【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(1)~(4)小川たまかライター. 【暇空茜さんのカンパ金使途に対する公開要望】避難所避難所2023年7月22日 11:49.女性支援団体「Colabo」への批判・中傷 監査結果でさらに激化.女性支援団体Colaboの会計に不正はなし2023年03月20日(月)15時57分PDF魚拓



「思想の垣根を越えた完全な社会悪だと思っています」



 男性(40代)は「暇空茜」について開口一番にこう語った。男性はもともと「暇空茜」を名乗るアカウントの信奉者で、一時期はX(旧ツイッター)上で「暇アノンの姫」と呼ばれることもあった。



 しかし今、「暇空茜」の発信を鵜呑みにしてきた過去の自分を反省し、自らが中傷してきた人々へ謝罪したいと考えているという。心境の変化は何がきっかけだったのか。そしてなぜ、誹謗中傷に駆られたのか。



 その前に2022年から続く「暇空茜」問題のこれまでについて、簡単に振り返ってみたい。



「暇空茜」問題、これまでに何があったのか

(1)「Colabo不正なし」も、誤った情報が今も拡散

 新宿の路上などで若年女性へのアウトリーチ活動を続けてきた一般社団法人Colaboの活動がネット上で槍玉に上げられ、「暇空茜」こと水原清晃氏から2回の住民監査請求が行われたのは2022年末。1回が認容されたものの、その後の監査結果で運営に不正はなかったことが明らかとなった(※1)。



 しかしその後もネット上ではColaboや代表の仁藤夢乃氏に対する悪意のある書き込みが後を絶たず、路上での活動の場で「公金チュチュー!」とネット上で繰り返された揶揄を大声で叫ぶ集団も現れた(※2)。集団の一人だった煉獄コロアキを名乗る40代のユーチューバーにはその後、接近禁止命令が出た(※3)。



 Colaboは「相談者の個人情報が守れない」として東京都から補助金を受けずに活動を行う方針を決め、今年度からは都の支援を受けていない(※4)。それにもかかわらず、「都の助成を打ち切られた」「不適正な支出があったのは事実」など誤った情報と、それに基づく印象論が相変わらず拡散され続けている(※5)。



(2)水原氏への風向きが変わった女性学者への「メス」呼ばわり

 Colaboは去年の段階で、水原氏が「10代の女の子をタコ部屋に住まわせて生活保護を受給させ、毎月一人65000円ずつ徴収している」「これ不正受給だよね」といった内容を含む発信を行ったことに対して、合計1100万円の損害賠償などを求めて訴訟を提起。現在も係争中であり、Colabo側は水原氏の法廷での本人尋問を求めている(10月16日午後に行われたColabo弁護団による記者会見で水原氏本人の人証決定がなされたと報告されたが、水原氏は「本人尋問、僕は出ないことで決まりました」とXに投稿している)。



 一方で水原氏はColaboやそれ以外の支援団体への支出が違法であったとして、東京都を被告として東京都から各団体に対し、支払った委託金の返還請求を行う義務づけを求める住民訴訟を起こし、さらにColaboの代理人を務める弁護士や報道記者などに対しても複数の訴訟を提起した。



 一時期まではネット上では水原氏への批判よりも支持の方が圧倒的に多く感じられ、水原氏のXでの投稿はたちまち拡散された。その風向きがやや変わったように感じられたのは、水原氏がウクライナ情勢についてメディア出演の多かった国際政治学者の女性をX上で「メス」呼ばわりした頃からだ(※6)。



 この頃をきっかけに軍事に関する知識に長けたクラスタの一部が水原氏に対する不信感やその知識への疑念をツイートするようになった(※7)。



 それまで水原氏は「共産党と強いつながりがあるColabo代表仁藤夢乃さん」といった言葉を繰り返し使っていたため、野党支持層や左派、あるいはフェミニスト周辺の「ナニカ」と闘っているという印象を持つ人が多かった。ネット上によくある、単純でわかりやすい対立項がそこにあったから多くの人が煽動されたと言えるかもしれない。



 しかしこの頃からその一種のわかりやすさが迷走し始めた。



(3)故・安倍元首相を支持する20代男性への集中攻撃

 さらにこの騒動の余波として、水原氏の記事に対して批判的な感想を書いた20代の男性に対して、水原氏やその信奉者たちが集団で苛烈な言葉を浴びせた。男性はいっとき、自死を考えるまでに追い詰められている。



 この男性は当初から反撃の姿勢を取っていたが、9月に入り水原氏に対して開示請求やnote記事の削除を求めて認められたことを報告。さらに、水原氏を信じて発信を行った複数のYouTuberやnote執筆者に対して開示請求を行うことを報告している(※8)。



 男性はもともと故・安倍晋三元首相の支持者であり、代理人となったColabo代理人でもある神原元弁護士とは「政治的な主張や見解が必ずしも一致しないでしょう」とnoteに綴っている。



 しかし「悪質な人権侵害への対抗に、右も左もありません」「インターネット上における誹謗中傷は社会問題や人権侵害として広く認識されており、その対策が急務であるとともに、立場に関係なく団結して立ち向かわなければならないのは明白」と続ける(※9)。



 「メス」発言がきっかけで、水原氏は結果的にそれまで敵対していなかったはずの右派の一部を遠ざける格好になったように見える。



(4)「ナニカグループ」という大きな風呂敷

 これ以外にも水原氏はこれまで、自衛隊での性暴力を告発した女性へのレッテル貼りや(※10)、故・ジャニー喜多川氏による長年の性虐待が報道されているジャニーズ事務所の擁護(※11)などを行っている。



 「ジャニーズ問題も、困難女性支援法も、最近聞かないアニメ漫画規制も/俺が動いてなかったらもっと酷かったと思うひとは応援してください/不当な攻撃で黙らせようとしてくるのは、そこに何百、何千億円の利権があるからです。/日本を食い物にしようとする利権族との戦いになってしまいました。」(/は改行)とは、2023年9月13日に投稿されたポストだ。



 水原氏がX上で言及しなければ、ジャニーズ問題などについてさらに切り込んだ報道や法改正が行われていたところ、水原氏がそれを止めたという意味に受け取れる。



 また最近では「WBPCによる計画をとおしてみるとトップが公明党で共産党が利益を与えられた手下という構図がみえてくる」 といった、荒唐無稽としか思えない内容の投稿も行っている。(「WBPC」は女性支援4団体の頭文字を取った水原氏らがよく使用する造語)



 水原氏はこれまで疑問を持つ団体や個人を「ナニカグループ」と呼び、「ナニカ」による陰謀を主張し続けてきた。しかし水原氏の説を採用すると、そのうち水原氏とそのコアな信奉者以外はすべて「ナニカグループ」に属することになってしまいそうだ。



 ちなみに筆者は水原氏から2023年1月4日の時点で「小川たまか」「もろにナニカのメンバーでわらっちまった」と言及されている。



 これについて水原氏に対し1月14日に「「ナニカ」の定義とともに、私が「ナニカ」である根拠を教えてください」と取材を申し込んだところ、「個人からの質問に回答する義務は僕にはありません。よって質問回答要求罪でブロックいたします」という回答が質問のスクリーンショットとともにX上にアップされた。この回答は何度か文面を変えて数回アップされ直したものの、結局その日中に削除された(※12)。



