LGBT法廃案.入管難民法廃案.宗教法人法改正。





【脱法売買-宗教法人法を問う 番外編】寺院や神社、教会など全国で約18万にのぼる宗教法人。時代とともに宗教との距離感は変わり、檀家(だんか)離れや後継者不足などから休眠状態に陥るケースは少なくない。休眠法人は脱税や資産隠しなどの温床にもなりうる一方で、ブローカーを通じた法人格の売買が横行する。そうした社会で宗教法人法をはじめとした宗教法制はどうあるべきなのか。現状の課題を専門家2人に聞いた。 ■「新時代の宗教法制を」紀藤正樹弁護士 解散命令請求が取り沙汰される旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題のように、いわゆるカルト宗教は貧困問題や児童虐待問題を生み出している。なのに宗教法人法で法人格を認定されれば、税制上の優遇措置を等しく受けられる状況は完全に不公平で、国民の理解を得られない。 宗教法人法を巡っては、会社更生法のように財産の仮押さえなどができる「保全処分」の規定がないことも明らかな不備だ。法人の代表役員の欠格事由に暴力団の排除規定もなく、反社会的勢力が入り込めてしまう。まさにザル法としか言いようがない。 全国約18万の宗教法人を担当する所轄庁(国と都道府県)には、各法人の活動実態を見極める能力も時間も人員もない。しかも、宗教法人法上の建前では、所轄庁は認証が主な役割で、法人調査の権限がほぼないのが実態だ。 少ない人数で頑張っている自治体もあるが、地方分権である以上、自治体格差が生まれるのはやむを得ない。問題は法人調査に予算をつける根拠条文がなく、人員が不足していることだ。職員1~2人で宗教団体を相手にする。ましてや暴力団が絡むような「えせ宗教団体」には、職員も怖くて対応できないだろう。 極論だが、文化庁の宗務課を解体して別の課にするくらいの改革が必要ではないか。旧統一教会の問題で、宗務課は8人から40人に増員して質問権行使などに取り組んでいるが、調査権限を使えばそれだけ人員を要してしまう。 宗教法人に関する苦情の窓口が宗務課にないのもおかしい。法人認証に関する相談窓口はあるが、苦情窓口がなければ調査の端緒にならない。そもそも質問権を使う気がなかったと批判されても仕方がない。 新しい時代にふさわしい宗教法制に変わっていく必要がある。組織改革や法改正は省庁だけでなく、政治家がしっかりと指揮して取り組むべき課題だ。宗教団体がどれだけ反対しても動じないぐらいの覚悟がなければ何も変わらない。 ◇ きとう・まさき 昭和35年、山口県生まれ。62歳。大阪大大学院法学研究科博士前期課程修了、平成2年に弁護士登録。リンク総合法律事務所所長。消費者問題、霊感商法問題に精力的に取り組む。宗教・カルト問題やマインドコントロールにも詳しく、著書を多数出版している。 ■「宗教者は襟正すべき」長谷川正浩弁護士 宗教法人の課題を議論する際、よくやり玉に挙げられるのが税優遇だ。宗教法人法ではなく、あくまで公益法人税制の問題だが、全国約18万の宗教法人の半分以上が、年収500万円以下とされる。宗教離れの加速で食べていけない寺が増えており、税優遇がなければ成り立たない。 税制上、「公益法人等」に含まれる宗教法人は高い倫理性が求められている。経営に苦しむ寺には酷な面もあるが、宗教者として襟を正さなければ世間の理解は得られない。 私は愛知県の小さな寺で生まれた。檀家は50軒程度で、このうち3~5%が年1回は葬式をするが、葬式のお布施だけでは生活が苦しい。父親から住職を受け継ぎ、掛け持ちで弁護士を始めたが、葬式の依頼が急に入るなど両立は難しいと痛感した。後継者不足は大多数の寺にとって深刻な課題。これまで檀家制度が寺の経済基盤だったが、そんな時代ではなくなった。 近年、地方で食べていけない寺の僧侶が都心部に出て、僧侶派遣サービスに雇ってもらう形が増えている。そんな寺が休眠状態に陥り、「不活動宗教法人」になるが、解散手続きを済ますのは大変だ。他の法人に吸収合併してもらおうにも檀家の抵抗感が強い。県境をまたぐ合併となれば吸収側の負担も大きく、一筋縄では解決できない。 法人の解散手続きで大きな支障となるのが残余財産だ。特に資産価値のない土地や建物をどう整理していくべきか、早急に対策を考える必要がある。基本的に不動産は金銭にしないと国庫に帰属されない。国が不動産のまま受け入れたとしても、どのように活用するのかという課題は残る。 休眠法人問題の背景には少子高齢化があるなど、宗教法人法ができた昭和26年には想定されていなかった課題が噴出している。現行法の運用を徹底させようにも、地方自治体に十分な予算はなく、休眠法人の実態調査をする人員も足りない。国は問題を先送りせず、自ら責任を持って解決策を見いだすべきだ。 はせがわ・まさひろ 昭和17年、愛知県生まれ。80歳。早稲田大大学院法学研究科修士課程修了、48年に弁護士登録。日蓮宗僧侶でもあり、宗教法人法関係の事件を中心に取り扱う。平成11~21年、宗教法人審議会委員。公益財団法人「全日本仏教会」の法律顧問も長年務める。 (「宗教法人法を問う」取材班)

