自民党高市早苗議員電波停止発言に加え第二の森友学園疑惑と宗教法人課税問題。立民小西ひろゆき議員ばかり問題視する国民民主はダメだと思った件。

自民党高市早苗議員電波停止発言に加え第二の森友学園疑惑と宗教法人課税問題。立民小西ひろゆき議員ばかり問題視する国民民主はダメだと思った件。






政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に「電波停止」を命じる可能性に言及した高市早苗総務相の発言に抗議して、田原総一朗氏らテレビ放送関係者が29日午後2時半から都内で記者会見を行った。  参加者は田原氏のほかに、鳥越俊太郎氏、岸井成格氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、青木理氏ら。  田原総一郎氏らは「私たちは怒っている」という声明を発表。「放送局の電波は、国民のものであって、所管する省庁のものではない」とし、大臣による判断で電波停止ができるというのは、放送による表現の自由や健全な民主主義の発達をうたった放送法の精神に著しく反するものだと抗議した。

会見の趣旨(アピール文)

金平:最初に会見の趣旨ということで私たちが用意したアピール文を、ごめんなさい、参加者たちも紹介しようと思いましたが省略します。最初に鳥越さんのほうからこのアピール分を読み上げていただきたいと思います。 鳥越:一応、半になったら始めます。はい、2時半になりましたので、ここから始めさせていただきます。私たちは怒(いか)っている。高市総務大臣の電波停止発言は憲法、放送法の精神に反している。今年の2月8日と9日、高市早苗総務大臣が国会の衆議院予算委員会において、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性について言及した。誰が判断するのかについては同月23日の答弁で、総務大臣が最終的に判断するということになると存じますと明言している。私たちはこの一連の発言に驚き、そして怒(いか)っている。  そもそも公共放送に預かる放送局の電波は国民のものであって、所管する省庁ものではない。所管大臣の判断で電波停止などという行政処分が可能であるなどという認識は、放送による表現の自由を確保すること、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることをうたった、放送法の第1条の精神にも著しく反するものである。さらには放送法にうたわれている放送による表現の自由は、憲法21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」の条文によって支えられているものだ。  高市大臣は処分のよりどころとする放送法第4条の規定は、多くのメディア法学者の間では放送事業者が自らを律する倫理規定とするのが通説である。また放送法成立当時の経緯を少しでも研究すると、この法律が戦争時の苦い経験を踏まえた放送番組への政府の干渉の排除、放送の自由、独立の確保が強く企図されていることがうかがわれる。私たちはテレビというメディアを通じて日々のニュースや情報を市民に伝達し、その背景や意味について解説し、自由な議論を展開することによって国民の知る権利に資することを目指してきた。テレビ放送が開始されてから62年になる。 男性:64年ですよ。 鳥越:64年ですか。64年になる。これまでも政治権力とメディアの間ではさまざまな葛藤や介入、干渉があったことを肌身をもって経験してきた。現在のテレビ報道を取り巻く環境が著しく息苦しさを増していないか。私たち自身もそれがなぜなのかを自らに問い続けている。外からの放送への介入、監修によってもたらされた息苦しさならはね返すこともできよう。だが自主規制、そんたく、萎縮が放送現場の内部から広がることになっては危機は一層深刻である。私たちが今日ここに集い、意思表示する理由の強い一端もそこにある。以上、呼びかけ人、青木理、大谷昭宏、金平茂紀、岸井成格、田勢康宏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎、以上です。 金平:鳥越さんありがとうございました。それでは今日、ここに参加している呼びかけ人が順番にだいたい3分ぐらいですよね。ということで青木さんのほうから順番にお願いいたします。
メディアとジャーナリズムの原則が根腐れしかねないという危機感を抱いている(青木氏)