 水原氏が敵として「ナニカ」や「利権族」の存在を指し示し、その発信を信用する人たちがいる。「巨大な敵」と闘っているらしい「暇空茜」のストーリーは、今もXの一部で有効なようだ。





元「暇アノン」がインタビューに応じる理由

 約26万人のフォロワーを持つ水原氏に一度でも言及されることの影響力は大きく、その影響力は拡散が容易なX上で増大する。



 しかしすでに述べたように、水原氏の勢いはいっときほどではない。水原氏の支持を表明してきた政治家や著名人も徐々に離れつつあるように見える。



 「暇空劇場」が飽きられてきたからということもあるだろうし、また、水原氏が自分の信奉者さえも簡単に「ブロック」し、さらに攻撃対象にまでしてきたことも理由の一つである。



 今、かつて水原氏を信用し、水原氏に加勢する投稿を行ってきた「暇アノン」と呼ばれた人の一部が、水原氏と袂を分かち、Colaboや関係者に対して謝罪を行う動きがある。



 その一人が、「避難所」と名乗るサブアカウントで水原氏に同調し、仁藤氏らへの中傷を繰り返してきたA氏(40代)だ。A氏は自らColaboの弁護団に接触して謝罪。Colaboとの間で和解が成立した。



 Colabo側は和解の条件に、指名したライターによるA氏へのインタビューを盛り込んだ。A氏がこれを了承し、筆者とジャーナリストの安田浩一氏が都内でインタビュー取材を行うこととなった。インタビューが行われたのは9月中旬。取材には、Colabo弁護団の弁護士2名が同席した。



 A氏はまず、こう語り始めた。



「安田さんは左派・改革派の論客、小川さんはフェミニスト、私は保守です。ですが、今回に関しましては、思想の垣根を飛び越えて一致団結してなんとか防がなければいけないことだと思っております。



その前提の上で、みなさん一人の思想ではなく、子どもの頃から道徳教育などを受けた一人の人間として聞いていただければと思っております」



(2)「Colaboを叩くことでフォロワーがむちゃくちゃ増えた」に続く



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(2)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(3)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(4)





【参照リンク】

(※1)女性支援団体Colaboの会計に不正はなし(2023年3月20日/藤崎剛人 現代ニホン主義の精神史的状況)



(※2)Colabo「バスカフェ」に相次ぐ妨害 活動再開も先行き不透明(2023年5月1日/毎日新聞)



(※3)自称ユーチューバーに接近禁止命令 女性支援団体へ迷惑行為ー東京地裁(2023年3月14日・時事ドットコムニュース)



(※4)都の女性支援事業行う団体 今年度は都の支援受けず活動へ(2023年6月1日/NHK首都圏NEWS WEB)



(※5)例えば、2023年9月25日に行われたはてなブックマークのコメント欄には「この団体が東京都から助成打ち切り食らった結果からしても不適正な支出があったのは事実だし、社会悪であるフェミニストは駆除しなければならないし、正直党派性以外でこんな団体擁護する理由が見当たらないんだよな」(ID:Rilke) というコメントが書き込まれ、60近くのスターを集めている。しかし一般社団法人Colaboが東京都から助成を打ち切られた事実はなく、予定通りの委託期間が満了し、Colaboは次年度の応募を行わなかっただけだ。また、一部に管理台帳の誤記などがあり約192万円の経費が認められなかったものの、それを上回る自主財源からの持ち出し金があったため返金は命じられていない。



(※6)暇空茜さんと東野篤子先生の間に起こったトラブルについて(2023年3月7日/togetter)



(※7)ミリオタにボコボコにされた暇空茜、「せんちゃ!せんちゃ!」と連呼して信者達と盛り上がる(2023年3月8日/togetter)



ニコニコ動画:暇空茜さんのスペース(2023_03_07)



(※8)「暇な空白」と称する発信者により投稿されたnote記事の削除を命じる仮処分決定のお知らせ(2023年9月22日/堀口英利)



「暇な空白」と称するnoteアカウントに係る発信者情報開示の決定に関するお知らせ(同)



など



(※9)「暇空茜」または「暇な空白」こと水原清晃に対する法的措置に係る神原元弁護士との委任契約の締結に関するお知らせ(2023年9月23日/堀口英利)



(※10)五ノ井里奈さんを叩く暇空茜とその信者達。容姿叩きも…(2023年2月4日/togetter)



五ノ井里奈氏「私の裁判についてはどこの党とも連対しません。」→暇空茜氏「認知プロファイリングしますね なんでセクハラ賠償訴訟で「党」「連帯」いやあ、偽装が下手くそ。」(2023年2月4日/togetter)



(※11)暇空氏、「ジャニーさんは無実の可能性がある」「嫌がるのを無理矢理ではなくメリット考えて耐えた人しかいないのでは」「芸能界って枕が蔓延ってんだろ」とジャニー喜多川氏を擁護(2023年7月10日/togetter)



(※12)女性支援団体「Colabo」への批判・中傷 監査結果でさらに激化(2023年1月22日/週刊金曜日)※ツイートの魚拓を掲載

【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(1)
小川たまか
ライター

2023/10/16(月) 18:18



「暇アノンの姫」だった40代男性(1)から続く



 一般社団法人Colaboやフェミニストに親和的な男性に対して中傷や揶揄を繰り返し行っていた「避難所」というアカウントが、A氏のサブアカウント(裏垢)だと明らかになったのは2023年4月後半のことだ。



 A名義のアカウントに「避難所はAさんのサブアカですか?」と問いかけたユーザーに「そうだけど避難所のお話は避難所に問いかけてくださいな。」と返答して、これを認めた。



 「避難所」アカウントは女性のアイコンを使い、段ボールに描くイラストが人気だった。そしてColaboや代表の仁藤夢乃さんに対する暴言でも支持を集めていた。



 Colabo弁護団は「避難所」アカウントによる、以下のような投稿を数十枚保存している。(/は改行)



「家賃も共益費も食費も服飾費も日用品も一切合切colaboに公金で支出されてるのに、何言ってんのこの人。/その上、貧困少女の生活保護を巻き上げるって、仁藤夢乃にゃんのウハウハ貧困搾取やんけ。/貧困少女盾にすればなんでも許されると思ってんの?」(2023年1月1日)

「15歳から売春始めて、私達は買われたとか言って、今では未成年少女搾取して公金ちょろまかすおばさんか。/仁藤夢乃さん少し心を入れ替えなよ。」(2023年1月4日)

「Colabo代表の仁藤夢乃さんが主張する、命の危険と隣り合わせの少女達を連れてきた沖縄旅行がこちらとなります」※仁藤さんが辺野古基地で座り込みを行う写真4枚を添付(2023年3月4日)



 いずれも「暇空茜」を名乗るユーザーの発信に影響された投稿だが、今現在のA氏は、これらの投稿を反省しているという。2023年8月に弁護団を通じてColaboや仁藤夢乃さんに謝罪を申し入れ、その後両者の間で和解が成立した。



 A氏はなぜ「暇空茜」に惹かれ、誹謗中傷を繰り返したのか。インタビューは9月中旬にジャーナリストの安田浩一氏と筆者が行い、Colabo弁護団の弁護士2名が同席した。



「暇空茜」とDMで情報をやり取りしていた

ーーAさんが「暇空茜」の発信を知ったのはいつ頃からですか?

