息を吐く



スライドして、スライドして、
またスライドして。

永遠に続くおすすめと、対して興味もないのに離せない目に、どうしようもなくいらいらして携帯を投げる。

ああ今日も、こうやって終わる。

朝から晩まで、下手したら朝から朝まで、
予定を詰めることが多かったから久しぶりに休みをとったのに、なかなか来ない眠気に嫌になって息を吐く。


忙しすぎても嫌だけど、忙しくないのもそれはそれで嫌なんだな。


生きてきて26年、自分のことはいまだにあんまりわからない。

明らかに低下してきた視力を和らげたくて、テレビもスマートフォンも見たくない。
天井ばかり見上げるのにも飽きて、ふと気づいた。

あ、こないだ買った本読んでないや。

待ち合わせに早く着いてしまって、立ち寄った丸善にあった本。好きな作家なわけでも、気になっていた賞をとった本でもなかったけれど、なんだか惹かれて、紹介文も読まずに買った。

そうだ、あれがあったな。

片付けられていない机に積み上げていたその本をとって、また息を吐く。

なんだか今日は、泣きたい日だった。
何に落ち込んでいるわけでも、何かに追われているわけでもなかったけれど、自分のご機嫌をうまくあやせずに、ただ泣きたかった。

何回かコンビニを往復して、食べたくもないお弁当を何個も食べて、また嫌になって泣きたくなる。

最悪なループを繰り返していた途中に、甘いものでも食べたら元気出るかな、とロールケーキを買った。


ロールケーキを食べながら、本を読むか。


1ページ開いて、片手にフォークを持って、喉が渇く。

紅茶も淹れたほうがゆったりできそうな気がする。

ケトルに水を入れて、結局待てずにロールケーキを食べながら、あんまり中身の入らない文章を読む。
片手間で、仲のいい友達からようやくきた返信を見つめながら、スマートフォンを裏返す。

あ、多分、好きな話だ。

小説を読むのが好きだからか、自分に刺さる話かどうかは、最初の数ページでわかる。
だから本屋で、1ページは立ち読みをしてから買うことが多いのに、これはタイトルと雰囲気で手に取ってしまったから。
予想が外れなくて良かった。


カチッ

お湯が沸いた。


ようやく紅茶を淹れて、もうほとんどないロールケーキを齧り終えて、小説を振り出しに戻す。

熱っ。

一口飲んで、息を吐く。



なんてことない今日の話。

音楽活動の足しになります、執筆活動の気合いになります、よかったら…!