青木:青木理と申します。この中では僕が一番若いようなんですけれども、詳しいことは先輩方がおそらく発言なられると思うので、僕がここに来た思いだけを最初に本当に簡単に申し上げます。  こういう会見をするっていうときによく出てくるのが、いろんな方々、俺は群れるのが好きじゃないからというようなことをおっしゃる方もいらっしゃって、僕自身も実は組織をスピンアウトするぐらいなので、もともとあんまり群れたりとか、こういう形でいろんな人と声を上げるっていうのはもともと好きではないんですけれども、しかしこの仕事に関わっているものが、原理とか原則とか、メディアとかジャーナリズムの矜持に関わるような事件が起きたときっていうのはやっぱり、組織とか個人とかの枠を超えて連帯して声を上げなくちゃいけないときっていうのは絶対あるんだろうなというふうに僕は思っているわけです。  そういう意味で今回の放送法発言、それから同時に岸井さんに対しての意見広告とか政権側、あるいは政権の応援団の方々がメディアとジャーナリズム、あるいはテレビ報道の原則っていうのを非常に不当な形で攻撃してきているという事実を、僕は本当に真剣に受け止めて、これは黙っていられないという思いでここに来ました。このままどんどん押し込まれてしまうと、本当にメディアとジャーナリズムの原則が根腐れしかねないなという危機感を僕自身、抱いております。それが僕の、ここに来ている思いであります。

被災地のNHKに対する不信感はものすごい(大谷氏)

大谷:大谷昭宏です。今回こういうアピールに至った、それから一連の各メディアに対する陰に陽にの圧力、あるいは今、お話があった岸井さんに対する嫌がらせとも言うべきさまざまな攻撃。こういったことについてはほかのキャスターの皆さま方からも発言があると思いますんで、そこら辺はちょっとはしょらせていただいて、一言で申し上げるとわれわれがここで突っ張っとかないと、視聴者の皆さんにすでに多大な影響が出てるんじゃないかなという率直な思いで、非常にやむにやまれない気持ちでおるわけです。  今、私実は、東日本大震災の被災地の女川から今朝、大急ぎで帰ってきたところでして、週末ごとに今、被災地に入っています。被災地に入って、こういう問題がいろんなところで影響を与えてるんだなっていうのを如実に感じるのは、われわれが取材に行って、例えば原発の取材に行く、あるいは非常に復興が進んでいるという報道をしにいくと。本当に復興が進んでるところもあるんで、その点が1つ女川にもあるわけです。しかしそれを放送したいと言って、申し上げると復興がなってないのにあなた方はそういう報道をさせられているんだろうと。福島の除染が進んでるだろうという、報道をさせられに来ているんだろうという意識が、被災者の皆さん、非常に強まってるんです。これは阪神・淡路大震災のときに全くなかったことです。そこまでつまりわれわれはもう、手先になってるんだろうと思われるような事態が来てしまっている。  もし、言うと非常に傷つけることになるかもしれませんけど、大変悪い言い方をすればNHKさんに対するその不信感ってすごいんです。変な話で、あってはならないことですけど、私は民放の取材に行くと、「だったらまだいいか」というような答えさえ返ってきていると。これはわれわれメディアではなくて、被災者、ひいては今、国民の不幸になりつつあるというような思いでこの場に来ております。皆さま方も同じメディアの中にいらっしゃるわけですから、どうかその危機感を共有していただきたいと思っております。
日本の世界の報道自由度ランキングは180国のうち61位(金平氏)