A:まずはColaboより以前、彼がある特定の男性の方を、やはり根掘り葉掘りしていました。そのときに少し見ていて、何をしているのかちょっと詳しくはわからないけれど、面白いことしているなと思って、ブックマークしていたんですね。



ーーその頃から知っていて、見ていたんですね。

A:ゴシップ的な感じで見ていました。その男性はどのような方か知らないけれど、(「暇空茜」が)何かを暴いて公開するという、破廉恥な言い方で申し訳ないですけれども、人様の露出をするっていう、それを娯楽的な感じで見ていました。



ーー避難所さんのアカウント、本体のAさんのアカウント、どちらかで暇空さんをフォローしたのは、いつ頃ですか?

A:ちょっとよく覚えてないんですけれども、おそらく避難所の方で(2022年の)8月か9月頃だったと思います。



ーー暇空さんとツイッター上や、ダイレクトメッセージ(DM)でやり取りされていたのでしょうか。

A:していました。



ーー直接会ったことはないのですか?

A:それはないです。暇空は見込みがある、自分が利用しやすそうな人間に対して“公文書“(※1)をばら撒くんです。そして、彼の言い方ではアニマルズ(※2)っていうんですけれど、アニマルズに何かわかったら報告してくれ、みたいな感じで、さまざまな“公文書”が彼から飛んできました。

(※1)開示請求で開示された資料など

(※2)「暇空茜」の信奉者のコアメンバー



ーーDMをAさんから送ったのですか?

A:最初は確か私からですね。もちろんツイートのリプライも送ってましたけど、DMを送って、こういう面白いツイートを見つけましたとか、こういうものを発見しましたと私が送って、何度かやってみたら暇空茜から“公文書”のデータが届き始めたみたいな、そういう感じですね。



ーーDMを送って、すぐ返ってきたわけですか?

A:彼は興味のないものは反応しないです。興味があると反応するので、最初はColaboについて、こういう部分に矛盾があるんじゃないかとか、そういうことを送りました。



ーーそれはいつ頃からですか?

A:本格的にやり取りするようになったのは、記者会見(※)の後だと思います。

(※)Colaboが弁護団とともに議員会館で行った2022年11月29日の記者会見



「暇空茜は絶対正義」

「気に入られるように動いた」

ーーAさんが「暇空茜」に惹かれた理由は何だったのですか?

A:私が引き込まれてしまったのは、公金の使途を探ってネットで公開するという手法です。センセーショナルだったんですね。



公金を食い物にしている連中がいて、そしてそれをみんなで探ろうっていう、これは強烈なインパクトがありました。何よりゲーム感覚だったんです。探ることが。なので乗ってしまったんです。暇空茜のフォロワーも、どんどん増えました。



ーー楽しかったのですか。

A:お恥ずかしい話ながら、暇空茜にリツイートされることがうれしかったんです。フォロワーが何十万人もいる、しかも最近集めたばっかりの生き生きとしたフォロワーばかりなので。



そこで私は最初、彼に気に入られるように動きました。彼に対してすごくいい情報を渡して気に入られてリツイートされるように。



ーー都合の良い情報というのは、当時Aさんも真実だと思っていた、「暇空茜」にとっても都合の良い情報ということですか。

A:そうです。都合の良い情報というのは、こういう解釈をすれば、ここはColaboが誤魔化しているんだみたいな、ここにつながるんじゃないか、とか。



ーーリツイートされるとうれしかったとおっしゃいましたね。それほど「暇空茜」を信じた理由は何なのですか?

A:私は当時、暇空茜は絶対正義だと思っていたんです。彼は勧善懲悪の形を作り上げたんです。公金をもらいながら会計上で誤魔化している団体がいて、我々はそれを追求している側。だからこそ我々は絶対的な正義である。



だからこそ我々は暇空茜のためにどのような、ほんのわずかなものでも探って、むしり取って、彼に情報を渡さなければいけないという感覚ですね。すごく恥ずかしい考えですけれど、今から言うと。



ーーColaboや弁護団からも詳細な説明があったわけですよね。公金を勝手に使っているわけではないという説明も存在していました。そうしたものは目に入らなかったのですか?

A:そこがとても重要なポイントなんです。暇空茜の言っていることは当時絶対正しくて、暇空茜が否定するものはすべて間違っているっていう感覚に陥ったのです。いわゆる確証バイアスっていうやつですね。



思い込みだけで、都合の良い情報ばかり拾って、都合の悪いものはすべて排除するという状況に陥りました、私は。



ーーそれほど説得力があったのでしょうか。

A:私が動いたのは正義感でしたね。歪んだ正義感でした。



ーーそれは強いものと闘っている正義なんですか。それとも女性と闘っていることに対する正義ですか。

A:女性ではないです。我々が今まで支払ってきた税金を無駄に使って着服している団体がある。それを追求するのは正義であるということに溺れましたね。



「参加型」と「暇空茜タンク説」

ーーこれまで税金を着服した団体や個人、実際に逮捕された人も今までいっぱいいたわけで、そうしたものにもともと憤りを感じておられたのですか。税金の使い道に、もともと興味関心があったのでしょうか。

A:なかったです。



ーーなかった?

A:彼のやり方は言ってみれば参加型なんです。みんなが参加して、みんなで追求しようぜっていうやり方をしたので、参加しやすかったんですね。



暇空信者がなぜ暇空茜につき従っているのかっていうのを私は分析したんですけれども、一つは公金追求が正義であること。絶対に不正しているであろうから、追求は絶対的に正義だと。もう一つの理由で、暇空茜タンク説っていうのがあるんです。



ーータンク?

A:戦車のことです。我々は暇空さんに多額の寄付金を渡し、カンパ金を渡し、彼は全ての責任を負い、彼が闘ってくれている。だからこそ彼が全ての責任を負ってくれる。戦車の役割だからこそ、我々は何を言っても許されるという説があるんです。



ーー??

A:ですが、そんなことないわけじゃないですか。みんな等しく責任を負うわけなんです。その幻想にみんな溺れているから好き放題に動いて誹謗中傷を繰り返すんです。最終的には全ては暇空さんが責任を持ってくれると。



ーー「暇空茜」は多額のカンパを集めたようですが、Aさんはカンパをしたのですか?

A:カンパはしません。私、ケチですから。



ーーただ他の方は、要するにお金を渡せば彼が全部やってくれると。

A:彼が前面に全て立って、全てを防いでくれていて、さあ、お前ら攻撃しろって。



ーーみんな歩兵ですよね。暇空さんは戦車でみんなを守り、戦い、道を切り開き、そしてその後を歩兵がついていく?

A:そんなわけないんですよ。歩兵が前にいてどんどん潰されていくだけなんですよ。本当は。



ーーごめんなさい、くどいようですけれども、暇空茜についていった理由は、参加する喜びがあったわけですか。

A:ありました。ゲーム感覚でいました。



ーーとても楽しかった?

A:とっても楽しかったです。こんな娯楽はないなって思いました。みんな娯楽でやっているんです。そして暇空茜の言うことを全て信じているから、いずれみんな人様の誹謗中傷をし始めるんです。暇空茜が悪とみなしたものは全て悪なんです。



「みんな娯楽、ストレス解消でやっていると思う」

ーー今までそういう経験はありましたか? ネット上で叩いて良いものを決めて叩くという経験です。

A:個人的にけんかしたことはありますけれども、こういうことは今回が初めてです。



ーー煽られて、誰か特定の個人や団体を叩くために自ら動員されていった経験はないですか?