「不備だらけのザル法」「国は休眠問題の解決策を」 識者2人に聞く

2023/5/20(土) 19:00配信新聞新聞


自民、公明両党は18日、LGBTなど性的少数者への理解増進を目的とする法案を衆院に提出した。夕刊フジで緊急アンケートを行ったところ、91・5%が「法制化の必要はない」と回答した。岸田文雄首相は、地元・広島でのG7(先進7カ国)首脳会議前の提出にこだわったが、「聞く力」を発揮するのか。 自公は、2021年に与野党実務者がまとめた法案の修正案を提出し、立憲民主党は修正前法案を共産、社民両党と共同提出した。日本維新の会と国民民主党は、共同提出を求めた自民党の要請を拒否して、独自の対案や修正を模索している。 こうしたなか、アンケートは18日午後から19日朝まで、夕刊フジ編集局ツイッターで行った。7762票の回答があった(別表)。 法案については、「女性」の性自認を主張する男性が、女子トイレや女湯、女子更衣室を利用する権利などが認められれば、弱者の女性や女児の安全が脅かされるとの懸念が指摘されている。 回答者からは、以下のように厳しい声が寄せられた。 《女性や女児のスペースを奪う法制という自覚があるのか》《自分や身近な女性がトイレに行った時、犯罪者がトイレに潜んでいて、被害に遭う事を想像できれば、法案に賛成する余地は無いと思います》《日本は性的少数者に寛容な文化なのに、何が悲しくて欧米の思い付きに付き合わされるのか》《LGBTを含めた差別の禁止は憲法14条に明記されている》《新たな利権構造と混乱が起きる》《マジョリティー(多数)の女性を抑圧する。税金の無駄遣いの元にもなる》《法案には反対だけど、このアンケートは恣意(しい)的すぎる》 ラーム・エマニュエル駐日米国大使の「内政干渉」といえる言動や、岸田文雄首相が米国でLGBT問題がイデオロギー論争に発展するなか、G7前の提出にこだわったことにも批判が集まった。 《駐日大使の外圧、内政干渉に屈したのか》《拙速な議論のみで法案を提出した。自民党のおごりが垣間見える》《日本にはキリスト教圏ほどの苛烈な迫害はなく、そこで迫害と戦うため誕生した「LGBT思想」は逆差別や分断を引き起こす毒になりかねない》《ようやく議論が始まった段階で課題が次々に出た。中途半端な法案提出は怠慢だ》《それよりも早く原発動かせ。電気代が高すぎる》 一方、法案提出に賛同するような意見もあった。 《G7に間に合わせなきゃ意味がないでしょ》

LGBTの法制化、9割超「必要なし」の回答「新たな利権構造と混乱が起きる」「自民党のおごりが垣間見える」夕刊フジ緊急アンケート

2023/5/19(金) 17:00配信夕刊フジ



国民民主党榛葉賀津也幹事長は19日の記者会見で、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案について、与党案や立憲民主党などによる野党案とも異なる対案を、日本維新の会と国会に共同提出する方向で協議していることを明らかにした。 榛葉氏は「(与党案と立民などの野党案には)シスジェンダー(身体的な性と性自認が一致する人)の権利をどう保護するかという視点が欠けている」と指摘。「トイレや浴場などで、特に女性の権利が尊重されていないとなると、これは問題だ」と強調した。 理解増進法案を巡っては、18日に立民、共産、社民3党が2年前に超党派の議員連盟でまとめた「原案」を、自民、公明両党が原案の「修正案」をそれぞれ国会に提出した。 榛葉氏は与野党で対応が割れている点について「議員立法は与野党が一致して法案を提出するのが原則だ。与党と野党第一党がかみ合わずに法案を提出している状況は、入り口から筋がよくない」と指摘した。

