立憲民主党の 地位を悪用した性加害の未然防止・早期発見に向け、「地位利用第三者児童虐待防止法案」を提出TAGS ニュース政調活動提出法案第211回通常国会菊田真紀子早稲田ゆき山井和則吉田はるみ後藤祐一大西健介岡本あき子坂本祐之輔柚木道義森山浩行小宮山泰子2023年5月26日PDF魚拓



立憲民主党は5月26日、「地位利用第三者児童虐待防止法案(正式名称:児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案)」を衆院に提出しました。

 自分の将来や仕事などに大きな影響力を持っている大人から、性加害などの行為を受けた場合、その被害者は、被害を警察や周囲に訴えることが難しい場合があります。また、いまある法律では、「児童虐待」は保護者からの行為に限定しており、第三者からの性暴力やわいせつ行為は「児童虐待」に該当せず、仮にそれを知ったとしても通報義務の対象ではなく、「見て見ぬふり」をすることができてしまいます。

 立憲民主党は5月16日、大手芸能プロダクション創設者による性加害の当事者から、法改正の必要性について訴えを聞きました。

 被害の未然防止、早期発見のために何が必要かの議論を重ねた結果、経済的または社会関係上の地位に基づく影響力を有する第三者が行う児童に対するわいせつな行為等を、新たに「第三者による地位利用児童虐待」と定義し、発見者に警察への通報を義務付ける内容の法案を提出することに至りました。

 提出後の記者会見で筆頭提出者である菊田真紀子衆院議員(子ども政策部門長・文部科学部門長)は、「長い間、この問題が社会の前面に出てくることはなかった。国会においても、防ぐことができなかったことを大変重く受け止める」「勇気を振り絞って悲惨な経験をお話頂いたことは、立憲民主党の国会議員一人ひとりがわが事のように捉えなければいけないと認識をした。一歩でも二歩でも、前進するための法律を作り、成立させる思いで、提出に至った。今後こういったことが、未来に夢を持つ青少年、子どもたちに起こることがないようにしっかりと対応していく」と話しました。
本法案の付託委員会である、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会筆頭理事の坂本祐之輔議員からは、「学校教育の現場、あるいはスポーツクラブの現場、スポーツ少年団の現場などで、子どもたちへの被害が起こっているのではないか。全ての国民の皆様方のお力をお借りしながら、子どもたちの健全育成のための重要な法案であり、超党派での成立を目指していく」と法案成立に向けた決意が述べられました。

 最後に山井和則国対委員長代理より、「一言で言えばこの法案は『見て見ぬふり防止法案』だ。性的虐待を受けて泣き寝入りをされている方が今も多くいる。今回の被害をきっかけに、日本全体の泣いている子どもたちのために、再発防止をしたい」と、提出に至った思いを述べました。

 さらに、早期成立に向けて自民・公明・立憲の3党実務者協議を模索していたが、自民・公明両党が直前で拒否したため、立憲民主党単独での提出となったことについて説明した上で、「被害者の方々の本当に悲願の法案であり、限られた日程ではあるが、審議して超党派で成立をさせていきたい」と述べました。

 法案提出者は、菊田真紀子、山井和則、柚木道義、後藤祐一、大西健介、森山浩行、坂本祐之輔、早稲田ゆき、岡本あき子、湯原俊二、吉田はるみ、おおつき紅葉各衆院議員です。法案提出には、小宮山泰子衆院議員も参加しました。

