「知的財産推進計画2024」の策定に向けた意見募集への意見20Kenji Suzuki2024年3月31日 21:27PDF魚拓MEGA

意見1 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AI と著作権に関する考え方について」(令和6年3月15日)は、現行著作権法の解釈をしめすもので、立法論に言及していません。
日本の社会や経済に生成AIがもたらすリスクを評価し、EUを含む諸外国の例を参考に、生成AIの規制について、立法に向けた準備を始めて欲しいです。
デジタル、経済安全保障、コンテンツの産業政策、ディープフェイクの政治への影響、積極的表現の自由のみならず消極的表現の自由との関係など、など極めて幅広い主題であり、長期間要することが見込まれます。諸外国の立法例のうち、わが国の公序良俗や既存の法制度との関係で採用しえない制度を整理しておくなどの作業も有効と思われます。
意見2 生成AIの出力を公表し、販売することを登録制・届出制とし、生成AI出力にその登録番号を明記する制度を導入すべきです。ドローン登録や自動車のナンバープレートのような制度を想定しています。生成AIユーザーの多くは匿名でインターネットや会員制Webサービスで生成AI出力を公開し、販売しており、著作権侵害品である場合に権利行使がしずらい他、登録制とすることでディープフェイクの拡散を抑止できます。
意見3 美術や絵画に関する著作権法の判決を整理し、その表現をみながら、侵害か侵害でないかがわかる説明資料をつくり、周知して欲しいです。「アイデアは保護されない、絵柄は保護されない」という言葉での説明では、具体的な表現でどう判断されてきたのか学びにくいです。実際、地裁と高裁で判断がわかれるようなテーマでもあります。
アイデアが保護されない、絵柄は保護されないという説示のみでは、なにが侵害となるのかわからず、侵害の抑止にならず、訴訟など知財リスクを評価できません。
説明資料の整理では、例えば田村善之「AIと著作権~依拠と類似性~」
https://ablp.j.u-tokyo.ac.jp/pdf//29Feb2024_S1_Tamura
p.53以下など参考となります。

https://note.com/kvaluation/n/n7a8565aaecc2

意見4 著作権法で保護されにくい権利や地位、例えば肖像権、パブリシティ権、声、書体、キャラクター、絵柄・作風などについて、それらの顧客吸引力や額に汗の法益、創作・保護・活用などを担当し、相談窓口となる省庁の担当部局を明確にしてください。
クールジャパン担当(内閣府)や、不正競争防止法担当(経済産業省知的財産政策室)などでしょうか。

https://note.com/kvaluation/n/n7a8565aaecc2

意見5 生成AIの利用者が、既存のコンテンツと極めて類似する生成画像を大量に出力し、公開しています。生成AIが際限なく海賊版を生み出しています。
文化庁「考え方」の整理や調査時点からさらに技術が進歩し、LoRAなど追加学習だけでなく、生成AIシステム自体からプロンプトのみで海賊版が出力されています。
また、著作権者が成年対象の露出が多い作品を描かないのに、生成AIユーザーが露出が多い生成画像を無許諾で生成して匿名で販売しています。悪質な模倣品です。
「海賊版・模倣品対策の強化」として、最新の技術動向を追いつつ、生成AIの悪用事例を収集し、逐一、対策を強化して欲しいです。または、一定程度技術が変化しても必須となるAI規制(例えばEUのAI Actでの透明性確保の要請や罰金など)の立法を検討ください。
意見6 生成AIの学習目的での利用により、海賊版が流通してしまうことへの対策をお願いします。
文化庁小委員会の整理では、海賊版の学習は著作権侵害で違法であるとはなりませんでした。
生成AIモデルの学習に海賊版が利用されることで、海賊版へのアクセスが増え、便利に利用されてしまい、海賊版の流通が増加します。このような生成AIの学習目的での利用により、海賊版が流通してしまうことへの対策として、著作権法によらない実効性のある対策をお願いします。
クリエーターができることについても情報発信をお願いします。