A:それはないです。



ーーないですか。

A:さすがにないです。ただ昔、似たような事例がありまして、私は参加してないですけれど。20世紀の話なんです。インターネットで、東芝クレーマー事件(※)っていうのがありまして。

(※)1999年の事件



ーーありましたね。

A:あれは本当にそっくりなんですよ、今回の事件に。



ーーいつ頃からネットを使い始めたのですか?

A:98年です。



ーーなるほど、Windows95が出て3年後ですから、比較的早い方ですよね。

A:95、最初使いましたから。



ーーその頃からネットを活用して情報収集したり書き込みをしたりってことは日常的に行っておられたんですか。

A:やっていました。



ーーそうした中で、暇空さんが急にポンと現れ、Colabo叩きを始めた。参加するのが面白かったと。

A:そうですね。おそらくいまだに参加している連中、みんな娯楽でストレス解消でやっていると思います。多分自分でものを調べてっていうのは、本当にごく少数で、暇空茜から一方的に与えられた情報を完全に信じた上で、それに違いないってみんな動いている、そういう状況ですね。



Colaboを叩くことでフォロワーがむちゃくちゃ増えた

ーー記者会見が(2022年)11月29日に行われましたが、たとえばAさんは12月1日頃から相当な書き込みをされていますよね。Colaboや仁藤さんに対するさまざまな誹謗中傷の文言はご自身で考えたオリジナルですか? それとも暇空さんのコピーですか?

A:全てオリジナルです。



ーーColaboが憎かったですか? 

A:私は娯楽に近かったです。まずフォロワー数を増やそうと思ったんですよ。(避難所のアカウントは)裏アカなので。裏アカでフォロワー数を増やして拡散力を増やそうと思ったんですね。



その上で私が考えたことは、中学生でもわかりやすい、コンパクトでわかりやすいツイートを心がけて、フォロワーを増やそうって思いましたね。



ーーフォロワーが増えると、それだけ影響力が上がるからということですか?

A:そうですね。



ーーそれは暇空さんのためなのですか?

A:いや、あれは自分のためでしたね。



ーー実際に増えたのですか、フォロワー数は。

A:むちゃくちゃ増えました。



(3)「暇空茜」と決別したきっかけへ続く



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(1)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(2)

【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(2)

小川たまか

ライター

2023/10/16(月) 20:35



「「暇アノンの姫」だった40代男性(2)」から続く



 A氏(40代)は「避難所」という名前の裏アカウントを持ち、「暇空茜」(水原清晃氏)を信奉する人の中でも一時期は目立った存在だった。しかし現在では水原氏を批判する立場を取っている。



 インタビューはジャーナリストの安田浩一氏と筆者が行い、Colabo弁護団の弁護士2名が同席した。



女性だと思ってフォローした人もいると思う

ーーColaboの批判を始めてからフォロワー数がむちゃくちゃ増えた?

A:むちゃくちゃ増えました。Colaboがどうのこうのみたいなのを始めてから1万5000人以上増えましたね。



ーー「避難所」アカウントではダンボールにイラストを描くことをネタにしてらっしゃいました。イラストが上手い人はSNSでは注目や尊敬を集めやすいのでは。

A:それはよくわかんないです。



ーーAさん、◯◯(※)でいらっしゃいますでしょう? ※A氏の職業

A:そうです。今はちょっと休止してますけれど。



ーーそれなりの実績を持ってらっしゃるわけですよね。

A:今はさすがに歳もありますし、潰しが効かないんで、もう一つ新しいスキルを身につけようと思って別の仕事をしています。介護を。最近はそのおかげで暇空にも「お尻拭きシート」とか言われていますけどね。



ーーひどいですね。

A:あいつは自分の道を諦めて介護に逃げたって言われています。



ーー2022年の11月末あるいは12月の初め頃、Aさんがもっともネットに書き込んでいた頃は仕事を続けてらした頃ですか?

A:その頃はちょっと休んでましたね。暇だった。



ーー書き込む時間もネットを閲覧する時間も十分にあった?

A:ありました。



ーーその時に一番楽しかったことって、これ(Colabo叩き)ですか。

A:そうですね。やっぱりのめり込みましたね。



ーー他に楽しみなかったですか。

A:ひどいこと言いますね。



ーーごめんなさい。Aさんは猫を飼ってらっしゃるのでしたか。

A:今、嫁さんのお母さんが体調不良で、嫁さんが猫を全部実家に持って行って世話をしているんですよ。だからちょっと今一人で。どうしようかなみたいなところでネットをぽちぽちしていたら暇空茜、みたいな。



ーーそういうことがあるのはわかります。「避難所」のアカウントは女性のアイコンを使っていますね。

A:ちょっと気まぐれで、自分の写真を撮ってアプリで女体化したんです。



ーー女性だと思ってフォローした人もいたんじゃないですか?

A:いっぱいいました。



ーーダイレクトメールとかも来ましたか?

A:山ほど来ました。



ーー気持ち悪いメッセも?

A:キモッと思いましたよ。ただ私は今までのツイートの中で自分を女であるとかっていうのは一切言っていないので、嘘はついていないです。



「暇空茜」のために調べ情報提供した

ーー暇空さんとの情報のやり取りについてですが、日常的だったのですか?

A:ごくまれに、彼から一方的にDMが来るんです。



ーーツイッター(現X)のDMで?

A:そうです。ごく稀に来て、たとえばこれを調査してくれないかと。1回か2回、それはありました。こいつはColaboの弁護士くさいから、こいつのツイート洗ってくれとか。「カルピス軍団」(※)の一人を。

(※)X上で暇空茜やその弁護団について批判的なツイートを行う複数の匿名アカウント。



ーーその匿名アカウントがColabo弁護団の一人っぽいから調べてくれと言うことですか。

A:そうです。そのアカウントの東日本大震災ぐらいの頃からのツイート全部、私が精査して、まとめて暇空に報告しました。



ーーそれを暇空のために?

A:楽しくやったんです。



ーー楽しくやった?

A:だから、本当に狂ってましたから。



ーー調査依頼以外の個人的なやり取りは?

A:ないですね。



ーーAさんからメッセして暇空さんに無視されたこととか?

A:もちろんありますよ。彼にとってくだらない、取るに足らないと思うものは全て無視ですね。



ーー彼に情報を渡すことのメリットって、特にないわけですよね。報酬くれるわけでもないし。

A:ないですね。単に成功体験ですね。暇空茜に取り上げてもらった。リツイートしてもらったという。



亀裂のきっかけは担当弁護士の名前?

ーー懇意にしていた暇空さんと、なんでそんなに仲が悪くなったのですか? いつぐらいから隙間風が生じるようになった?

A:ある日突然彼に切られたんですよ。最初のきっかけは些細でして、暇空茜が気に入らない行動をしたんです。気に入らない絵を描いたみたいな感じだったかな、確か。複合的な感じだったと思うんですよ。追及のやり方が「リーガルライン越えてるぞ」と言われたり。



ーーちなみに絵は、なんの絵を描いたんですか。

A:絵の中に、「垣鍔晶」(※)って書いてしまいました。

(※)「暇空茜」こと水原清晃さんの代理人の一人が垣鍔晶(かきつば・あきら)弁護士。当初は代理人弁護士が誰なのか一般に知られていなかった。



ーーそれダメなんだ。

A:禁句になっているのに、書いてしまいました。知らなかったんですよ。代理人弁護士の名前だとは。カルピス軍団の親玉じゃなかったのか、これと。



ーーそういう認識だったんですね。

A:そう。



ーー書いたら、暇空さんが逆上した?