【要綱】「地位利用第三者児童虐待防止法案」.pdf

【法律案】「地位利用第三者児童虐待防止法案」.pdf

【新旧対照表】「地位利用第三者児童虐待防止法案」.pdf

「地位利用第三者児童虐待防止法案」法案の必要性.pdf

「地位利用第三者児童虐待防止法案」法案成立の効果.pdf

地位を悪用した性加害の未然防止・早期発見に向け、「地位利用第三者児童虐待防止法案」を提出



地位利用第三者児童虐待防止法案(通称)について

○ 先般、ジャニーズ事務所創設者による児童への性加害が報じられる
等、児童に対して、経済的又は社会関係上の地位に基づく影響力を行使
する立場にある大人が、その立場を利用して性暴力やわいせつ行為を
行うことがある。
○ もとより児童に対する性犯罪は、刑法や児童福祉法、各都道府県の健
全育成条例等で処罰の対象とされている。しかし、強い影響力を行使す
る立場にある大人からわいせつ行為を受けた場合、児童は他者に助け
を求めることが難しく、被害が発見されづらい傾向がある。
○ 児童虐待防止法は、「児童虐待」の行為主体を「保護者」に限定して
おり、上記のような第三者からの性暴力やわいせつ行為は「児童虐待」
に該当せず、同法に規定する施策の対象にもならない。
○ しかし、芸能事務所のみならず、一般企業や学校(部活動等を含む。)
など、児童を取り巻く環境において、その地位を利用した第三者による
性暴力等も、児童の心身を深く傷付けるものであることに変わりがな
い。
〇 このため、児童虐待防止法を改正し、経済的又は社会関係上の地位に
基づく影響力を有する第三者が行う児童に対するわいせつな行為等を
新たに「第三者による地位利用児童虐待」と定義するとともに、発見者
に警察への通報を義務付けること等により、これらの者が行う虐待の
未然防止・早期発見につなげるための措置を講ずる必要がある。
○ なお、地位を利用した第三者による性暴力やわいせつ行為を児童虐
待防止法が規定する通報義務や施策の対象とする本法律案の内容は、
児童に対する性犯罪の抑止や早期発見を促すものであり、現在国会で
審議が進められている、「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げる
刑法改正案が成立した場合の実効性を更に高めることにも資するもの
と考えている。

「地位利用第三者児童虐待防止法案」法案の必要性.pdf


地位利用第三者児童虐待防止法案(通称)成立の効果について
[現状と法改正後の効果]
○ 仮に、昨今、被害が証言されているジャニーズ事務所における性加害のように、経済
的・社会的な影響力を有する第三者が、13-15歳の児童に対して性交等を行った場合、
現行の規定では、
・ 刑法上、性交同意年齢が13歳以上とされているため、当該13-15歳の児童が性行為
について同意していたと加害者側が主張することも考えられるほか、
・ 児童虐待防止法上、保護者以外の第三者による行為は児童虐待に該当しないことか
ら、通報義務を含む同法に規定する施策の対象とはならない。
○ 一方、現在国会で審議中の「刑法等改正案」や提出予定の「地位利用第三者児童虐待
防止法案(通称)」が成立すれば、
・ 性交同意年齢が16歳以上に引き上げられることで、刑法上、16歳未満の児童に性行
為を行った時点で、同意の有無にかかわらず、処罰が可能となり、
・ 影響力を有する第三者による性的虐待も、児童虐待防止法上の児童虐待とみなされ、
発見者に通報義務が課せられることになり、被害の早期発見や発生抑止につながる。
[通報義務の対象を保護者以外の第三者による虐待に拡大することによる効果等]
○ 経済的・社会的に強い立場にある大人から、弱い立場にある児童が性被害を受けた場
合、自分だけの力で助けを求めることは難しい。この法案により、通報義務の対象を広
げ、声を上げやすい環境を整えることで、多くの人が見て見ぬふりをやめるようになり、
更なる被害の抑止につながる。
○ ジャニーズ事務所の創業者による一連の性加害疑惑についても、児童虐待防止法が
当初から第三者による性的虐待も対象としていれば、性加害に気付いた同僚タレントや
会社関係者からの通報や相談が寄せられていた可能性がある。
例え通報に至らなくても、これらの者が「通報せざるを得ないからこれ以上の行為はや
めてください」「被害者がこれ以上増えれば会社や警察に言います」などと訴えることで、
加害者側への牽制や未然防止の効果が期待できる。
○ 社会的地位を悪用した第三者による性加害が社会的に大きな問題となっている今だか
らこそ、国会で議論を行い、法案を成立させることができれば、報道等による国民への周
知・啓発の効果は大きい。そのことが性被害の早期発見や未然防止につながり、芸能界
のみならず、被害者を生まないことにつながる。
〇 性被害に声を上げやすい社会を構築していくためには「どういった行為が性的虐待に
当たるのか」「どこに相談したらよいのか」「通報者や被害者のプライバシーは守られるの
か」などの国民の疑問に丁寧に対応していくことが重要である。法案成立は国民に向け
ての周知・啓発を図るための大きなきっかけになる。

「地位利用第三者児童虐待防止法案」法案成立の効果.pdf