金平:金平と申します。今、日本のメディアが海外からどう見られてるかっていうと、2015年の世界の報道の自由度ランキングっていう、これはパリにある国境なき記者団っていうところが毎年発表しているものですけども、日本は今、61位です。61位です。180国のうち61位というそういう今、ポジションにいます。僕はとてもこれは恥ずべき自体だというふうに思います。戦後の今、日本のテレビ報道の歴史っていうのを自分なりに勉強しなおしてるんですけれども、やっぱり今、感じるのは、今という時期が特別に息苦しい時期だろうなというふうに思います。  その息苦しさっていうのが、さっきのアピール文にありましたように外からの攻撃で息苦しくなっているっていうんであればいいんですが、どうもその息苦しさの原因っていうのが内側、メディアの内側とかあるいはジャーナリストの内側のほうに生まれてきているんじゃないかという思いがあって、やむにやまれず今日、こういう会見をしようということで、呼び掛けをしたところ、こういう顔ぶれになりました。自主規制とかそんたくとか、あるいは過剰な同調圧力みたいなものが、それによって生じる萎縮みたいなものが、今ぐらい蔓延してることはないんじゃないかというふうに私は自分の記者経験の中から思います。  こういうアピール自体がもう、遅きに失したんじゃないかという声ももちろんあると思いますが、こういうアピール自体がどれだけの訴求力があるかどうかは分かりませんけれども、非常にそういうもの自体が見えにくくなっていて。ただ1つだけ言えることは、何も発言せずに息を潜めて、やがていい時期が来るよっていうような態度とは、私たちは一線を画したいというふうに思っています。  考えてみますとテレビのキャスターとか、コメンテーターっていう人たちがこうやって一堂に局を越えて何かするというのは、2001年の4月に個人情報保護法に異議をするキャスター声明っていうのがあってだいたい同じ顔ぶれだったんですよね。そのときは実はテレビの各チャンネルのキャスターたちがみんな勢ぞろいしました。筑紫さんがまだ存命だったですね、安藤優子さんとか、日テレからもテレビ東京からもフジテレビからも来ました。それが今、できなくなっています。  それから2013年の11月20日に特定秘密保護法に対して反対した顔ぶれが全く同じようにありましたですけど、ほぼ同じ顔ぶれですよね、これね、そのときとね。ということはつまり、広がってないんですね。僕らの呼び掛けみたいなものが横に広がっていない、縦に広がっていないということを認めざるを得ません。皆さんは取材という形でここにお集まりいただいているんですけども、今日のアピール文の呼び掛けの対象のかなりの部分っていうのは、もしかすると僕は取材されている皆さんじゃないかというふうに思っている次第です。
政治的公平性は権力側が判断することではない(岸井氏)

岸井:はい、岸井です。よろしくお願いいたします。アピール文にはほとんど過不足なく盛られてると私は思いますので、多くを語ることはありませんけれども、今、金平さんが言われた自由度について、61まで、OECDの先進国の中ではもう断トツに低い地位が落ちてるんですね。それはもう最近の『エコノミスト』も、それからいろんなね、『ガーディアン』でもそうでしたけど、とにかく今の日本の報道に関する懸念というのはものすごく海外で、むしろ強くなってるんですね。  だから特定秘密保護法もそうですけど、最近そういう評価をどんどん落としてるのがやっぱり、どうも日本のメディアは自粛が過ぎるんじゃないかと。何を、何に遠慮してそんなことやってんの、っていう意識が非常に海外メディアに不信感が広がってるっていうことを感じます。いろんな形で取材も受けますけども、そこはもう本当に考えなきゃいけないなと思いますね。  それから私も高市発言を聞いたときはもう、まず第一の印象は驚くだけじゃなくて、ちょっとあきれ果てましたね。憲法の精神、あるいは放送法の精神とか目的っていうものを知らないで、もしああいう発言をしてるとすればもう大臣失格、資格ありません。それが第一ですね。  もし仮に知ってて、曲解をしてる、いうことであれば意図的にある一歩を進めて、言論統制に進みたいという意図があると思われても仕方がありません。それについてきちっとしなきゃいけないっていうことですよね、だから先ほどから海外から非常に日本のメディアが不信感を持たれるようなことになってる中で、ああいう発言が出てるっていうことはものすごく重要なことだと思うんですよね。これを黙って見過ごすわけにはいかないわけですね。だから高市発言があった日も、私も番組で取り上げて、とにかくあり得ないことだし、絶対にあってはならないことだということを申し上げました。  それからあえて、これは皆さん報道に携わる方たちですから、お釈迦様に説法になりますけど、私自身、新聞社の論説委員長をやり主筆もやりました。だからそういう意味では報道、そして政治の公平性と、それから使命、メディアの使命、ジャーナリズムの役割っていうものについて、ずっとそれなりに考えてきたつもりであります。  それ、政治的公平性っていうのは、権力側が判断することではないんです。これはわれわれメディアが一番気を付けなきゃいけないことです。こういう言い方すると、よく政治家との大討論になることがありますけども、われわれは先輩から常に、政治、政治家、官僚、これは必ず大事なことはしゃべらないか隠す。場合によってはうそをつく。このことが前提で取材しない限り、本当の報道っていうのはできないんだということですよね。それはもうずっと感じてきました。それは暴くっていうだけじゃなくて、本当のことを知らせることが、国民の知る権利にきちっとメディアが応えるということですからね。  だからそれを常に公平性という中で考える。逆に言うと、政府権力側の言うことだけを流してれば、それは本当に公平性を欠く、国民の知る権利を阻害するということになる、ということだと思うんですね。そのことをきちっともう1回、胸に刻んでやらなきゃいけない。そのぐらい今は危機的状況に入ってきたなと。言いたいこといろいろありますけどね、取りあえずはまず感じたことを申し上げたということです。