A:逆鱗に触れて。ブロックされたんです。



ーーそれ、いつ頃ですか。

A:今年の7月か8月頃です。



(※筆者注)実際は6月中旬頃。「暇空茜」がフォローを解除したあるフォロワーに対してA氏(「避難所」)が「ごめん、一旦フォロー切らせてもらう。」と投稿。それを引用再投稿する形で「暇空茜」が「一旦ってなんだ/ブロック」と投稿している。参考リンク



A:その時は、まだ切られたとしても、何かお手伝いできることはないかみたいな感じでは考えていたんです。



ーーブロックされても?

A:そうです。ただその後、「暇空茜」は私に牙を向けてきたんです。彼が私を攻撃し始めたんですね。私も一応、カンパ金を集めてましたから、訴訟対策ということで。



疑問に思っていた「暇空茜」のカンパ金使途

ーーご自身の訴訟対策でのカンパ金。

A:そうです。ちょっとプールしてるんですけど、それを明らかにしろ、みたいな。あいつはダメなやつだとか、名指しで色々言われたんですよ。



訳わからなくて。それで、これまで「暇空茜」しか見ていなかったけれど、それ以外の情報を見てみようと。彼に反対する人たちのツイートを、何日も見たんです。



ーーどうでしたか。

A:なんか暇空、おかしくね?と思って。もうちょっと広い目でも見てみようと思って。カルピス軍団のツイートを何日も見て、こいつらの言っていることの方が筋通ってね?と。



そこで前々から疑問に思っていたのが暇空茜のカンパ金です。1億何千万円も集めて、7,000万円近くすでに使ったと。あり得ない。訴訟の着手金ってせいぜい20〜30万円でしょう? 100件やっても2,000〜3000万円じゃないですか。7,000万円って、どこから出た金額なんだっていう。



私は暇空茜に公開質問したんです、noteで。



【暇空茜さんのカンパ金使途に対する公開要望】(2023年7月22日/避難所)

A氏はこのnoteの中で、カンパ金について「領収書と明細の全公開をしてください」と書いている。



ーーカンパ金の使途に疑問があると。

A:自分は彼に乗ってしまったんです。乗って、人さまに誹謗中傷を繰り返してしまったんです。これは自分に責任があると。なんとか、こいつを食い止めないといけないと思いました。



ただ、自分一人じゃ無理だったんです。「暇空茜」は大金も持っているし、かつ山ほど信者がいる。彼からも通告が来ましたからね。これ以上、攻撃するようだったら、お前訴訟すると。noteもYouTubeも使って徹底的にやると通告を受けたんです。



ーーカンパの使い道に関する返答はなかったのですか。

A:全くない上でそれが来て、そしてさらに条件として「これ以上、俺に触るな」というような。

※参考「暇空茜」2023年7月30日の投稿「(略)カンパとかももう興味ないから触れるつもりはない」「ただしそっちが触れてくるならnoteもYoutubeも訴訟も使って応じる」



A:暇空よくないんじゃないかみたいな、そういう批判をしている人たちはいっぱいいるんですけれど、バラバラになっていたらダメなんです。それでいろいろと声をかけました。そこからColaboの弁護士さんにもつながって、和解の流れに。



自分は作戦を練りました。これまでColabo叩きをしていた人たちで一斉に和解を発表しようと。いわゆる暇アノンの姫と言われていた自分が。



挙げ句の果てに集団リンチに

ーー「暇空茜」に対する気持ちは、カンパ金の問題が大きかったのですか? それとも邪険に扱われたこと?

A:邪険に扱われたことというよりも……、最初はカンパ金でしたね。カンパ金の決め方がおかしいと。確かにおかしい。



ーーでも、そこまで愛した人じゃないですか。リツイートしてもらえてもうれしいぐらいだったと。その人が大金もらって幸せになるんだったら、いいんじゃないですか?

A:だから。こんだけ、こんだけ手伝ってやったのに、結局お前それかよって。



ーー 一生懸命調べたし、リツイートもしたし。

A:そう。その挙げ句の果てに、集団リンチに。俺を三日三晩リンチしたんですよ、やつは。



ーー要するにAさんをネットで叩いた? 動員したわけですか、暇アノンを。

A:見たくなかったんで、ブロックもされているしあえて見なかったんです。ただ、いろいろ言われているっていう情報だけは聞きました。



おそらくみんな、暇空が言ういわゆる「リーガルライン」ですか。そういうのを気をつけながらやっていたと思うんですけど、そもそも「リーガルライン」ってなんですか、その造語。訴訟なんていうのは、どんなくだらない理由だって誰でもできるわけじゃないですか。



ーー皮肉なものですね。公金の使い道で一致団結したみなさんが、金の使い道で今後は分裂していくというのは。

A:そうそう。



……たとえば「卑怯者」っていう言葉は別に、それだけでは訴えられるものじゃないじゃないですか。けれどたとえば1万人から同時に「卑怯者」って言われたら、死にたくなるじゃないですか、誰でも。それはもう、奴らがやっている集団リンチなんですよ。



ーーショックでした?

A:ショック……。実はわたし、ネット上のリンチには慣れてるんです。名前を出した商売なので、昔から人に攻撃されることは慣れているんです。



ーー◯◯(※)として。(※)A氏の職業

A:そうそう。耐性はあったので、自分は耐えていたんです。でもこれ普通の人がやられたら、もしかしたら適応障害を発症するレベルです。これは。



ーー仁藤さんもやられていた。

A:そうです。よく耐えましたね、あの人。



ーー仁藤さんだけじゃなくて、Colaboの関係者も。そのころは叩いているっていうのは思わなかったんですか。

A:思わなかったです。すみません。申し訳ございませんでした。



ーー「暇空茜」さんはAさんをブロックした後に「この問題に首突っ込んでたらまじで逮捕させられると思うよ」「俺が切った以上狙われるだろうし」といったツイートをしていたようですが、どう思いますか。

A:そんなこと言ってるんですか。ばっかじゃないのっていう。



(4)「ナニカグループは正直ないだろうと思っていた」に続く





【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(1)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(2)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(4)

【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(3)
小川たまか
ライター

2023/10/17(火) 16:30



「「暇アノンの姫」だった40代男性」(3)から続く



 「暇空茜」を信奉し、一時期は「暇アノンの姫」とも言われたA氏。しかしブロックされたことをきっかけに、次第にその発信に疑いを持ち始める。情報を送るなどやり取りをしていた「暇空茜」から「攻撃」されたと感じたことは決定的だった。



 インタビューは9月中旬、ジャーナリストの安田浩一氏と筆者が行い、Colabo弁護団の弁護士2名が同席した。



「ナニカグループ」は正直さすがにないだろうと

ーー暇空さんのロジックは間違いないと思っていた?

