お米

25歳の三田穂花は、地元の農協の職員として日々奮闘していた。仕事は多忙で、ほとんど休む間もない日々が続いていたが、彼女はいつも真面目に業務に取り組んでいた。

ある日、職場でありえない提案が飛び出した。年に一度、農協が主催する子供向けの「農業体験イベント」で、穂花に、何と米袋の顔出し着ぐるみを着る役割が回ってきたのだ。これは、地元の子供たちに農業の大切さを教えるためのイベントで、彼女が着る米袋の着ぐるみはそのシンボルとして用意されていた。

彼女は驚きと困惑で顔を赤らめたが、周囲の人々は彼女の恥ずかしがり屋な性格を知っていて、それが逆に子供たちに親しみやすいという理由からこの役を穂花に依頼したのだ。しかし、その恥ずかしさを押し切って彼女が着ぐるみを受け入れるかどうかはわからなかった。

その着ぐるみは、大きな米袋を模したもので、上部に顔を出す穴が開いていた。身体を覆う部分は綿でふっくらとしており、全体の形は米袋そのもの。

「こ、これを着るの?」穂花は、全く想像していなかった着ぐるみに固まってしまった。その異様さに、彼女の心は一気に落ち込んだ。しかし、周りの職員たちは微笑みながら「大丈夫だよ、穂花ならきっと可愛く着こなしてくれるさ」と励ました。

躊躇いながらも、穂花はその米袋着ぐるみを受け取った。恥ずかしいと感じつつも、このイベントで地元の子供たちが農業に興味を持つきっかけになればと思い、彼女は自身の感情を押し殺して着ぐるみを着ることを決意した。

イベント当日、子供たちは大喜びで穂花の元へ駆け寄ってきた。「米袋さん、米袋さん」と名前を呼ばれ、自身が恥ずかしい思いをすることで子供たちが喜ぶという経験は、穂花にとって新鮮で、同時に何とも言えない感情を彼女に抱かせた。

恥ずかしさを乗り越え、子供たちの笑顔を引き出した穂花。しかし、イベントが終わった後、彼女は決してこのことを忘れられず、職場の人々には恨みを持つことになった。彼女は米袋の顔出し着ぐるみを通じて、今後は自分を大事にすることを決意した。

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