時は夏、照りつける太陽と文化祭の興奮で沸き立つ学校。

あるクラスでは肝試しの出し物を計画していた。役者の一人として選ばれたのは、いつもクラスでイジられ役の春。彼女が着ることになったのは、人の顔が覗く棺の顔出し着ぐるみだ。

その着ぐるみは、黒くてツヤツヤした棺桶を模して作られており、側面には顔が覗くための大きな穴が開けられていた。更に、その穴の周りは適度に削り取られていて、人間の顔がちょうどフィットするようになっていた。足元はフリーになっていて、棺桶が浮いているような錯覚を生んでいた。

「春、君なら絶対似合うよ!」とクラスメイトたちは大笑い。いつもの通り、春は彼らのノリに巻き込まれる形で、顔出し着ぐるみを着ることになった。しかし、最初はそれが気に食わなかった。いつものイジられ役に甘んじてしまう自分に腹が立っていた。

文化祭の当日、春は棺桶の顔出し着ぐるみを着て、肝試しのコースに立った。彼女の不気味な棺桶の姿に、訪れた生徒たちは恐怖の声をあげていた。そんな声を聞くたび、春は不思議と恥ずかしさよりも楽しさを感じ始めていた。

最後の方では、春は思いっきり棺役を楽しんでいた。「怖がってる顔、見てー!」と大笑いしながら、生徒たちを驚かせた。最初は嫌がっていた棺桶の顔出し着ぐるみだったけど、文化祭が終わった時、春は「また着てみたいかも」と思っていた。それは彼女が、自分自身を楽しむことを学んだ瞬間だった。

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