高市氏の「電波停止」発言に対する抗議会見(全文1)会見の趣旨ほか2016/2/29THEPAGE





第1次安倍内閣では「郵政反対派復党」をきっかけに、「消えた年金問題」など、マスメディアは政権を激しく批判した。その後も「赤城絆創膏事件」や「原爆しようがない発言」などの閣僚の失言が大量に報じられて、自民党参院選に敗北。安倍氏は体調を崩し、政権は沈没した。しかし、7年後、状況は全く逆転している。第1次政権では、マスメディアは「安倍はKY」などと揶揄していたが、いまやマスメディアのほうが「KO」寸前。第1次政権期がメディアのターン(攻め時)だったとすると、現在は、帰ってきた安倍政権のターン、アベノターンといえる。  前回の記事では、昨年の衆院選におけるテレビでの選挙関連の報道量が極端に少なかったことをデータで裏付けた。そこで、今回は、それをテレビ報道をめぐる政権とテレビ側の攻防戦として眺めてみる。すなわち、選挙後に明らかになった様々な政権側の「テレビ対策」を報道量の推移に重ねあわせることで、メディアと政権の間で、どのような「交渉」、もしくは「攻防」がおこなわれたかを推測する。

総選挙報道の流れ

 政治家とはなにか。政策を決定する人、有権者の代理人など、いろいろな定義ができるだろう。しかし、忘れていけない本質がある。それは、権力闘争のプロフェッショナル、つまり喧嘩のプロであるということだ。  今日のメディア(特に新聞やテレビといったマスメディア)と安倍政権の間に生じている状況は、政権がマスメディアや世論を侮り難い権力であると認識し、喧嘩のプロとしてそれに本気の闘争を仕掛けていることに本質がある。  もちろん、「われわれはテレビに対してこのような攻撃をした」と政権側が明らかにするわけはなく、テレビ局側も「政権に配慮して報道を慎んだ」などと公言することもないだろう。しかし、表面化した動きを時系列としてまとめてデータと重ね合わせることで、1つの推論、すなわち仮説を得ることはできるだろう。



[図表1]総選挙報道の特徴

 さて、前回の記事で、日本のテレビ(地上波)の総選挙報道に以下のような特徴があることを紹介した。図表1は、これらの特徴をモデル化した図に、今回の総選挙の安倍政権による「テレビ対策」を重ねあわせたものである。 ■総選挙報道の特徴 ・総選挙報道は、解散から公示日までの前期と公示日から選挙日までの後期にわかれる ・後期は12日間、前期は解散日の設定によってその長さが増減する ・前期で選挙の名前や争点など選挙の雰囲気がつくられ、後期は党首の議論や各選挙区での戦いぶりなどが主に報じられる ・前期は比較的自由に報道されるが、後期は公選法上の選挙期間にあたるため報道は抑制的である ・報道量が盛り上がるのは解散日と公示日
 報道などによると、今回の衆院選で、安倍首相と自民党は、図表2のようなコミュニケーションをおこなった。それを改めて報道の流れと重ねてみると、政権は実に上手い「対策」を、タイミングよく実施していたといえる。

