好奇心
ファストフード店の更衣室に置かれたハンバーガーの顔出し着ぐるみ。それを見たこの店でアルバイトをしている女子高校生の白石奈々は、一時の好奇心から試しに着てみることにした。
パンと肉、レタス、トマト、チーズがユーモラスにデザインされたその着ぐるみは、頭部分が開けられており、顔が丸見えになる形状だった。
「どうだろう、これ、似合ってる?」と、鏡に映る自分の姿を見ながら、奈々は自分で自分をからかってみる。しかし、楽しいひと時はすぐに終わった。着ぐるみが奈々を離れない状態となり、なんとそれが脱げなくなってしまったのだ。
「ちょっと、待って…脱げない。これ、どういうこと?」と、奈々は着ぐるみを脱ごうとするも、動かない。「うそでしょ、脱げないの? 本当に?」と、焦りと恐怖が交錯する。
仕方がなく後に居合わせた先輩たちに相談し、顔出しのハンバーガー着ぐるみを着たまま店頭に出ることになった奈々。その姿を見た客たちは驚いた。「え、新しいプロモーション?」と、客たちはその珍しい姿を眺めている。
しかし、奈々は自分の姿が周りの人々に見られていること、そしてその視線に、心の中で泣きそうになりながらも、「はい、ハンバーガーで~す」と声を出すしかなかった。その一日が終わるまで、奈々はその着ぐるみを脱ぐことができず、それが彼女の日常となってしまった。
「なんで、こんなことに…」と、夜、一人で泣きながら自分を責める奈々。しかし、もう遅い。彼女のこれからはハンバーガーの着ぐるみと共に過ぎていくのだった。
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