海の家

夏休みの海の家でバイトすることになった桜花、里穂、美佳の三人は、その日初めてのアルバイトだった。海の家の求人には水着を着て接客と書かれていたが、水着姿を見せることに、何の抵抗もない三人は水着を身にまとって海の家に向かった。しかし、その初日から予想外の仕事を任されることになる。

「これを着て客引きしてくれ。」店長は、三人に一つずつ、大きなサーフボードを模した顔出し着ぐるみを渡した。

「えっ、これ何?」桜花が着ぐるみを受け取り、戸惑いながらもそれを詳しく見つめた。全長は1.5メートルほどで、赤、青、黄色の三色に塗り分けられている。その上部には、顔を出すための穴が開けられていた。

「客を呼び込むためのアピールだ。ちょっと恥ずかしいけど、楽しんでやっていこう。」店長はにっこりと笑いながら言った。しかし、桜花たちは全くその気ではなかった。

「こんなのを着て客引きなんて…」美佳が驚きの声をあげると、里穂も「私たち、普通に接客とか調理のお手伝いかと思ってたのに…」と嘆いた。

それでも、三人は着ぐるみを抱えて海辺に出て行くしかなかった。やる気なしに着ぐるみを着てみたところ、想像以上に暑く、動きにくい。それでも三人はお互いを励ましながら、とりあえずやるしかないと腹をくくった。

だが、着ぐるみを着て浜辺を歩き始めると、通りがかりの人々が彼女たちを見て驚くばかりで、その恥ずかしさはさらに増していった。

昼下がり、太陽は容赦なく照りつける。周囲の人々の楽しげな声や波の音すら、桜花たちは耳鳴りのようにしか聞こえなかった。着ぐるみの中で湧き上がる熱と汗、そして恥ずかしさに、桜花はふらつき、美佳は息苦しそうに、里穂は頭痛に襲われる。

「もう、限界…」桜花がつぶやくと、里穂も美佳も同調した。そんな中、海の家の店長が「大変だったな、ありがとう。でも、みんなのおかげで大盛況だよ。」と彼女たちの元にやって来て感謝の言葉を述べた。

そして、彼女たちは着ぐるみを脱ぎ始めた。その時、それぞれの顔、腕、脚に日焼けが一部だけ残っていることに気づいた。着ぐるみの顔出し部分と肩から腕にかけて、脚だけが焼けて、あとは真っ白な肌。三人は顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。

「うーん、これは…」店長は困ったように首を傾げ、「でも、お客さんも喜んでたし、よしとするか。これで海の家のPRもバッチリだ。」と言いながら、笑った。

しかしその後、彼女たちは完全にバイトを辞めることはなく、普通の服装で働くことになった。しかし、日焼け跡はなかなか消えず、彼女たちは毎日その恥ずかしい思い出を体に刻まれた形で思い出すことになった。

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