テレビ対策として何が行われたのか

 安倍政権の「テレビ対策」として、まず指摘すべきは、解散から公示日までの日数を最短にしたことである。  解散から公示日までの「前期」は11日間で、これは過去10年間の5回の総選挙のなかで最も短い。その結果、報道時間は極端に短くなった。選挙期間は、国民が政治について考え、それを誰に任せるのかを判断する重要な時間である。一方、前述の参院選でもみられたように、近年は選挙期間中のマスメディアの報道によって選挙のムードが左右されると、政治家は苛立っていた。安倍政権は選挙期間を短くすることで、そのリスクを最小化する手を打ったといえる。しかし、その「対策」のために国民の考える時間が大幅に犠牲となった。  その短い選挙期間、もちろん先手を取ったのも安倍首相だ。解散4日前に記者会見をおこなって「今回の選挙はアベノミクス選挙である」と宣言。会見後は、NHK・日テレ・TBSの各テレビに単独出演して、選挙の命名合戦、議題設定争いを主導した。  また、その2日後には、番組の「公平中立、公正の確保」を求める「要望書」が自民党本部でテレビ各局に手交された。そのタイミングはテレビの選挙報道が最も盛り上がる解散日の前日であり、比較的自由に報道がなされてきた「前期」のテレビ報道全体への抑制を狙ったものとも解釈できよう。  なお、その6日後には、テレビ朝日の報道ステーションが前々日に報じたアベノミクスについての報道内容に対し「放送法4条4項の規定に照らし、同番組の編集及びスタジオの解説は十分な意を尽くしているとは言えない」と指摘する文書も出している。  公示後はテレビ報道を牽制する文書の発出などは明らかになっていないが、麻生太郎財務大臣が12月7日におこなった「(少子高齢化に関連して)子どもを産まない方が問題だ」との「失言」に対して、その翌日に釈明がなされるなど素早い対応がとられた。  対応といえば、12月9日におこなわれた安倍首相の発言もそれにあたるかもしれない。その日の夕方、埼玉5区(枝野幸男民主党幹事長(当時)の地元)での演説で、安倍首相はアップル本社がアジア初の研究所を日本の横浜に開設することを「発表」して世界的なニュースとした(※1)。  この話題は、翌10日のニュースでも大きく報じられたが、実はその日は特定秘密法案が施行される日だった。この法律には反対の世論も強く、その施行が大々的に取り上げられると政権のイメージが傷つく可能性もあった。しかし、結果的に特定秘密法案施行の話題は「アップルの研究所、横浜に!」に押しやられる形となった。  なお、この「世界的企業が日本に来る!」との話題は、今回の統一地方選においても前半戦の投票日前日に菅官房長官が街頭演説で「発表」し、メディアが取り上げている(※2)。  ここまで、政権の「テレビ対策」について、報道などで表面化したものをまとめた。では、その「効果」はいかほどだったか。
テレビ対策の効果は?



[図表3]テレビ報道量の推移に、各「テレビ対策」のタイミングを重ねたもの

 図表3は、前回の衆院選の選挙関連情報のテレビ報道量(番組タイプ別・日別)の推移に、各「テレビ対策」のタイミングを重ねたものである(データはエム・データ社。東京キー局計。詳しくは、前回記事)。  これをみると、特にワイドショーの報道量に対して、自民党が11月20日に出した要望書が一定の役割を果たしたことが伺われる。解散宣言をおこなった11月18日やその翌日の19日には2時間以上も報じられていた選挙関連の話題が、要望書が渡された(20日)翌週になると、30分以下に落ち込むのである。しかも、その傾向は選挙日まで続いた。  一方、ニュースに関してはそれほど極端な変化はみられないが、過去の報道量と比べると少なかったのは前回の記事で報告した通りである。  まとめると、政権の「テレビ対策」はテレビの報道量に対して一定の効果を果たしたと推測される。

メディアと政治 今日における課題は?