国民、維新と別のLGBT法案提出協議 与野党案「シスジェンダー保護の視点欠ける」
5/19(金) 17:10配信産経新聞







与党が18日、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を国会提出したが、野党の対応は分かれた。立憲民主、共産、社民3党は与党案を「後退だ」と批判し、超党派議連が2年前にまとめた「原案」を対案として国会に提出したが、日本維新の会と国民民主党はこれらの法案が逆に一般女性の権利侵害につながる懸念を考慮し、独自の対案や修正を模索している。

立民の長妻昭政調会長は18日の記者会見で、19日開幕の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に言及して「差別を禁止する法的措置を日本がとるか否かも大きな焦点になるが、岸田文雄首相は胸を張って日本の立場を言えるのか疑問だ。(与党案は)非常におかしな改悪が重ねられた」と批判した。共産の志位和夫委員長も会見で「与党案には重大な後退がある」と糾弾した。

一方、維新の馬場伸幸代表は会見で、超党派議連での合意以降、トランスジェンダー女性(生まれつきの性別は男性、性自認は女性)のトイレ使用などの問題が顕在化したことに言及。今後は審議の推移を見極めつつ「一般女性の懸念を解消できる」(幹部)内容の対案を検討する。

国民民主の玉木雄一郎代表もトイレや風呂の使用問題を挙げて、「普通の女性が恐怖を感じることが現に起きている。マジョリティーの理解が得られないとマイノリティーに敵意が向き、結果として性の多様性が確保されなくなる」と指摘。法案修正や付帯決議も視野に、審議に臨む考えを示した。

LGBT法案、野党の対応分かれる 維新・国民民主は一般女性の懸念を考慮

2023/5/18 20:32


【ニュース裏表 伊藤達美】 ラーム・エマニュエル駐日米大使が12日、15の国と地域の在日外国公館の大使らが出演する動画をSNS上に投稿し、「LGBTを含めた多様な性コミュニティーを支援し、差別に反対する」と呼びかけた。 エマニュエル氏は1日付の東京新聞でも同性婚について「早期法制化を」と主張。3日付の朝日新聞でもジェンダー平等や性的少数者の権利保護について「日本政府が、地方自治体や世論に追いつくことを望む」と述べ、わが国政府の姿勢を暗に批判した。 米国の意思というより、個人的な趣向なのかもしれないが、駐日大使という立場をわきまえない、極めて不適切な発言と言わざるを得ない。 わが国は今まさに、LGBT理解増進法案の詰めの議論を行っている。その最中に、外国の大使がこのようなメッセージを発することは、わが国に法制定するよう圧力をかける趣旨と受け取られても仕方がない。「内政干渉」そのものであり、看過できない。 かつて、わが国には米国の内政干渉に身をていして対抗した政治家がいた。1948年、いわゆる「幻の山崎猛首班」事件の山崎猛衆院議員だ。 政財官から多数の逮捕者が出た贈収賄汚職事件「昭電疑獄」で芦田均内閣が退陣した後、後継首班は吉田茂民主自由党総裁が有力視されていた。 しかし、吉田氏の「保守的」な政治姿勢を嫌った連合国総司令部(GHQ)は、党幹事長だった山崎氏を首班とするよう画策。首班指名に介入してきたのである。 山崎氏はこれに対抗するため、議員辞職願を衆院議長に提出。首班指名を受ける資格を放棄し、GHQのもくろみを粉砕した。自ら議員バッジを外すことで、内政干渉からわが国の議会政治を守った。 政治家である以上、一度は首相をやってみたいと考えても不思議ではなかったはずだ。しかし、山崎氏はそうしなかった。その見識と矜持(きょうじ)に頭が下がる。 内政干渉は内容にかかわらず否定しなければならない。「吉田氏、山崎氏のどちらが首相としてふさわしいか」ではない。内政干渉そのものを成就させてはならない、という思いだったのではないか。 この故事にならえば、これ以上、エマニュエル氏からの内政干渉発言が続くようだとLGBT理解増進法案を成立させるわけにはいかなくなるのではないか。日本が、大使の発言に屈していないことを証明するには、同法案を成立させないことが一番、分かりやすい。 もし成立させれば、「大使の発言に影響を受けていない」「国民の自主的な判断だ」と抗弁しても、「圧力に屈した」と受け取られてしまうだろう。日本として、それは受け入れられない屈辱ではないのか。それほど重大で不適切な発言をしたエマニュエル氏には、謝罪を求めたい。 (政治評論家)