A:思っていました。



ーー「暇空茜」を信じる人の中には政治家や弁護士などいわゆるエリートや頭のいい人もいました。なぜだと思いますか。

A:どんどん掘りまくって、疑惑があると。記者会見も議員会館を借りている、これは政府の陰謀が絡んでいる、これは我々が戦わなくてはいけないと。



ーー強いものと闘っているという感覚だったのでしょうか。しかしColaboは小さな団体ですよ。

A:小さな団体です。



ーーバックに政党があるとか、何か独特の言い方をされてましたよね。

A:恥ずかしくて言いたくない言葉です。



ーー「ナニカグループ」(※)ですか。

(※)「暇空茜」はColaboなどの活動の背景に「ナニカグループ」なる組織があると発信していた。

A:私は正直、懐疑的でしたね。正直、それはさすがにねえだろうと。ただ彼が言う、女性支援の4団体ですか、これだけちょっと探ってみたら面白いんじゃないかっていうことで。私は頭がいい人間じゃないので、国家の陰謀だのなんだのみたいなの追っかけられないので、自分はそこ(女性支援4団体)だけ集中しようと思いましたね。



ーーどのような手段を用いて調べたのでしょう。

A:たとえば、公開されている会計と実際に使用されている、保護されている女の子たちの消耗品や食費、この人数でなぜこんなにかかるのか。まず気になるところは調べました。



あとは、仁藤夢乃がこう言っているけれども、実際は公文書ではこうだよねみたいな、そういう矛盾を洗ったりとか。



Colabo以外の3団体はあまり情報を出さなかったので調べようがなかったですね。仁藤さんは積極的に情報を出していたので、これ幸いとやっていました。



ーー調べていく中で、やっぱりColaboはおかしな団体だと確信を強めたのですか?

A:実はそんなになかったです。ちょっとこれおかしくね?矛盾してるよね?みたいなところはありました。ただ、今考えると、その程度の矛盾なんか、人間生きていたら誰だってあるだろうと。



そもそも何人もの人間に調べられるようなことを前提に詳細に会計報告なんかできないじゃないですか。Colaboのような小さい団体が。一般の会社だって多少の節税対策はしますし、多少の数字の矛盾はあります。でも今考えると、Colaboぐらいの小規模団体にしては良くやっている方だとは思います。



(※筆者注)住民監査の結果、Colaboは管理台帳の誤記などがあり約192万円の経費が認められなかったものの、それを上回る自主財源からの持ち出し金があったため、Colaboに返金は命じられていない。



仁藤さんは「キモいおじさん」と言わないでほしかった

ーーAさんはお金の問題への指摘だけではなく、たとえば仁藤さんの活動が若い女性の援助交際を増やしているとか、そういう類の投稿もありました。Colaboの活動に嫌悪感があったのでしょうか。

A:嫌悪感というよりも、これは無意味じゃないのかと思いました。やりたいことはわかるけれど、やり方は違うんじゃないかと思いますね。それからたとえば辺野古で座り込みしたとか、私の思想とは相容れない、そういう意味では嫌悪感があります。



ーー運動団体が沖縄や韓国へ行くのは良くある話であるし、それ以外の国にも行きますね。男性が主体となっている運動団体にはそのような非難が来ない。女性だから叩きやすかったというのはあるのでしょうか?

A:そうでしょうね、叩きやすかったんでしょう。隙だらけ、ツッコミどころが多すぎるっていうのは、正直なところです。



ーー具体的には?

A:感情的にものを言うところですかね。たとえば「キモいおじさん」とか。これもっともデカいところなんですけど、そんなこと言わないでよって。



ーー仁藤さんに向けての「ババア」とか、ひどい暴言についての反発はないですか。

A:それは私、聞いたことがないので初めて知りました。



ーーたとえばAさん自身も、2023年1月4日のツイートで「15歳から売春始めて、私達は買われたと言って、今では未成年少女搾取して公金ちょろまかすおばさんか。仁藤夢乃さん少し心を入れ替えなよ。」と書いたわけです。

A:ひでえこと言ってますね、私。



ーー騒動になる前よりもColaboや仁藤さんへの誹謗中傷は多くありました。そういうものは目に入らず、「キモいおじさん」だけが?

A:そういう細かい部分ではないんですよ。暇空茜が用意した大義名分。こいつらは国民の税金を搾取している、だから何を言っても許されるっていう土台があるのみなんです。



そこにみんな、それぞれのやり方で追及したり攻撃をしたりしちゃっているんです。多分私はそのとき、それを書いたとき、酔っ払っていたんだと思うんです。ストロングゼロとか飲んでいたのだと思います。



ーーAさんも一時期、女性支援4団体を追求するという名目でカンパ金を集めていらっしゃいましたね。サクサク集まりましたか?

A:1日で200万円集まりました。総額は240万円ほど。今は組み戻しに応じていて、100万円ぐらい返しました。



ーー「WBPC問題」を追及してくれているからカンパしたけれど、もうやらないなら戻してくれと。

A:銀行から電話があって「何件組み戻し請求が来て」みたいな。それは応じて。理由は聞かないです。最近はちょっとさすがに削られすぎて、自分の訴訟対策のためにいったんストップしますと言いました。



監査結果は「これぐらいしか出してくれないの?」

ーーたとえばAさんは「誰かがぶん殴られてる隣で、公金で買ったシャンパンを笑顔で飲んでるのがゆめにゃん」(2022年12月30日)と書いていますが、仁藤さんの関わっている女性って、家で実父から性虐待を受けていたり、本当に深刻な状況の女性が多いです。そういう境遇に乗じて「一晩泊めてやるからセックスさせろ」というような大人もいる。

A:そういう情報は、先ほども言った暇空茜のバイアスによって、一切入っていませんでした。



ーー仁藤さんの著書は?

A:読んでいないです。



ーーColabo側は「疑惑」に対して住民監査も受けましたし、自分たちのホームページなどを通して、説明を尽くしていると思いますけれども。

A:暇空茜は行政が主導した隠蔽に違いないと。ただそれを言ったらなんでもありになっちゃうじゃないですか。どんなことだって。



どんな証拠を突きつけたって、彼らは捏造だと言いがかりをつけるんです。全てを信じない。最近はハンコですね。パンチ穴の位置が違うとか。ありとあらゆるものに難癖をつけて、そして暇空さんの言うことだから、みんな信じてしまう。



たとえばこのインタビューだってそうですよ。あとで編集をするわけじゃないですか。この文章のつながりはちょっとおかしいから、捏造しているに違いないとか、本来はこういう文体だったに違いないとか。そういうことをやっている。



ーー結局、Colaboが不正をしたという結論にはならず、行政が調査しても何も出てこない肩透かしでしたか?

A:そうですよ。あの時の感情なんだったろうな。ちょっと考えさせてください。



……がっかりというか、これぐらいしか出してくれないの?みたいな。もっと深い情報が出てくるもんだとは思っていたんです。もっと詳細なものを出してくれればこっちで精査するからみたいな、そういう感覚。



ーー行政の調査をあまり信用していないということですかね。

A:当時はそうでしたね。



ーー東京都にもナニカがいっぱいいると?

A:いわゆる偉い人たちが何かをごまかしているんじゃないかって。自分たちの失敗やミスを保身のためにごまかしているんじゃないかという感覚でしたね。



過去にはネトウヨだった

Colabo叩きは韓国叩きより楽しかった

ーーいろいろ聞いてみてもやはりわからないのが、なぜ暇空に惹かれたのかです。気に入らなければブロックするような傲慢な振る舞いをする人だということは以前からわかっていたのではないですか。Colabo叩きが娯楽として成立していたのですか?