https://note.com/kvaluation/n/n7a8565aaecc2

意見7 著作権契約に、AI学習の禁止条項を加える
2024年、あらたに取り組みたい項目として、AI学習の禁止条項があります。著作権契約で、描いたコンテンツを提供する際、AI学習の禁止を条件することです。
例えば、甲が乙に見積でラフ案を提出したあと、乙が生成AIモデルにラフ案を機械学習させ、完成させてしまったら、質は低いとしても、発注にいたらない可能性があります。
このようなクリエーター甲の心配なり不利な立場を解消し、適切な対価の支払いが確保されるように、AI学習の禁止条項の普及が必要です。
完成後についても、対価に応じた使用許諾の範囲を適切に守ってもらうためには、AI学習をして他の用途にAI出力を使わないようにする契約が重要です。実際、海外では、俳優、声優の仕事についても学習禁止とする事例が広がっているようです。
この学習禁止は、著作権法30条の4の規律を当事者間の合意により上書きします。
髙部眞規子先生は「著作権法の権利制限規定に定められた行為であるという理由のみをもって、これらの行為を制限する契約は一切無効であると主張することはできず、いわゆる強行規定ではないと解される」と説示しています(高部眞規子『実務詳説著作権訴訟』(2019, 金融財政事情研究会)、第238頁)。
どのような文言での条項が考えられるかなど、著作権契約支援システムなどで教えてもらえたら助かります。
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/index.php

https://note.com/kvaluation/n/n7a8565aaecc2

意見8 海外市場での生成AIの評価や嫌悪感を検討いただき、生成AIとの距離感について情報発信をお願いします。
日本のコンテンツの輸出に注目した政策を実施してくださりありがとうございます。
「⽇本由来コンテンツの海外売上⾼は、鉄鋼産業の輸出額より⼤きく、半導体産業の輸出額に迫る規模」であることはとても誇らしいです。(クールジャパン戦略関連基礎資料 ver1.0 p.47)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/create_japan/gijisidai/dai1/siryou3.pdf
海外では、日本では想像できないほどに生成AI出力は嫌われています。日本のコンテンツの国際競争力を維持し、拡大していくには、生成AIとの距離感が大変に重要です。日本の既存の法解釈に止まらず、産業競争力としてコンテンツ分野の生成AI利用によるメリットとデメリットを検討いただき、情報発信をお願いします。
意見9 輸出できている産業の人たちの見通しや要望を重視してください。つまり、ITやソフトウエア分野の人たちではなく、海外で人気のあるクリエーターの意見をより尊重してください。
貿易としては、ITやソフトウエアは輸入超過であり産業競争力がなく、アニメ、マンガやそれらの基盤であるイラスト、小説や脚本のクリエーターは産業競争力がありますので、産業政策として、世界をみすえたクリエーターの意見をより参考にすべきです。
ITやソフトウエアは外貨を稼ぐことができていないのに、ITやソフトウエア分野の人たちの将来像を信じすぎてしまうことは、経済合理性に反します。
ITやソフトウエアは、コンテンツの無断学習をせずに、国際競争力のある技術開発をし、どのように輸出を増加させることができるか、研究すべきであり、外貨を獲得できる見込みがないなら、産業政策で存在感を減らして頂くしかありません。
以前の経企庁であれば、半導体、コンテンツ、鉄鋼などの輸出についてより細分化したデータを集め、産業政策を立案したのではないでしょうか。内閣府は、マクロ経済の詳細データ(例えば、ライセンス収入でもソフトウエアとコンテンツを分けた貿易収支のデータなど)の調査をし、産業政策や知財政策を立案して欲しいです。
ITやソフトウエアについては、産業政策としては、根源的な見直しが必要な状態であり、AIについて有識者であるような発言を求める状況にはないと思われます。
従って、海外で人気のコンテンツを生み出しているクリエーターの意見を尊重すべきです。

https://note.com/kvaluation/n/n7a8565aaecc2