エマニュエル駐日米大使の「LGBT発言」は不適切 GHQのもくろみを粉砕、内政干渉に対抗した「山崎猛首班事件」に学べ

2023/5/20(土) 17:00配信夕刊フジ


2年前、廃案に追い込まれたにも関わらず、その骨格をほぼ残した入管法改定案が5月9日、衆議院本会議を通過した。 当事者や支援者から強く批判されてきたのは、(1)難民申請中であっても、3回目以降の申請者を送還できる(2)送還を拒否すれば刑事罰を科す――という点だ。 日本が1981年に加入した難民条約33条には、迫害の恐れがある人々の送還を禁止する「ノン・ルフールマン原則」が規定されている。 この原則に反するだけでなく、他の先進諸国とくらべて人数も割合もケタ違いに低いように、日本の難民認定は国際基準から大きく外れている。 今回の法案が最終的に成立して、もし送還された場合、当事者の身に本当に危険が及ばないと、なぜ入管は断言できるのか。 現在、6回目の難民申請が棄却されて、異議申し立て中のトルコ国籍のクルド人、アリ・アイユルディズさんが置かれた状況から、入管が難民認定の業務を続けることの問題を考えたい。(取材・文/塚田恭子) ●羊飼いだったが、徴兵を逃れて来日した 「17歳のときに来日して、今年4月半ばで30年経ちました」 こう話すアリさんは、シリアとの国境に近いトルコ南東部の出身。村人の大半は羊飼いを生業とする土地で、アリさんの家も1000頭ほどの羊を飼育していた。 「羊は暑さに弱いのと、あと水の問題もあるので、5月頃から一家で羊を連れて高原に移動するんです。9月頃までは高原で過ごし、秋になると村に戻る。そんな生活をしていました」 だが、1990年代に入り、国内紛争が深刻化すると、トルコ軍は羊飼いが高原に行くことを禁止した。それだけでなく、テロリストに協力していると言っては、村人を捕まえ、警察へ連行したという。 「軍は村人を拷問するだけでなく、財産を略奪して売りさばくんです。そういうことが増えて、だんだん羊飼いができなくなって。クルド人の7割くらいは羊飼いをしているから、経済的な打撃も大きく、村人は町の工事現場などで仕事をするようになりました」 トルコには徴兵制度がある。政府はクルド人をテロリスト扱いしているため、徴兵されれば、同胞への攻撃を強いられる。クルド人に銃を向けたくなかったアリさんは、親戚がいたことから、17歳で来日した。 ●「難民申請」が認められなかったワケ これまで入管は、アリさんの難民申請をどのような理由で退けてきたのか。 「1回目は『入国後60日以内に手続きをしなかったから』と、インタビューを受けることもなく却下されました。 2回目は『迫害を受ける恐れの具体的な証拠がない』と、そして3回目は『英国の内務省によれば、トルコでクルド人であることで迫害される恐れはない』という理由で、難民申請は認められませんでした」 「トルコでは、クルド人が迫害される恐れはない」。難民申請者が個別に自身の状況を訴えても、入管は迫害の事実を認めない。だが、クルド人たちはみな「トルコでは、何もしなくても、クルド人というだけで差別される現実がある」と話す。 「自分や家族に危険が及ぶことを恐れて、日本でも他の国でも、クルド人であることを隠している人もいます。入管は自分の身を守るために、そうしている人たちのことを『迫害の恐れがない』と言っているんでしょうか」 ●入管職員による「情報漏洩」によって危険にさらされた 迫害を認めないだけではない。日本の入管は、トルコの治安機関に情報を漏洩して、アリさんたち難民申請者を危険にさらすという、信じ難いことをおこなったという。 「入管職員が、難民審査のインタビューで提出した証拠の文書をトルコの治安機関に提出したんです。『(話したことは)絶対に外部に公表しません』と言っていたにも関わらずです」 ある入管職員が2004年7月、「難民申請者に対する調査」という名目でトルコに赴いた。そして、アリさんをはじめ、複数の難民申請者について、彼らが日本で難民申請のために提出した証拠の文書を治安機関に渡して、日本で難民申請していることがわかるようにしたという。 さらに入管職員は、トルコの警察官や軍人とともに難民申請者の実家を訪問。この調査後、アリさんの兄は警察に連行されて、アリさんの所在について尋問されている。 難民認定機関に課せられた守秘義務を反故にし、難民申請者を保護するどころか、危険にさらす。そんな入管がフェアな仕事ができるかどうか、問うまでもないだろう。 この件の詳細については、全国難民弁護団連絡会議が公式サイトで抗議声明を発表している(*1)。 ●トルコ政府が「クルド人団体」に圧力をかける 同じころ、次のような「事件」も起きている。 アリさんは2003年、在日クルド人団体「クルディスタン&日本友好協会」の設立に関わった。