A:一言で言うと、冒険心。



ーー冒険心? 「暇空茜」に賭けてみようということですか?

A:子どもっぽい、幼児性たっぷりな感覚なんですけれども。



ーーそれはご自身のことですか? 暇空のこと?

A:自分です。何か新しいところを見つけた。ちょっと探検してみようっていう。



ーー新しいおもちゃを発見したような?

A:新しいゲームを見つけたみたいな。



ーー今までそういうことはなかったですか? Aさん、ネトウヨでした?

A:ネトウヨでした。



ーー主に何を叩いていました?

A:韓国です。まあ、若い頃です。



ーーなんで韓国が嫌いだったのですか?

A:やっぱみんなが言っていることですよ。いわゆる日本はこれだけやったのに韓国は裏切って、こんなに日本を利用して、みたいな。いわゆるネットで流れている言説っていうのをそのまま信じていた。



ーー今はネトウヨ的なことはやらないんですか?

A:やっていないですね。ただ思想的には保守ですよ。ただ、別の考え方の方とも積極的にお話聞きますし、人それぞれの考え方っていうのは一つの個性ですし。



ーー韓国叩くのとColaboを叩くのとどっちが面白かったですか。韓国を叩くと仲間が増えるし、同調してくれる人もいるし、リツイートもフォロワーも増えますよね。

A:でも、Colaboの方が面白かったです。なんでかっていうと、暇空茜っていう具体的なやつがいるから。



韓国だと、政府間の問題じゃないですか、結局。一般人がぎゃあっと言ったって別になんともないわけじゃないですか。でも暇空茜っていう人間がいて、ちょっとこういうのあるんだけどって言ったら、たまに取り上げてくれる。



ーー参加できる?

A:そういう感覚があります。



ーー韓国を叩いても韓国は反応してくれないけれども、Colaboを叩けばColaboは反応してくれるっていうのは?

A:そうそう。やっぱり、何か反応してくれないかなって。楽しかったですね、「支える会さん」(※)、私に反応してください、みたいな。 (※)「Colaboと仁藤夢乃さんを支える会」のアカウント



「戦略の天才だったらあんなことしてませんよ」

ーー暇空さんはAさんに対するリンチだったり、他にもこれまで自分に同調している人を何人も「対話罪」などと言ってブロックするわけじゃないですか。仲間は多い方がいいのに、なぜわざわざああいうことをするのだと思いますか?

A:気持ちいいからじゃないですか。



ーー気持ちいい?

A:快感なんじゃないですかね。自分が独裁者で力があって、逆らったら許さないぞ、こういう目に遭うぞっていう、快楽。



ーー「戦略の天才」のはずなのに。

A:戦略の天才だったらあんなことしてませんよ。どんだけ大人を怒らせているんだっていう。



ーーそろそろ最後になりますが「公金チューチュー」についての疑いは晴れたのですか。

A:もちろんですよ。そんなわけないと思っています。



ーーただ、監査でも不正はないと明らかになってもColaboへの中傷はやまず、今後の裁判でColaboが勝ったとしても、Colaboを疑い続けたり、中途半端な知識や思い込みでデマを流し続ける人はいると思うんです。そこはどうしたらいいのかなと。

A:自分が今考えているのは……いや、なんでもないです。以前あった余命事件(※)でも、いまだにあれを信じている連中もいますから、どうしたって残るやつはいるんですよ。



(※)「余命三年時事日記」というブログで複数の弁護士への懲戒請求が呼びかけられ、実際に大量の懲戒請求が行われた事件。この懲戒が不当であったとして1,000人以上の懲戒請求者が提訴され、請求者側の敗訴が続いた。



ーー余命事件について確かに今でも一部で信じている人はいますが、広がってはいないですよね、少なくとも。Colaboの件は、弁護士など知識層が批判を続けている。それに火をつけた責任は重いと思っています。対症療法的には、やはり暇アノンだったみなさんが自ら「Colaboについて、自分の認識が間違っていた」と発信してもらうことは必要だと思います。

A:できるだけはやりますけど。



ーーそこは我々が言うよりは、有効だったりするのではないかと。

A:ゆっくりではありますが、できる限りやらせていただきたいと思います。



公金チューチューって用語あるじゃないですか。あれって実は、私が去年のある日に「税金チューチューだ」ってツイートしたんですよ。それを暇空茜がリツイートして、その翌日に暇空が公金チューチューと言い出したんです。だから最初は私なんです。



ーーそうなんですか。Aさん、ひどいですね。

A:すみませんね、何か。ごめんなさい。



(インタビュー終わり)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(1)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(2)



【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(3)

【暇アノン懺悔録】「暇アノンの姫」だった40代男性(4)
小川たまか
ライター

2023/10/18(水) 11:15




https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2023/01/22/antena-1192/



中高生などの10代女性を支える活動を続ける一般社団法人Colabo(仁藤夢乃代表理事)が昨年、2回の住民監査請求を受けた東京都により監査を受け、うち1回は「認容(理由あり)」とされたことなどから、ネット上でデマを含むバッシングにさらされている。

 発端は、昨年夏頃からネット上で「暇空茜」と名乗る男性が同法人に対して「10代の女の子をタコ部屋に住まわせて生活保護を受給させ、毎月一人65000円ずつ徴収している」「これ不正受給だよね」といった内容を含むブログ記事を複数公開し、ツイッターやユーチューブで拡散したこと。

 映像タイトルに「シリーズ共産党おばさん生活保護ビジネス編【共産党と強いつながりがあるColabo代表仁藤夢乃さん】」(昨年9月24日投稿)とつけるなど、悪意を感じさせる表現を繰り返し使った。それらは多いものではツイッターで1万回以上RT(リツイート)されるなど広く拡散され、同法人や仁藤氏を批判、中傷する投稿が多く見られるようになった。

 暇空氏は昨年9月、同法人の会計報告の合理性などについて、東京都に1回目の住民監査請求を行なったが、これは10月末に却下された。Colabo側は11月29日、暇空氏に対して、同法人と仁藤氏にそれぞれ550万円ずつ(合計1100万円)の損害賠償や記事の削除、謝罪文のブログ掲載を求める訴えを東京地裁に起こした。

 暇空氏は、女性たちが生活保護受給をしていることの根拠として「東京都の18歳未満一人暮らしの生活保護費を計算サイトに入れてみたら、140530円って出てきた」と書き、同法人がフェイスブックにアップしていた画像の中で、女性たちがホワイトボードに書いた「1ヶ月の生活費」約14万円と一致したことを挙げている。

 これに対し弁護団は訴状の中で、ボードに書かれた生活費は一人暮らしを始めた際の生活設計のシミュレーションであり、さらに「140530円」は児童一人を扶養している世帯の金額であって10代女性の生活保護費とは額が異なることを指摘。暇空氏の主張について「確実な資料、根拠に基づいて信じたことに相当な理由があったとは到底いえない」としている。
大半「請求却下」なのに



 その後、暇空氏は東京都に対して2回目の住民監査請求(11月2日受付)を行なったが、年明けの1月4日に一般発表された結果では、請求の多くが「請求人の主張は妥当ではない」と却下された。ただ、人件費や経費の妥当性について一部不当とされ、2月末までに実態の再調査を行なう勧告があったことも明らかになった。