 以上、前回衆院選における安倍政権のテレビ対策とその効果を検証した。解散に際して、安倍首相が様々な過去の解散(中曽根康弘首相の「死んだふり解散」や佐藤栄作首相の「黒い霧解散」など)を勉強し参考にしたとジャーナリズムは指摘していたが、われわれの検証からは安倍政権はテレビの総選挙報道の特質についてもよく理解しているといえるだろう。  このことは、第1次政権での挫折の経験が、やはり相当なものであったこと、そして、そこから立ち上がる過程で、相当な学習がおこなわれたことを示唆している。安倍氏の「再チャレンジ」を、ジャーナリズムは甘く考えるべきではなかったといえよう。  しかし、このままアベノターンのみが続いていくことは、日本のデモクラシーにとって健全ではない。ジャーナリズムが政権や読者・視聴者に媚びるようになると、日本政治全体が歪むからだ。それは戦前のわれわれの経験が教えてくれている。  それを防ぐべくジャーナリズムは、当時の彼の痛みに正確に向かい合った上で、己の本分を見つめ直し、次なるターンを準備すべきである。一部に政権の寛容を求める声もあるが、それはおそらく甘い期待だろう。傷つけられた人間は決して忘れないのである。それが特に権力のプロフェッショナルであれば。 (※1)Apple to Open New Research Site in Japan,ウォールストリートジャーナル電子版、2014年12月9日 (※2)「アップルに匹敵の企業、日本に拠点準備…菅長官」読売ONLINE、2015年04月12日 ------------------- 逢坂巌(おうさか いわお) 立教大学兼任講師。専門は現代日本政治、政治コミュニケーション。著書に『日本政治とメディア』(中公新書、2014)。共著に『テレビ政治』(朝日新聞社)、『政治学』(東大出版会)など。

<政権とメディアの攻防>データで読む安倍政権のテレビ報道対策 逢坂巌2015/5/2THEPAGE





初の女性宰相候補とまで呼ばれたはずだった。それがいまや、総務省の行政文書をめぐって窮地に陥り、先日の奈良県知事選では県連会長でありながら保守分裂を招き惨敗。泣きっ面に蜂の状況の高市早苗氏の周辺に、新たな問題が浮上している。

いわくつきのゴミ処理施設

 維新の会が大阪以外の知事選で初めて勝利を収めた奈良県知事選。維新の会から退いた松井一郎・前大阪市長が「自民党が割れた事による漁夫の利」とツイートしたように、その原因は自民党内の分裂にあった。

 自民党奈良県連会長の高市早苗・経済安保大臣が新人の平木省氏を擁立したのに対し、現職の荒井正吾氏が引くことなくともに立候補、党内が割れたことで維新に敗れた。

 高市氏の責任が問われているが、その裏では、高市氏の選挙区における重大問題が起きていた。

「(土地代の)3倍にも上る高い金額での用地取得は、住民の納得を得られてるんでしょうか」
「住民が知らない場で決められるというのはそもそもおかしいというふうに思います」

 4月9日の奈良県知事選が迫った3月20日、荒井知事は定例記者会見で、県内の自治体が行なっているある事業に対し、大批判を展開。県としての補助金を再考する可能性などにも言及した。

 その事業とは奈良県天理市内で、同市を含む10の自治体が共同でつくる「山辺・県北西部広域環境衛生組合」(以下、「組合」)が行なっている、新しいゴミ処理施設の建設工事だ。この工事にからんで、天理市内に本部を置く宗教団体・天理教を巻き込んだ騒動となっている。自民党関係者は「この工事が党分裂の原因の一つ。天理市が選挙区の高市氏にも関わってくる問題だ」と言う。

“政治と宗教”をめぐって、新たな問題が持ち上がっていたのだ。

「このゴミ処理施設建設に関しては今の土地、やり方ありきで話が進んでいるようにしか思えない」

 そう話すのは、天理市とともに組合を構成する大和高田市の市議会議員・森本尚順氏(維新の会)だ。

「この土地は天理教が所有している。そこを組合は購入ではなく、60年契約で借りて使うとしています。土地の評価額は約4億6000万円ですが、利回りが天理市のもともとの試算では3.5%に対し、市が採択した天理教側の試算は5%で計算されているため60年間の賃料の合計は約14億円にものぼる」(同前)

 荒井知事が会見で「3倍にも上る高い金額」と表現したのは、この土地の評価額と賃料の差を指している。
「高市大臣に状況を報告した」

 一方、組合の管理者(代表)を務める天理市の並河健市長は、本誌の取材に対し“疑惑”の存在をきっぱりと否定する。

「ゴミ処理施設のような大きな建物をすぐ建てられる造成済みの土地は、ここくらいしかなかったんです。高速のインターチェンジからも近く、自治体からゴミ収集車が集まるのにも便利です」