クルド人の互助や、クルドの歴史や文化を紹介することを目的に立ち上げた協会だったが、トルコ政府の受け取り方は違った。 「『あの協会はテロ組織だから、早めに閉鎖してほしい』。2006年にトルコを公式訪問した小泉純一郎首相(当時)に大統領や首相はそう要請したんです。 これに対して小泉さんは『クルディスタンという国が存在しないことはわかっています。ただ、日本の憲法では、協会をつくる自由は保障されているので、閉鎖はできませんが、捜査はします』と答えました。 トルコ政府がそこまで言うのだから、誰がこの協会に関わっていたか、知っていたと考えるのが自然でしょう。実際、国家権力による圧力はかなりありました」 こうした経緯などから協会は2009年に閉鎖された。 徴兵忌避、入管による情報漏洩、日本政府を通じた圧力……。アリさんがトルコに戻れば、リスクがあることは明白だ。 民族・政治的状況から、難民認定されるべきアリさんには、もう1つ在留資格を認められてしかるべき事情がある。 アリさんは2006年に出会った日本人女性と2008年秋に結婚していて、その関係は継続している。だが、2006年1月におこなった4回目の難民申請は、結婚後の2009年3月に却下され、それだけでなく結婚を理由とする在留許可も下りなかった。 アリさんは処分の取消を求めて訴訟を提起したが、1審では「婚姻期間が短い」という理由で、在留特別許可はされなかった。その後、難民としての異議申し立ての審査は5年半に及んだが、結局棄却された。 ●裁判所「結婚生活はオンラインでできる」 この時点で2人の婚姻期間は約6年半、そして今年、結婚生活は15年目を迎えた。 「金曜日の夜はほぼ毎週、近くに住んでいる妻の両親が家に来ます。義父は晩ご飯を食べると帰ってしまうけど、義母は自分の家よりもうちにいるのが好きみたいで、日曜日の夜までうちにいます」 入管が公表している「在留特別許可に係るガイドライン」には、【日本人と法的な婚姻が成立している場合 夫婦として相当期間共同生活をし、相互に協力・扶助していること】を在留特別許可の積極要素として挙げている。 日本人配偶者との良好な婚姻状態があるにも関わらず、5回目、6回目の難民申請でも、入管はこれを積極要素として認めていない。 2018年5月、アリさんは在留特別許可をめぐる2度目の訴訟を提起した。だが、2020年6月に言い渡された1審判決は、耳を疑うような内容だった。 「トルコは昔、危険だったけれど、今は平和で自由で、トルコ政府によるクルド人の迫害はない。だから私が帰国しても問題はない。妻は3日間、トルコに滞在したことがあって、現地の事情を理解しているから、妻がトルコに行けばいい。トルコではインターネットを自由に使えるのだから、結婚生活はオンラインでもできる。地裁の裁判長は、そんな判決文を出しました」 司法がこのよう判決を下すことは、原告が日本人であれば、人権侵害として、メディアも大きく取り上げたのではないか。入管だけでなく、裁判所までがこうした判断を下している。日本の外国人に対する差別は、ここまで根が深い。 ●「クルド人を送還したい意図が読み取れる」 一方、外務省のサイトを見ると、シリアと国境を接し、クルド人が居住するトルコ南東部は、退避、および渡航の取り止めを要請する「レベル4 退避勧告」となっている。トルコの治安について、入管(法務省)と外務省は真逆のことを言っているのだ。 「どんな証拠を出しても、何をしても、結果はダメとわかっています。治安を守るためなら、私が捕まろうが拷問をされようが構わない。入管はそう判断しているんです」とアリさんは言う。 「今回の法案には、どうしてもクルド人を送還したいという入管の意図が見えます。2004年に情報漏洩があったように、入管とトルコ大使館の職員は仲が良いのでしょう」 リスクを避けるため、顔や名前をふせるクルドの人は少なくない。だが、「トルコの治安機関はすでに自分の情報を持っているのだから、隠しても仕方ないので」とアリさんは言う。 「30年間、世界のクルド人の状況を見てきて、間違いなくいえるのは、世界でクルド人を難民として認めない先進国は、日本だけ、ということです。日本という国や日本人が、ではありません。入管職員が勝手にクルド人を敵扱いしているんです。 いつも話していることだけれど、30年間ずっと私を応援、サポートしてくれている日本の人たちには本当に感謝しています。これは日本人ではなく、法務省・入管の問題なんです」 カナダ97.5%、イギリス72.5%、スイス75.1%、アメリカは86.2%、日本0%。 上記は各国におけるトルコ出身者の難民認定率だ(2019年)。この数字は、アリさんの主張が誇張ではないことを示している。 (*1)トルコ籍クルド人に関する入管調査活動への抗議声明 http://www.jlnr.jp/statements/20040804.htm

