんも言っていたが、チアゴ・シウバにしてみたら「俺のこと、(いいパス出せない、ドリブルで上がれない選手だと思って)なめてる?」と思ったかもしれない。

しかも、そんな作戦を母国ブラジルのクラブにされたら、多少なりともイラっと来るだろう。

パルメイラスの作戦としては、別にチアゴ・シウバをなめていたわけではないはずだ。

チアゴ以外のパスコースを切ることで、ドリブルで上がらせようとしたのではないか。

センターバックを上げさせることができれば、パルメイラスとしては、狙いのカウンター成功率を高めることができる。

だからこそチアゴも簡単には上がっていけない。パスを出すところもない。これによってチェルシーは起点を失うような形になってしまい、連動的して厚みのある攻撃を構築できなくなってしまった。

前半はパルメイラスペースのまま終了。リスク管理に重きを置いた前半であったが、とにかく技術がハイレベルなので見ていて飽きない。正直こういう展開をJリーグでやられたら塩試合になりがちなのだが。

後半、このままではまずいと感じたチェルシーは少しだけ戦い方を変えてきた。

前半は主に最前線中央に張り付いていたルカクをサイドに開かせるようにした。

状況に応じてサイドだったり中央だったりを行き来することで、マンマークの選手はついていかざるを得ない。

そうして空いたスペースに中盤の選手なんかが飛び込んでくることによって、パルメイラスの守備陣にマークの受け渡しがせまられるようになった。

その結果、守備に乱れが生じるようになってきて、良いクロスボールを上げられてしまったのである。

そこを頭でズドンと決めるルカクはさすが。

さあ、これでパルメイラスは守ってばかりもいられない。攻めなきゃってなる。

チェルシーも1点では安心できないから守備固めをするわけでもない。これでオープンな展開になってくる。

マンツーマンの職人仕事から解き放たれた南米選手のプレーは面白い。特に目をひかれたのがドゥドゥ。小柄ながらも体の使い方が上手く、屈強なDF陣相手に前線でボールをキープできる。ボールの置き所、身のこなし、すべてが高レベルで見ていて飽きない。

面白い展開になってきたと思ったのも束の間、VAR介入のPKで1-1になると、また元のリスク管理ゲームに。

パルメイラスの守備もルカクの位置への対応が整理されて、大きなピンチとはならない。

チェルシーは適度に選手交代を図るけれど、あまり効果的には思えなかった。トゥヘルさんにしては意外。もしかしたらだけど、リーグ戦を考慮してターンオーバーを図ったか。

もちろんクラブワールドカップを軽視することはないと信じたいけれど、このハードな日程の中で、やりくりするためには先のことも計算に入れる必要はあったはず。

試合はそのまま延長戦へ。PK決着かと思われた延長後半12分、またもやVAR発動のPKでチェルシーが突き放す。

試合を通じて陽気だったパルメイラスサポーターの不安そうな表情に、このゲームにかける思いが察せられた。

1点ビハインドのパルメイラスは攻めるしかない。チェルシーもけして守りに入らない中で、パルメイラスのカウンター発動。

中央から抜け出して駆け上がる。チェルシーDF寄せてくる。左から味方がオーバーラップしてくる。ここに出せばビッグチャンス!

と思ったけれど、パルメイラス選手は出さないで自分で強引に中央突破を図り、結果、潰された。

マジか~、ここJリーグなら絶対左にパス出すでしょ。解説の岡田さんも「左いたけどなあ」とこぼしていた。

この時間帯、このシチュエーションでも出さずに自分で行く、というのが南米メンタリティなのでしょうか。興味深いっす。

最後の最後、終了間際にもう1回VAR発動でパルメイラスのルアンが一発レッドで退場。

これで万事休す。

にしても、一試合で三回もVAR発動って、主審副審は何をしているのか。3回も重大な事象を見落としたってことでしょ。何だかなあという気分にはなる。

何はともあれ、チェルシーが初優勝を成し遂げました。おめでとう。

ずっと無表情で拍手し続けるアブラモビッチオーナーがシュールで良かった。いやあ、クラブを買収して20年。長かったでしょうよ。やっと取れたタイトルだもんね。

この人、ほんとにサッカー好きなんだろうな。買収当時は金儲けのためにサッカーを使用しているなんて散々な言われようだった。「サッカーの敵」とまで言われていたからね。でもね、20年間もサッカークラブを維持するのにどれだけの資金を突っ込んだかって話ですよ。

これまでに幾人もの資産家やお金持ち企業がビッグクラブを買収しているけれど、短期間で売りに出してしまうことがザラである。

なのに、このアブラモさんはけしてクラブを手放そうとしない。きっと、ただのサッカー好きなおじさんなんだろうよ。そう思うと好感持てるし、チェルシーの初戴冠も、素直におめでとうといえる。