詐欺防止

市川麗奈は地元警察署で働く真面目な職員だった。とある日、彼女の上司から突然、奇妙な指示が下された。
「市川、明日から一週間、この携帯電話の顔出し着ぐるみを着て街頭でオレオレ詐欺防止啓発活動をやってもらおう。」

麗奈が手渡されたのは、大きな携帯電話の形をした顔出し着ぐるみだった。携帯電話の上部に麗奈の顔がちょうど見えるようになっていた。
そして、中に着る黒の全身タイツは、一層携帯電話の外観を強調する役割を果たす。

「えっ、こんな格好、恥ずかしいですよ…」麗奈は照れ隠しに苦笑いしつつも、なんとか上司に抗議した。
しかし上司は無情にも、「君なら大丈夫、君が1番似合うんだ。」と言って聞かなかった。

翌日、心の準備もできていないまま、麗奈は街頭での活動を開始した。見慣れた顔が次々と通り過ぎていく中、黒の全身タイツと携帯電話の顔出し着ぐるみを着て立つ彼女の姿は、確かに注目を集めていた。恥ずかしいと思いつつも、麗奈はなんとか堪えて啓発活動を行った。

「これ、オレオレ詐欺防止の啓発活動ですよね?がんばってくださいね!」そう声を掛けてくれる人々に、麗奈は感謝しつつも、内心では恥ずかしさでいっぱいだった。「こんな格好、もうしたくない…」と心の中でつぶやきつつ、麗奈は一日の活動を終えた。

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