弁護士ドットコムニュース編集部

来日30年のクルド人男性「入管職員がトルコ警察に私の情報バラした」 難民認定認されず高まる「送還」の恐怖

2023/5/17(水) 12:02配信弁護士ドットコム





“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 5/19(金) 18:34配信TBS


“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 5/19(金) 18:34配信TBS


“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 5/19(金) 18:34配信TBS


“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 5/19(金) 18:34配信TBS


“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 5/19(金) 18:34配信TBS


“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 5/19(金) 18:34配信TBS

人権上の問題が多いと国内外から批判されている入管法改正案が衆議院で可決され、参議院で審議入りしたが、これまでの国会審議での出入国在留管理庁(入管庁)の答弁や説明に疑問の声が上がっている。何が問われているのか。取材した。  (元TBSテレビ社会部長:神田和則) 【写真を見る】“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 ■<「難民をほとんど見つけることができません」(入管庁資料より)> 改正案の大きな柱の一つは、難民申請中は一律に送還できない現在の規定を変えて、3回以上の申請者を送還できるようにすることだ。その背景には、およそ難民には当たらない人が、送還逃れのために規定を誤用、乱用して申請を繰り返すから、入管施設に収容される人が増え、収容も長期化するという入管側の論法がある。 これを支える事実として、入管庁が繰り返し引用してきたのが、法務省の難民審査参与員でNPO法人「難民を助ける会」の名誉会長、柳瀬房子氏の国会発言だ。参与員とは、1次審査で難民認定されなかった申請者が不服を申し立てた場合、2次審査を担当する有識者で、柳瀬氏は05年の制度発足以来、その職にある。 柳瀬氏は2年前に廃案となった入管法改正案の国会審議に参考人として出席し、入管庁の主張に沿う発言をした。 「私自身、参与員が、入管として見落としている難民を探して認定したいと思っているのに、ほとんど見つけることができません」 「私だけでなくて、他の参与員の方、約100名ぐらいおられますが、難民と認定できたという申請者がほとんどいないのが現状です」 「難民の認定率が低いというのは、分母である申請者の中に難民がほとんどいないということを、みなさま、ぜひご理解下さい」(21年4月、衆議院法務委員会) 入管庁は、この発言が難民認定制度の乱用を裏付ける事実だとして、資料「現行入管法上の問題点」(21年12月)と「現行入管法の課題」(23年2月)に掲載した。しかし、柳瀬氏の発言を時系列で追うと、担当したという件数に疑問が浮かんできた。柳瀬氏は新聞のインタビューなどでもいろいろな数字を語っているので、一番手堅い部分を拾う。
今回の改正案の土台となったのは有識者会議の「提言」だが、この委員でもある柳瀬氏は、19年11月の第2回会合で次のように発言している。有識者会議が発足して間もない時期だったので出席者に与える印象は強かったと思う。 「私は約4000件の採決に関与、そのうち約1500件では直接審尋(注・対面審査)をし、あとの2500件程度は書面審査をした」 「私が直接審尋をした中で、難民認定されたのはこれまで4人、在留特別許可が認められた人が約22~23人いると思います。それが現実です」  これに対して21年4月の衆院法務委では、参考人として以下のように語った。  「担当した案件は2000件以上、2000人と3対1で対面で話している。一次審の難民調査官による結論を覆したい、難民と認定すべきと判断できたのは6件だけ。難民とは認められないものの人道上の配慮が必要と考え、在留特別許可を出すべきと意見を出したのは12件ある」 「私どもの参与員の審査は、あらためて第三者として、申請者の意見を聞き、徹底的に聞き直す。