「迫害の歴史、改めて教訓に」米国務省特別顧問反ユダヤ主義の高まりを警戒PDF魚拓MEGA



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「迫害の歴史、改めて教訓に」 米国務省特別顧問 反ユダヤ主義の高まり警戒

2023/12/21 16:14



渡辺 浩生国際
北米


イスラエル・ガザ情勢



反応







米国務省ホロコースト問題特別顧問のスチュワート・アイゼンスタット氏

パレスチナ自治区ガザを攻撃するイスラエルへの支持の是非を巡り、米国で分断が深まっている。ユダヤ人差別問題に従事する国務省の特別顧問、スチュワート・アイゼンスタット氏(80)は「反ユダヤ主義」の高まりを警戒し、あらゆる人種差別と闘うためにもユダヤ人迫害の歴史を改めて教訓とする必要性を訴えた。(ワシントン 渡辺浩生)

――ガザ情勢を巡る米国内の状況をどうみる

「バイデン大統領はイスラエルの自衛権を擁護すると同時に、パレスチナ人の犠牲を可能な限り抑えるようイスラエルに求め、バランスが取れている。ただ、民主党の左派はイスラエルによるパレスチナ人の処遇に懸念を抱き、急進派にはごく少数だが、(イスラム原理主義組織)ハマスに賛同する者もいる」

「大学ではユダヤ系の学生が親パレスチナの学生やデモ参加者から脅迫を受けた。ハマスを美化する者も多い。暴力や脅しが横行し、構内は戦場のようだ」

――ガザ攻撃にはジェノサイド(集団殺害)との批判もある

「曲解だ。10月7日のハマスのイスラエル攻撃はヒトラーによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)以降、1日で最大のユダヤ人市民を犠牲にし、人種的憎悪の再来を想起させた。集団殺害をしたのはハマスだ」

「ハマスは病院や学校に入り込み、民間人を巻き添えにしている。ハマスは世論を反イスラエルに変えるために民間人の被害を望んでもいる。ハマスの思うつぼとなっている」

――イスラエル批判と言論の自由の兼ね合いは

「米国憲法修正第1条で保障された自由な表現であっても、(ユダヤ人に対する)否定的な言論は米国を分断しているとの印象を外部世界に与えている。分断を癒す努力が必要だ」

――「反ユダヤ主義」への懸念は

「反ユダヤ主義は10月7日以前から高まっていた。米ユダヤ人団体『名誉毀損防止同盟(ADL)』によると、昨年3千件超の反ユダヤ的行為があり、シナゴーグ(ユダヤ教会堂)やユダヤ系学校は警備員を置かねばならなかった。(白人至上主義者など)極右だけではなく、パレスチナ問題に起因して極左からも起きている」

「ソーシャルメディアを通じユダヤ人大量虐殺の否定や矮小化も起きている。(ホロコースト生存者を支援する組織の)『ユダヤ人対独物的請求会議』によると、18~39歳の米国人の多くは、最大規模の虐殺が起きたアウシュビッツ強制収容所も認知していない」

――どんな対策が必要か

「バイデン政権は5月に反ユダヤ主義と闘う全米初の戦略を発表し、私も草案作りに参加した。ソーシャルメディア対策や若者へのホロコースト教育は極めて重要だ。反ユダヤ主義は反イスラム主義、黒人や同性愛者への差別と同様、許容してはならない。中国のウイグル族迫害も同じことだ。人々が醜悪な差別を見て見ぬふりをしたときに何が起きるか。ホロコーストに学ぶことが重要だ」



■スチュワート・アイゼンスタット 米国務省ホロコースト問題特別顧問。祖父母が欧州から移住したユダヤ系米国人。歴代の民主党政権でホロコーストの歴史教育やユダヤ人差別問題について助言し、1993年の米ホロコースト記念博物館(ワシントン)の開設に貢献。欧州連合(EU)大使や国務次官などを歴任。中東和平交渉にも携わった。

「迫害の歴史、改めて教訓に」 米国務省特別顧問 反ユダヤ主義の高まり警戒

2023/12/21 16:14