 また、土地が賃借の理由は、こう言う。

「天理教ではなく、地元住民の要望です。購入すると“迷惑施設”であるゴミ処理場が固定化されるため、賃借で進めてほしいとの声が強かった。天理教もゴミ処理施設を歓迎しておらず、一生懸命お願いして、賃料も決まったんです」(同前)

 荒井知事の疑問の声については、こう言い切る。

「新型コロナ禍で、私が『荒井知事のコロナ対策には不備もある』と指摘をしたら、敵視され始めたんです。組合の事業も槍玉にあげられ、おかしな“疑惑情報”が出回るようにもなった。組合に参加する自治体を中心に県内には荒井不信が広まり、高市会長ら自民党奈良県連も今回の知事選では平木氏を推す一方、荒井知事は強行出馬。私に言わせれば、何の問題もないゴミ処理施設建設を荒井知事が無理に“疑惑化”したことが、今回の自民の分裂と敗北の原因の一つです」

 平木氏は高市氏の総務大臣時代の秘書官。並河氏は平木氏の後援会副会長を務め、「平木選対は高市・並河ラインで動いていた」(地元政界関係者)そうなのだが、平木氏は次点で落選。「高市大臣は県連会長として、党分裂を回避できなかった責任はある」「“子分”の平木氏をプッシュするのに忙しく、調整能力には疑問符がついた」と怒る県内の自民党支持者もいた。

 さらに、今回入手した組合の会議録によると、並河氏は2015年6月、ゴミ処理施設への環境省の補助金に関する問題で高市氏を訪問したという。資料にはこう記されている。

「全国市長会に合わせて上京した際に、高市大臣、堀井先生(編集部注:奈良選出の堀井巌・参議院議員)に状況を報告した」

 さらに、昨年8月20日に行なわれたゴミ処理施設の起工式と安全祈願祭には、高市氏が最前列に招待されていたことも、組合の資料に残されている。高市事務所によると、「当日は地元秘書が代理で出席した」という。
支部から教会本部に支出も

 そもそも高市氏にとって、選挙区である天理市に本部を置く公称信者数118万人の宗教法人・天理教の存在は大きい。以前、本誌(2015年1月1・9日号)では、高市氏が代表を務める「自民党奈良県第2選挙区支部」が教団本部に会費名目で2万円を支払ったほか、教団機関紙「天理時報」を発行する天理時報社に、封筒代や印刷代などを支出していたことを報じている。

 2007年3月には、その「天理時報」で教団の資格を持つ信者を表わす「ようぼく」として紹介されたと共産党機関誌「赤旗」が報じたが、高市氏は信者であることを否定している。地元の政界関係者はこう言う。

「このゴミ処理施設建設は、結果的に天理市周辺の自民党議員と天理教でウィン・ウィンの構図になっている。天理教にはカネが入り、議員側は天理教の票にいっそう期待できる。並河市長にいたっては天理教の信者であることを公言し、癒着関係が疑われても仕方ない」

 もっとも並河氏は、自身が天理教の教団に所属していることを認めたうえで、「それとこれとは何の関係もない」と断言。また天理教本部に問い合わせると、「ごみ処理場ということで、当初より賃貸という前提でお話をいただいていました」(渉外広報課)と回答した。

 並河氏は天理教の土地を購入しなかった理由を「地元住民の要望」と説明した。しかし、入手した天理市が行なった地元住民への説明会の記録によると、建設予定地にほど近い同市和爾町の役員と住民から「普通は(土地を)買収するのと違うのか」(2015年3月27日)、「土地が安い時代になぜ借地にするのか、腑に落ちない」(同年7月25日)などと疑問の声が相次ぎ、並河氏は「場合によっては購入する事も有り得るのだろうと思います」と答えている。

 一方、それに先立つ同年3月12日に行なわれた市内の区長会の会議録によれば、並河氏は「最初に地権者の所にお話しに行きました」「借地という事で今、同意をいただいております」と説明したと記録されており、はじめから賃借ありきだったのは明らかだ。