しかし実際には、入管が認定しなかった申請者の中から、新たに難民だと思える人はほとんど出会えないのが実態」 在留特別許可件数が、後になってほぼ半減していることも不思議だが、注目したいのは、発言によれば、19年11月から21年4月までの1年半で約500件もの対面審査をしたという点だ。また別の“物差し”で見ても、05年から19年までの15年間で対面審査が約1500件、1年あたりにして100件前後、書面審査も含めると260件以上担当したことになる。 ちなみに19年の1年間を見ると参与員全体で、対面審査は582件、20年は513件と入管庁は答弁している。1年半で500件がいかに多いかがわかると思う。私が取材した元参与員は「あり得ない」と断言した。 柳瀬発言を受けて全国難民弁護団連絡会議(全難連)は、日本弁護士連合会推薦の元参与員に対して緊急アンケートを実施した。その結果、常設された班に所属した10人の年間の平均担当件数は36.3件だった。3人1組の常設班は、普通は月2回招集されるので、毎回、対面審査が2件実施されるとして「年間50件程度が上限」とも指摘した。
そうなると、柳瀬氏の担当は、なぜ異常に多いのか。 記録を精査するまでもなく短時間で不認定と判断できるような案件ばかりが集中しているのであれば、「難民はほとんど見つけられない」のは当然だろう。だが、それは柳瀬氏に限定されたことで、参与員全体を代表して語る材料にはならない。さらに「申請者の意見を聞き、徹底的に聞き直す」(柳瀬氏)こととは矛盾する。 一方で、数字を間違えたのであれば、難民申請者の運命を左右しかねない法案で、大事な参考人を務める資質が問われ、発言の信用性が揺らぐ。 そもそも参与員は組織体ではない。長く担当しているからと言って、すべての参与員を背負って発言すること自体があり得ないし、入管庁が他の参与員の意見を無視している理由もわからない。 全難連のアンケート調査にあたった高橋済弁護士は「移民政策の話は印象に操作されやすい。だから事実をベースに議論をしなければならない。柳瀬氏は、難民と認められるはずの人が送還されて、人の命を奪うかもしれない法案の審議で『難民はほとんどいない』と重要な発言をした。そのことの真偽は、まさに法改正が本当に必要なのかどうかの根幹に関わる」と指摘する。あいまいにしてはならない。 ■<「両親の帰国を条件に子どもに在留特別許可をするような運用はしていない」(入管庁国会答弁)> 家族を引き離さないで!非正規滞在の当事者や支援者が訴える会見が、5月15日に開かれた。 まず、衆議院法務委(4月28日)でのやりとりから引用する。 ▽本村伸子議員(共産) 「両親に在留資格がない子どもの中には、両親が帰国すれば子どもに在留資格を与えるという教示を受けた家族もいるというふうに聞いていますけれども、これは事実でしょうか」 ▽西山卓爾・入管庁次長 「入管庁では、ご指摘のような両親が帰国することを条件に、子どもに在留特別許可をするような運用は行っておりません」 会見ではこの発言に対し、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク共同代表理事」の鈴木江理子・国士舘大教授が「子どもの在留特別許可と引き換えに、親の帰国を迫ることはしていないという答弁はうそ」と強く反論、「入管職員は親に対して『お父さん、お母さんが帰ると言わない限り、子どもは苦しむよ』と言ってきた」と自ら体験した事実を明らかにした。
会見では、非正規滞在の家族の厳しい状況が次々と語られた。
一時的に収容を解かれる「仮放免」の家族を支援してきたビスカルド篤子さんは、子どもたちが泣き叫ぶ中で、入管職員が父親を収容し送還した場面を目の前で見てきたと語り、「一家の大黒柱を失うと、家族にとっては兵糧攻めになってしまう。お母さんはどんなに気丈に振る舞っていても2年、3年がたつと心が折れて追い詰められていく」、そして「自分の身代わりに親が強制送還されたとしたら、子どもたちはどれほど自分を責めることになるでしょうか」と問い掛けた。

両親がペルー出身の大学生の女性は、中学3年の時に父親が強制送還され、母親、弟と暮らしてきた。「私は日本で生まれて、日本で育った。『荷物をまとめて帰りなさい』というのは、知らない国に行けと言われているのと同じ」と苦しい胸の内を明かした。現在は「仮放免」なので住民票がなく、就労も認められない。「一生に一度の晴れ舞台の成人式の招待状も届かず、当日は家に閉じこもったまま過ごした。就活も極めて難しい。私たちの故郷は間違いなく日本。ただ親とここで暮らしたい、静かに平凡な日常を送りたいだけ」と訴えた。