 この結果を受けてネット上では同法人への批判・中傷が過熱。作家の百田尚樹氏と有本香氏が自身のユーチューブチャンネルに暇空氏をゲストで招くなど、暇空氏への支持を表明する著名人も出始めた。「2ちゃんねる」開設者の西村博之氏は仁藤氏の投稿を引用してツイッターに〈未成年の女性に「性病を移されないように売春してね」と税金からコンドームを支援する一般社団法人Colabo〉(1月12日)と投稿するなどし、中傷や揶揄を誘発している状況だ。

 暇空氏は1月6日に掲載された「デイリー新潮」の記事の中で、「フェミニスト界隈と対決」したきっかけについて、過去に日本赤十字社の献血ポスターの中で胸が強調されたイラストに批判が上がったことをあげ、さらに仁藤氏が日本各地の温泉地を美少女キャラクター化した「温泉むすめ」に性的表現が含まれていた点を批判したことが、同法人を追及するきっかけだったと言及している。

 また、繰り返し「ナニカグループ」という言葉を使い、同法人とのつながりや利権や思想についての言及を続けている。

 暇空氏にツイッターのダイレクトメッセージで「ナニカグループ」の定義や意味について質問したところ、暇空氏は「小川たまか様へ/個人からの質問に回答する義務は僕にはありません。/よって質問回答要求罪でブロックいたします」とツイート。このツイートはしばらくして削除された。

(『週刊金曜日』2023年1月20日号)

女性支援団体「Colabo」への批判・中傷 監査結果でさらに激化

小川たまか・ライター|2023年1月22日6:47AM



<女性支援団体Colaboに対するバッシングやハラスメントは社会が止めなくてはならない>

昨年末から、女性支援団体Colaboへの悪意ある攻撃が続いている。Colaboは主に性暴力やDV等で悩みを抱えているティーンエイジャーの女性たちに対して、「相談、食事提供、シェルターでの宿泊支援、シェアハウスの運営、10代の女性たちによる活動、講演・啓発活動」などを行っているが、そのColaboが「公金」を不正に着服している「貧困ビジネス」であるなどといった根拠のないデマを公然と流され、アウトリーチ活動も妨害されているのだ。

東京都の監査結果によれば、Colaboが公金を着服しているという主張は退けられた。しかし、Colaboの会計に不正があると考えている人は未だに多く、マスコミはしっかりと事実を報道すべきだ。

行き場のない少女たちの居場所づくり

Colaboは、虐待などで家にいることができず、街に出て、売買春業者等の被害に遭ってしまうような少女たちに対する支援活動を、代表を務める仁藤夢乃氏自らの体験もふまえながら行っている。

たとえば定期的に行っている「バスカフェ」では、食料品や日用品、生理用品などを提供しながら、支援を必要とする少女たちとつながり、ケースに応じてシェルターでの保護や生活保護の受給手続き、就労支援なども行う。

Colaboに対する攻撃が激しくなり始めたのは、昨年の秋頃だ。「暇空茜」というハンドルネームのTwitterアカウントが、このColaboという団体は「タコ部屋」に女性たちを集めて生活保護を不正受給させている「貧困ビジネス」であると主張し、SNSで話題を集めたのだ。それは、Colaboが公開している断片的な写真や資料などを基にした推論にすぎなかったのだが、暇空氏はColabo が東京都若年被害女性等支援事業を委託されていることに目を付け、この団体は車両費や通信費など東京都の委託費を不正に受給しているという「根拠」を次々と披露し、都の監査委員に対して住民監査請求を行った。

一方Colaboは弁護団を結成し、記者会見およびホームページで、数々の「疑惑」なるものに回答した。
住民監査請求が通り監査が行われたが、昨年12月に出た監査結果では、監査委員の見解はColabo 側の説明をほぼ認めるもので、公金を不当に横領しているという暇空氏の主張は一蹴されている。ただ監査の過程でいくつかの経理上の問題が指摘され、委託費の再調査が行われることになった。2月末に終わった再調査では、会計ミスや見解の違いによりColaboの経費は192万円が認められなかったものの、そもそもColaboは約300万円を自主財源から持ち出しでこの事業に充てているので、返金などの措置は必要がないと判断された。

一方、監査委員によって新たに指摘された幾つかの問題は、書類のミスや見解の違いを問うものであった。たとえば人件費の按分の問題や、年数回の高額の食費、名前や住所をマスキングされた領収書などがある。このうち高額の食費については、一部報道での一人8000円という金額がクローズアップされているが、それは一年間で一度あっただけであり、保護された少女に対する誕生会のために使われたものであった。

Colaboで保護している少女たちは、DVやネグレクトで誕生日など全く祝われたことがない場合もある。せめて誕生日にはこうした盛大な祝い事をすることで、極めて危険な水準まで低下してしまっている本人の自己肯定感を高めることも事業には必要だ──Colaboの主張は認められ、経費として認められた。一方、領収書のマスキングについては、DVなどで逃げた少女を保護している性質上、個人情報を保護しなければならないというColabo側の主張は監査委員によって理解を示されたものの、経費としては認められなかった。

不正があったと誤認させる報道

この監査結果を受けてマスコミ各社でもこの話題が取り上げられたが、記事の見出しや本文で、Colaboに何か大きな問題があったと誤認させるような内容のものがあったのは問題だ。たとえば再調査の結果を受けた記事では、東京新聞の見出しは「「Colabo」192万円分の経費認めず 都の再調査結果 委託料の返還請求はなし」であり、朝日新聞は「女性支援事業の経費、192万円認めず 東京都、返還請求はなし」であった。

だが重要なのは、Colaboの会計に不正がなかった、ということだ。Colaboは「貧困ビジネス」だ、というレッテルが事実誤認だったことをこそ報じるべきだった。経費として認められなかった192万円についても、そもそもColaboは委託費2600万円を使い切り、なお持ち出しで300万円を支出している事実が確認されたのだから、委託費を不正に着服せしめたような印象を与える見出しは不適切だろう。

さらにこれらの記事の本文ではColabo が一部の領収書の提出を拒んだことが強調され、Colaboが192万円、あるいは全ての支出の領収書の提出を拒んだと誤解した人もいる。これは先述の通り個人情報保護のためそれに関連する一部の領収書にマスキングをしたのであり、個人情報の保護については、経費として認めるかはともかく、監査委員も理解を示していたことを説明するべきだった。

異常な状況に終止符を

Colaboの会計に不正はなかったことが監査によって明らかになったのちも、Colabo は激しい攻撃に晒されており、特にアウトリーチ活動である「バスカフェ」は迷惑系YouTuberらによって物理的な妨害を受けており、最も悪質な男性について接近・妨害を禁止する仮処分が出るほどになった。にもかかわらず、東京都・新宿区は混乱の収拾を目的としてColabo側にバスカフェの一時中断を要請している。しかし本来であれば、行政の委託事業が悪質な妨害を受けているのだから、行政が責任をもって遂行可能な環境をつくるべきだろう。この異常な状況を終息させるためにも、マスメディアはしっかりと経緯や事実を報道してほしい。

女性支援団体Colaboの会計に不正はなし

2023年03月20日(月)15時57分