 敗れた現職の荒井知事を直撃すると、「何も話せない」と言うばかりだが、当選した維新の山下真・次期知事に話を聞くと、「(土地は)購入したほうが安くなるなら、購入する選択肢をまずは取るべきと思う。(賃料が)不当に高いのならば、問題になるケースはあるのでは」と語った。

 そして、苦しい立場にある高市氏にとっては、この問題がさらなる重石としてのしかかる。

 高市事務所は、土地の契約が問題になっていること、この問題が保守分裂の原因の1つではないかという問いについては「存じ上げません」とした上で、並河市長から説明を受けたかについても、「天理市長のみならず10市町村長とは度々面会し、環境省へのご相談のセットを致しましたが、土地の所有者や金額等については聞いておりません」との回答だった。

 高市氏の師である安倍晋三・元首相は、国有地処分をめぐる森友学園問題(※注)で窮地に立たされた。今また、構図は違えど第二の森友問題ともいうべき土地問題が、愛弟子に降りかかろうとしている。今後も動向を見守る必要がある。

【※注/2017年2月、大阪・豊中市の国有地が、小学校の建設用地として学校法人「森友学園」に鑑定価格より大幅に安く売却されていたことが発覚。9億5600万円の鑑定額に対し、国は地中のゴミの撤去費用などとして約8億円値引きし、1億3400万円で学園側に売却していた。国は当初、売却額を公表せず、学園との交渉記録も「規則に従って廃棄した」と説明。さらに小学校の名誉校長が安倍首相の妻の昭恵氏だったことなどから、国会では野党が売却の経緯や政治家の関与の有無などを追及する大問題になった】

リポート/小川寛大(季刊『宗教問題』編集長)と本誌取材班

※週刊ポスト2023年4月28日号

https://www.news-postseven.com/archives/20230417_1860584.html?DETAIL
【第2の森友問題か】天理市ゴミ処理場賃料で“土地代の3倍”14億円が市から天理教に 高市早苗氏らに疑惑




日本屈指の“宗教都市”が奈良県の天理市だ。同市の一等地には「天理教」の教会本部や、地方からやってくる信者が宿泊する詰め所が点在する。こうした土地・建物は、宗教法人法に定められた〈宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を教化育成する目的〉で使われる場合、固定資産税が非課税となる。

 天理市では、天理教の施設が非課税だと失われる税収が多いこともあり、教団が市に多額の寄付をしてインフラ整備等に貢献し、共存を図ってきた。

 ところが、かつて40億円を超えた市への寄付は平成に入り15億円程度に。2013年に現市長の並河健氏(42)がトップとなると10億円を切る。2020年度は、3億円まで落ち込んだ。

「コロナ禍で教団の財政が圧迫され、寄付が来年度はゼロになるとも囁かれている」(天理教関係者)

 市と教団の関係が大きく変わりかねない話だ。並河市長に話を訊いた。

「来年度について天理教本部と議論していますが、少なくともゼロになる状況にはありません。確かにコロナで参拝者が減ってお供え収入も減り、現行額の維持が難しいだろうとは見込んでいます」

 寄付金である以上、市は額を定められず、また強要もできない。

「ただ、寄付金だけが市と天理教の協力関係ではない。スポーツや文化の面では天理教、天理高、天理大の存在で市が発展してきた。今後より協力関係を厚くしていこうと話しています」(並河氏)
 だが、寄付金減少に危機感を募らせ、「寄付より納税」を求める声も出始めるのではないか。天理市選出の奈良県議・岩田国夫氏が話す。

「都市計画も整備されてきたこともあり、これまでのように天理教の提示する寄付をそのまま受領する関係性は時代にそぐわない。市長には『現状は非課税の宗教施設であっても、課税対象に見受けられるものを市が精査し、その精査に基づいて寄付金について協議を重ねることが必要』と提案してきました」

 寄付額がゼロになる可能性を天理教の渉外広報課に確認すると、「お答えは控えたい」とするのみだった。宗教都市の市政が、曲がり角にある。

取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

※週刊ポスト2021年12月24日号

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2021.12.15 19:00週刊ポスト

天理教「天理市への寄付激減」で浮上する、宗教法人への“課税”論争