元中学教諭で、両親が強制退去となった姉妹の未成年後見人を務めた大谷千晴さんは「日本で生まれ育って、教育を受けた子どもたちは、日本の財産。子を産み育て、働いて税金を納め、この社会の一員として生きていく子どもたちを大切にしてほしい」と呼び掛けた。

難民審査参与員も務める鈴木教授は、「人間としての権利は在留資格に先行する。成長過程にいる子どもには一刻の猶予もない。入管法改定の審議よりも、子どもの最善の利益を考えて、まず現行制度の下で在留特別許可か、難民認定による正規化が先だ」と強調した。
耳を澄ませて、当事者の声を聞かなければならない。

■<「難民かどうかの判断に“個別把握説”は採用していない」(入管庁国会答弁)>

日本の難民認定数が欧米諸国に比べて極端に低いことは再三指摘されてきたが、その原因は、迫害や迫害の恐れを国際基準より狭く解釈してきたことにある。全難連代表の渡辺彰悟弁護士は「これまで入管側は、迫害する側から個別に把握されていなければ難民とは認定しない独自の基準、個別把握説をとってきた。国際的な判断基準とは異なっていた」と指摘する。
ところが入管庁は、国会答弁で個別把握説を否定した。参議院法務委員会(5月16日)でのやりとりを引用する。 ▽谷合正明議員(公明) 「個別把握論は採用されているのかどうか、うかがいたい」 ▽西山卓爾・入管庁次長 「わが国では、そもそも迫害を受けるおそれの要件の該当性判断にあたって、ご指摘のような考え方(注・個別把握説)は採用していない」 だが、これはまったく違う。私の過去の取材でも明らかだ。 国軍批判の活動を続けてきたミャンマー人男性が難民認定を求めた裁判で国側はこう主張した。 「原告がミャンマー政府からことさらに注目されるような事情はなく、迫害を受ける恐れがあるとは認められない」 全難連がまとめた「難民勝訴判決20選」には、裁判所が入管の判断を覆した20件の判決が収録されているが、入管側が難民不認定とした理由も示されている。 「反政府活動家として注視されるような存在であったとは認められません」 「政府が、ことさら警戒して迫害を企図するとは考えられません」 「特段、本国政府から関心を寄せられるようなものとは認められず」 「多数の中の1人としてデモ等に参加した程度に過ぎない」 「注視」「警戒」「関心」「把握」に「ことさら」「特段」を付けて難民性を否定するのは、入管側が用いてきた常とう句で、これこそが個別把握説によって難民該当性が判断されてきたことを示している。 20選の中の福岡地裁判決(10年3月)が重要な指摘をしている。 「仮に本国政府が極めて冷静で賢い政府であれば、最小限の労力で最大の萎縮効果が得られるように、迫害することが困難な著名な反政府団体の指導者等ではなく、その他大勢の活動家のうちの1人に過ぎない者を、ランダムに迫害するものと考えられる」 これは明らかに裁判所が入管側の個別把握説に疑問を呈したものだ。 今年3月、入管庁が公表した「難民該当性判断の手引」は、「迫害主体から個別的に認知(把握)されていると認められる場合、そのことは、本要件の該当性を判断する上で積極的な事情となり得るが、そのような事情が認められないことのみをもって、直ちに申請者が迫害を受けるおそれがないと判断されるものではない」という一文を明記した。これをどう見るか。
渡辺弁護士は「本来、難民の要件と判断は、裁量を許さないものだというのが難民条約の考えで、どの国に行っても同様の保護が受けられるようでなければならない。ところが、個別把握的な判断は、難民の受入れを自分たちの都合のいいように裁量的に調整するためのものでしかなかった。『手引』は結局のところ,この裁量的な要素を残していて、真に国際基準にのっとった難民行政を施行するという決意はみられない」と批判する。 その上で「法を改正し、3回目以上の難民申請者について送還を停止する規定を外すためには、適正な難民認定が行われているという前提が絶対に必要だ。『手引』はこれを意識して、個別把握説への批判をかわそうとしている」と見る。 「真に適正な基準に沿って今後の運用をするというのであれば、個別把握説にこだわり続けた過去を潔く認めた上で、国際水準に沿った判断に改めると明言すべきではないか。国会答弁は、事実に反しているし、不誠実としか言いようがない」

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“難民はほとんど見つけられない”、“子どもを駆け引きにはしていない”…入管法改正案・国会審議で見えた3つの疑問 5/19(金) 18:34配信TBS